もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜 作:白だし茶漬け
第43話【鳥籠と答えと繋がりと】
青暗く光る鎖で作られた鳥かごのような檻の中には俺とマーレさんが立っていた。空は雲一つない海のような晴天が広がっていた。
「この朝は俺にとって最後の朝になる。」
「それは自滅するという意味でいいのか?」
「そう捉えても構いません。」
そう。俺はここで自滅しなくちゃならない。人類の為にも、KAN-SEN達の為にも、人類の敵である俺は、ここで居なくならなければならない。
「それは最も愚かな行動だと分かっているのか?お前の後ろを見てみろ。」
「後ろ…?」
俺は後ろを振り返ろうとするが、マーレさんが後ろから撃ってくる可能性を考えると、中々後ろを振り向くことが出来ずにいた。それを察したマーレさんは艤装と武器を一旦解いた。
「後ろから撃つなんて馬鹿な事するか。さっさとしろ。」
俺はマーレさんに気をつけながら、恐る恐る後ろに振り返る。
俺の眼に映ったのは、俺の事を見つめ続けているKAN-SEN達だった。その眼は悲しみや、これから起こる事の恐れを訴えてるかのような眼だった。
「分かったか。お前たちは今最もKAN-SEN達の事を裏切っているんだ。お前が戦うことはKAN-SEN達の存在理由を否定し、お前の自己犠牲なんてKAN-SEN達は望んじゃいないのさ。…それでもお前は戦うのか。」
マーレさんは再度全ての装備を展開し、右腕についてるビーム砲の銃口を俺に向けた。それに気づいた振り返るのを辞めた。
「…でも俺はセイレーンだったんです。皆の敵で、人類の敵なんです!だから!俺はここで俺は俺自身を終わらせないといけない!でも、その前に俺は貴方を止める!」
「…結局それか。もういい…始めるぞ。それに俺はこんな事でつまずく訳にはいかない…!」
青黒く光る鎖の中で二人のセイレーンが衝突しあう…
「ご主人様…」
ベルファストは鎖の中に閉じ込められた優海を見つめていた。彼の姿は自分では分からないのか、髪は一部白く染まりだし、肌も色素を少し失っていた。
それを気にすること無く、優海はマーレと激突し合う。
「おいおい!よそ見してる暇なんてあるのかなぁ!?」
セイレーンのピュリファイヤーが突然、横からビームを打ち出した。ベルファストは間一髪で反応し、そのままビームの光線を避けた。
「おいおい!もっとちゃんと戦ってよ!前夜祭はまだまだこれからなんだから!」
ピュリファイヤーは手を大きく広げると、この海域に量産型セイレーンの艦を呼び出した。
先程奇襲をかけられたアズールレーンのKAN-SEN達はその意表をつかれたまま、連携が思うように取れなくなっていた。
しかし、それは指揮官によってそれを無かった事のようになった。
『綾波!左30度に魚雷を撃って!その後敵の艦載機による攻撃が来るから、ジャベリンとラフィーは対空に集中しろ。』
「指揮官…?どうしてラフィー達の位置が分かるの?」
ラフィーは正確に自分達と敵の位置を把握してる指揮官に疑心感を持った。何故なら、先程ラフィーは通信で指揮官が敵と戦闘してる様子を聞き、今指揮官は間違いなくテンペスト…いや、マーレと戦闘してる筈だと考えてるからだ。しかし現に指揮官は明らかに敵味方の位置を把握してるかのように指揮をしていた。
『説明してる暇はない!いけるか!?』
「…了解。綾波…」
「大丈夫です。」
綾波は指揮通りに左側にいる量産型セイレーンに魚雷を放つ。魚雷は全弾命中し、量産型セイレーンはそのまま爆破の炎に包まれながら海に沈んでいく。
「確か次は…敵の艦載機が!」
ジャベリンは上空を見上げると、指揮官が言った通りに上空から敵の艦載機が、ジャベリン達に向けて機銃を向けていた。
ジャベリンとラフィーは対空砲撃に集中し、見事敵の艦載機の迎撃を完了した。
「指揮官!敵艦載機の迎撃に成功しました!」
『よし、そのままベルファスト達がいる部隊と合流して、上位個体のセイレーンの迎撃を任せたい。…行けるか?』
「上位個体…」
ジャベリン達は躊躇った。上位個体は量産型とは訳が違う強さを持っている。そこから突きつけられるのは…恐怖。ジャベリン達はその恐怖で躊躇った。
『…怖いなら無理に行かなくてもいい…俺はセイレーンだったんだ。こんな俺の指揮を無理して聞かなくても…』
「いえ、行きます!」
『…!』
「私は…指揮官を信じます!いつもの優しくてとても強い指揮官をジャベリンは信じます!」
「ラフィーも指揮官の事を信じる。」
指揮官は通信越しでも分かるジャベリン達の思いに驚く。自分はセイレーンなのに、KAN-SEN達の敵なのに、それでも信じると言ってくれたジャベリン達の言葉に胸が撃たれるようだった。
「綾波はよく分からないですけど…あの時助けてくれた貴方の姿を信じるのです。」
『綾波…』
「指揮官の事はジャベリン達から聞いたのです。…まだ貴方とは交流があるとは言えないのですが…それでも信じるのです。」
『…ありがとう。』
涙交じりのその声は決して弱みを見せない強い声でもあった。
「急ごう!そして指揮官を助けよう!」
ジャベリン達はベルファスト達の部隊へ合流を果たす為、全速力で海を駆ける。
ジャベリン達と同じ思いを持ったKAN-SENはまだいる。
いや、KAN-SEN達全員がそうだった。
「みずくさいよ指揮官!私もジャベリンと負けないぐらい指揮官の事信じてるからね!」
ホーネットは自慢の早撃ちの腕を利用して、艦載機を大量に発艦させる。艦載機は次々と量産型セイレーンに爆撃をお見舞いさせる。
「私もまだまだここに来て日が浅いけど、皆の話を聞いて興味を持ったよ!」
「それに…私とテニスをする約束をまだ果たしてないからな!」
ボルチモアは先行してセイレーンに砲撃するが、量産型とは言え、巨体のセイレーンの艦には装甲に穴が空く程度だった。だがしかし、すかさずブレマートンはその空いた装甲に主砲を撃ち込み、砲弾はセイレーンの内部に入り、そのまま内部を爆発させ撃沈させた。
「ユニオンだけじゃありませんわ。ロイヤルだって負けないぐらい指揮官の事を思ってますわよ。」
イラストリアスは舞うように艦載機を発艦させ、それに続くように姉妹艦であるヴィクトリアスとフォーミダブルも同時に艦載機を発艦させる。三人が放つ物量はセイレーンの艦隊を沈めさせる。
「おうおう良いね良いねぇ!前夜祭ぽくなってるじゃないの!」
味方が倒されてるにも関わらず、ピュリファイヤーは嬉嬉として戦いを楽しんでいた。
「でも〜?お前達のだ〜い好きな指揮官はセイレーンなんだよ〜?それでも信じるって言うのかな?」
「当たり前です!」
ベルファストは感情を顕にした砲撃をピュリファイヤーへと放つ。ピュリファイヤーはその砲撃を躱し、指揮官の事を信じるKAN-SEN達を嘲笑っていた。その感情を読み取ったKAN-SEN達はピュリファイヤーに怒りを向けていた。
「例え貴方達の手で生まれたとしても、今のご主人様は一人の人間として生きています!もう貴方達の知ってる彼ではありません!」
「でももうそれは終わりだよ!見ろよあの姿!もうアイツはセイレーンに戻りかけている!」
ピュリファイヤーは青黒く光る鎖の鳥かごの何かにいる指揮官を指した。髪は一部白く染まり、顔の一部の肌が色素を失っていた。
「それでもお前たちは信じるのかな?ただ私達の目的の為だけに生まれた殺戮兵器のアイツを!」
「当然だ。」
その言葉と同時に光の矢が一本、ピュリファイヤーに向かって放たれた。ピュリファイヤーは艤装を盾にしてダメージを抑えたが、いきなり来た攻撃に戸惑いを隠せなかった。
そして矢を放った人物は真っ直ぐ艤装の弓を構えながら歩く。
「指揮官は何度も私と意見の衝突しても、何度も私に寄り添った。私の事を突き放そうとも、嫌悪もせずに何度もだ。」
灰色の髪を海風でなびく。彼女は、被ってる軍帽の裏で指揮官との思い出を思い出す。良い思い出なんて無い。
だがこれまでの意見の衝突が、彼女が忘れていた想いを気づかせてくれた。
「私は海を恐れていた…海の冷たさ、消えない硝煙の匂い…そして私や誰かが沈んでしまうその恐怖…全てこの海で起こり得る物だった。」
「エンタープライズ様…」
「だが、指揮官は私の忘れていた想いを思い出させてくれた。私は…もう海を恐れたりしない!」
金属同士がぶつかり合う音と砲弾が轟く音、ビームが放つ機械音が鳥籠が中に駆け巡っていた。
目の前は敵だけじゃなく、頭に入り込むようにKAN-SEN達の姿や位置が分かる。しかし、戦闘には支障がない。
(これが俺の本来の力か…?)
全てのKAN-SEN達の位置が分かっているので、わざわざ位置の報告をされなくても勝手に頭の中に入り込んでくるので、スムーズに指揮が行える。だが、マーレさんの激しい弾幕と接近戦の波状攻撃がその指揮を妨害してくる。
何とかギリギリ指揮は出来るが、それもほんの少しだけだ。
マーレさんはアクロバティックな動きで俺を翻弄させ、右腕のビーム方でビームを連射させながら右の艤装で艦載機を放つ。俺はそのビームを打ち消す為、大剣を二丁拳銃に変形させる。その片方銃から出るビームを連射させマーレさんが放ったビームとぶつかり相殺し、残った片方の銃で艦載機を迎撃する。
だがビームと艦載機を打ち消す事に集中した俺はマーレさんが狙っていた本命に気づかずにいた。
「遅い…!」
既に主砲をチャージしていたマーレさんはそのまま俺に向かって高出力ビームを放った。
「駄目だ…避けられない!」
回避は不可能と判断した俺は、レールガンを構え、狙いを定めずにビームに向かって放った。打ち出されたレールガンの弾丸はビームを突き破るようにそのまま真っ直ぐに進んだ。しかし全て防いでる訳では無い。俺は偽装を盾にするように俺の前に移動させ、ビームを防御する。
ビームから伝わる熱が全てを焼き尽くすように熱い。
だがそれでもレールガンは止まらない。
「っ!?」
ビームを突き破ったレールガンに気づいたマーレさんは攻撃を止めてレールガンを回避した。レールガンはそのまま鳥籠にぶつかり圧倒的な威力で鳥籠にヒビを入れさせた。
「随分と短い時間で使いこなす物だな。…まぁ本来の力とは少々変わってるがな。」
「どういうことですか!」
「言っただろ。個体名【
「繋がる事…?」
「そうだ。今お前はKAN-SEN達の位置や状況が把握出来てる筈だ。それがお前の力だ。他者のメンタルキューブに繋がる事で、位置や状況を把握し…果てには能力の強化だって出来る…他者を道具のように使う…それがお前だ。」
「俺は皆を道具のように扱わない!」
銃を大剣に戻し、俺は怒りのままにマーレさんに斬り掛かる。マーレさんはそれをものともせずに呆れた表情をしながら俺の大剣を左腕の剣で受け止める。
咄嗟にセイレーンの艤装で追撃を行おうとしたが、マーレさんの二つの艤装によって抑え込まれた。
「悪いが俺の艤装も自立式だ。お前の艤装は少々面倒くさいから俺の艤装と一騎打ちをしてもらうぞ。」
艤装と艤装は互いにぶつかり合い。そのまま空中で艤装同士の戦いが始まった。こちらの艤装は封じられたが…まだ俺には別の艤装がある。対してマーレさんの艤装はあのセイレーンの艤装だけ…戦力のアドバンテージはこちらが優勢になった…はずだ。どういう訳かそんな感じが一切しない。
「俺の艤装が失っていたホッとしたか?…甘いんだよ。」
マーレさんは勢いよくこちらに突っ込みながら右のビーム方で俺を狙い撃つ。こちらに突き進むビームを、俺は大剣から二刀流の剣へと変え、ビームを斬る。しかしマーレさんは止まらず、縦横無尽に鳥籠内を駆け巡り、全方向に渡ってビームの嵐が俺に襲いかかる。
「弾幕が多くて動けない…!」
全方向からくるビームを防ぐのが精一杯な俺は次のマーレさんの攻撃を必ず受けなければならない。次の一撃は必ず防御しなければ間違いなく俺はやられる。
どうするれば良い…!?どうすれば…!
_お前の力は繋がることで発揮する。
こんな時に急にマーレさんが言ったあの言葉を思い出す。
…繋がる事で…発揮する…?誰かのメンタルキューブをと繋がる事が……俺の力…ならば出来るはずだ。
「終わりだ!」
嵐のような弾幕が終わると同時にマーレさんが俺の目の前で俺を斬り伏せようとした。死が迫る間近のせいか、全てがスローモーションに見える。
「ご主人様ぁぁ!」
「指揮官!!」
あれ、珍しいな…皆があんな風に叫ぶなんて。
あぁ…こんな風に思うのはこれで最後かな…
これで俺は完全にセイレーンの力を使うことになり、俺は完全にセイレーンに戻る。さよなら…ありがとう。
瞬間。俺の中で確かなKAN-SEN達の繋がりを感じた。
「じっとしてろ!」
「何っ!?」
俺は指で銃を作るように指を曲げ、その指先をマーレに向ける。マーレは自分だけ時が止められたかのように空中で体を制止される。その一瞬を俺は見逃さず、マーレの一撃を躱す。
「え…?今のはもしかしてフォーミダブルの…?」
イラストリアスは指揮官が使った能力を目の当たりにした後、フォーミダブルの方に顔を向けた。
そう。さっきの時止めの能力は間違いなくフォーミダブルの能力なのだ。
フォーミダブルは一瞬だけだが、相手の動きを止める事が出来る。それはまるで、時を止めてるかのように。
そしてそれを指揮官が使ったのだ。KAN-SEN達だけでは無く、セイレーン達もそれに困惑する。
「おいおい…聞いてないぞ…KAN-SEN達の能力をそのまま使うなんてよぉ!」
ピュリファイヤーは頭を掻きむしり、予想外の出来事に戸惑いと苛立ちを味わっていた。
「…どういうことだ。」
「驚く事じゃない。」
俺は静かに剣先をマーレに向ける。
「お前が言ったはずだ。繋がる事が俺の力だと、だったらこんな事出来なくは無い。」
「成程…繋がりは深ければ深い程、より強固になる…だったらKAN-SEN達の力を使うのも納得がいく…フッ…前のお前では出来なかった芸当だな。だが…もうお前はセイレーンだ。お前の自我が消えるのは時間の問題だ。」
「その前にお前を倒せば良いだけの話だ!」
海を蹴り、一気にマーレとの距離を縮める。躊躇するな、躊躇うな、全てを使え、俺が俺である前に!
俺の持つ大剣が光り輝き、二つの剣へと姿を変える。いつもの剣ではなく、シリアスとダイドーが持ってるのと同じ剣だった。
「あれは私とシリアスの!?」
「で、ですが私達の剣はここに!」
シリアス達は自分達の剣と全く同じ物を持った俺を見て、自分の剣と見比べていた。何度も交互にみて戸惑ってるがそんな事は今はどうでもいい。今は倒すべき敵を倒ス!
「ウラぁぁぁ!」
乱暴に剣を振り、最早敵を蹂躙する為だけの俺の姿は兵器そのものだっタ。
だめダ!マだ、ノマれるな!
「りミッター…解除!」
その言葉ともに、俺の艤装に稲妻が走る。セイレーンの艤装も吠え、マーレの艤装をいとも容易く打ちのめす。
「ぐっ…!」
艤装のフィードバックのダメージを喰らったのか、マーレは体勢を崩した。俺は剣を捨て、体勢を崩したマーレの顔を左手で掴み、そのまま海に打ち付ける。そしてトドメを刺すようにレールガンの銃口をマーレに向ける。
「終ワりダ!…がハッ!?」
トドメを刺そうとした瞬間、頭が割れるような頭痛が襲いかかル。
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙あぁぁぁぁ!!グッ…ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」
頭の中に何かが入り込んでくる嫌悪感が身体中を暴れ回る。頭や体に入り込んでくる何かを払い除けるように俺はマーレから離れ、そのまま暴れ回ル。
「ご主人様!しっかりして下さい!ご主人様!」
「ぐっ…この鳥籠が無ければ…!」
エンタープライズ達は主砲や何とかして鳥籠を破壊しようとしたが、鳥籠は壊れずにそのまま佇んでいた。
「どうやら…時間切れのようだな。大した者だよお前は。」
俺に抑え込まれていたマーレは立ち上がり、そのまま倒れ込んだ俺に近づク。
「はァ…はぁ…」
「酷い顔をしてるな…」
俺は限界に達し、海に膝をつく。水面に映る俺の顔は酷いと言う言葉では足りないぐらいだった。
乱れた白く変わり果てた髪、一部が白く変わった肌、開ききった瞳孔に、黄色く変貌しかける目の色…それはセイレーンの目と同じダった。
「本当だナ…ビドイな…こレ…」
「…終わりだ。」
マーレは利き手である左手で俺の胸を貫いた。
もしもの話(R-18)を観測しますか?
-
Yes
-
NO