もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜 作:白だし茶漬け
今回はいつも通りの1万文字ぐらいです。
もう39話です。あと一話で40話とは…よくここまで来ましたね…皆様のご愛読に感謝です。
最近、他の方の小説を見てから何とか書き方を思い出したような気がする。
第39話【始まりと夜明けと明日と】
マーレに成りすましてもう一週間は経っただろうか、相変わらず落ち着かない広いベットや、重桜とは全く違う食事には少しづつ慣れていかなければならない。だがそのせいかどうしても重桜の皆に会いたい気持ちが強くなってしまう。懐かしさや寂しさが入り交じっていつも部屋で静かに泣いていた。
やっぱり…会いたいよ。赤城姉さん…加賀姉さん…
それだけじゃない。愛宕さん、高雄さん、三笠さん、長門ちゃん、陸奥ちゃん、江風さん、他にも会いたい人がいっぱいいる。そんな事を考えて、今日も俺は涙を流して寝る。瞳を閉じ、意識が薄れる。そして、ぼんやりと何かが映っていた。それは、まだ天城姉さんがいたあの頃だった。
_優しいのね。貴方なら【指揮官】になれるかもしれないわね。
_【指揮官】って何?
_赤城達が、怖い思いをしてる子達を怖い思いをしないように、一緒に傍に居られる人の事よ。
これは…俺が初めて指揮官という事を知ったあの日だった。そうだ…これだ…!
俺は意識を覚醒させ、急いでオセアンさんの部屋に向かって走る。幸い、テネリタスは英雄と言っても庶民派の貴族なので、屋敷はそれほど広くは無かった。オセアンさんの部屋の前に着くと、息を整え、ドアをノックする。
_どうぞ。
ドアの向こうからオセアンさんの同意の声が聞こえたので俺は丁寧に静かにドアを開ける。部屋には沢山の書物とそれを立てるための本棚が複数あり、そのどれの本棚も本がびっしりと入っていた。
_どうしました?こんな夜更けに。
オセアンさんは今読んでいた本をしおりを挟んでから閉じ、整理整頓されている綺麗な机の上に本を置き、こちらに体を向くように回転イスを動かす。オセアンさんと目が合う。俺は心の準備をすませ、俺は会いたい人に会うためにある事を言う。
指揮官ってどうすればなれますか?
これが始まりだった。こうして俺は指揮官になる事を目指した。だが、指揮官になる為にはそれ相応の能力が必要だと言う。
それでも構わなかった。俺はオセアンさんに頼み込み、指揮官を選ぶ、【アズールレーン指揮官選別学校】に入る為に俺を指導してくれた。
戦術知識や体術の訓練は地獄と言っても良いほど過酷だった。でも、地獄は見てきた。家族や場所を失ったあの地獄に比べればまだかわいいほうだった。こうして三年間、オセアンさんの指導を乗り越え、俺は13で入学。
そして、四年間の末、俺は指揮官になった…マーレとしてでは無く、天城優海としてただ重桜の人達に会うために…
成程…これがこの者が歩んできた過去か…。
ふむ…何とも幼稚な理由で指揮官になったものだ。
だが、小さな事が原動力となり可能性を新たに生まれさせるのも人間…。
さて、そろそろ我も目覚めるのも時間の問題…
我はオロチ…人の総意から生まれし者…!
「教えてください…貴方は一体誰ですか?」
ネージュの顔が見えるほどの月明かりが照らす夜の中、俺はネージュの追求にただ黙っていることしか出来なかった。ネージュは涙を流しながら俺が誰なのかを追求した。ネージュの涙を見て、今自分が嘘を突き続けた罪の意識がこれ以上無く俺を苦しめていた。
「…それは明日話します。そもそも、俺が貴方達を呼んだのはその事を伝える為です。そして、俺をどう見るかで、俺を生かすか、討つか…それを決めてもらう為にここに呼びました。」
「…分かりました。なら私からは以上です…」
ネージュは涙を拭いて、パーティー会場に戻ろうとしたした。その絶望したようなんだけど顔を見て、俺は彼女に希望を与えた。
「マーレさんは生きてます。」
「…え?」
一筋の希望を見つけたようにネージュはこちらに振り返った。だが、生きてるから安心してはいけない。
何故なら彼はセイレーンにいるのだから…
「マーレさんはセイレーン側についてますが…確かに生きてます。この前の戦闘で…この目で。」
この前の戦闘で会ったことを思い出す。荒れ狂う吹雪の中で仮面が壊れ、俺と全く同じ顔をした。英雄は、嵐となって人類に恐れをなす、敵になっていた。
写真で見た本人とは目つきも雰囲気もかなり違っていて、一瞬別人かと思えたが…確かに感じた。あれはマーレだと。
「そうですか…」
ネージュはその人が敵になった事実に涙を流したと思われたが、違った。彼女は…泣きながら笑っていた。
「良かった…!生きていたんですね…マーレ君…!」
嬉しい筈なのに止まることのない涙を必死に拭いながら生きていた嬉しさや希望でネージュは思わず膝をついて、泣き止む事は無かった。俺は、咄嗟にハンカチを渡した。
「あ…ありがとうございます…やっぱりその優しさは同じですね。」
「…あの人になる為に色々やりましたから…本来の俺はこんな人間じゃないんです。」
「そんな事無いですよ。だってほら。」
ネージュは俺が渡したハンカチをとって涙を拭うと、右手でパーティー会場にいるKAN-SEN達に指を指した。
「貴方はとても優しくて、温かい人です。だからこそ、KAN-SEN達は貴方を信じて、ついて行くんじゃないですか?」
パーティーを楽しんでいるKAN-SEN達には笑顔が溢れていた。確かに皆、俺を信じている。
だが、だからこそ…
「だからこそ…怖いんです。」
「怖い…?どういう事ですか?」
俺はセイレーンの艤装を持っている。つまり、俺はセイレーンと関わりを持っているという事になる。もし俺がKAN-SEN達と戦う事になって、KAN-SEN達を傷つけてしまうことを考えると…怖い。
だが、今ここで言う事では無い。全ては明日、明かされる事だ。
何かここで話を終わらせる事は無いかと、俺は辺りを見渡して沈黙を貫く。すると、俺の願いが届いたかのように窓扉が開けられる。
「おーい指揮官ー!いつまでそこにいるの?早くパーティーに戻ってよ〜!ジンとリアも今戻ってきたし!」
黒いドレスを来て、いつものカウボーイハットを被ってないホーネットが勢いよく窓扉を開けてテラスに入ってきた。
「…そうですね。ではマーレ君も一緒に。」
ネージュはハンカチを返して、一足先にパーティー会場に戻った。ホーネットもネージュを案内するように一足先に戻る。1人静かになった静寂の空気になり、開けられた窓扉の向こうにある光景を眺めた。
KAN-SEN達が笑って、談笑したり、なんだか酔っ払っているKAN-SENまでいる。こうして見ると本当に人間と変わらない。俺はこの光景を焼き付けるようにじっと見つめる。これが最後の夜なのかもしれないのだから。
「さて、そろそろ戻るか。」
開けられた窓扉からパーティー会場に戻り、俺は窓扉を閉め、パーティー会場に振り返るとそこにはKAN-SEN達とジン達が俺を待っていたかのようにそこにいた。
「よ。リアを連れ戻したぜ。」
「元はと言えばあんたのデリカシーの無さがわるいけど。」
リアはジンを少し睨みつけ、ジンは誤魔化すように苦笑いした。
「でも、これでようやく皆揃った。」
飄々と後ろからリアを宥めるように方を掴んだのはリフォルだ。リアはいきなり肩を掴まれて可愛らしい裏声を出して驚きを上げ、リフォルに噛み付くように説教する。
「はい。まるであの時のようですね!」
ネージュが言った”あの時”という言葉は俺が指揮官に選ばれ、基地へ行く前日の夜を皆に思い出させた。
たった五人のパーティーだったけど、今までのパーティーよりも楽しかった。お菓子を食べながら今まであったことを思い出して笑いあったあの時間は、俺の大切な思い出だ。
「なぁ皆…」
「うん?どうしたマーレ?」
俺の呼び掛けに皆は俺に振り向く。俺はこれが最後の夜になると思い、伝えたかった事を話す。
「皆と出会えて、本当に良かった。ありがとう…!」
思い出を振り返った懐かしさかそれとも、もう会えないかもしれない悲しさ込み上げて涙が出そうになったが、必死に堪えて感謝の言葉をジン達に告げる。
「俺の方こそ、会えて良かったよ。指揮官になれなかった以前に、英雄と会えるなんて滅多に無いからな。」
ジンは笑って握手を求めた。俺は差し出された右手に合わせるように右手で目を合わせて握手をした。
するとジンは俺から視線を外して俺の後ろを見た。なんの光景を見たのか、ジンは少々驚いた表情をした後、俺を見て小さく笑った。そしてそれに合わせるように後ろから肩を掴まれた感覚に襲われ、大分体重を乗せた重みも感じた。
重みで体のバランスを一瞬崩してしまったが、片足を曲げられた程度なので直ぐに立ち上がった後振り返る。
「し〜きか〜ん?私達の事忘れてませんか〜?」
「エ、エディンバラ!?あ…もしかして…酔ってるな!?メイドなのにお酒飲んだな!?」
白髪にメガネをかけていて、そして極めつけのメイド服…間違いないエディンバラだ。何で仕事中の筈のメイドが酒を飲んでるから知らないが、取り敢えずエディンバラが酔ってる影響なのか妙に俺に絡んでくる。
「なんだかベルファストとなんか仲良さそうじゃないですか〜指揮官〜?私だってもっと指揮官の事奉仕したいのに〜!」
「何を言ってるんだお前は!取り敢えず離れろ〜!」
顔を抑えるのは流石にあれなので肩を掴んで何とかエディンバラを俺から離れさそうするが、やはりKAN-SENとの身体能力との差があるせいか微動にも動かす事が出来なかった。その光景を見たジンは面白おかしく笑っていた。
「いや〜モテる男は辛いねぇ?マーレ君?」
「その言い方なんかムカつくな…」
わざとらしく語尾を上げて、からかうような口調に少しイラつきを感じたが、今そんな事よりもエディンバラがどんどん力を強めて俺を押し倒そうとする勢いだ。さっきKAN-SEN達と踊ってかなり体力を奪われたのでそろそろ限界が近づいて来たのが身をもってわかる。
「わらひらって〜ベルみたいな完璧には出来ませんへろ…それなりには出来まふからね〜!?」
だんだんとエディンバラの呂律が回っておらず、何言ってるのかわからなくなってきた。
助けを求めて辺りを見渡す余裕も無くなり、そろそろやばくなってきた。このままではエディンバラに押し倒されてしまう。限られた視界の中で、こちらを見る同じロイヤルメイド隊であるシリアスが映った。
目には目を、メイドにはメイドだ。僅かな希望を縋るように俺はシリアスに助けを求めた。
「おーいシリアス!頼む!エディンバラをどうにかしてくれ〜!」
しかしシリアスは俺の呼びかけには反応せず、ただ俯きながら立ち尽くすだけだった。なんだが嫌な予感を薄々感じながらもう一度シリアスに声をかけてみる。しかし結果は同じで反応が無い・・・というか薄い。どうやら聞こえてはいるようだが?その証拠になんだか少しふらついた足取りでこっちに近付いてくる。俺の声が届いたという安心感を感じたがその安心は見事に崩された。
それを表現するかのように俺はシリアスに抱きつかれ、そのまま尻もちをついて倒れてしまった。
「誇らしきご主人様…どうかこのシリアスに罰を与えてくだしゃい!」
「……えぇ?」
何がなんだか分からなく、俺は一瞬宇宙が見えた気がした。なんとか現実へと帰還し、シリアスも酔ってる事に気づく。と言うかどうしてメイド達が酒を飲んでるんだ。二人はメイドだ、このパーティーを運営するにあたって、KAN-SEN達の案内を任されてる筈なのに仕事中にこんなに泥酔するまで酒を自分から飲んだとは考えにくいが…
「なぁシリアス。どうして酒なんか飲んでるんだ?」
「それは〜あの方がこのお酒をにょむと誇らしきご主人様の為になる〜とか言って…」
シリアスはフラフラと腕を上げて俺の後ろに指を指す。シリアスが指した方向にゆっくりと振り向くと、指した方向はリフォルを指していた。
「あ…バレちゃった…?」
リフォルは悪びれもなく、下を小さく出した。
「リィィィィフォルぅぅぅ!?何してんだお前!?」
「いやKAN-SEN達も酔っ払うのかなって気になって、そそのかしやすそうな子を選んだんだけど…まさかここまでとは。」
どうやらリフォル曰く、エディンバラにはそんなに頑張ってるならちょっと休憩しよう見たいな悪魔の囁きを、
シリアスには俺の為と言ってそそのかしたらしい。
いや騙されやすいな、流されやすいなおい。
「誇らしきご主人様〜どうかこのシリアスにお仕置を〜ほら、こういう風に頬にぺちぺちと…」
シリアスは俺のを左手を掴んで自分の頬に俺の手を当てるが、酔ってるせいか力が入ってない。これでは俺がシリアスの頬を添えているようだった。
「頭にも〜こうやってぺちぺちって…」
今度は自分の頭に俺の手を置いてきた。相変わらず力が無く、シリアス本人にダメージが無い。叩いていると言うよりは頭で手を擦り付けてる感じだ…これではまるで…
「あ〜!頭撫でて貰ってる〜指揮官〜わたひにも〜!」
エディンバラが俺の心の声を代弁するかのように叫び、エディンバラも俺の右手を掴んでそれを自分の頭に乗せると言うセルフ頭撫でを実行した。
「えへへ〜しっきか〜んもっと〜」
「もっとじゃありませんよ。エディンバラ姉さん。」
「シリアスもご主人様から離れなさい!」
エディンバラの事を姉さんと呼ぶ者と、シリアスに近づくメイドがいた。白い長髪にいつものメイド服と薄い水色の髪をしたメイド…ベルファストとダイドーだった。
ベルファストはエディンバラを、ダイドーはシリアスを俺から離れさせようと優しく羽交い締めして俺から離れさせた。
「あ〜誇らしきご主人様が遠のいて〜…」
「あ、ベル〜どうしたの〜?」
「どうしたのではありません。ニューカッスルさん、エディンバラ姉さんの事をお願いいたします。」
「分かりました。まぁ、こんなに酔っ払って…」
二人ともまだ酔いは醒めずに、ダイドーとニューカッスルによって、何処かへと連れていかれた。俺は座り込んだ体勢から腰を上げで立ち上がり、埃を払うようにズボンをはたく。
「ベルファストごめん、リフォルのせいで…」
「いえ、全てはこちらの責任です。パーティーがもうすぐお開きになるのが幸いですね。」
「…もう終わりなのか。」
確かにテーブルの皿を見ると随分と料理の量が減っており、時間もかなり遅い時間になっていた。そろそろパーティー…俺にとっては最後の晩餐が終わりに近づいている。終わりに近づくにつれて、その意識がはっきりと実感して、俺はKAN-SEN達やジン達を見る。もしかしたらもう会えなくなるかもしれない…この光景をしっかりと目に焼き付くように見る。
「ご主人様。これが最後の晩餐だとは思わないで下さいませ。」
「え?」
何で分かったのか、ベルファストは俺の考えをいきなりピタリと当ててきた。驚く俺の事を気に止めずに俺の前まで歩き、両手で俺の右手を握る。
「ご主人様の夜はこれで最後ではありません。明日も明後日も何時までも…私達がご主人様を信じている限り、明日は続きます。だから最後の晩餐とは思わないで下さいませ。」
「…敵わないな、ベルファストには。」
「ご主人様を全力で御奉仕するのがメイドの務めですから。」
ベルファストは少し誇った顔をしながも、目は俺を見続けていた。そして、握っている手も弱めず、少し力を強めたのも感じた。まるで、俺の事を離さないように…
「お〜い…良いところちょっと良いか〜?」
ジンがたじろいで俺の事を呼んでいた。ジンは俺とベルファストを交互に見て申し訳なさそうにしていた事から、俺はベルファストと手を握っている所を見られてる事を自覚し、気恥しさで手を離そうとするが、俺の右手がベルファストの両手によって握られているので、離そうにも、離れない。
「ジン様。どうぞ続けて下さい。」
「ベルファスト!?」
まさかのベルファストが俺の手を離してくれない。むしろさっきより少し力を強めて最早離そうとはしなかった。ジンは、戸惑いながらも要件を伝える。
「え?あぁ…この後、俺はリアと踊るんだけどよ。俺こういうダンスってした事無いから教えてくれないかなって。」
成程。確かにジンの性格からしたら社交ダンスは興味無さそうなので、 踊り方等は全く知らないだろう。しかし教えるのはいいが肝心のベルファストがついたままでは教えようにも教えられない。
「でしたら、ご主人様と私が踊りますのでよく見ていて下さい。」
「ベルファスト?」
「御安心を、ゆっくりとジン様に分かりやすく踊りますので。」
「違うそうじゃない。」
「私もこのような踊りには慣れてますので、ご主人様に迷惑はかけません。」
「いやそれも違う。」
俺はいきなりの展開で気持ちが追いつかずにいた。そんな俺を置いていくように、ベルファストは俺の両手を握り、あっという間に踊りの体勢に入った。
「ご主人様は私と踊る事は不本意なのですか…?でしたら出過ぎた真似をしてしまい申し訳ございません…」
ベルファストはまるで怒られた犬のようにしゅんとして顔を俯いてしまった。俺は謎の罪悪感に襲われ、胸が痛くなる。この痛みを取り除くように俺はベルファストと踊り事を決意する。
「分かった!分かったよ!踊ろう!よろしくお願いします!」
「…ありがとうございます。」
ベルファストはまるで小悪魔のように目を細めて小さく笑っていたような気がした。まさか、わざとあんな態度をとったわけじゃないよな…?
だが、真相は本人しか分からないため、俺は謎を持ったままベルファストと踊った。ジンに教えるように、ゆっくりと、丁寧に、そのせいか、時間の進みも遅く感じられた。
(ご主人様…メイドだってご主人様に甘えたい時もあるんですよ…?)
_現時刻 鉄血にて
静かな部屋の中、長い金髪に黒一色の少し胸元が開いている軍服と軍帽を被り、紙の資料を睨みつけるようにしているのは鉄血の指導者、ビスマルクだ。
「…オロチ計画についての報告はあまり情報が無いわね。重桜が全力で隠しているのか、それとも大多数のKAN-SENがオロチ計画についてよく分かってないのか…」
ビスマルクはオロチ計画について悩んでいた。関係はさほど良くはないが、同じレッドアクシズとして重桜のオロチ計画を見過ごす訳にはいかなかった。
そもそも、重桜がろくに情報共有をしていない。これが問題だった。だからオロチ計画がなんなんのかも未だに掴めずにいた。だからこそ、プリンツ・オイゲンやZ23等の少数の鉄血のKAN-SEN達を重桜に派遣してオロチ計画の事を探ろうとしたが、肝心のオロチを使っていないため、結果は空振りに終わってしまった。
そして、それを嘲笑うかのようにビスマルクの後ろから声がした。
「あらあら、なんだか元気が無いわね?」
「なんの用かしら。あまり鉄血に侵入しても困るのだけれど。」
ビスマルクの後ろに無数の触手の艤装を持つセイレーンがいた。ビスマルクは驚きもせずに、冷たい態度でセイレーンを言葉で突き飛ばす。
「つれないわね。折角、貴方の理想の手助けをしてると言うのに。」
「…それよりも聞きたい事があるわ。」
ビスマルクは会話を無理やり変えるように強引に話を捻じ曲げた。セイレーンはその事を気にもとめずにビスマルクの質問に答える姿勢をした。
「あの指揮官…明らかにセイレーンの艤装を使っている…貴方達と何か関係があるのかしら?」
あの指揮官とは、アズールレーンにいる指揮官の事だ。
セイレーンはその質問に対してクスリと笑い、その質問に答える。
「関係あるにも何も…あれは私達の…そうね、弟と言った所かしら?」
「…そう。」
「あら?もう少し何か言っくるのかと思ったけど…?」
「それで充分よ。彼の艤装は私にも興味があるの。だから自分自身で調べる。だからあの同盟にも了承して、代わりにここに来るように仕向けたのよ。」
指揮官からアズールーレーンとの同盟に対して、重桜と鉄血はそれを了承した。しかし、鉄血には条件があった。そのひとつが指揮官が鉄血に来る事だった。
ビスマルクの本当の目的はここにあった。ビスマルクの目的は指揮官の艤装を調べる事だった。だからこそ、指揮官を鉄血に来る事を条件としたのだ。
「相変わらずね。」
「用が済んだならとっとと消えて。」
「うふふ…そうだ。明後日は面白い日になるかもしれないわよ?興味があるなら、この海域でね?」
セイレーンは地図を拝借して、指定の海域に印をつけると、そのまま闇に解けて消えてしまった。ビスマルクは印をつけられた地図を見る。
印をつけられた海域はなんの変哲も無い中立海域だった。
「面白い日?…オロチ計画の事かしら…」
ビスマルクの中に少しの好奇心と大きな疑惑があった。
しかし、その小さな好奇心が疑惑を蝕むように疑惑は段々薄れて行く事をビスマルクは実感していた。
「…使えるものは使う。私の理想と信念と為に…」
ビスマルクは席を立ち、自身の艤装の整備の為に場所を移した。その目には決意の炎を灯しながら…
_現時刻 アズールーレーンにて
「終わったか…」
パーティーはもうお開きとなり、辺りには静寂した夜が続いていた。俺は浜辺の近くにあったベンチに座り込んで、パーティーの終わりの余韻に浸っていた。目を瞑り、パーティーを楽しんでいた皆の姿を思い出す。
笑って、ご飯を食べて、踊って、楽しんだ。人間と変わりない姿を俺は色褪せる事無く、思い出す。
「おいおい、こんな所で寝たら風邪引くぞ?」
後ろからジンの声がして、後ろに振り返る。まだスーツ姿のジンが、ネクタイの結び目を下げて、一番上のボタンを外して、俺の隣に座る。
「いや〜やっぱこういうの俺には合わねぇわ。」
「確かに、窮屈そうにしていたもんな。」
「それな。」
ジンは笑って、ポケットからタバコを取り出した。タバコを一本箱から取り出し、口にしてからライターで火をつける。ジンがタバコを吸って、息を吐く。タバコ特有の臭いが感じられなかった。…やはり嗅覚も完全に失われていた。
「あ…すまん、タバコお前無理だったよな。」
「いや、大丈夫だ。」
ジンは俺を気を使ってタバコの火を直ぐに消そうとしたが、俺は気にしないように言った。ジンは申し訳なさそうに俺の言葉に甘えてタバコを吸い続けた。
「それにしてもお前、酒もタバコもしないよな?」
「…苦手なんだよ。」
あながち間違ってはないが、そもそも出来る年齢では無いからだ。
俺がロイヤルでマーレとして生きたのが10歳の時、【アズールーレーン指揮官選別学校】に入ったのが13歳の時で卒業がその4年後だ。つまり、俺は今17歳の未成年だ。
まぁ、マーレさんは現時点では23なので今はその年齢として生きている。そんな事言い出せるわけもなく。ただ苦手だとジンに伝えた。
「へ〜ロイヤルってなんかワインとかこう優雅に持って飲む奴なんだと…」
「ん〜どっちかと言うと紅茶かな…酒は多分鉄血の方が飲むと思う…」
「あ〜あそこの酒、好きなんだよな〜まぁ、レッドアクシズってだけで、輸入はされてないけどな。」
アズールーレーンとレッドアクシズ、この二つの陣営に別れた事によって、貿易もかなり限定されていた。だが、この対立ももうすぐで終わる…あと一人、エリザベスが認めてくれればの話だが…いや、それ以前に俺がここにいるのかどうか…
「ジン…ちょっと良いか?」
「なんだよ、改まって。」
ジンはタバコをポイ捨てせずに、ケースの中に押し込んだ。その後タバコを吸わずに俺の話を聞く。俺はその前にある手紙ををジンに渡す。
「なんだこれ?」
「もし、俺に何かあれば後のことは任せたいんだ。」
ジンは封の中身を見ると、そこには指揮官権限の譲渡と書かれた紙があった。ジンは困惑した。だが、これでいい。俺がいなくなっても、俺の次に成績が良かったジンなら、この先俺が居なくても安心できると踏んだからだ。
「それがあれば、俺がいなくなったらお前が指揮官だ。だから…」
しかし、ジンはその紙を破り捨ててしまう。破り捨てた紙は風に飛ばされてどこかに飛んでしまった。
「な!?何してるんだ!」
「それはこっちのセリフだ馬鹿野郎。」
静かな声だったが、存在感があった声だった。俺はそれに怯んで、言葉を続けられなかった。
「指揮官はお前だ。パーティーの時のKAN-SEN見ただろ。皆お前の事を本当に信じている。…大した奴だよ。本当に…」
ジンは右手で拳をつけて、それを俺の胸に当てた。少し力を入れて、まるで何かを訴えるように俺に拳を入れた。
「聞いたぜ、明日お前が何を言うのか知らないけどよ。お前はお前だ。それは忘れるなよ。」
「ジン…」
「…だぁぁぁぁぁ!やっぱこういうの俺には合わないわ!うわ、思い返すとすっげえ恥ずかしいなーおい!」
ジンは拳を引っ込めて、恥ずかしさを取り除くように頭を掻く。俺はその姿を見て、思わず笑ってしまった。
「おいおい笑うなよ〜!」
「あはは!いや、ごめんごめん。でもありがとうな。」
「そ、そうか…そんじゃ、俺は戻るわ。風邪引くなよ!」
「あぁ。またな。」
俺はジンを見えなくなるまで見送った後、浜辺から見える海を見た。
「俺は俺か…俺は…天城優海だ。…よし。」
自分自身を確認するように自分の名前を呟く。俺は最後になるかもしれない夜の海を見る。不安、怯え、恐怖が時間が刻まれるにつれて強くなったように感じたられた。だが、ジンのおかげ…いや、皆のおかげで少しはマシになった。俺は全ての覚悟を決めて、明日に備える。
そして、夜は終わり、朝は太陽と共に始まる…
母港の見回りの最中だった。いきなり目の前に野球のボールが俺の目の前を横切った。
空を切る様なボールはあと一歩前に出たら俺の頭が死んでいた恐怖を与えた。
ボールの正体は近くで野球をしていたKAN-SEN達の打球だった。
野球をしていたのは、ユニオンのメンバーだった。
どうやらここには野球をするグラウンドが無く、広場でやるしかないらしい。…後でグラウンド作れるようにしとくか。
息抜きとしてちょうど良いと判断して、俺は何故か一打席だけ野球をする事になった。
ピッチャーはボーグだった。ボーグの凄まじい投球は俺のバットにかすりもせずに二球続けてストライクをとらされた。
しかし、二球ならもう慣れた。続く三球目にはホームランとはいかなったが、レフトヒットにはなった。
ボーグは悔しそうにしていたが、また勝負を仕掛けると言ってきた。その再戦が楽しみだ。
もしもの話(R-18)を観測しますか?
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Yes
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NO