もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜 作:白だし茶漬け
もう半年ぐらい続いたこの小説もクライマックスに近づいて来ました。
ここで一つツィッターのDMでの質問をここに書かせていただきます。
Q、優海がセイレーンだとしたら3話から5話辺りの冒頭は一体なんでしょうか?
A,あれは優海では無くマーレの記憶を少し弄った記憶となります。優海はマーレを基にして作られたセイレーンでありますが、記憶まで同じだと不都合な為、セイレーンが記憶を少し弄った形がその冒頭にあたります。
このような質問をTwitterのDMにて募集しております。また感想欄での質問は、ネタバレ防止の為にお控え下さい。(誤字報告は除く)
それではどうぞ!
第44話【怒りと力と再起動と】
雲ひとつ無い晴天の下にある男の手によって、砲撃の音が消え、飛び交う艦載機も消えた。そして入れ替わるように海の上で戦う女達の悲鳴と叫びが飛び交うようになった。
「ガっ…は…」
マーレの左手に胸を貫かれてる優海はマーレがその手を引くのと同時に優海の体から黒いメンタルキューブが取り出された。
「本当に…指揮官の中に黒いメンタルキューブが…」
優海は悶える事無く、糸が切れた人形のように海の上に膝を着き、艤装も白い粒子となって消え去った。
「指揮官っ!」
それを見たKAN-SEN達はどうにかして鳥籠を壊そうと己の全てを出し切って鳥籠を破壊しようとしたが、それを嘲笑うかのように鳥籠はそのままただずんでおり、ヒビの一つも入る事は無かった。
「そんな…いや…嫌ですよ指揮官…」
ジャベリンのようにそのまま泣き崩れるKAN-SENもいた。そしてそれと反対に優海に手をかけたマーレに憎しみを抱く者もいた。
「お前は…お前だけは許さないっ!祖国と人類を裏切り、あまつさえ指揮官まで…許さない!」
マーレに憎しみの炎を燃やすウェールズだったが、その炎は鳥籠によって阻まれる。いや…ウェールズだけじゃない。優海と共に過ごしてきたほとんどのKAN-SENがその炎を滾らせていた。
「そんなに戦いたいなら望み通り相手してやる。」
マーレは左手に持ってるメンタルキューブを右手に持ち替えると左手で指を鳴らす。すると立ち塞がっていた鳥籠は青黒い光と共に消えていく。それと同時にKAN-SEN達がマーレに向かって飛び出す。
「はぁぁぁ!」
「…単調だな。」
先行したウェールズの攻撃をいとも容易く避け、そのまま右腕のビームの砲身でウェールズの腹を殴る。マーレは遠心力を利用してそのままウェールズを投げ飛ばす。
「ご主人様の!」
「仇です!」
マーレの左右からシリアスとダイドーが同時にマーレに斬りかかった。しかし怒りに任せた単調な動きにマーレは呆れるように軽々と左腕の剣で二人の剣を受け止める。それでも力任せにねじ伏せるようにマーレに向かって斬り伏せ続けるが、それ故に後ろから迫るマーレの艤装に気がつかなかった。
「っ!しま…」
マーレは艤装の尻尾を振り払うように操作し、二人を彼方に吹き飛ばす。無防備の二人は為す術もなく艤装による攻撃を諸に受けてしまい、そのまま倒れ込んでしまう。
「どうした。もう終わりか?」
「そんな訳無いだろ!」
「…ラフィー、貴方のこと絶対に許さない…」
今度はユニオンのKAN-SEN達がクリーブランドとラフィーが先陣をきってマーレに襲いかかる。飛び交う主砲の雨がマーレの視界を覆う。常人では避けられないほどの弾幕をマーレは艤装も使わずに己の力だけでこの弾幕を避けようとした。それは誰が見ても無謀だと思えることだったが、その嵐は誰に止められなかった。
マーレは弾幕の中にある僅かな隙間を通っては回避不可能なら己の剣で弾を斬る。そのあまりの神速故にマーレ以外の時間が止まっているようだった。刹那の末、マーレはKAN-SEN達が認識せずにKAN-SEN達の後ろに立ち尽くしていた。
「…遅い」
マーレは空を斬るように剣を振るとそれに合わせるように斬撃があとからKAN-SEN達に襲いかかる。最早何をしたのかも分からずにKAN-SEN達は斬撃の餌食となる。
「…え?今…何を…?」
唯一何かはされたと認識したクリーブランドはそう呟いて海に倒れてしまう。他のKAN-SEN達はそれすらも認識出来ずにその場で次々と倒れ出す。KAN-SEN達をこれ程蹂躙する姿はまさしく…いや最早それすらも生ぬるい。別格、異次元、最強、無敵、そのどの言葉が小さく感じるほどの圧倒的な力。それが今のマーレだった。
最早彼を止めるものはいなかった。
「…まぁこんな程度か。」
「だったらこれはどうかしら!」
「あんただけはガチで許さないから!」
ヴィクトリアスとホーネットが怒りを込めて艦載機を放ち、そのままマーレを包囲するようにそのまま突貫させる。マーレに向かって突撃する艦載機は機銃と爆撃の波状攻撃を行いながらマーレに突撃をかける。
だが、先程の数十人規模の攻撃をマーレは軽々と避けた事からたった二人で止められるわけも無い。マーレは空母の役割を持つ右の艤装で艦載機を発艦させ、艦載機を迎撃する。マーレによって発艦された艦載機は黒い瘴気を帯びながら艦載機を喰らうように撃沈する。艦載機は止まることなくそのままホーネットとヴィクトリアスに向かって喰らいついていく。
「そうはさせません!」
イラストリアスはマーレではなく、ホーネットとヴィクトリアスに向けて艦載機を放つ。イラストリアスが放った艦載機は白いヴェールを帯びながら、その光が二人を包んだ。これがイラストリアスの能力『装甲空母』だ。
その光が敵からの攻撃を防ぎ、KAN-SENの身を守ってくれるのだが…マーレの前には無力だった。何とか艦載機の特攻からは二人を守ったがその衝撃の方が強かったのか二人を守る光に亀裂が走る。マーレは追撃を止めることなく、今度は左の艤装の主砲で二人の狙いを定める。
艤装に光が集まり、出力を高めた。
「果てしてこれは防げるかな?」
無理だ。ただでさえ光の膜に亀裂が走っているのだから当然防御能力も下がっている。マーレの最大出力の攻撃を防ぐ事はまず不可能だ。回避を行うにもマーレが放った艦載機がイラストリアス達3人の動きを制限しており、回避は不可能だ。つまり3人はどうにかしてマーレの攻撃に耐えなければならない。しかし、彼女達にその余力は無かった。
その時、空でマーレに向かう影があった。その四本の足が空に足場があるかのように空を駆けていた。そしてその上には小さな一人の影がいた。
「あれは…」
イラストリアスは空を見上げその影を見る。それはその姿は見間違えが無かった。何故ならそれは自分の妹分の姿なのだから。
「イラストリアスお姉ちゃんやみんなを虐めないで!」
その影の正体はユニコーンだった。ユニコーンといつもいるゆーちゃんはその身を巨大化させ、翼を生み出して空を翔る。ユニコーンは艦載機を発艦させイラストリアス達を襲っていた艦載機を全てを撃沈した。
しかし、そう簡単に攻撃を許すマーレでは無い。マーレはユニコーンの存在を察知し、右の艤装で艦載機を発艦させようとした。ユニコーンも同時に艦載機を発艦させようとしたが、一瞬マーレの方が出が早い。
ユニコーンは尚マーレに向かって飛び出してるのでこのままではユニコーンは自ら艦載機に突っ込んでしまう。
「じっとしてなさい!」
フォーミダブルが指で銃を作るように曲げ、指先をマーレに向けて自身の能力を発揮させた。相手の動きを、まるで時を止めたかのように止めることができる。これが彼女の能力である。これは優海が自らの力、つまりセイレーンの力によって自らの力として扱った能力でもある。
マーレはその能力により、ほんの一瞬だが動きを止めた。
「どうかしら?本物の力は!」
「…ちっ。」
「今のうちに…!」
ユニコーンの活躍とフォーミダブルによってマーレの動きを止めたおかげで攻撃が止み、イラストリアス達はその場から離れることに成功した。だが、マーレの艤装のチャージが止まった訳では無い。艤装のチャージが終えられ、マーレは狙いをイラストリアス達からユニコーンに向ける。
「逃げてユニコーン!」
イラストリアスはマーレの狙いがユニコーンだと察し、ユニコーンに逃げるように叫ぶ。ユニコーンはその声を聞き、急いで回避行動をとるが既に狙いが定められ、マーレは最大出力の火力をユニコーンに浴びせる。
「中々やるな…素直に感服した…本当に。」
相手に賛辞の言葉を述べながらマーレは艤装の主砲から放った光をユニコーンに向けて放った。淡く光る紫の光がユニコーンを消し去る為に熱を帯びて真っ直ぐ突き進む。
「…!」
逃げられない。ユニコーンはそれを察し、諦めるように光をみた。
「お兄ちゃん…!」
ユニコーンは死に間際の走馬灯が頭の中で駆け巡った。そのほとんどが優海と過ごした日々だった。初めて出会ってゆーちゃんを探した日の事や自分が贈ったスノードームのあの日が鮮明に思い出すようにユニコーンは静かに目を閉じて目の前にある現実を受け止めようとした。
「ごめんね…お姉ちゃん…」
「そうは…させないのです!」
突如ユニコーンの前に綾波がユニコーンを守るように立ち塞がっていた。綾波は自前の剣を構え、正面に来るビームを防いだ。ユニコーンと綾波の周囲がビームの高熱が纏い、綾波はその熱さとビームの衝撃に耐えていた。
「させないのです…!大切な…友達を…これ以上傷つかせない為にも…綾波は友達を守るのですっ!」
突如、綾波は全身の力が湧き出るような感覚を感じた。今ならばこの状況を何とかできると確信し、綾波は全ての力を出し切って剣を振り下ろした。振り下ろされた剣がマーレのビームを真っ二つに切り裂き、ビームは粒子となって消えていく。
「何だとっ!?」
自分の最大出力の攻撃を防がれた事にマーレは驚き、綾波を見続けた。綾波は全てを出し切ったせいか、そのまま意識を失いながら、空から海に落ちていく。
「綾波ちゃんっ!」
ユニコーンはよろめきながら何とか綾波の手を掴んだが、最早ゆーちゃんに飛ぶ気力は残っておらず、そのままゆっくりと海に落ちた後、ゆーちゃんは元のぬいぐるみの大きさに戻ってしまう。
「綾波…ちゃん…」
ユニコーンも先程の衝撃を受けたせいかそのまま意識を失ってしまう。綾波も意識まで失って無いが、全身に力が入らず、そのまま海を漂う事しか出来なくなっていた。
「動けない…のです…」
「大した奴だ。まさかお前も覚醒するとは思っても見なかった。…まぁまだ不完全だが。」
海の上漂う綾波の前にマーレが見下すように立っていた。マーレは無防備の綾波の左腕を左手で掴み、そのまま宙吊りにするように持ち上げた。
「は…離すのです…!」
綾波は必死にもがこうとするが抵抗らしい抵抗も出来ずにただなすがままにされる状態であった。
「その子を離せ!」
「綾波ちゃんを離して!」
マーレに立ち塞がったのはエンタープライズとジャベリンであった。エンタープライズは弓をマーレに向け、いつでも矢を放つ体制になっていた。マーレはそれを見て、綾波を盾にするように持ち替えて自分の身を守っていた。
「くっ…あぁ…」
「なんて卑劣なんだ…お前はそれでも英雄の末裔なのか!」
エンタープライズは英雄に相応しくない行動を目の当たりにし、怒りを露わにしてマーレに叫んだ。だが、マーレは動ずる事も無く、そのままの体制だった。
「卑劣か…よく言うよ…自分達が勝つ為に他人を犠牲にする奴らがなぁ!?」
マーレはそのまま綾波を盾にしながらエンタープライズ達に襲いかかる。エンタープライズ達は綾波を盾にされてる為、無闇に迎撃する事も適わず、マーレの接近を許してしまう。二人に接近したマーレは綾波をジャベリンに向けて蹴り飛ばす。
「綾波ちゃん!」
ジャベリンは綾波を受け止め、蹴り飛ばされた衝撃に負けないようにその場で踏ん張った。直ぐにマーレの追撃が来るとジャベリンは警戒したが、マーレはジャベリンより、エンタープライズの方に接近戦を仕掛けていた。
マーレは怒りを乗せて剣を振るい、エンタープライズは自身の弓でそれを防いだ。武器と武器がぶつかり合う鈍い音と火花が二人の間で散らしていた。
「卑劣だよなぁ!自分達の利益の為に他人を犠牲にして、あまつさえそれを無かった事にするのはなぁ!」
「何を言ってる!」
「今のお前らに言っても理解出来ない!」
剣と弓の鍔迫り合いはマーレの力押しが勝り、エンタープライズは体勢を崩す。マーレはその隙をつき右腕のビームでエンタープライズを攻撃しようとするが、右からの砲撃により、それは回避される。マーレはその方向を確認すると、ベルファストが主砲を構えていた。
「ちっ…そろそろこの起動状態も限界か…」
マーレは自身の弱点である制限時間が迫る事から、これ以上続くと分が悪いとふんでエンタープライズから離れた。
「動きが鈍い…?まさかあの力には制限時間みたいな物があるのか…?」
マーレの動きの鈍さから、エンタープライズはマーレの弱点を予想した。確信は無かったが今ならば突破口が見つけられると英雄の勘なのかエンタープライズはそう踏んだ。
「ベルファスト!あいつには戦闘する時間が限られてるのかも知れない!今ならば一気に突破口が開けるかもしれない!」
「成程…ですが、もう一人のセイレーンの方にも人員を割いています。今戦えるのは…私とエンタープライズ様とジャベリン様しかおりません。それに…ご主人様も放ってはおけません。」
今この場にいたKAN-SEN達のほとんどがマーレによって戦闘続行が不可能なまでの手傷を負わされ、他のKAN-SEN達はピュリファイヤーと量産型のセイレーンの迎撃で手一杯の様子だった。
そしてベルファストはそのまま膝を着いて微動だにしない優海を見た。優海には外傷らしいものが無く、無事でいると思ったからだ。
「分かっている…だが、まずはあいつをどうにかしなければ指揮官を助けられない。…だが方法はある。」
今のマーレの位置は誰よりも優海に近い距離だった。ここでもし指揮官を助けられてもそのままマーレの追撃を許してしまうからだ。
「何か考えがあるのですか?」
「あぁ…だが、これにはジャベリンの力が必要だ。」
「わ、私ですか?」
エンタープライズには何か考えがあり、それにはジャベリンが必要不可欠だと言う。
「でも綾波ちゃんが…」
ジャベリンは先程マーレに蹴り飛ばされた綾波を見る。綾波は相当のダメージを受けており、立つことさえままならなかった。そんな綾波を放っておける訳もなく、ジャベリンは綾波を介抱する。
「どうした!早くしないとお前らの指揮官が大変な事になるぞ!」
マーレは高らかに叫ぶと、自分の剣先を優海の頭に突き付け、KAN-SEN達を煽るようにしていた。
「指揮官…!」
「行って…下さい…」
「綾波ちゃん!?」
苦しみながら重い瞼を開けた綾波はジャベリンに行くように枯れた声で話しかけた。
「綾波は…大丈夫……です…だから早く…」
「……分かった!」
ジャベリンは綾波をそっと海に離すと、綾波は力無くそのまま座り込む。そんな綾波を振り返る事無く、槍をマーレに突きつける。
「エンタープライズさん。私…やります!」
「あぁ…頼りにしてる!」
「私もお供させて貰います。」
エンタープライズ、ベルファスト、そしてジャベリンの三人がマーレと戦おうとしていた。これまでの事からたった三人でやるなど無茶にも程がある。だが…勝機が無い訳では無い。
(あの感じ…俺の制限時間の弱点を勘づいたか。ここで引くのもいいが…)
マーレは黒いメンタルキューブを見た。黒いメンタルキューブは黒い瘴気を濃く帯びながら輝いていたが、黒だけではなく、それに混じって白い光も帯びていた。
(喜びや優しさ、幸せ等は日常で、哀しみと怒りはこの戦闘を含む全ての戦闘で収集した。だが足りない。俺の目的の為にまだ足りてない物がある。)
マーレは自身の目的の為に引くことはせずエンタープライズ達を睨みつけた。
「かかって来い…!」
その言葉と同時にジャベリンとベルファストは飛び出した。それに援護するようにエンタープライズは光の矢を放つ。放った矢はベルファストとジャベリンの間を通り、一本から五本の矢に拡散する。マーレはその矢を全てを剣で弾くと次はベルファストの攻撃を察知し、咄嗟に攻撃を避けるが、その先で全速力で突撃するジャベリンを防ぐまでにはいたらなかった。
「何!?」
マーレはジャベリンの槍を掴んで防御したが、ジャベリンは止まることなくそのままマーレとジャベリンは前へと進み続けた。
「凄い…何だか力が湧いてくる!」
(綾波もそうだがKAN-SEN達の力が更に上がってる…覚醒では無いがそれに近い何か…まさかアイツの…)
マーレは優海の【コネクター】としての能力を思い出す。優海の本当の正体であるセイレーンの【
先程の綾波の力もその影響だろう。
「だがその程度じゃ…届かない!」
マーレは背後にある両方の艤装をジャベリンに向けて攻撃しようとしたが、右の艤装をエンタープライズに左の艤装をベルファストに攻撃され、そのフィードバックのダメージをマーレは受け、完全にバランスを崩してしまう。
いつものマーレならこの攻撃を簡単にいなすことも簡単だったが、今のマーレはギリギリ戦える力しか残っていなかった。
「ぐっ…そろそろ限界か!」
「これで…終わり!」
ジャベリンは勢いよくマーレに攻撃し、その衝撃でマーレは吹っ飛ばされる。己の制限時間が迫ってきたせいか、マーレは初めて海に膝を着いた。
「やるな…」
「おいおい情けないぞ〜?それに、コネクターも保護されたようだし。」
上空からピュリファイヤーが煽るようにマーレに近づき、その態度にマーレはイラついたのかピュリファイヤーにがんを飛ばした。
そして、マーレは優海がいた所に目を向くと、ベルファストが優海を抱えて、そのまま保護していた。
「うるさい…目的は果たした。お前も今日めいっぱい遊んだだろう。」
「まぁ、そうか。それじゃ前夜祭はこれでお開きかな?」
「逃げる気か!」
エンタープライズはマーレに矢を構え続けたいた。
ピュリファイヤーや量産型のセイレーンを相手にしていたKAN-SEN達もエンタープライズ達と合流し、形勢はアズールレーンに向いていた。
「まぁな…目的は果たしたからな。…それとお前らに質問がある。」
マーレは武器を仕舞い、KAN-SEN達によってようやく保護された優海に指を指す。
「お前らはそいつの事…信じてるんだったな。」
「そうだ。」
「そいつはセイレーンなのにか?」
「違う。指揮官は…一人の人間だ。」
「ふっ…やはりお前らはそこしか見ていないんだな。」
エンタープライズが答えた発言にマーレは小さく笑った。
「どういう事だ…」
その笑いがまるで自分の思いを踏みにじられたような感じがしたのか、エンタープライズは力強く矢を構えた。
「だったら証明してみせろ、指揮官がセイレーンでも信じてるって事をな。…やれ、ピュリファイヤー。」
「はいはい。と言うか最初からそんな作戦だったしね。」
ピュリファイヤーは欠伸をしながら優海を見た。そして、これから起こる事が楽しみにしてるようにピュリファイヤーは無邪気に笑った。
「起きろ【コネクター】!久しぶりの命令だ、KAN-SEN達と戦え!」
「……」
「ご主人様…?」
ピュリファイヤーが機械を起動するように叫ぶと、同時に動かなかった優海の指先がピクりと動いた。
その事にベルファストは気づき、心の中で安堵を漏らしたが、奥底では嫌な予感をしていた。
「…了解。」
優海はベルファストの肩を振りほどき、そのまま勢い良くベルファストから離れた。
「ご主人様!?」
「……戦闘を開始。」
優海は消えていた艤装をもう一度展開した。マーレと同じように左右それぞれが戦艦と空母の役割を持った艤装でKAN-SEN達を襲う。優海は戦艦の役割を担う艤装の主砲をKAN-SEN達に放った。
「指揮官!?」
あまりに急な事でKAN-SEN達は反応出来ずに優海の初撃を諸に受けてしまう。何とか耐えきれたが、KAN-SEN達にはまだ戸惑いがあった。
「アッハハハ!どう?これがお前らの指揮官の本性だよ!お前らの敵のセイレーンなんだよぉ!」
ピュリファイヤーは戸惑うKAN-SEN達を滑稽に思うように腹の底から笑った。
「そんな…指揮官!私達が分からないのか!?」
KAN-SEN達の説得は無力であるかのように優海は再度KAN-SEN達に主砲を放った。KAN-SEN達はかろうじて攻撃を交わしたが追撃はしなかった。
「ご主人様!私です!ベルファストです!」
「無駄だよ!もうこいつはとっくにセイレーンなんだよ!」
「そんな…」
目の前の現実を受け入れられずに絶望したKAN-SEN達は認められずにいた。
「どうだ、これでも信じてるのか?これでもお前たちはこいつを指揮官として信じるのか?」
「くっ…」
マーレの質問にエンタープライズやKAN-SEN達は答えることが出来なかった。
「それじゃ私は戻るわ。あんたはどうするの?」
「俺も戻る。」
「あっそ。そんじゃあんたのブラックキューブを寄越せ。」
マーレはそう言われ、手に持っているブラックキューブをピュリファイヤーに投げつけるように渡した。
「おぉ…これは随分と蓄えたなぁ〜どんな怪物が出るか楽しみだな〜」
ピュリファイヤーは黒く禍々しく光る黒いメンタルキューブを見つめ、子供のような無垢でありながらそこには微かな狂気を感じる笑顔を浮かべながらこの場を離れた。
「それじゃあな。お前たちが本当に指揮官を信じてるならまさかとは思うが…殺したりはしないよな?」
「ぐっ…待て!」
エンタープライズの制止の言葉は届かず、マーレはそのままこの場を離脱しようとしたその時だった。
「待ってマーレ君!」
「…!」
マーレにとって懐かしい人の声が聞こえ、マーレは思わず振り向いた。
「待ってマーレ君!どうして…どうしてなんですか!どうしてこんな酷い事するんですか!」
海の向こうの砂浜でネージュがマーレに声を届かせる為に喉が壊れそうな程叫んでいた。その声はしっかりとマーレの耳に届き、マーレは立ち尽くしていた。
「……」
マーレは名前を呟くこともないも言おうとせずにただネージュの顔を見てこの場を離れた。
「マーレ君…」
叫びきった喉に手を当て、ネージュは離れゆくマーレを見ている事しか出来なかった。
「マーレ君…どうしてなんですか?どうして…」
「ネージュさん!」
執務室から出たネージュを追いかけてきたオセアンが息を切らしてネージュにようやく追いついて来た。
「ここは危険です!」
「オセアンさんは!?」
「私は…ここでKAN-SEN達の指揮をします。」
オセアンは目付きが変え、軍帽を深く被り、通信機に手を取った。
「ぐっ…なんか不味いことになったな……」
執務室の窓から戦闘見ていたオセアンは一足先に執務室から出たネージュを追いかけたが、マーレによって傷を負ったジンはまともに動ける体ではなく、リアとリフォルがその介抱をしていた。
「動かないで!まだ傷が深いんだから!」
無理やり動こうとするジンをリアは押さえつけた。
「でもな…こんな所で寝てる訳にはいかないんだよ!」
「お願いだから!もう無茶しないで…お願い…」
リアは泣きながらジンの体に寄り添った。ジンはマーレによって意識不全の状態まで陥った時は全員がジンが死んだと思っていた。その時のトラウマがリアに心の傷を負わせていた。
「…リア。行かせてあげよう。」
「リフォル!?何言ってるの!こんな体で行かせられるわけ」
「リア!…頼む。」
ジンはリアを力強く見つめ、自分の意志を貫こうとしていた。
「…わかったわ。でも無茶はしないで。したら許さないんだから。」
「…サンキュー。」
リアとリフォルはジンの腕を担ぎ、ジンを支えるようにして歩いた。
「待ってろ…優海!目…覚ましてやるからな。」
無機質なビームの砲音と艦載機が飛ぶ音が飛び交う中でKAN-SEN達の心身ともに満身創痍であった。
「ぐっ…指揮官!目を覚ましてくれ!」
エンタープライズの呼び掛けに答えることもせず、優海はエンタープライズに向けてさらなる追撃をかける。
エンタープライズは苦しくも攻撃を避け続けるが、いつまでもこうしてる訳にもいかない。このまま戦闘が長引けば確実に満身創痍のKAN-SENは全滅する。
「指揮官…!」
『…ちら…アン…』
「通信…!?誰から…?」
エンタープライズは通信のノイズ音を消すようにチャンネルを調整し、通信の声を聞いた。
『こちら、オセアンです。これより貴方達の指揮をします。全KAN-SEN達は今から私の指揮下に入ってもらいます。』
「貴方が指揮をするのか!?」
『こう見えても…私は結構やる方でしてね…優海を止めます。協力して下さい…!』
通信越しでも分かる決意に満ちた声に、全KAN-SEN達は優海を止めるために力を振り絞り、全KAN-SENがオセアンの指揮下に入った。
「絶対…救ってみせる!」
「ご主人様…必ずや!」
「指揮官!私に何度も説得したように私も貴方が元に戻るまで何度も説得する!」
マーレにやられたKAN-SEN達も力を振り絞って立ち上がり、戦闘に復帰した。倒す為では無く、救うために、今もう一度KAN-SEN達は立ち上がった。
…誰か。
誰か俺を…
殺してくれ…
もしもの話(R-18)を観測しますか?
-
Yes
-
NO