もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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どうもついに指揮官の正体が分かる第41話となります。
今まで謎だった指揮官の正体がついに明らかになります。
豹変する指揮官や艤装を使う指揮官等、今までの伏線がほとんど明らかになります。



I was you

第41話【I was you】

 

まずは…俺の昔の話をしようか。

 

昔俺はただ普通に暮らしていた人の一人だ。

 

学校に行って友達と話したり、家族と普通に過ごしていた。

 

でもそれは突然消え去った。

 

突然だった。島の外から一筋の光が街を破壊した。

光は次々と街を破壊して、人々を呑み込むように消した。家族も友達もその光に巻き込まれて消え去った。

俺はどうする事も出来ずにただ逃げた。助けを求める声を無視して、聞こえなくする為に耳を塞いだ。

息が血のような味になるまで、必死に走り続けた。

 

次は自分かもしれない恐怖と隣り合わせで何とか生き延びたけど、結局ダメだった。

 

俺は光の爆発によって海に叩きつけられるように海に落ちて沈んで行った。だけど俺はこの時、これで苦しまずに済むし、また母さん達に会えるかなって思った。

でも、俺は死ななかった。

 

目が覚めるとそこは見た事無い部屋の天井が最初に映った。木で造られた天井に畳、そして柔らかい布団に俺はくるまっていた。

そして、そこで出会ったのが天城さん、赤城さん、加賀さんだ。

 

ご存知の通り重桜のKAN-SENだ。そう。俺は重桜に助けられたんだ。一人聞きなれない名前の人がいるだろうが、その天城さんが俺にとっては母親代わりの人だ。

 

天城さんは俺に沢山の事を教えてくれた。知識、世界の事、歴史…まぁ、ちょっと授業はキツかったけど、それでも楽しい時間だったよ。…今の俺がいるのは天城さんのお陰だ。

 

勿論天城さんだけじゃない。赤城さんと加賀さんも俺にとって姉さん見たいな人だ。

 

赤城さんはとにかく過保護だったな…結構俺の事を甘やかしたりして…魚の骨とか俺が食べる前に綺麗に全部取ってくれたりとか、いつもお菓子とか買ってくれたりした。

 

けどその分、加賀さんがちょっと厳しかったかな。私や赤城に甘えるなとか自分でやれとか厳しい所もあったんだけど、優しい所もあるんだ。寝ている時は自分の尻尾で俺を暖めてくれたり、お稲荷を握ってくれたりしたんだ。

 

この人達だけじゃない。他にもいるんだ。

 

俺にとってはそうだな…近所のお姉さんでありながら師匠見たいな人達かな…。愛宕さんと高雄さんって言う人がいるんだ。その人達から剣術や武術を教えてもらったんだ。特に用がない日とかはその人達の所に行って鍛錬してもらったよ。

 

それと三笠さん。あの人は任務とかで、中々会えなかったけど、会っ日にはまるで俺を孫のように甘やかしてよ。本人に言ったら怒られるかもしれないけど、俺にとってはおばぁちゃん見たいな人。

 

まだまだいるよ。何とあの重桜代表である、長門様と日記を交換してる仲でもあったんだ。俺が日記を書いてるのはこれが原点なんだ。

長門様は訳があって中々外に出られなかったから、俺がこっそり屋敷に忍び込んで俺が過ごした日を日記に書いて渡していたんだ。文字だけでも外の世界を知ってもらいから書いたのが始まりだった。長門様はとても興味を持ってくれて、俺ももっと面白い物を体験しようと重桜を探索したのはいい思い出だよ。

 

でもこんな日常は突然終わりを迎えたんだ。

二度目冬、俺がそこで暮らしたのが冬だったから…もう二年目で俺が9歳だった頃…天城さんは居なくなった。

皆詳しい事を話してくれなかったから今でも詳しい理由は分からない。でも俺にとっては居なくなった事実が何よりも応えた。

俺はまるで抜け殻のようになったよ。たった二年でも俺にとっては母さんのような存在だから、また母さんを失った悲しみが俺を押しつぶす様に襲った。

見えるものは全部灰色に見えて、聞こえてくる声も音も何故か遠く感じた。

 

そんな時だ、加賀さんからある手紙を渡されたんだ。

それは天城さんが遺してくれた手紙だ。その手紙があったから今の俺がいる。前に進むことが出来た。

今もその手紙から書かれた思いを糧にして来た。

 

それから一年、また悲劇が起きた。

突然謎の敵が重桜を攻めた。敵は単騎で黒ローブに左だけの艤装をしていた…察しがついてると思うが襲って来たのはテンペストだ。

テンペストは無差別に重桜を攻撃した。そして俺はそれに巻き込まれて、昔のように海に落ちていった。

今度こそ死ぬ。でも俺は助かった。…それは何でかはよく分からない。気が付くと俺は…オセアンさんに助けられていた。

 

知らない飾り、知らない壁に知らない天井。明らかに重桜とは造りが違ったそこは、ロイヤルだった。

その時、丁度海域の調査をしていた途中で俺を見つけて保護してくれた。

そしてこれが俺の転機でもあった。

 

…察していると思うが俺はロイヤルの出身ではなく、重桜の出身だ。そして、丁度その時重桜と鉄血がアズールレーンから脱退して、レッドアクシズという勢力となった。

重桜の出身である俺は、レッドアクシズのスパイとして疑われる可能性があった。最悪、出身がバレたらそのまま俺は処刑される…そこでオセアンさんがある提案をした。…それは……

 

オセアンさんの息子であり、十代目テネリタスのマーレ・テネリタスになることだった。

俺はここから皆に嘘を…騙し続けた。

正直、それは辛いものだった。重桜とは違う生活やマーレさんの性格や口調を真似たり、そのマーレさんになる為に自分や他人を欺く生活は自分自身を見失いかけそうだった。

自分を見失いなわないように、自分の本当の名前を夜呟いたり、重桜のKAN-SEN達の名前を読んだり、日記で昔の事を思い出すようにして書いたりもした。

でもそれが仇となって重桜の皆に会いたいって気持ちだけが強くなった。でも会えない。もしかしたらずっと…

そんな時、俺は天城さんに指揮官という存在を教えてもらった事を思い出した。指揮官になればまた会えるかもしれないそう思って俺は指揮官になると決意した。

 

そこでオセアンさんに指揮官になるにはどうすれば良いか尋ねた。オセアンさんは近々アズールレーンの指揮官を決める【アズールレーン指揮官選別学校】が3年後に開設されると知った。そこで最優秀で卒業すれば指揮官になれると言う。

 

だから俺はその三年間、自身の力を高めた。オセアンさん…というかテネリタスが所有している無人島でサバイバルを行って身体能力を鍛えたり、オセアンさんから海上戦術を学んだりした。

サバイバルは死ぬ思いを何度もしたし、勉強も敵を倒すためだけの学習をしてると思う、気が滅入った。

でもそれでも会いたい気持ちが勝ち、天城さんが遺したあの手紙を糧にして乗り越えてきた。

そして、俺は【アズールレーン指揮官選別学校】に入ることが出来た。学校だから入学試験という物があったからね。

 

…でもここから始まるんだ。【アズールレーン指揮官選別学校】は四年間の成績によって指揮官を決める。入ったからって終わりじゃない。指揮官に成りたい人は大勢いた。指揮官になれば、名声とか得られるからそれ目当ての奴がほとんどだったけど、本気で世界を救おうとし

てる人だっていた。そんな人と比べると俺なんか重桜の皆に会いたいからって言う理由で指揮官になったんだ。

しかも重桜とは敵対の関係…凄く申し訳なかったよ。

 

ここから四年間、試験を通った人達と競い合う訳だから、正直皆とは仲が良かったとは言えなかった。

特に今の俺は英雄の一族だったのと、戦闘での性格の豹変でかなり距離を置かれたよ。

でもそれでもジン達はそんな俺に絡んでくれたな。

数少ない良い思い出はほとんどジン達との思い出だよ。

…そして四年が経った。俺が今指揮官って事はそういうこと。俺は最優秀の成績を出して、指揮官になった。

 

…これが俺の昔。そして俺はマーレ・テネリタスなんて名前じゃない。ロイヤルの出身でも無い。

俺の本当の名前は…【天城優海】重桜出身の者だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官が…重桜の出身…?」

 

「それって指揮官は敵…?」

 

指揮官の過去を聞いたKAN-SEN達は困惑や絶句が溢れていた。自分たちが知ってる情報が全て違っていたのだから。名前、出身、何もかも全てが嘘だった。

それを知ったKAN-SEN達はこれから自分達に迫られる選択に迷っていた。

そして、それはKAN-SEN達では無くジン達もそうだった。

 

 

 

 

 

 

ー現時刻 アズールレーン基地 執務室

 

「…ちょっと待て…お前今いくつだ?確か話を聞いた限り9歳が出てきたよな?それで一年後に重桜から離れて…三年間鍛えて、四年間俺たちと過ごしたって事は…」

 

「今のマーレ…いや、優海は17歳。つまり優海は13歳で【アズールレーン指揮官選別学校】に入ってこと…」

 

ジンの疑問にはリフォルが答えてくれた。ジンは俺が未成年である事に驚き、そのまま絶句した。いや、絶句だけなら俺の事を知っているオセアンさん除く全員がそうだろう。

 

「…凄く辛い過去ですね。家族を二度も失って、今はそんな大切な人達と戦ってるなんて…」

 

「しかも別人にならないと生きていけない訳だから、それも辛いわね…」

 

リアとネージュは憐れむような目で俺を見ていた。

こうして反応を見れるのは良い。問題はその反応を見れないKAN-SEN達だ。恐らくは絶句やらしてるだろうが、反応が見れないので分からない。分からない不安が俺に押し寄せてくる。

だが、そんな事を感じてる場合じゃない。俺にはまだ伝えてない事がある。

 

「…ジン達には伝えないとな。」

 

「…?何をだ?」

 

「俺が艤装を使える事だ。」

 

「は…?」

 

俺は椅子から立ち上がり、未だに困惑しているジン達に向かう。そして体に力を入れて、艤装を展開しようとした。ここの広さなら展開しても差程問題はないはずだ。

しかし、俺が艤装を展開しようとした瞬間に一人の男の声によって遮られる。

 

「そこからは俺が説明しよう。」

 

「!?誰だ!」

 

ここの誰でもない声に俺は聞こえた方向に振り返る。しかしそこには何も無かった。時間を少し経つと何も無かった所に突如黒いワームホールなようなものが現れた。

その暗闇の中から足音をたて、1歩ずつ近づいていくのが分かる。そして暗闇から足が見え、次第に体と顔が現れる。黒く、ボロボロな貴族服をローブで隠すように着ており、そして仮面は被っておらずその素顔を晒していた。最早昔のあの人の面影は無く、髪も灰色で乱れていた。

 

「…マーレ君…?」

 

ネージュは確かめるように彼の名前を呼んだ。名前を呼ばれて反応したのか、テンペスト…いや、マーレはネージュに顔を向けた。

 

「…久しぶりだな。ネージュ。それに…オセアン。」

 

マーレは自分の父親きも限らずに名前を呼んでオセアンさんを睨みつける。それは殺気に満ちており、今でも仕留めにかかるようだった。

 

「マーレ…無事だったのか。良かった…」

 

オセアンさんは殺気に満ちたマーレに怯まずにただ自分の息子が無事だった事に安堵した。しかし、マーレはそれに対して明らかに怒りを向けていた。

 

「良かっただと…?あんたがそう言うのか!俺や母さんを見殺しにしといて!」

 

マーレが叫ぶのと同時に周りに衝撃波が走った。書類が保管してある棚のガラスや窓ガラスにヒビが入り、俺達も吹き飛ばされるような衝撃波が執務室を覆った。

 

「母さんは死んだよ!お前のせいで!お前が自分の立場を盾にして母さんを見殺しにした!」

 

「そんな…ではミーナは…?」

 

「あの時死んだよ!俺を守るために庇って…もう海に落ちていったよ…」

 

マーレは呼吸を荒くさせた。俺達には見当がつかないが恐らくはオセアンさんの過去か何かだろう。オセアンさんはそのまま俯いて顔を上げなかった。

 

「…こんな事喋るつもりは無い。これはお前の全てを告発する場だろう?なら、お前は最も大事な事を話してない。」

 

「…艤装の事ですね。でも、俺は本当に分からないんだ。自分が何でKAN-SEN達と同じような艤装とセイレーンの艤装を持ってるのか…」

 

そうだ。俺が話すべき事は俺の過去ではなく艤装の事だ。だが、俺には説明が出来ない。むしろ俺が聞きたいぐらいだった。何故使えるのか、何時から持っていたのか全てが謎だった。

 

「だったら教えてやる。…そこで聞いてるKAN-SEN達も聞きたいだろう?」

 

まるで全てを知っているかのように俺やKAN-SEN達に真実を教えるとマーレは言った。そしてマーレは執務室の扉を衝撃波で吹っ飛ばしてドアを壊した。

ドアが無くなり、廊下が丸見えとなったその先にはエンタープライズ、クリーブランド、ベルファスト、プリンス・オブ・ウェールズがいた。どうやら、テンペストが現れた時、一足先に駆けつけたようだ。

 

「無事か!?指揮官!」

 

「大丈夫だ。エンタープライズ。」

 

エンタープライズは俺を守るように前に立って、マーレを睨みつける。他の三人はジン達を守るようにマーレを睨みつけていた。

 

「お前の目的は何だ!それに…その雰囲気はまるで…」

 

「まるで性格が豹変した指揮官のようだ…違うか?」

 

「っ!?」

 

エンタープライズは考えを当てられたのか体を少しビクつかせた。他の三人やジン達も薄々その事を感じたのか、エンタープライズと同じような反応をした。

 

「顔が似ているからなのか…たしかにそんな感じはする…」

 

「ええ…あの目や雰囲気…体術訓練でのマーレ…いえ、優海だわ。」

 

クリーブランドとリアは豹変した俺の事を思い返すように呟いた。…確かに雰囲気そのものは同じだった。他

を寄せつけないようなあの威圧は正しくそれだった。

 

「当たり前だ。何故ならそれは()()()()()。」

 

「何を言ってる!そんな馬鹿な事があるか!」

 

ウェールズは腰にしていた剣をそのまま剣先をマーレに向けた。しかし、マーレが言ってることが分からなかった。

豹変していた俺が…マーレ?どういう事だ?

 

「論より証拠…と言うのか。つまりはこういう事だ。」

 

マーレは俺を睨みつけるとまるで魂が抜けたかのようにそのまま膝を着いてしまう。すると同時に俺は急に意識が遠のき初めた。それは豹変する直前の感覚そのものだった。

俺は抗うことも出来ずに意識はそのまま心の奥底へと沈んでいくようだ。

 

「指揮官!しっかりしろ!指揮官!」

 

エンタープライズが俺を起こすように肩を掴み、俺を揺らしている。だが感覚は無い。そうだ…これは俺が豹変してる時の感覚だ。

 

「…まぁ、こんな感じという訳だ。」

 

「…指揮官?」

 

俺の意識とは無関係に、俺の体はエンタープライズの手を握り、そのままエンタープライズを壁に投げつけた。あまりにも急な事だったが、エンタープライズは壁に対して受身をとり、何とか最小のダメージで済んだ。

 

「グハッ…その雰囲気…指揮をしている時の指揮官…?」

 

「その通り。そしてそれが俺。マーレだったという事だ。」

 

「つまり…今のお前は指揮官では無く、テンペストだと言うことか!?」

 

「正解だ。」

 

つまりは俺を乗っ取ってるという事か…?俺はもがくように体を動かすが、意識の中で動いているので、体が自由に動かせずにいた。俺を乗っ取ってるマーレは自分の体に近づき、守るように立ち塞がった。でも何故だ?何のためにこんなことを?

 

「俺がこんなことをしてる理由は、こいつ自身の力…つまりは艤装を完全に展開させ、俺の艤装をより強くさせることだった。」

 

俺の声を感じ取ったのかマーレは俺を乗っ取ってる理由を話した。しかし、どうして俺の艤装を展開するとマーレの艤装を強くさせるんだ?

 

「俺とこいつの艤装は元は一緒だった…現に、俺とお前が最初に戦闘した時、俺の艤装は左だけだっだろ。」

 

マーレはエンタープライズとクリーブランドに指を指して答えた。

 

「…確かに、最初に戦闘した時は艤装は左だけだった。」

 

「うん…右側には何も無かった。」

 

エンタープライズとクリーブランドはその時の戦闘を思い出したのかますますマーレの事を警戒した。それに俺もマーレの艤装が最初は左だけだったのを見ている。

…待て。となると俺を救出をしたあの島での戦闘はマーレは自分と戦ってるという事になる。いや、それ以前に今脱げがらとなってるマーレの体はどうして動いているんだ?

俺の疑問には答えるように、動かなくなったマーレの体が動き出した。

 

「…!?マーレ君の体が!」

 

「動いている…?」

 

「そうだ。この状態の時、俺の体は【殻】という物になっている。まぁ、遠隔操作できる体みたいな物だ。重桜が宣戦布告して来たあの戦闘以外では、ずっとこの状態でお前たちと戦ってきた。…まぁ、重桜を襲った時は俺自身な。」

 

「っ!?やっぱりあの時は貴方が!…え?」

 

急に体の自由が聞いた感覚に驚き俺はその場で立ち尽くした。すると後ろから急に背中を蹴られ、俺はジン達の所に連れ吹き飛ばされる。

 

「ぐあ!」

 

「ご主人様!」

 

「優海!」

 

蹴り飛ばされた俺を心配するようにベルファストとジンが駆け寄ってくれた。

 

「貴方が重桜襲ったのか!」

 

「そうだ。そうじゃないとお前は艤装を展開しないからな。」

 

「どういう事だ!」

 

俺は怒りに任せて、マーレに飛びかかろうとしたがエンタープライズに阻まれてしまう。エンタープライズの目からは今飛び出しても無意味だと訴えるような目だった。

俺はエンタープライズの目に従ってマーレを睨みつけた。

マーレはその事を一切気にしないように話を進めた。

 

「俺の目的はお前の艤装を目覚めさせて俺自身を強くさせることだ。俺が重桜を襲うことによって、お前は防衛本能や重桜のKAN-SENを守るために艤装を展開すると思ったが、とんだ間違いだった。お前は艤装を展開することなく、そのまま俺に負けた。」

 

俺は重桜が襲われたあの時を思い出した。あの時、俺がでしゃばら無かったら重桜から離れることは無かったのかもしれない。でも、俺を守って傷ついた蒼龍さんと飛龍さんを見たら放っておけなかった。

 

「そして、俺は強硬策に出た。無理矢理にでもお前の艤装を展開しようとな。だが、ダメだった。いくら無理矢理展開させても艤装は出なかった。その為にこいつ自身が危険な目や戦闘の時に意識を奪ったが…やはりこいつ自身で艤装を出すことしか方法は無かった。」

 

「…つまり、俺が貴方に負けたあの時、俺の中に入ったという事ですね。」

 

「あぁ…だか心配するな。もうお前の中に入れない。お前との経路(パス)もこれで切れるからな。」

 

「…経路(パス)?」

 

「…ちょっと良い?」

 

突然、リフォルから質問を訴えるように手を挙げた。マーレはその質問を許可するようにリフォルに発言権を渡すように何かを手のひらを上に向けた。

 

「…まずそもそも貴方は何?他人に乗り移るなんて人間離れした事出来るなんて…」

 

「俺はもう人間じゃないからな。俺はセイレーンになった。」

 

その場の全員が息を呑んだ。人間がセイレーンに…?

そんな事可能なのか…?

 

「…あの時、セイレーンに襲われた俺は島から逃げるために母さんと一緒に逃げた。だが、一筋の光の衝撃で母さんは海に落ちていき、俺はそれに吹き飛ばされた。…そしてセイレーンと出会った。…その時俺はセイレーンに改造されて今の状態だ。」

 

「…どうしてセイレーンになったの?」

 

「知るか。あいつらが面白がって俺をセイレーンにしたんだろ。人類がセイレーンになったらどうなるかとな。」

 

「じゃあ…自分の意思では無いって事…?」

 

「そうなるな。」

 

「じゃあどうしてセイレーンと協力してるの?」

 

「……自分の目的の為だ。」

 

「目的…」

 

「…これ以上は話さん。それでもう質問は終わりか?」

 

マーレは自分の目的を話そうとせずに質問を終わらせようとした。しかしリフォルの質問は終わらなかった。

 

「…じゃあ最後。さっきからどうして優海の艤装が、貴方の艤装と関係あるの?優海の艤装を展開したら貴方が強くなる…可笑しくない?」

 

確かにそれは気になっていた。わざわざ俺の中に入り艤装を展開させようとしたりしたりしたのは自分を強くさせる為…それがなんで俺と関係あるんだ?

 

「それはこいつの正体と関係してるからだ。」

 

「俺の…正体?」

 

俺は心臓が跳ね上がったような感覚に襲われた。自分でも分からなかった艤装の事や俺自身の正体がようやく分かる少しの好奇心や、恐れが入り交じったような感覚が体中に駆け巡る。心臓の鼓動が早くなる。

 

「今この話を聞いてるKAN-SEN達も聞いとけ。こいつの正体を。そして、こいつの正体を知って果たしてお前達はこいつを指揮官と見るか?」

 

「…どういう事でしょうか?」

 

ベルファストは丁寧な口調でマーレに問いかけた。マーレはいつでも俺を信じていると言ったベルファストを嘲笑うかのような笑みを浮かべて俺の正体を口に出す。

 

「さしずめお前達はこいつがセイレーンによって艤装を展開出来るように改造されたと考えてると思うが…それは大きな間違いだ。」

 

「間違い…?」

 

ベルファストは予想していた事を間違え、その答えをマーレに問うように呟いた。

マーレは不敵な笑みを浮かべ、俺に指を指す。

 

「何故俺がこいつの中に入り込めたのか…何故こいつの艤装を展開したら俺が強くなるのか…それは…」

 

この場にいる全員と、恐らく今この執務室に駆けつけてるKAN-SEN達も、通信を聞いてるKAN-SEN達もマーレの言葉に耳を傾けてる筈だ。俺の正体がついに分かる。

だが妙な胸騒ぎがする。まるで…聞いてはいけないような胸騒ぎが…だがここまで来たら止まることは出来ずない。俺は覚悟を決め、マーレの言葉に耳を傾ける。

そんな俺を見て、マーレは笑みを無くし冷たい目で俺を見て正体を明かす。

 

「個体名…【コネクター(接続者)】こいつは俺を元にして造られたセイレーンだからだ。」

 

俺は俺自身を全て全否定するかのような答えに俺は受け入れられずにいた。俺はただ立ち尽くした。

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