もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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想いと願いと懐かしさと

「今の所…異常は無いっと…」

 

海中の異常が無いか哨戒していたKAN-SENは潜水艦のデイズであった。

何も異常がない海中を進むと、彼女は異変を感じた。

突然海上から光と衝撃が彼女に襲いかかりデイズは海中にも関わらず吹き飛ばされる。

何があったのか確認するため海上に顔を上げると、そこには信じられない光景があった。

 

「なに…あれ…?」

 

微かに感じる熱と爆風の臭い…そして街を飲み込んでる光は間違いなく爆発の光景だった。紫の光が街を消し去っていった。

 

「早く知らせないと!」

 

デイズはこの事を報告する為、全速力で基地に戻った。

 

 

_翌日 アズールレーン基地

 

セイレーンがこの基地を襲撃して翌日が経ったこの日、KAN-SEN達はある映像をみて戦慄していた。

 

「なにこれ…」

 

「セイレーンの仕業以外に有り得ないでしょ。」

 

KAN-SEN達が見ていた映像は無惨に破壊された無人島の残骸だった。いや、残骸と言っていいのかと思うほど形状が維持されておらず、完全に島は破壊されていた。

それを見たクリーブランド、コロンビア、テンバー、モントピリアのクリーブランド級四姉妹はそれを見て唖然としていた。

 

「この島…確か指揮官を助けた時に行った島だよね。」

 

「そう…そして、テンペスト…いや、マーレの圧倒的な力に敗れた場所でもあるね。」

 

見覚えがあった島の正体はKAN-SEN達が指揮官を救出した場所であり、マーレの力の恐ろしさを味わったしまであった。

 

「というかなんでこんな無人島を?普通ならもっと人がいる所に攻撃するでしょ。」

 

コロンビアが風船ガムを膨らませながら誰もが思った事を発した。確かに、兵器の恐ろしさを伝えるなら、人がいる島に兵器を放ち、生殺与奪の権利を自分の内に収めるのが最も効果的だ。それなのにセイレーンはわざわざ無人島を攻撃していた。

 

「ふん!挑発のつもりかしら。随分と舐められたものね。」

 

優雅に砂糖たっぷりの甘い紅茶を飲むクイーンエリザベスはこの行動を挑発と受け取っていた。

 

「ですが女王陛下。これはかなりの問題です。もしもこんなのがこの基地に放たれたら…」

 

「一瞬で終わるな。」

 

「まぁそもそもこんな破壊力を持った兵器は…人類ではまだ作れないしね。」

 

「改めて見ると、私たちはとんでもない敵を相手にしてるってことね…」

 

ストレートのほろ苦い紅茶を飲み、この問題を重要視するオセアンと右腕が怪我してるので利き手の反対の左手を使ってカップを持ち、ミルクと砂糖を入れたコーヒーを飲むジンと何も入れてない完全なブラックコーヒーを飲むリフォルとジンよりも少し砂糖が多めのコーヒー飲むリアがいた。

 

「…ジンさん?怪我の方は大丈夫なのですか?」

 

ジンの怪我を心配した青い髪のKAN-SENはユニオンのヘレナであった。

 

「ん?あぁ、大丈夫だ。心配すんなよ。というかお前らは大丈夫なのかよ。優海の奴、目覚めてないんだろ?」

 

「それは…」

 

ヘレナだけに限らず、他のKAN-SEN達は指揮官である優海の安否を心配していた。

昨日、何とか指揮官の暴走をとめたKAN-SEN達だが指揮官はそのまま意識を失い、今も尚目を覚ましていなかった。

 

「ま、今はネージュとヴェスタルが看病してるさ。」

 

ジンは苦いコーヒーを一杯飲み干し、お代わりを求めた。そんな時、ドアのノック音が部屋に響き渡り、ベルファストが返事をしながらドアを開ける。

そこには、緑色の髪と猫耳を生やし、少し自分の体型よりも大きい服を着たKAN-SEN、明石がいた。

 

「指揮官の解析データがとれたにゃ。少し時間あるかにゃ?」

 

一同はこの言葉に同時に頷いた。

 

 

 

 

_指揮官個室にて

 

「脈拍は正常…呼吸も安定してますね。」

 

ヴェスタルは目が覚めない指揮官の脈と呼吸をはかり、指揮官の正常を確認した。

だが、それでも目を覚まさない指揮官を見たヴェスタルは悲しみにくれた。本当に大丈夫なのか確認するように、ヴェスタルは色素が戻った肌色と男性にしてはかなり細い腕をとった。

 

「…指揮官はこんな細い腕で今まで戦ってきたのですね。」

 

こんな細い腕でも自分より大きい大剣を軽々と振り回せる筋力がある。それは指揮官が元々セイレーンであり、だからこそ見た目とは裏腹の筋力があると明石とヴェスタルは考えていた。だが、今のヴェスタルはそんな事はどうでもよかった。ただ今は開いた指揮官の目を見たいとばかり思っていた。

ドアのノック音が聞こえ、ヴェスタルは返事をしながらドアを開けた。ドアを開けると雪のような白い髪に青い宝石のような目をした女性、ネージュがタオルとボウルを持っていた。

「替えのタオルと水を持ってきました。」

 

「ごめんなさい。手伝わせてしまって…」

 

「いえいえ、私が好きでやってる事ですから。」

 

ネージュは指揮官の個室に入ると、部屋の中を興味津々に見た。最初に映ったのは机の上にある大量の書類と沢山の物が飾られている本棚だった。

だが、それよりもまずネージュは指揮官が寝ているベットに近づき、水で濡らしたタオルを固く絞ったあと、指揮官の額に載せた。

 

「優海君に一体何があったのでしょうか…?」

 

「それに関しては明石さんのデータがありますよ。」

 

「聞かせてください。私達も知りたいのです。優海君のこと…全部。」

 

ネージュは真っ直ぐヴェスタルの目を見て話し、ヴェスタルはそれに応えるように一つ咳払いをした。

 

「では、話しますね。まず指揮官のあの未知の艤装ですが…」

 

 

 

「指揮官のあの艤装の分類は【駆逐艦】にゃ。あの火力で駆逐艦なのは信じられにゃいけど、艤装の規格的に間違いないにゃ。」

 

「駆逐艦…!」

 

「アークロイヤルは黙ってなさい。」

 

指揮官が装備していた艤装の分類が駆逐艦であることに誰よりも嬉嬉として喜んでいたアークロイヤルの反応を見たクイーンエリザベスはゴミを見るような目でアークロイヤルを黙らせた。

 

「は、話しを続けるにゃ…次にあの艤装は一体なんの艦の話しにゃ…」

 

 

 

 

 

 

「端的に言うと、指揮官が装備していたあの艤装…私達の知らない艤装です。つまり…未来作られるかもしれない艦なのではないかと考えました。」

 

「未来作られるかもしれない艦…?」

 

「理由は二つ。1つはオセアンさんに頼んで全ての艦のデータを調べてもらいましたが、該当する艦は無し…そして二つ目…指揮官の武装です。」

 

 

 

 

 

 

「あの武装はとんでもない破壊力を持ってるにゃ、62口径はある艦砲に30mmの機関砲、そしてミサイルの発射口が数個に可変式の大剣…極めつけのあのレールガンという兵装…こんなの今の技術じゃ作れないにゃ。」

 

「…駆逐艦の域を遥かに超えているな。」

 

エンタープライズがそれを言うと、他の皆もそう思うお言ってるように頷いた。駆逐艦とは思えない火力はまさに戦艦そのものでもあるかのようだった。

KAN-SEN達はこれまで指揮官が戦っていた姿を思い出していた。暴走したエンタープライズと戦闘を行った時にほぼ一人で全KAN-SEN達を守り、先程の戦闘でマーレと戦った時、マーレが生み出した鳥籠にKAN-SEN達はヒビ一つ入らなかったのに、指揮官のレールガンはいとも容易く鳥籠にヒビを入れさせた。

威力の差は明白であった。

 

「と言うかなんで()()()()()()()()()()()()って言うんだ?セイレーンのオリジナルの艦って訳じゃないのか?」

 

ジンは頭を掻きながら明石の言葉に疑問を持った。

誰も見たことが無く、今の技術じゃ作れないのならセイレーンの完全オリジナルの艦という可能性だってあるとジンは主張した。

しかしその主張はオセアンによって崩された。

 

「ジン君、忘れてはいませんか?KAN-SEN達と艤装はメンタルキューブによって生まれ、それ艦の記憶や記録によって決まります。」

 

「艦の記憶…あ、そうか。()()()()()()()()()がある訳無いもんな…」

 

そう。KAN-SEN達はメンタルキューブよって生まれ、そこにある艦の記録や記憶によって決まる。

つまり、指揮官の艤装の元になった艦は必ず作られているという事になる。

 

「まぁ、セイレーンの艦ならサメやタコのような海洋生物の見た目になるはずだけどにゃ。」

 

「それもそうか。」

 

疑問が解けてスッキリしたジンはソファーに体を預けるように倒れ込んだ。ジンの体重によってソファーの背もたれが沈んでいく。

 

「それじゃあ次に行くにゃ。次はそのセイレーンの艤装についてにゃけど…」

 

 

 

 

 

「次に指揮官が持つセイレーンの艤装です。あれが本来指揮官が装備していた艤装であり、指揮官の正体の現れです。」

 

「優海君は…セイレーンの接続者(コネクター)だった…KAN-SEN達の能力を自分の物にするなんて…」

 

指揮官である天城優海の正体はセイレーンの指揮官の役割を担うはずである個体、接続者(コネクター)であった。マーレが言った通りならKAN-SEN達のメンタルキューブを解析し、学習する事でその能力を我がものとしたり、KAN-SEN達の動きを完全に読むことが出来るので、戦闘に置いて圧倒的なアドバンテージを獲得することができる。

 

「それにマーレが言った事が確かなら、コネクターは他者の強化が可能…こちらが本来の能力らしいですね。」

 

「マーレ君…」

 

昔共にすごしてきた幼なじみの名前を聞いたネージュは未だに変わり果てた姿を信じられずにいた。戸惑いや困惑や疑問で心の中がぐちゃぐちゃに掻き回されネージュはその渦を止めるように胸を強く掴む。

 

「そういえば…ネージュさんは確かマーレの幼なじみでしたね。…詳しく聞かせてくれませんか?」

 

時を同じくしてヴェスタルと全く同じ質問した明石がオセアンに尋ねていた。ネージュは幼なじみとして、オセアンは息子としてマーレについて語った。

 

「マーレ君は…私にとって初めての…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうですね、マーレは…ジンやKAN-SEN達が見てきた優海君と全く同じですよ。」

 

「は?俺が見てきた優海って…えぇ!?」

 

「そうです。あれが私の知ってるマーレです。」

 

「え…えーと…」

 

ジンとKAN-SEN達はそれぞれ優海とマーレの言動を思い出していた。やはり二人ともの性格が真逆なので今の優海の性格が昔のマーレの性格と同じなのがにわかには信じられなかった。

 

「いやいやいや!真逆だろ!優海はくっそ優しくて、マーレはかなり冷徹だろ!あぁくそ!なんかやられた時思い出してムカついてきた!」

 

ジンは負けた悔しさを込めてソファーを何度も殴りつけながら、ベルファストが用意した菓子を一気にやけ食いした。途中でエリザベスが私の分をとるなと言ってきたが、ジンには聞こえておらずジンは全ての菓子を食べ尽くしてしまった。

 

「あぁ!何やってるのよこの愚民!私のお菓子全部食べるなんて!不敬よ!」

 

「誰が愚民だゴラァ!?」

 

先程の怒りと自分を愚民だと見下されてるような態度にカチンと来たジンはエリザベスにがんを飛ばすように睨みつけた。しかし、相手は一国の女王である為他の者が全力でジンをなだめていた。

 

「ま、まぁまぁ…ジン君も女王陛下も落ち着いて…えーと、ベルファストさん…」

「承知しました。直ぐに新しいお茶菓子を持ってきて参りますので。」

 

「あ、じゃあ私も一緒に行くわ。一人より二人の方が良いでしょ?」

 

「ではお願いします。エディンバラ姉さん。」

 

ベルファストはオセアンの意図を素早く正確に汲み取り、エディンバラと一緒にお茶菓子を取りに出た。

二人は急ぐことなく、赤い絨毯が敷かれた廊下を静かに歩いていた。お茶菓子を取ってくるために食堂に行く途中、指揮官がいる個室の前で立ち止まった。

普段の彼女ならこんな事はしないのだが、彼女は任された仕事よりも指揮官の安否を何よりも気にしていた。

 

「ご主人様…」

 

「そんなに心配なら、部屋に入る?」

 

立ち止まったベルファストの考えを分かっているかのように察したエディンバラが個室のドアをノックをしようと手をドアに近づけたが、すんでのところでベルファストがエディンバラの手を掴んでしまう。

 

「いえ、必要…ありません。主やお客様の命を真っ当するのがメイドの役目なのですから…」

 

そう言いながら自分の仕事を果たそうとしたが、エディンバラは何度も個室のドアを見るベルファストを見逃さなかった。やはり、ベルファストも誰よりも指揮官の事を心配しているのだろう。

 

「はぁ…少しのわがままなら良いんじゃないの?」

 

「ですが…」

 

「あ、もしかしてまた私がドジを踏むかもしれないと思ってるんでしょう〜?これぐらい私一人でも出来るから!ベルはさっさと指揮官の所に行く行く!」

 

エディンバラはベルファストの両肩を背中から抱き、体を指揮官がいるドアに無理矢理向かせた。

 

「エ、エディンバラ姉さん?」

 

「大丈夫。陛下にはちゃんと言っておくから…少しは姉らしいことさせてよ。」

 

「…ありがとうございます。姉さん…!」

 

ベルファストはドアを心地よくノックし、ヴェスタルからの入室の許可を得た後にいつも通りの顔をしながら部屋に入っていった。

 

「ふぅ…完璧すぎる妹を持つとちょっと苦労するなぁ…」

 

エディンバラはドアに背中をつけて室内の声を聞き取っていた。自分の妹であるベルファストの安堵の声がドア越しに聞こえており、今頃エディンバラが見た事ないような安心した顔をしてるのだろう。

 

(あんなに安心して喜んでいるベルファストの声…聞いた事ない…もしかして、ベルも指揮官の事が…)

 

ベルファストの聞いた事ない声を聞いたエディンバラは、それを発見した事を嬉しく思った。だが同時にベルファストが抱いてる者が分かり、嬉しさが嫉妬の霧で薄れていくのを感じた。

「指揮官…取られちゃうかな……だめだめ。早くお菓子を届けないと!」

 

エディンバラは自分の気持ちを無理やり箱に推し詰め寄るように頬を叩き、急いで菓子を持っていく。この時、珍しくエディンバラはドジを踏まずにいた。

 

 

 

 

 

 

「ふむふむ…なんだか今のマーレからは信じられない話ですね…」

 

「そうなんです…最初見た時は別人だと思いましたが、あれは間違いなくマーレ君です。…なんでセイレーンになんか…」

 

ネージュは未だにマーレの事を受けいられずその場で顔を俯かせてしまう。ヴェスタルは何か声をかけようとしたが、かける言葉が見つからずにいたその時、ドアからノック音が部屋を響かせた。

 

「あ…どうぞ〜」

 

「失礼致します。」

 

丁寧に頭を下げながらドアの向こうからベルファストが入り、ベルファストはすぐ様指揮官の顔を見た。

 

「大丈夫ですよ。今の所全く異常は見当たりません。」

 

「そうですか…!良かった…」

 

ヴェスタルの言葉を聞いたベルファストはホッと胸を撫で下ろしながら安堵の息を漏らした。

ベルファストの珍しい表情を見たヴェスタルは良いものを見せてもらったように笑った。

 

「ふふ、さぁどうぞお座り下さい。」

 

ヴェスタルは空いてる椅子をベットの近くまで移動させて、ベルファストに座るように言った。ベルファストは頭を下げて、ヴェスタルが用意した椅子に座り、指揮官の顔を見た。

 

「改めて見ると…本当に細いですね…」

 

「そのような細い体でも私たち以上の力が出るのは、元がセイレーンが理由でしょうね…」

 

「でも…確かオセアンが行ったところによると、優海君は確かに幼かった頃があると聞いてます。…KAN-SENって成長するのですか?」

 

ネージュの言うことにベルファストとヴェスタルは首を横に振った。

KAN-SEN達は初めから性格や体格がほぼ決まっており、それ以上やそれ以下に成長することは無い。勿論、KAN-SEN達に幼い頃など無いのだ。

 

「恐らくですが、人間に見せるように多少は成長できるようにしたのでしょう。真意は分かりませんが、セイレーンの技術もまだまだ謎ばかりです。今はこのような答えで済むことしか出来ないのが現状ですが…」

 

「そう…ですか。…本当に人間みたい。」

 

「人ですよ。ネージュ様。」

 

ベルファストはそう言うと、指揮官の方向に向けていた体をネージュの方に向き、向かい合う体勢に変えた。

 

「私達KAN-SENもヒトの形をした兵器です。ですが、人と同じように食事をし、喜びを感じ、…恋だってします。」

 

"恋"という言葉にベルファストは一瞬ベルファストは指揮官の方に目線を向けた。それを見たネージュは、ベルファストが指揮官に抱いている感情を察した。

ベルファストの静かな告白を聞いたネージュは自分の事のように頬を赤く染めさせ、その顔を見せないように顔を俯かせた。

 

「そ、それはつまり…優海君の事が…?」

 

「ふふ、ご想像通りですよ。」

 

まるで自分の考えが手に取るように分かってると思わせるような微笑みでベルファストはネージュにそう言った。

その光景を見ていたヴェスタルは心の底から小さく笑った。

 

「あらあら、これまた本人の前で随分と大胆な告白ですね〜」

 

「ヴェスタル様もいかがでしょうか?」

 

「うふふ、私はアプローチをかけてから致しますね。」

 

「そ、それはまさかヴェスタルさんも…」

 

「そのまさか…ですよ〜」

 

何故だろうか、今のネージュの目にはベルファストとヴェスタルの間に火花が散っているように見えた。

想い人が同じだとわかったネージュはこの空気と二人のまるで日常会話のような告白を聞いた自分の激しい心臓の鼓動に耐えきれずにいた。

 

「わ、私!ちょっと外に行ってきまひゅ!」

 

焦りで呂律が少し変になりながら、ネージュはこの場から急いで立ち去った。

 

「あらあら、行っちゃいましたね。」

 

「では、私もこれで失礼致します。ご主人様が無事で何よりでした。」

 

「…無事かどうかは分かりませんがね。」

 

「…」

 

先程の空気が一変し二人は目覚めない指揮官に目を向けた。目覚める気配も無く、手を握っても握り返さず、力が完全に抜けた腕は全体重を乗せて少し重く、ただ静寂を貫いていた。

 

「…ご主人様は必ず目を覚まします。」

 

「…はい。そうですね。」

 

今はただ指揮官が目覚めるのを祈ることしか出来ないが、その祈りが指揮官に届く事を二人は願っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが今わかる指揮官の全てにゃ。」

 

「…指揮官の目を覚ます方法は無いのか?」

 

エンタープライズの問はこの場全員の問でもあった。だが、明石の曇った表情を見た全員、良い答えは無いと悟った。

「…残念ながら今の所方法は無いにゃ。」

 

明石のは申し訳無さそうにしていた。その気持ちが頭に生えている猫耳がペタリと沈んでいる事から分かった。

 

「そう…か。」

 

分かりきっていた筈なのに、いざ答えを聞いたウェールズは落胆する気持ちを押し殺しながら窓から海を眺めた。

他のKAN-SENやジンたちも何も出来ない悔しさで唇を噛み締めた者もいた。

「…きっと指揮官自身が拒んでいるのよ。」

 

ただ1つ、心当たりがあるかのように呟いたヨークタウンの言葉に一同はヨークタウンに目を向けた。

 

「指揮官が拒んでいるって…それって指揮官自身が目を覚ましたくないって思ってるって訳!?」

 

ホーネットが嘘だと言ってるように姉であるヨークタウンを問い詰めていた。ヨークタウンは態度を変えず、自分の考えを口に続けて言葉を繋ぐ。

 

「あの時、指揮官が最後、私に言った言葉覚えてる?」

 

「最後に言った言葉…?」

 

KAN-SEN達は昨日の戦闘で指揮官が最後に言った言葉を思い出す為に記憶を辿った。

 

_俺は…自分はセイレーン…だ!お前達…KAN-SENの敵だァァ!

 

そう言って指揮官はヨークタウンに大剣を振りかざそうとした時、何処からかビームが指揮官の剣に辺り、事なきを得た後、ジンの一発により指揮官は正気には戻ったが意識は元に戻らず、今の状況に至っていた。

 

「自分はセイレーン…皆の敵だから関わることは許されない。これが指揮官の答えだと思うの。指揮官はそんな自分の存在を許さないから自ら目覚めない事を選んでいると思うの。」

 

「じゃあ、指揮官は…」

 

「指揮官が目を覚ましたいと思わない限り、目覚めないと言う事ね…」

 

「そんなのやだよ!折角ヨークタウン姉ちゃんが戻ってきたのに!今度は指揮官がそんな…」

 

ホーネットは滅多に見せない涙を唇を噛み締めながら小さく流した。自分が泣いてるのを悟られないように帽子を深く被って目を見えなくしたが漏れ出てる涙声にKAN-SEN達は重々悟った。

 

「…すみませんが話を戻しましょう。島を破壊したのかは分かりませんが島が崩落した数時間前に重桜から謎の艦が発進したと報告を受けました。エディンバラさん、シェフィールドさんこれに見覚えはありませんか?」

 

オセアンは端末をエディンバラとシェフィールドに見せた。そこには最早艦の大きさを超えており、艦と読んで良いのかと戸惑う程に大きい艦とその周囲には量産型のセイレーンが映っていた。

 

「シェフィ、これって…!」

 

「はい。私たちが重桜に潜入した時に発見した艦と特長が一致します。」

 

「ということは…これがオロチ…!」

 

オロチの大きさは正確には分からないが、量産型のセイレーンがまるで小指のような大きさだった。

 

「なんて大きさ…!」

 

「重桜はついに本気を出したって事!?」

 

「いや、恐らくこれは重桜にも予想外の出来事でしょう。」

 

「どういうことですか…?オセアンさん?」

 

オセアンは心の準備をするように一つ咳き込んだ。

 

「さっきの報告には続きがあります。どうやらこの艦…確かオロチでしたね。このオロチによって重桜はかなりの大打撃を受けた報告もあります。恐らく…これは重桜では無く、セイレーンが掌握している可能性…いや、確実にセイレーンの仕業でしょう。」

 

「と言うことは…レッドアクシズにも予想外の出来事ということでしょうか…?」

 

リフォルの予測にオセアンは首を縦に振った。そもそも重桜はオロチの事をまともに鉄血や他の陣営に離してないので、この予測はできるわけが無いのだが。

 

「んで、どうすんだ?これ…止めないとヤバいだろ。」

 

「そうね、島1つを破壊する兵器があるもの…こんなのあったら間違いなく人類は滅ぶわ。」

 

「そうはさせない。その為に私たちはいるのだから。」

 

潮風で灰色の長髪を靡かせながら部屋の隅で海を眺めていたエンタープライズがジン達、人類に近づいた。

 

「私は…いや、私たちは必ず貴方たち人類を必ず守る。大切なものを守る…それが私の戦う意味だ。」

 

「…変わったわね。エンタープライズ。」

 

「貴方とベルファストと…指揮官のお陰だ。」

 

リアとエンタープライズはお互いを見つめると、あのパーティーの夜を思い出した。

リアが自分の気持ちを誰かにぶつけたあの日、あれがエンタープライズの変えた点火剤だったのかもしれない。

 

「行こう。そして戦うんだ…もう一度…!」

 

KAN-SEN達はオロチに向かい、前身する。そして戦いは終わらない…

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い暗い水底で少し懐かしさを感じた夢を見た。

あの日は夕日がとても綺麗な茜色に染まっていた。

そんな日に俺は防波堤でただ一人海を眺めていた。

そして、隣にはいつの間にか一人の女性が座っていた。

 

_ねぇ、貴方に願いはあるの?

 

_…返答。自分は兵器。そんなものを持っても無駄。

 

_無駄なんかじゃないわよ。…そうだ!これを貴方に渡すわ。

 

彼女は俺に何かを渡した。蒼い色をした立方体のキューブ…すなわちメンタルキューブだった。

 

_それに、何かおねがい事をして見て?貴方が今一番叶えたい事は何?

 

彼女の顔は夕日の眩しさで見えなかったが、笑っていたのは確かだった。彼女からはこの夕日のような温かさを感じられたからそう思ったのかも知れない。

俺は彼女から渡されたメンタルキューブを見つめた。

 

_そう言えば、貴殿の名前を聞いてない。

 

_そう言えばそうね。私の名前は…■■■よ。

 

彼女の名前は波と音のノイズによって呑まれ、景色もまた崩れ始めた。

夕日の光なんてものは届かない、暗い暗い水底に俺はまた戻った。

 

「今のは…?なんだろう…凄く懐かしい…」

 

朦朧とする意識の中で、俺はまた海に意識を溶かされたいく。

もしもの話(R-18)を観測しますか?

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