もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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前回と話をTwitterで投稿報告するの完全に忘れてました。申し訳ないです…
ついに40話でUAが80,000を突破!ご愛読に感謝です!


戦う理由と走馬灯と語る時と

第40話【戦う理由と走馬灯と語る時と】

 

最早過去を参照する事に意味は無い。

 

充分にこやつの心情は確認した。

 

だが分からない。何故こうも前へと進む?

 

何故生きようとする。

 

何故抗おうとする。

 

何故愛するKAN-SEN達と対立する。

 

別人に成りすまし、そいつとして生きて、”皆に会いたい”と言う目的は、拉致された事で達成出来たと言うのに、何故対立をする。

 

……これが人間なのか?

 

……いや、こやつは()()()()()()

 

だからなのか…?人とは戦いから逃れられない…いや、戦いそのものを求める生き物だ。それが人が望んだロマンの筈だ。

 

…観察を続けるとしよう。最も、もうすぐ我は目を覚ますのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…よし、行くか。」

 

ついにこの時がやって来た。俺の全てをKAN-SEN達とジン達に話す時がやって来た。俺の今後を左右する朝が太陽と共にやって来た。

まるで俺の心境を表しているかのように、いつも来ている軍服が今日はやけに重く感じた。少し時間をかけて、ようやく軍服に着替えた俺はドアの前に一旦足を止めた。

このドアを開けたらもう後戻りは出来ない気がした。

だから、一度部屋の中をよく見る事にした。忘れ物のチェックとかそんなのでは無く、ただもう一度KAN-SEN達との思い出を振り返っておきたいからだ。

 

「それにしても、なんか置物が増えたな…」

 

まず最初に手に取ったのはユニコーンから貰った、海のスノードームだ。

俺が重桜に拉致されて帰ってきた時には、俺は巻き込まれた戦闘の影響で気を失っていた。何とか復帰した俺に、そのお祝いにユニコーンから貰ったのがこれだ。しかもいきなり抱きつかれたからびっくりしたな…

他にもある。

ポートランドから貰った布教用のインディアナポリスのプロマイド。

ボーグから貰った野球ボール。

クリーブランドから貰った盆栽。

ベルファストから貰ったティーカップ。

シグニット、クレセント、コメット達から貰った、サイン色紙。

ジャベリンから貰った兎のぬいぐるみ。

 

「こんな事もあったなぁ…」

 

思い出を振り返るのが楽しくなり、夢中で部屋にあるものに手をつけて、その事を思い出していた。そのせいで、いつの間にか流していた涙に気付かぬまま。

 

「あれ?何で俺…泣いてるんだ…?」

 

いつもの間にか流していた涙を拭けども拭けども、滝のように止まらない涙に俺は諦めて、涙を床に落とし続けた。この涙はもしかしたら最初から流していたのかもしれない。何故だか分からない涙に俺は為す術もなく、泣き続けた。

 

「おかしいな…止まらないな…これ。」

 

もしも誰かが来たらまずい。俺は出した物を丁寧に片付け、これ以上は思い出を振り替えない事にした。これ以上思い出に浸ったら、これからやる事を躊躇うような…そんな気がしたからだ。涙がない事を確認して、ドアノブに手をかける。ドアノブを下げ、少し重く感じドアを引いて、廊下に出る。廊下を出て少し歩くと、腹の中が空のような感覚を感じた。

 

「…まずは食堂かな。」

 

味が感じられなくとも腹は減る。空腹をこらえるように腹をさすり、俺はあの人を出迎える前に少し朝食をとることにした。

廊下の階段を降りて、食堂にある一階に着く手前で何やらザワつく声が聞こえた。

 

「いい加減離してくれ!おい、聞いているのか!?」

 

「あれは…エンタープライズとベルファスト?」

 

ベルファストがエンタープライズを手を引いて何処かに向かおうとしていた姿が見えた。エンタープライズが言った言葉からして、ベルファストが強引に何処かに連れていこうとしてるのが察しられる。あの方向は、食堂か?一体どうするつもりなんだ?

 

「あ、指揮官!おはようございます!」

 

一階の廊下から、俺に挨拶をする声がしたので、声の主を探す。声からしてジャベリンだが、どこにいるのか分からない。階段を降りて探したら、少し紫ががった熊耳のパーカーを被っていて、一瞬誰だが分からなかった。

ジャベリンの他にも、ユニコーンと綾波がいた。…ラフィーの姿が見当たらないが?

 

「あれ?ラフィーは?」

 

「多分、また寝てるかと…あ、もう来ましたよ。」

 

「ふぁぁ…眠い…」

 

眠たそうなラフィーがジャベリン達の所に瞼を擦りながら、やって来た。どうやらまだ寝起きの段階なのだろう。と、いけない。今はベルファスト達の方だ。

 

「なぁ、ベルファストとエンタープライズがさっき食堂がある方向に行ったんだけど…何かあったのか?」

 

「それが分からないんですよ。私もあんなベルファストさんは初めてで…」

 

「あんな顔…?」

 

あんな顔と言われても俺が見たのはベルファストとエンタープライズが通り過ぎたのを見ただけで顔はよく見えなかったから、俺にはよく分からずジャベリンに聞くように疑問形で話す。ジャベリンは頭を傾げて、俺に答えた。

 

「なんだか怒ってるような感じでした。あんなベルファストさんは見た事が無いですよ。多分食堂に行ったと思うんですけど…」

 

「怒ってた?それは何で…」

 

今日は結構大事な日なのにここで何か喧嘩でもすれば少し困る。

 

「分かった。じゃあ俺もそっちに行くよ、ありがとう。」

 

俺はジャベリンに礼をしてから、ベルファストとエンタープライズが行った食堂に足を向かう。と言っても、最初から食堂には行こうとしてたんだが。

少し小刻みに走って食堂に着くと、なんだか変な人だかりが出来ていた。

 

「あ、指揮官!大変大変!修羅場だよ!修羅場!」

 

「修羅場?」

 

人だかりの中にいたサンディエゴが、指を指して修羅場と連呼していた。サンディエゴが指した方向にはエンタープライズとベルファストが向かい合って座っていて、エンタープライズの前には、今日の朝食のメニューだろうか、プレートが置かれていた。

俺はジャベリンが言っていた事を思い出して、ベルファストの顔を見る。じっと目を細めてエンタープライズの事を見ている姿はここからでも見て取れた。

 

「食べなさい。」

 

「いや…しかし」

 

「食べなさい。」

「は…はい。」

 

強めの命令口調でユニオンの英雄を黙らせる程の圧がここからでも届く。エンタープライズは些細の抵抗なのか、おかずや主食には手をつけず、デザートのプリンから手に取って食べた。

 

「ご主人様もこちらに来てください。」

 

「え、なんでバレてるの?」

 

俺は突然の指名に呆気を取られ、そのまま硬直した。

周りのKAN-SEN達からは何やら心配そうな目で俺を見ていた。まぁ、あんなベルファストに呼ばれたからこっちもかなりの不安がある。というか怖い。俺は謎の緊張感を持ちながら、エンタープライズとベルファストの所に歩いていく。エンタープライズ達がいる机に近づく度に心臓の鼓動が早くなるのが感じられる。ようやく、机にたどり着くと、エンタープライズとベルファストの隣の席が空いていた為、どちらに座ればいいか困ってしまう。

 

「ご主人様、どうぞ私の隣へ。」

 

「あ…はい。」

 

今のベルファストには逆らえない威圧感に負け、俺は言う通りにベルファストの隣に座る。

恐る恐るベルファストとエンタープライズを交互に見ると、エンタープライズと目があってしまい、エンタープライズは気まずそうに俺から目を背ける。

 

「なぁ…ベルファスト。これは一体…」

 

「それは御本人様から聞いた方がよろしいでしょう。」

 

御本人と言うのはエンタープライズの事だろう。しかし、当のエンタープライズが頑なに俺と目合わせないので話してくれる様子も無い。

 

「別に話す理由なんて…」

 

「話しなさい。」

 

「……はい。」

 

しかし、今のベルファストの前にいくらエンタープライズでも言う事を聞かざるおえなかった。エンタープライズは食べ終わったプリンをプレートに戻し、不本意ながらと思わせるようなため息をついてから事の経緯を話してくれた。

 

「…ついさっきの事だ。」

 

 

 

 

 

_数十分前…

 

私は目が覚めると、奇妙な感覚に襲われた。

まるで砂漠にいるようにと思わせるような、熱での息苦しさや、体が重く、壁に持たれつかないと歩けない程だった。私は耐えきれずに、廊下で膝をついてしまった。

歩こうとして立ち上がろうとしても体が何かに押し潰されていく感覚と目眩のせいで立ち上がれない。下に向き続けるとまた更にこの感覚に潰されそうな気がしたから、前を見るとそこには一人佇んでいた。ボロボロの黒のマントに短い灰色の髪をした人がそこにいた。

 

「何なんだお前は!」

 

こちらの声に気づいて…いや、最初から気付いていたのかは分からないが、彼女はこちらに振り向いた。その目はまるで何かに絶望したような死んだ目立った。

 

「…冒険心を胸に大海原へと乗り出した人類は、やがて海の覇権を競い相争うようになった。」

 

こちらの質問を一切無視して突然と語り出した。そして、突如として彼女の後ろから炎が廊下を這うように燃え盛った。炎は私と彼女を囲むように広がり、廊下を燃やした。

 

「海の歴史は戦いの歴史だ。”闘争”それこそが人が求めたものだ。これが人の望んでいるロマン!」

 

「何を馬鹿な事を!」

 

彼女の言ったことは確かに事実だ。確かに人類は海の覇権を争い、人類同士戦ってきた。そして、私はそれを叶える為の兵器だ。だが違う、そんな物が人が望んでいる筈がない。彼女は私の考えが分かっているのか嘲笑うかのように不気味に尖った歯を見せて笑った。

その態度に苛立ち、近づこうにも炎が邪魔で近づけずにいた。すると、私の横に1弁の桜の花びらが落ちた。

ここは屋内だ。桜なんて落ちるわけが無いが、事実私はそれを見た。またもう一枚、今度は私と彼女を遮るように落ちると、瞬間。彼女の姿が変わった。

髪は短い灰色から長い栗色に狐のような耳が生え、服も赤と紺色の和服を着ていた。間違いなくそれは重桜のKAN-SENであり、私がいつの日か見た者だった。

確信した。彼女は何かが違うと直感で感じた。

 

「お前違うな。さっきの姿も仮初め(かりそ)のもの。お前の正体はもっとおぞましい物だ。」

 

「いいえ本物よ。私は人の思いを映し出す鏡なのだから。」

 

「何を…くっ。」

 

突如の目眩で最早立ってすら居られず、また膝をついてしまう。

 

「我はオロチ。人々の思いから生まれた一柱の怪物だ。」

 

「待て…!」

 

自分をオロチと名乗ったものは炎と共に消えてしまい。私は倒れてしまった。このままこの炎に焼かれてしまうのにも関わらず私は意識を失った…

 

 

「…あとは任せて下さい。」

 

「では、よろしくお願いします。」

 

ヴェスタル…?彼女の話し声で私は再び目が覚める。そしてもう一人は…私の事を変に付きまとっているメイドのベルファストだ。私は体を起こし、状況を把握する。

ここは私の部屋で廊下に焼け焦げた臭いもしない。

さっきのは夢か幻なのだろうか…?

目が覚めた私に気づき、ベルファストはベットの横まで歩く。

 

「私は…?」

 

「廊下で倒れていたんですよ?全く、不摂生な生活を送るからそのような目にあうのです。」

 

「やはり今のは夢…?」

 

だが夢にしてはどうにもあの感覚はあまりにも現実的だった。炎の熱、目眩の苦しさ、体の重さがまるで現実のような感覚だった。…私は最早異常だ。

私はベルファストから離れようと部屋を出るために自分のコートをクローゼットから取り出そうと、ベットから起き上がる。

ベルファストはそんな私を止めるように手を伸ばすが、それを私は無視するように無理やり突き放した。

 

「もう私に構うな。」

 

差し伸べられた手を遮り、クローゼットから同じコートをその中から一着出して羽織る。

 

「私は明らかに異常だ。最早私に兵器の価値は無い。戦えない私には…もう構うな。」

 

そうだ。どこからなのか私にもう兵器の価値は無い。それが最善なのに、どうして指揮官は私の事を気にかけるんだ。…何故、私は今指揮官の事を思い出した…?それを振り払うように首を横に振って、部屋から出ようとしたがベルファストが私の道を遮った。

 

「ふふっ…」

 

突然彼女は笑い出したが、何処か圧を感じたられた。私はその圧に何故か圧倒されてしまう。ベルファストは急に私のネクタイを力強く引っ張り、そのままネクタイを引っ張りながら私を何処かに連れていった。

 

 

_時は戻り現在…

 

「そして私は今こうしてベルファストに朝食をとらされているところだ。」

 

「ちゃんとした食事を取らないから暗い考えばかり思い浮かぶのです。」

 

まるで母のような雰囲気を出しているベルファストだが、俺はエンタープライズが会ったある人物の事について考えていた。栗色の長髪に、赤と紺色の和服を来ていた重桜のKAN-SEN…思い当たる節しか無かったが、念の為にエンタープライズに問いかける。

 

「なぁ、エンタープライズ。その重桜KAN-SEN…和傘を持っていなかったか?」

 

「え…あ、あぁ。持っていたぞ。…指揮官はその人に心当たりがあるのか?」

 

「あると言うか…今日それを話す。」

 

そうだ。今日俺は俺自身の事を全てKAN-SEN達に告白する。勿論それは俺が重桜にいた事も全てだ。つまり、天城さんの事も当然話す。

しかし…何故オロチは天城さんの姿をしたんだ?

人の思いから生まれた物、人の思いを映し出す鏡、それがオロチ。

まさかオロチ計画は本当に天城さんを生き返らせるの…?

確信は無かったが、オロチ計画は赤木さんと加賀さんの独断の計画だとしたら動機は充分だ。だがそれが本当に出来るのか…?頭の中で議論が次々と出る中、その議論は一人の手によって中断せずにいられなかった。

俺の左肩が誰かに叩かれた感覚で俺は考え事をやめて振り返るとそこにはジン達四人がいた。

 

「こんな所にいたのか。もうあの人来るからそろそろ出迎えた方がいいんじゃないか?」

 

ジンが言ったあの人とはオセアンさんの事だ。オセアンさんはアズールーレーンの上層部の一人であり、マーレさんのお父さん…つまりは九代目テネリタスの当主だ。

腕時計で時間を見ると、確かに約束の時間が迫っていた。

 

「え?あ、本当だ。…ごめん先に行っててくれ。直ぐに行く。」

 

「なら、私も残るわ。」

 

「おいおいどうしたサラ?」

 

急にサラが残ると言い出し、俺含むジン達も戸惑いが隠せない。

 

「意外だな…てっきりネージュが残ると思ったが…」

 

「ちょっとね…」

 

サラはエンタープライズの顔をチラッと見た。どうやらエンタープライズの事が気になるらしいが…?

ジンはサラと顔を見合わせると分かったと言って、先に皆で外に出た。

 

「良いのか?相手は貴方の父親でアズールーレーンの上層部の一人だろう。」

 

「まぁ、確かに大事だけど俺はこっちもそれ以上に大事だから。」

 

「私も、マーレと同じよ。」

オロチやサラのの事はさておき、俺はベルファストの考えが分かった気がした。ベルファストたエンタープライズをどうにかしたいと思って、まずは食生活からただそうと強引にここに来させたのだろう。だが、それは意外にもエンタープライズに効いて、プリンは食べ終わり、次はサラダを口にしている。

 

「…何故私に構うんだ。私にもう価値なんて…」

 

「あるさ。」

 

「…え?」

 

俺の言葉にエンタープライズは驚き、食べる手を止めた。エンタープライズは言葉の続きを気にしていたが、俺とエンタープライズの関係からして俺が言うより、ベルファストが言った方がいいと判断し、あとはベルファストに任せるように顔を見た。ベルファストも俺の考えを察して、俺の代弁をしてくれた。

 

「エンタープライズ様は戦いを疎んじております。」

 

「それは…私が海を恐れているから。」

 

「それでも貴方は戦い続けました。何故ですか?」

 

「それは…私が戦うためだけの存在だから…」

 

エンタープライズの主張は変わらなかった。ただ戦う為の存在だと押し切った。これでは何も変わらない。

俺の時と何も変わらなかった。しかしそれもベルファストの次の一言で変わる。

 

「そんな安直な理由から逃げないで下さい。」

 

「逃げる…?」

 

エンタープライズは俺の方に顔を向けた。エンタープライズがこのように言われるのは二度目だからだろうか?

一度目は俺から、二度目はさっきのベルファストからだ。エンタープライズは恐らく、その言葉で俺に言われた事を思い出したのだろう。俺もつられてあの時の事を思い出した。まぁ、思い出したくは無い苦い思い出だが…

 

「…情けないわね。」

 

「何…?」

 

突然サラがエンタープライズの隣まで近づくと、エンタープライズの頬を包むように両手で挟んで、サラと目を合わせるように顔を向けさせた。

 

「むぐっ!?な、何をする!?」

 

「いつまでそうしてるつもりなの!ユニオンの英雄ならもっとしっかりしなさい!逃げ続けるなんて情けないわよ!」

 

サラは目と鼻の先までエンタープライズに顔を近づけて、説教するようにエンタープライズを叱りつける。

おいおい、相手は貴方の国の英雄だよ?そんな英雄を説教するとは…

 

「そうです。エンタープライズ様は自身と向き合うべきです!」

 

「ベルファスト!?」

 

ベルファストもサラについて行くように一緒に追い討ちをかけるようにエンタープライズにづけづけと言葉を放った。

 

「な…な、何なんだ二人とも!?」

 

流石のエンタープライズも困惑し、二人の追い打ちはそれでも続いた。

 

「ふ、二人とも一旦落ち着けって…」

 

「マーレは黙ってて!」

 

「は…はいぃ。」

 

サラの迫力に圧倒され、俺は情けない声でそのまま引いてしまう。

 

「と・に・か・く!いつまでもウジウジしてるのって話!貴方がいつまでもそんなんじゃ皆不安になるわよ!」

 

「私だって好きで逃げてる訳じゃ無い!」

 

エンタープライズは怒りに任せて机を強く叩いて叫んだ。机の上にあったプレートは少し浮き、綺麗に盛られた皿が少し崩れた。エンタープライズの叫びが辺りを沈黙さした。

 

「私は海が怖いんだ!海は私の戦う場所で、いつ私や皆を海の底へと誘う恐怖がいつも私に纏わりつく!私のせいでヨークタウン姉さんや挙句の果てに私自身が皆を撃ってしまい…傷つけた!」

 

エンタープライズは自身が感じてる恐怖を俯いて叫んだ。それは、紛れもなくエンタープライズの本心なのだろう。いつ終わるか分からない戦争と命を失うかもしれない恐怖をエンタープライズはずっと感じていた。

いや、戦ってるKAN-SEN達もそれに関しては感じてるはずだ。だがそれは仲間がいるからだ。仲間を信頼して寄り添うからこそ、恐怖に立ち向かえる。

だがエンタープライズはそういう訳にはいかなかったのだろう。英雄として、決して弱みを見せず、ただ強く見せなければならない。エンタープライズは同時に英雄としての重みとも戦っていたのだ。

そしてこの前の戦闘で俺や仲間を撃った事が引き金となり、エンタープライズは恐怖に呑まれた。

 

「エンタープライズ…」

 

サラはエンタープライズの名を呼んだまま何も言えなかった。自身で戦った事が無いサラにエンタープライズに何かを言う資格は無いと自身で分かっているのだ。

 

「…ご主人様。」

 

「うん?」

 

ベルファストは俺の事を呼んで、そのまま俺の目を見た。まるで、ここから先は俺にしか踏み込めないと言わんばかりにじっと見つめる。

俺は俯いたままのエンタープライズを見ると、これまでのエンタープライズとの衝突を思い出す。

エンタープライズとはこれまで何度も衝突した。自分が兵器だけの存在だと主張するエンタープライズを俺は否定して、それでも彼女は自身を兵器と言い張って、俺は何度も否定し続けた。それもこれで終わりになるかもしれないと感じた俺は、席を立ってエンタープライズに近づくと、片膝をついてエンタープライズと目線を合わせるようにした。

 

「…エンタープライズ。俺さ、ある人に指揮官は怖い思いをしてるKAN-SEN達を怖い思いをしないように、一緒に傍に居られる人の事って言ったんだ。」

 

「……」

 

エンタープライズやこの場にいる全員が固唾を飲んで、俺の話を聞く。

 

「そういう意味では、俺は指揮官には相応しくないのかもしれない…現にお前はここまで苦しんで来たのに、気づいてあげられなくてさ…」

 

もう少し早く気づいてあげれば、こんな事にはならなかっただろう。…いや、仮気づいたとしてもエンタープライズが背負ってる英雄の重みやプライドが認める事を許さなかっただろう。それでも自分の不甲斐なさが恨めしく、自分に対しての行き場の無い怒りを沈めるように左手を無意識に強く握る。

 

「…でもお前は、それでも誰かの為に戦ってきた。東煌のKAN-SEN達を誰よりも早く助けたり、俺を助けた時だって、お前が居ないと結構やばかった。そこにお前の戦う意味があるんじゃないか?」

 

「あ…」

 

エンタープライズは東煌のKAN-SENを助けた時と、俺を救出したあの時を思い出した。

東煌のKAN-SENからも真っ先にエンタープライズが駆けつけて助けてくれたと言っていたし、俺の時だって誰よりも早く俺の所に来てくれた。

 

「私は…」

 

エンタープライズは考え込んだのかそれ以上は言わなかったが、戦う為の兵器だとは言わなかった。

いつもならそう言ってる筈なのに、言わなかった事はかなりの進展だ。

 

「…!?ち、ちょっとマーレ…!」

 

「ん?どうしたサラ?」

 

サラは俺の肩を素早く叩いた。サラの方に顔を向けると、何やら焦った表示をしていた。

 

「あ、あの人って…まさか…」

 

サラは物陰の方に目を向けると、あの人と言った。

…何となく予想は出来た後に俺はそっと物陰の方に顔を向ける。そこには多数のKAN-SEN達とジン、リフォル、ネージュ、そして…一人の男の人がいた。

高貴な紳士服を着こなし、貫禄ある顎髭を生やした男が物陰からまるで自身の子供の成長を見守るようにこっそりと陰から見ていた。

 

「お…オセアンさん!?」

 

「あ…バレちゃいましたか。」

 

名前を呼ばれたオセアンさんは物陰から顔を出して、小さく笑いながらこちらに近づいた。

 

「いや〜迎えに居なかったので何かあったのかと心配しましたが、指揮官としての責務を全うしてるようで何よりです。」

 

「も、申し訳ないです。」

 

「良いんですよ。」

 

オセアンさんは笑いながら許したが、仮にもアズールレーンの上層部の人だ。そんな人を放ったらかしにした事実は残っているので、その事実がかなり俺を苦しませる。サラもそう思っているのか額から冷や汗が流れて言っている。

 

「…貴方がエンタープライズですね。私はアズールレーン上層部所属のオセアン・テネリタスです。」

 

「…ユニオン所属、ヨークタウン級二番艦のエンタープライズです。」

 

エンタープライズとオセアンさんは握手を交わしながら互いに挨拶をした。

 

「して、そこのメイドさんは…?」

 

「失礼致しました。私はロイヤルネイビー所属、エディンバラ級二番艦、メイドのベルファストと申します。僭越ながらロイヤルメイド隊のメイド長をお任せされております。」

 

ベルファストは丁寧な言葉遣いとカーテシーをして、オセアンさんに挨拶をした。

 

「これはご丁寧にどうも。…良い人達ですね。」

 

オセアンさんは俺を見てそう言った。俺は小さく笑いながら頷いて答えた。

本当にここのKAN-SEN達は良い人達ばかりだった。

重桜にも負けないぐらいに…

 

「オセアン様。お飲み物をお持ち致しますので、御要望はありますでしょうか?」

 

「いえ、大丈夫です。…マーレ。そろそろじゃないですか?」

 

「…そうですね。」

 

オセアンさんに言われ、俺は気持ちの整理をつける。

いよいよこの後、俺の全てを話し、俺の命運が決まる。

 

「じゃあこれから俺は全てを話す。テレビや通信機器とかで、話を聞くことが出来るから。」

 

「ご主人様…」

 

ベルファストが俺を引き留めるように俺の事を呼び止める。でも顔は見せなかった。多分今顔を見ると、気持ちが揺らぎそうだからだ。

 

「…このベルファスト。ご主人様の事を信じておりますから。」

 

「…ありがとう。オセアンさん、サラ。俺と一緒に執務室に。」

 

「分かりました。」

「分かったわ。」

 

俺は二人を連れて執務室へと足を運ぶ。その前にジンたちも一緒に執務室へと連れていくために物陰に隠れていたジンの所に近づく。

 

「…いよいよか。結構真面目な話って訳か。」

 

「まぁ、マーレの命運がかかる話だからね。私達も覚悟していた方が良いかもね。」

 

「……」

 

ネージュだけは黙って俺の方を見ていた。ネージュだけは俺の事を分かっているのだ。俺がマーレではない事を…

 

「よし、じゃあ行くよ。着いてきて。」

 

俺はジン達を連れて執務室へと行く。途中でKAN-SEN達と会い、会う度に信じてると声をかけられる。そして、そのKAN-SENと過ごした日がまるで走馬灯のように蘇る。

ようやく執務室にたどり着き、重いドアを開ける。

そこには何時もは書類の山がある机も、今は何も無く、その机を移すように、前にカメラがある。そしてそのカメラを調整して準備をしたのが明石だ。

 

「どうだ明石。」

 

「ばっちりにゃ。これでこの基地全てのテレビや通信機器に映像が共有出来るにゃ。勿論、音声も高音質でにゃ!」

 

流石明石だ。用意周到な準備でこれで何時でも始められる。

 

「おいマーレ…あれ、重桜のKAN-SENか?」

 

ジンは明石に目を向けると、即座に重桜のKAN-SENだと気づいた。明石もその視線に気づいたのか顔を背けた。

 

「いや、明石は重桜から逃げてきたんだ。今では俺たちの仲間だ。」

 

「…そうか。」

 

「じ、じゃあ明石はこれで失礼するのにゃ!」

 

明石は逃げるようにこの執務室から出ていった。やはりアズールレーンとレッドアクシズの壁はまだある。

だが、それもあと少しで終わる…しかし今はこっちだ。

俺はジン達を近くのテーブルの所に誘導してソファーに座らせた後にカメラの前に立つ。

 

「確かボタンを押して十秒後には画面が共有されるんだったな…」

 

「あの…良ければ私が押しましょうか?」

 

ネージュがソファーから立って、ボタンを押すと言ってくれた。

 

「あ、じゃあお願い。」

 

「はい。マーレ君のタイミングで押しますから。」

 

ネージュの言葉に甘え、俺はカメラのボタンの位置をネージュに教え、執務室にある机に座った。

 

「…よし良いよ。」

 

ネージュは俺の合図でボタンを押した。タイマーが起動したのが分かるように、カメラから小さな赤い光が点滅した。

一秒事に俺はKAN-SEN達の思い出を巡る。目まぐるしい程の思い出が、この十秒という短い時間で終わらせるように頭の中で駆け巡る。

息を整い、姿勢を正し、カメラに目線を向ける。

赤い光の点滅は早くなり、最後の一秒が終わり、カメラの起動音が鳴った…

 

「ついにこの日が来た。今から俺の全てを話す…

そして話した後に…決めてくれ。俺を指揮官として見るか、それとも敵として見るか…敵として見るのを一人でもいたら、俺はそいつに討たれる…勿論俺は責めたりしない。だから自分の心や本心に従って決めてくれ。」

 

 

 

 

 

 

基地にいるKAN-SEN達全員はテレビやタブレット、或いは通信機器で指揮官の声に耳をすませた。

皆は緊張感に支配され、固唾を飲んで指揮官の話を聞く。

 

「…指揮官。」

 

「ついに指揮官の正体が…」

 

「でも、私達は指揮官を信じてるから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_現時刻 アズールレーン基地近くの海域

 

「始まったか…」

 

あいつの全てが今まさに語られようとしていた。今KAN-SEN達は固唾を飲んで、あいつの話に集中しているのだろう。

 

「ふぁぁ〜…たく…いつまで待ってれば良いんだよ…」

 

欠伸をしながら俺の隣に来たのは、セイレーンの下層端末であるピュリファィヤーだ。退屈そうに体を動かし、また一つ欠伸をする。

 

「あいつの話が終わってからだ。それまで待て。」

 

「へいへい…それにしても全てを話すね…あいつ自身、まだ自分の事知らないくせにさ…あっはっは!」

 

ピュリファィヤーはあいつの事を滑稽に思ったのかそのまま笑い転げた。

 

「まぁ、その時は俺が補足を付け足してやる…それと分かっていると思うが…」

 

「はいはい!あんたはあいつの、私はもう一個の方だろ?分かってるよ!でも…暴れさせてもらうよ?欲求不満なんだから…!」

 

「…好きにしろ。」

 

こいつの性格には飽き飽きし、俺はあいつの話を終わるのを待つ。

 

「さぁ…真実が分かる時だ。果たしてお前はこの真実に耐えれるか…」

 

 




…これが俺の書く最後の一ページかもしれない。
これまで沢山、辛いことや苦しい事があった。
でも、それに負けないぐらい、良い事も沢山あった。
俺の人生はKAN-SEN達によって作られたと言っても過言では無いほどに。
…悔いは無いとは言いきれない。せめて重桜の皆とまたもう一度昔のように過ごしたい。
…でも、もし死んだら天城さんに会えるかな…?
いや、止めよう…最後の夜。最後の晩餐かもしれないパーティーは最高で、最後に相応しかった。
…ありがとう。

もしもの話(R-18)を観測しますか?

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