もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜 作:白だし茶漬け
いつの間にかUAが9万突破していて10万突破まで後5千ぐらいまでに来ました。
最初の方はこれ程読まれるとは思っても見ませんでしたので感動で手が震えました。
最後まで私も頑張りますのでご愛読よろしくお願いいたします!
暗い暗い水面の上で俺は一人立ち尽くしていた。
体を動く気も起きず、ただそこで俺は水面に映る自分を見ていた。鏡のように俺の顔を映す水の中にいる俺の髪は白く乱れ、皮膚も一部白くなっていた。目も左目がセイレーンの同じ黄色のに変わっていた。
視界が所々に白黒のノイズが走り、気のせいか水の中の俺が怪しく笑っていた。これが俺の本性だと言ってるように…
「なぁ…誰か…俺を…」
『損傷が軽いKAN-SENはそのまま戦闘を続行。中破、大破してるKAN-SENは即刻ヴェスタルさんと明石さんがいる部隊に合流し、応急修理が終わり次第戦闘に復帰を、波状攻撃で優海を包囲して動きを止めます。』
「「了解!」」
KAN-SEN達はオセアンの臨時指揮に従って優海を止めるために戦っていた。現在戦えるKAN-SEN達は少なく、部隊数で言うと2部隊ほどしかいない。一部隊は『エンタープライズ』、『ベルファスト』、『ジャベリン』、『ホーネット』、『イラストリアス』『綾波』であり、あとの一部隊はロイヤルメイド隊の『シリアス』『ダイドー』『シェフィールド』そして『ヴィクトリアス』『フォーミダブル』、負傷している『クリーブランド』『プリンス・オブ・ヴェールズ』『ラフィー』であった。他にもKAN-SEN達はいたが、まともに戦えるのは極わずかであった。
相手は単騎であるが、相手は圧倒的な力をもったマーレを基にして造られたセイレーン…これだけの部隊が合っても少ないとオセアンは感じていた。しかも優海を倒さずにここを乗り切ることは至難の技だが、オセアンは覚悟を決めて呼吸を整える。
『…明石さん、ヴェスタルさん。修理は損傷が少ないものからお願いします。武器さえ使えれば問題はありません。急いでお願いします。』
「了解です。明石さん、頑張りましょう!」
「任せるにゃ!どんどん直すにゃ!」
明石とヴェスタルはテキパキとKAN-SEN達の損傷箇所を直し、武器はまともに使えるようにした。修復をされたKAN-SEN達は急いで戦線へと復帰するが、指揮官を助ける焦りがあるのか残っている量産型のセイレーンの攻撃に全く目がいかなった。
「指揮官!今助けるから!」
『待って下さい。戦線に復帰したKAN-SEN達は、まず量産型セイレーンからの殲滅をお願いします。』
「で、でも指揮官を助けないと!」
『分かっています。ですが優海君の本来の力は他者の強化です。もしこの場にいる全ての量産型が強化されたら打つ手がありません。…もう一度言います。量産型の殲滅を…!』
優海のセイレーンのとしての能力…それはメンタルキューブを介して他者と繋がり、その力を強化するものだ。仮にもし量産型も強化できるとしたら、今万全な状態のKAN-SENがいないこの状況では打つ手が無い。
だから強化される前に早めに殲滅しなければ勝機が無いとオセアンは判断した。
一刻も早く指揮官を助けたいKAN-SEN達にとっては歯がゆい事だが、その気持ちを押し殺し、オセアンの指示に従った。
「…ヴィクトリアス、フォーミダブル、ユニコーンちゃんと綾波ちゃんをお願い。」
「クリーブランドとウェールズも一旦引け。」
「そんな!私も…ぐっ…!」
クリーブランドは強気に立ち上がろうとするが、先程マーレとの戦闘によって生まれた傷が応えたのか、立ち上がるとそのまま傷に手を当てて苦しそうにしていた。
「大丈夫だ。さぁ、早く!他の皆もだ。」
「…分かったよ…絶対戻ってくるから!」
「ジャベリンも綾波とラフィーを連れて行け。」
「は、はい!綾波ちゃん、しっかり!」
ジャベリンは綾波の肩を持ち、急いで明石の所に足を急げた。その他にも、マーレによって負傷したKAN-SEN達は、即座にヴェスタルと明石の元で修理を行う為にこの場を離れた。これにより、この場にいる人数は極わずかなった。
「さて…問題は優海君がどう攻めてくるかですが…」
オセアンは優海の出方を伺っていた。優海は自身で攻めようとせず、戦闘は艤装に任せて自身はKAN-SEN達から距離を取っていた。
「指揮官…もう一つの艤装は使わないのか…?」
エンタープライズはその場で立ち尽くしていた指揮官の艤装を見て疑問に思った。今確認出来る艤装は二つ…セイレーンの艤装だけで、あの白い艦の艤装が展開されてないのだ。
『恐らくですが今の優海君は完全にセイレーンに戻っていることから、セイレーンの力のみしか使えないでしょう。…元々あの艤装は…私達アズールレーンが与えた物ですから。』
「つまり…あの武装…【レールガン】は使ってこないと言う事か…」
エンタープライズは何故優海がセイレーンの艤装しか使わない疑問をオセアンは推測混じりの答えをだした。
その推測が正しいのなら艤装三つ分の出力やあの【レールガン】程の兵装は使えないだろうとエンタープライズは少し安堵の息を漏らした。もしも使えたら勝ち目など無に等しいのだから。だが、安心は出来なかった。
『ですが…セイレーンの力をフルに使えるとしたら…』
オセアンの悪い予感は当たっていた。先程、優海はKAN-SEN達の能力を自分のものにしていた。それはコネクターの能力があってこそだ。…つまり、コネクターもその力が使えるという事だ。
コネクターはまるで弓を構えてるような体勢を取り、そのままエンタープライズに矢を向けるように構えた。
「まさか…」
「…KAN-SEN、ユニオン空母【エンタープライズ】ラーニング開始。」
エンタープライズは咄嗟に弓矢をコネクターに向けて構えたが、相手が指揮官でもあるせいか狙いが定まらず矢を放てずにいた。
「くっ…指揮官…!」
「ラーニング完了。」
コネクターに、まるで弓の形を象るように黒い光が集まり、やがてそれは実体化した。その弓は黒く染められていたが、エンタープライズと全く同じ弓だった。
『各自散開!回避行動を!』
オセアンは各KAN-SEN達に回避行動を指揮し、KAN-SEN達はそれに従って散開する。
コネクターは天高く空を飛び、その頭上からKAN-SEN達を狙撃した。放たれた弓は二本に拡散し、それぞれが黒い鳥へと変わり、エンタープライズとホーネットに襲いかかる。
「これって…完全に姉ちゃんの戦い方じゃん!」
ホーネットは自分の姉と全く同じ攻撃方法に戸惑いながら、姿を変えた矢から逃げるが、黒鳥は獲物に食いつくまで逃がさないように、どこまでもホーネットを追いかける。ホーネットは得意の早撃ちの技術を活かした対空砲火を黒鳥に向けて何とか黒鳥を蜂の巣にした。
「しかも…これ姉ちゃんのより強い…!」
「ホーネット!…ぐっ!」
エンタープライズも同じように矢を放ち、矢を青い鳥に姿を変え、そのまま黒鳥に向けて鳥は翔ぶ。鳥同士はぶつかり合い、翼の羽が撒きながら散っていった。
『ですが本質は空母の艦載機とほぼ同質でしょう。ロイヤルメイド隊の皆さん、対空迎撃をお願いします。』
「承知致しました。」
オセアンの指示を受けたロイヤルメイド隊はコネクターが放った黒鳥に向けて対空砲撃を行う。コネクターは自身の艤装から発艦させた艦載機と弓矢の同時攻撃でKAN-SEN達を頭上から狙撃するが、ロイヤルメイド隊の高い対空能力により、KAN-SEN達はほとんど無傷で攻撃を凌いだ。
『こちらヘレナ!オセアンさん!量産型のセイレーンの殲滅たった今完了しました!』
『増援の見込みは!?』
『レーダーから敵影は…無し!セイレーンが現れる兆候もありません!』
『よし、全KAN-SEN達は急いで優海君の無力化を!』
ヘレナからの通信を聞いたオセアンは一気に攻勢へと打って出た。KAN-SEN達はその言葉を待っていたと言わんばかりに、全速力でコネクターの元に進む。
「指揮官、KAN-SEN達の応急処置は施しました。私たちはどうすれば良いですか?」
全てのKAN-SEN達の応急処置を終えたヴェスタルと明石は次の指示をオセアンに聞いた。
『…貴方達には後もう一人、戦闘に復帰させて欲しい人が居ます。』
「…?それは一体…どなたですか?」
ヴェスタルはこれ以上誰を修理すれば良いのか分からず、恐る恐るオセアンに答えを仰いだ。
『その人は必ずこの戦闘の鍵になる人物です。何故なら、優海君は一度も彼女の戦闘の指揮をした事が無いのですから。』
「指揮官が一度も指揮をしてなくて、修理が必要な人物…まさか!」
「にゃ…?一体誰なのにゃ?明石には全く全然分からないのにゃ。」
「明石さん!直ぐに私と来てください!」
「にゃにゃ!?一体どうしたのにゃー!?」
ヴェスタルはその人物が何者か察し、急いで明石の腕を掴んで彼女のいる部屋へと戻った。一方で誰が分からない明石はヴェスタルに腕を引かれるままに体を引っ張れる。
「どうやら気づいてくれた様ですね…。ブレマートンさん、マーブルヘッドさん、リノさん、クーパーさん、イントレピッドさん!」
『おおっ!?いきなりなんですかオセアンさん!』
名前をいきなり呼ばれたブレマートンはその驚きで慌てて足を止めてオセアンの指揮を聞く。
「貴方達に聞きたいことがあります。…貴方達は誰よりもこの基地にいる時間が短いKAN-SENであり、優海君とはほとんど接点が無い…それでも今の優海を信じますか?」
オセアンはこの質問の答えによって戦術を決めようとしていた。もしも迷っていれば、この作戦のキーマン達であるブレマートン達を使う事は避ける事を考えていた。戦場において迷いは禁物であり自分の隣に立つ死神みたいな物だ。しかも相手が相手なので一瞬の迷いが部隊の全滅に繋がる可能性だってある。
そんな状態のまま戦わせたくないからオセアンはこの質問した。だが、それは無用な心配だったようだ。
『え?そんなの信じてるに決まってるじゃん。ボルチモアの話を聞いた通り、すっごく良い人だから私も信じてる。』
あっさりとした言葉で質問を返したブレマートンだが、その言葉には確かな決意の重みがあった。
立場上、取り巻きや自分の地位を利用したがる者の声を聴き続けてる内に、オセアンはその者の言葉の重みを感じられるようになった。嘘なら言葉は空気よりも軽く薄っぺらく、その言葉が鉛よりも重く槍のような真っ直ぐならば、その人の言葉には信念がある。だが、オセアンが聴き続けた言葉にはそんな物はほとんど無かった。
だが、ブレマートンの言葉は違う。これまで聞いたどの言葉よりも信念があった。それはブレマートンだけでは無く、他のKAN-SEN達もそうだった。
『私も!なんて言ったって指揮官はリノのヒーローみたいな人だから!』
『私もエセックスから話を聞いて信じてみたくなった!』
『ボクだって、指揮官があんな風になったら何度だって助けるから!』
『私も指揮官のもっと知りたいですからね〜!』
オセアンはこれ程信念が乗った言葉を聴き続けるのは初めてだった。通信越しでも分かるその重みにオセアンは改めて優海の凄さを実感した。
_流石は英雄の家系ですね〜どうかその力を私達にも…!
_貴方の志には感服致しました!どうかそのお手伝いをさせて下さい!
_私も貴方のようになりたいです!…そこでお話なんですが…
言葉が軽い…邪な心が透けて見えます。志も、信念も、真実も微塵も無い言葉がこの耳で聞いたのはもういくつになるでしょう…しかし、それでも…信念を持った者が…
「…余計なお世話のようでしたね。…貴方達は優海君が指揮をしていない数少ないKAN-SEN達です。恐らく、動きが全く掴めない状態なはずです。私も全力で指揮をしますので…優海を頼みます…!」
「「了解っ!」」
先程の軽はずみな発音ではなく、真剣な発言をオセアンに発し、ブレマートン達は急いで優海の場所へ急ぐ。
「…優海君。やはり君は凄い。まだ日が浅いKAN-SEN達をあれ程まで…」
「それが、優海…だからな。」
苦しみながら誇らしく優海の事を言った男の声が後ろから聞こえ、オセアンは振り返るとそこにはリアとリフォルに肩を借りてようやく歩いていたジンがいた。
「ジン君!?何故ここに来たのですか!早く離れなさい!」
「俺だって優海と四年間過ごしてきたんだ!…ここでぼうっと見てるだけなんて何が
「ですが…!」
「その権利はあるはずですよ。オセアンさん。」
雪のような白い長髪をなびかせながら佇んでいたネージュは何者にも負けない強い目をオセアンに向けていた。
「私達全員、優海君と四年間過ごしてきました。だから私達も救いたいのです。セイレーンも関係ない。ただ暗い底で沈んでいる優海君を…」
他の三人もネージュと同じ意見だと言わんばかりの目をオセアンにつきつけた。オセアンはその目に打たれ、半ば反対しながらも、人の心までは否定出来ないと諦めたが、どこか嬉しい気持ちで溜息をついた。
「全く…ですが無茶はしてはいけません。これは上層部の命令ですよ?」
「…!分かりました!」
(優海君…君にはこれ程君を信じてる人がいます。それはきっと、君がそれ程までジン君達と接し、KAN-SEN達と分かりあって来たからなのでしょう。…フフ、もう歳ですかね、涙脆くなって仕方がありませんよ。)
オセアンはたとえ仮初の虚構であっても、もう一人の息子の成長の喜びを噛み締めながら、誰にも気づかれないように静かに涙を流した。
初めて会った時は何か諦めたようなした彼が、一体どんな思いをして生きてきたのかはわからない。だが、これだけは言える。優海が歩んできた道に間違いなどない事を、オセアンは確信していた。
_指揮官!
_ご主人様!
_目を覚ませ優海!
KAN-SEN達の声やジンさん達の声が聞こえる…もういい…止めてくれ。どうしてセイレーンの俺を助けるんだ…
俺は自分の正体が人類の敵であるセイレーンだと知った。だから…もう皆と一緒にいる資格は無い。それなのに…
「どうしてなんだよ…どうしてなんですか…」
「くっ…攻撃が激しすぎてまともに近づくことも出来ない!」
頭上からのコネクターによる弾幕により、KAN-SEN達はビームと艦載機の嵐に呑まれていた。コネクターは今も尚KAN-SEN達の頭上で、艤装による主砲の集中砲火と艦載機を発艦し続けていた。KAN-SEN達はその攻撃を防ぐのに精一杯であり、戦況は防戦一方だった。
「しかもこの攻撃…こちらの動きをほとんど把握してるような攻撃です。もしもオセアン様の指揮がなければ呆気なく全滅していたでしょう…」
セイレーンに戻ったとは言え元は指揮官だ。今までKAN-SEN達の戦闘スタイルや癖を全て把握し、指揮をしていたのは指揮官なのだから、指揮官であるコネクターはそれを利用しているのだろうとベルファストは予測した。
その予想は当たっており、実際にコネクターはこれまでのKAN-SEN達の戦闘データを解析し、KAN-SEN達の動きを把握していた。
しかし、オセアンの指揮により戦法が変わったKAN-SEN達の動きと、コネクターが持ってるデータとのズレが生じており、何とかKAN-SEN達は攻撃に耐えていた。
『ですがそれも時間の問題…長引けばこちらの指揮や動きを完全に把握して一気に攻めてくるでしょう。』
「なら悠長にしている場合じゃない!私が先行して指揮官に近づく!」
「そんな!無茶な真似はおやめ下さいエンタープライズ様!」
ベルファストは特攻を仕掛けようとするエンタープライズの肩を掴んでその行動を止めようとしたが、エンタープライズは頑なにベルファストの手を振りほどこうとした。
『敵艦載機、来ます!』
オセアンの叫び声で2人は艦載機の接近を察知し、口喧嘩を一旦やめて対空砲火に集中した。艦載機は蜂の集団のように有象無象にKAN-SEN達に襲いかかる。
「な…この物量、まるでホーネットの早撃ちじゃないか!」
この戦い方はエンタープライズの妹であるホーネットの戦い方を思い出させるようだった。
ホーネットの得意技である早撃ちは艦載機の発艦にも影響し、再度艦載機を短い間隔で発艦する事もできる。
しかしそれとは物量が圧倒的に多く、艦載機が空を隠すようにした。太陽の光が届かなくなったこの場が、艦載機の影に覆われた。
「…KAN-SEN、ユニオン空母【ホーネット】ラーニング完了。」
ホーネットの能力を完全にコピーしたコネクターは、ホーネットの得意技の早撃ちを駆使して更なる追撃を右の艤装、【リュウグウノツカイ戦場】の主砲を装填を無視するようにビームを連射した。
ビームと艦載機による嵐のような弾幕は最早防御不可能な領域だった。
「ちょっと…これ、防げるの…?」
自分の能力の完全上位互換を見せつけられたホーネットは、目の前の光景に絶望したように現実を受け入れようとした。最早どうやっても防御なんて出来ない。逃げ場など無いと。…だがあの男だけはそう判断しなかった。
『大丈夫!防げます!皆さん密集をして下さい。』
「そんな事したら集中砲火を浴びてしまう!」
確かにこんな状況で密集などしたら敵の集中砲火を浴びて一気に全滅してしまう。エンタープライズはその指示を聞くことを拒否したが、オセアンの絶対的な自信の声にそれに戸惑った。
『大丈夫です…私を…信じて!』
「…了解!」
KAN-SEN達はオセアンの指示に従い、互いに背中を預けるように密集した。
「本当に耐えきれるのでしょうか…」
この作戦に不信に思ったイラストリアスは不安が勝って思わず口に出してしまった。そんなことは他のKAN-SEN達も思っている事だ。だが、オセアンの絶対的な自信が不安に思ってる彼女達を動かした。
『イラストリアスさん。【装甲空母】はまだ発動出来ますか?』
「え、えぇ。ですが先程の戦闘で少々防御能力は落ちています。この状況では…持って5秒ほどかと。」
『いえ、それだけ耐えれば充分です。』
(充分だと?たった5秒で何が出来るんだ!?)
エンタープライズは更にこの指揮に対する不信感が強まり、今すぐにでも一人で飛びだす勢いだった。
それを見たベルファストはエンタープライズの手を取って、それを阻止した。
「今は、オセアン様を信じましょう。今は堪える時でございます。」
「だがしかし!」
「ここで1人でも居なくなった時に、もしご主人様が意識を取り戻した時、ご主人様がどう思われるのか分かりますか!」
「…!」
もしここで誰かを失ったその時に仮に指揮官が元に戻ったとしたら、指揮官は…自分のせいでKAN-SENを殺めたその罪の重さに耐えきれず、そのまま自ら命を絶つ事も躊躇わない筈だ。そうなればこの戦いの意味を失ってしまう。それだけじゃない、もしここで指揮官を失えば…KAN-SENは戦う意味を失う。
ベルファストはその事を多くは言わず、目でそれを訴えた。
『…大丈夫です。私はこの戦いで誰も死なせません!KAN-SENも優海君も!』
「…その言葉…信じよう!」
エンタープライズは弓を空埋めつくしている艦載機に向けて、オセアンの言葉を信じた。もうエンタープライズはオセアンの言葉を疑いはしなかった。
『では…イラストリアスさんは【装甲空母】の発動を準備してください。タイミングはこちらで指揮します。』
「分かりましたわ。私が絶対に皆様をお守りします!」
イラストリアスは【装甲空母】の発動に全神経を研ぎ澄ました。
『他の皆さんは無理な対空砲火をせずに、防御に徹してください。』
KAN-SEN達は無理な対空をせずに近づいた艦載機を迎撃しながらも、上からのビームの回避に集中した。
艦載機の爆風と、ビームによる熱が息苦しい空気を作り、KAN-SENの緊張感を高めた。一瞬も気が緩められない緊迫感と、艦載機の大軍がKAN-SEN達を縛り付けていた。
『…今です!イラストリアスさん!』
「聖なる光よ…私たちを護って…!」
イラストリアスは2つの艦載機を発艦し、それをこの場にいるKAN-SEN達を包むように空を飛んだ。その内にいるKAN-SENたちの周りに白い光の壁が現れ、KAN-SEN達を守っていた。
『よし、では戦艦の皆さん!それぞれ指定した場所に主砲を一斉掃射!』
エンタープライズ達への指揮ではなく、修理が完了したKAN-SEN達へオセアンは予め指定していた座標へ主砲を撃てと指揮した。KAN-SEN達は一斉に主砲を撃った。
放たれた主砲の砲弾は放物線を描きながら、コネクターが発艦させた艦載機の大軍に直撃した。
直撃した砲弾と艦載機の爆発が連鎖反応を起こし、砲弾と艦載機の連鎖爆発を起こした。エンタープライズ達の部隊はその爆発に巻き込まれてはいないが、数多の爆風がエンタープライズ達に襲いかかる。しかし、イラストリアスの【装甲空母】のお陰でその爆風はエンタープライズ達には届かず、エンタープライズは無傷で済み、空を隠した艦載機は全て撃沈した。
「嘘でしょ…まさか主砲で対空砲火したって訳…?」
「バカな…主砲では緻密な計算と予測が必要なんだぞ…それを外すこと無く…?」
『すみません、囮のような真似をして…大丈夫ですか?』
「あ…あぁ。全員無傷だ…」
『良かった…では引き続き、私の指揮に従ってください。』
オセアンの雰囲気に流されてしまったが、艦載機への対空の主な兵装は専用の対空砲や機銃が主だ。
主砲での対空は出来なくもないが、それには敵の動きを完全に先読み出来る力と主砲の弾道完璧に計算しなければならない。はっきり言うとそれが出来るのはまぐれや奇跡に近いぐらいだ。しかし、オセアンはそれをいとも容易くそれをやってのけたのだ。
「これは…まるで指揮官の未来予知のようですね…」
シェフィールドはたった一回の一斉掃射でコネクターが放った艦載機を全て撃ち落とした光景を見て、どことなく指揮官と同じような指揮をしていると感じた。
『まぁ、オロチの演算能力を使っていた優海君よりかは精度は下回りますが…優海君に戦術を教えたのは私ですからね。』
そう、優海は三年間オセアンの下で指揮官になる為に様々な教育を施された。
海戦術、魚雷術、陣形術、全ての戦術をオセアンに叩き込まれた優海は更に、内なるオロチの演算能力により、必ず当たる未来予知を身につけた。それはオロチだけではなく、オセアンがいたからこそ成りえた力であった。
『教えた側としては私も負けていられませんからね。さぁ、一気に行きますよ。イントレピッドさん!』
「よし来た!イントレピッドGetting on!」
名前を呼ばれたイントレピッドは、数機の艦載機を空にいるコネクターに向けて放った。
艦載機は風を突き破るように真っ直ぐ勢い良くコネクター向かい、コネクターは艤装のビームで艦載機を撃沈した。しかし、撃沈された艦載機の爆風の中から、イントレピッドが予め出していた艦載機が現れ、コネクターはその艦載機の特攻を回避出来ず、咄嗟に盾にした艤装と艦載機が衝突した。
「指揮官っ!」
「大丈夫!手加減はしてるから!」
特攻を受けたコネクターはそのまま空から海の上に落ちていったが、難なく着地をした。しかし、直撃された艤装のフィードバックが応えたのかコネクターは海に膝を着いた。
「データに無い攻撃パターンを検知。解析…ユニオン空母、【イントレピッド】と判断。アナライズを開始する。」
コネクターは自分の中にないデータを検知し、即座にイントレピッドの戦闘データを収集する。しかしオセアンがそれを許すはずが無く、更なる追撃がコネクターに迫った。
『ここで優海君を止めます!』
「分かってるよ!マーブルヘッド、リノ、クーパー、行くよ!」
「了解!」
ブレマートン、リノ、マーブルヘッド、クーパーはお互いの射線上と被らないようにコネクターを包囲した。
包囲されたコネクターはイントレピッドの分析を中断し、四人の迎撃にあたろうと、艤装を使おうとしたが、エンタープライズ達の攻撃により、艤装は攻撃を受けていた。
「指揮官…少しだけ我慢してくれ!」
ブレマートン達四人に気を取られたコネクターの隙を付いたKAN-SEN達は、コネクターの艤装に集中砲火を浴びせた。
「艤装被弾…損傷甚大…」
両方の艤装が同時にダメージを受けた為、二つ分のフィードバックを受けてしまったコネクターは完全に動きをとめた。
「指揮官!」
「……」
KAN-SEN達の呼び掛けには相変わらず反応は無く、コネクターは沈黙していた。心配しているKAN-SEN達はコネクターに近づこうとしていたが、まだ指揮官が戻っている様子が無いため、それが出来ないでいた。
「指揮官!」
「ご主人様!」
「優海君!」
「……。」
コネクターの指先がピクリと動き、よろめきながらコネクターは立った。
「…指揮官?」
「…戦闘続行可能…目標の…殲滅を…続行。」
「そんな…!」
コネクターの背中に黒い光が集まってゆく。それはまるで戦艦の艤装を型どっており、さらに大剣を型どるように別の光がコネクターの手に集まっていた。
「…目的は…果たす…それ…が自…分が生まれた意味…!」
最早ボロボロの体は、戦闘を続けるには不可能な程だった。艤装が弱々しくコネクターの周りに張り付き、それでも尚敵を倒す為にコネクターはKAN-SEN達を睨む。
こうでもしないと生きていけないように…
「もう止めて下さい!ご主人様!」
「…全KAN-SENのアナライズ完了。…同時にラーニング完了。KAN-SEN名【ウォースパイト】。」
黒い光が実体化を完了させ、ウォースパイトと全く同じ形の艤装と大剣がコネクターの手に渡った。コネクターは空を切るように剣を振り、1番近くにいたリノに接近した。
「え!?私!?」
コネクターの接近に気づいたリノは回避こそは出来なかったが、装備しているガジェットで何とかコネクターの剣を掴んで防いだ。
「ぐっ…指揮官!これじゃダークヒーローなんかじゃ無くてただのヴィランだよ!早く元に戻ってよ!ヒーロー!」
リノの必死の説得は優海には届かず、コネクターはまるで声など聞こえなかったように剣に力を込める。
リノのガジェットから金属が割れるような鈍い音が聞こえ、ガジェットが限界に達していた。肌に食いこんだ金属のせいか、ひび割れたガジェットの隙間から、リノの血が流れ出ていた。
「うぅ…もう…限界…」
「リノー!」
リノを助ける為に自らコネクターに近づいたクーパーは、そのまま体当たりする勢いだった。接近に気づいたコネクターは艤装でクーパーに攻撃しようとしたが、ベルファストの主砲により、艤装は吹き飛ばされ、同じくしてコネクターもフィードバックのダメージを受け、クーパーの体当たりをモロに受けてしまう。
「くっ…これ以上攻撃したらご主人様が!」
既にボロボロのコネクターをこれ以上攻撃を当てたら、間違いなく指揮官の生命は終わりを告げる。
この戦いの目的は
「指揮官…もう貴方を正気に戻すのは不可能なのか…?」
「…
コネクターが装備しているウォースパイトの艤装が消え、代わりにエンタープライズの装備がまたコネクターの元に装備された。
コネクターは一心不乱に弓をエンタープライズに構え矢を引いた。エンタープライズも同じくしてコネクターに矢を向けたが、これ以上攻撃すると指揮官の体が持たない恐怖が狙いを震わせた。
「…指揮官…」
「……」
コネクターは引いた弦を離し、矢は黒い鳥に姿を変え、エンタープライズに襲いかかる。戦意を失ったエンタープライズはその攻撃を受け入れように自分の弓を海に落とした。
「…私は結局、誰も助けられないのか…」
「そんな事ないわ。まだ諦めちゃダメよ。」
エンタープライズは懐かしい声を聞いて顔をあげる。
黒い鳥は、エンタープライズの後ろから飛んできた青い鳥と衝突し、2羽の鳥は粒子となって消えていった。
「今のは…!」
エンタープライズは後ろを振り返り、先程の攻撃をした人物を確認した。
白く長い髪にネイビーカラーのコートを着ており、その胸元には青い薔薇が添えられ、エンタープライズが託された鳥、いーぐるちゃんが彼女に寄り添っていた。
「ヨークタウン…姉さん?」
「さぁ、立って。今度は皆で指揮官を助けるわよ。」
もしもの話(R-18)を観測しますか?
-
Yes
-
NO