もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜 作:白だし茶漬け
青天の空の中でKAN-SEN達はオロチの撃退のために進む。オロチに近づく事にそこから漂う圧がKAN-SEN達はわずかながら感じていた。
「いよいよか…」
「本当によろしいのですか?どうやら、セイレーンにとってエンタープライズ様は特別な存在…罠である可能性も…」
「それでもあのオロチは止めなければならない。人類にとっても…指揮官にとってもだ。」
エンタープライズは基地にいる指揮官の事を気にかけるようにはるか遠くにある基地にある方角に振り向いた。
今も尚指揮官は目を覚まさず、今は基地に残ったKAN-SEN達とジン達が介抱してる。
「だから私は戦う。守るべきものを守るために、私はもう一度この海に立ち向かう。」
エンタープライズは自分の戦う場所である海を見つめた。前までは海を恐れ、戦う意味を見失っていた。
だが指揮官や皆がエンタープライズの心に光を見出した。
「愚問でこざいました。ご主人様の為に共に戦いましょう。」
「あぁ。よろしく頼む。」
前のエンタープライズだったら絶対見せなかった笑顔をベルファストに振りまいた。
「ふふ、その笑顔…ご主人様にも見せたいですね。」
「こんな私の笑顔など…指揮官にみせられるわけがない。」
「いえ…とても可愛らしい笑顔でしたよ。」
「からかわないでくれ!…だが、礼を言う。」
エンタープライズは自分の顔を見せないように帽子を深く被った。しかし、僅かに見えるエンタープライズの頬が赤くなっていたのをベルファストは見逃さなかった。
オロチの撃退部隊の中には重桜の綾波もいた。綾波はオロチが重桜から発艦されたと聞いて不安に押しつぶされていた。もしかしたらかつての仲間達全員と戦うことになるのかもしれないと。そうなれば自分は戦えるのかと、頭の中で考え出していた。不安が表に出るように綾波の右手が小さく震えていた。
しかし、その震えは隣にいたジャベリンが手を握ってくれたおかげで止まった。
「大丈夫。」
ラフィーのたった三文字の言葉で綾波の不安は消えたように思えた。だがまだ小さな不安が胸の中でこびりついていた。
「ゆーちゃんも守ってくれるって。」
後ろから近づいたユニコーンとゆーちゃんも綾波に寄り添った。ゆーちゃんは必ず守ると言ってるかのように首を縦に振った。
「皆…ありがとうなのです。」
仲間達がいる。その事実が不安を消し去り、安心感を得た。そしてそれ見たオセアンとネージュは微笑ましく思った。
「アズールレーンとレッドアクシズ…違う立場なのに友達のように接してる…あの子達は凄いですね。」
「ええ…そうですね。…ところで本当にいいんですね?」
「はい。私もマーレ君が何をしているのか知りたいんです。」
今回、指揮官としてオセアンはこの作戦に参加したがネージュはオセアンに無理を言って作戦に参加していた。
ネージュは幼なじみであるマーレが一体何をしてるのか、それがもし止めなければならないものだとしたら自分が止めなければならないと思ったからだ。
ネージュの目は強く、決意に満ちた目をオセアンに向けていた。
「どうやら…決意は固いようですね。…ですが無理はしないでください。」
「はい…!」
(待ってて下さい…マーレ君!)
_同時刻 重桜 海域内
重桜から出たオロチを追いかける為プリンツ・オイゲンが自身の艦を呼び出し、その甲板にはグラーフ・ツェッペリン、Z23、Z1、アドミラル・ヒッパーがいた。
「まさか…加賀がここまで強引な行動に出るとはね…」
オロチが重桜から出ていった場面を見た鉄血のオイゲンは自分の任務を果たせなかった事を悔やんでいた。
「ふん…失態だな。オイゲン?」
「途中から入って何もしてないアンタには言われたくないわよ。」
オイゲンを嘲笑うかのように笑みをこぼすグラーフ・ツェッペリンにオイゲンは苛立ちを感じだ。
だが、事実何の収穫も得られなかった為、あまり強気には出られなかった。
「オロチと同時期に量産型のセイレーンを確認しました。やはり、赤城と加賀はセイレーンと…」
自分の予測が当たって欲しくないと願いながら、Z23はしぶしぶ自分の考えを発した。
「だとしたら内通者に気づかない重桜も間抜けよね。」
「内通者…?」
ヒッパーの"内通者"と言う言葉でオイゲンは何かに気づくように考え込んだ。
「もしそうなら本当に重桜だけなのかしら?…もしかしたらレッドアクシズ…いやアズールレーンにも…」
「ほう…全てを見通す者がいるとでも?」
「ま、あくまで推測だけど。」
「けどよ〜その根拠は何だよ?」
「セイレーンとの戦いにおいて、全ての戦闘においてセイレーンに先手を取られてるわ。まるで全てを見通してるかのように…」
アズールレーンに限らず、セイレーンとの戦いにはレッドアクシズにもセイレーンに先手を取られていた。
ここまで一度も自分達から先手を取ったことはない。
「成程…だとしたら一体誰が?」
「あら、一人だけ心当たりあるじゃない。」
Z23はオイゲンの言うことに首を傾げたが直ぐに誰かとわかった。他のKAN-SENもその誰かに気づいていた。
「あ、もしかしてアズールレーンの指揮官?」
「そ、あのセイレーンの艤装…間違いなくセイレーンと関係あるわ。」
「ほう…だったらそこで覗いてる者は関係ないのか?」
グラーフ・ツェッペリンが物陰に指を指すと一斉に艤装を展開して構えた。オイゲンも艤装を展開した為、オイゲンの艦は光に包まれて艤装に変わった。一同は艦から海に着地した。それは物陰で隠れていた者も例外では無かった。
その者は艤装も何も展開してもないのにも関わらず海の上にたっていた。
「あらら…バレちゃったか。」
声の感じからして男性であり、海色の髪と黒のロングコートをなびかせながら髪をかきあげて姿を見せた。
「貴方…誰かしら?」
「ありゃ?知らないか〜。ん〜結構有名だとは…思うんだけどな〜…本当に知らない?」
「知らないわ。」
オイゲンの刺さるような言葉に、自分を知らないと分かった男は自身の無名さに落ち込んでいた。鉄血のKAN-SEN達はその姿を見て思わず緊張感を解いてしう程だった。
「貴方…何なんですか!?セイレーンなんですか!?」
Z23が緊張感の無さにイラつきながら艤装の主砲を撃ち続けた。しかし男はその砲弾をいとも簡単に避け続けた。これ以上攻撃しても無駄だと悟り、攻撃を中断した。
「セイレーンか…ん〜まぁ半分正解見たいなものかな。」
「それは一体どういう事かしら?」
「まぁ、言葉通りの意味という事で。」
「ふざけるのも大概にしなさいよ…!アンタは一人!こっちは五人!大人しくした方が身のためじゃ無いの!?」
ヒッパーの言う通り数では鉄血の方が上手であった。相手は丸腰で一人、戦況は鉄血の方が有利であるのは間違いない。だが鉄血のKAN-SEN達はとてもそうとは思えなかった。
「ん〜出来れば…戦いたくは無いな。」
男のトーンが低くなり雰囲気が一変した。さっきまでのほほんと飄々した雰囲気が嵐の前の静けさのような緊張感を走らせた。
「な、何だ?急に雰囲気が…」
「警告だ。大人しく俺を見逃してくれ。見逃してくれたら危害は加えない。」
「へぇ〜?それって、俺らの事舐めてるわけ?」
「…そうとって貰っても構わない。」
「じゃあ…ドンパチでも始めるか!」
Z1が先行して男に砲撃を始めると、他のKAN-SENも一斉に攻撃を開始した。主砲の砲弾と艦載機の爆撃が男に襲いかかる。弾の爆風が男を完全に姿を見えなくした。
「はっ!口だけかよ!」
Z1がガッツポーズをしながら吐き出すように口にしたその時、爆風が真っ二つに斬られた。その斬撃から発せられた衝撃波で鉄血のKAN-SEN達はその場で吹き飛ばされ、体勢を崩された。
「な、何ですか!?」
「これは…とんでもない奴を相手にしちゃったかもね…」
斬られた爆風は空気と共に消え始め、徐々に男の姿が見え始めた。さっきまで無かった筈の蒼色の大剣が男の手に持たれていた。
「ほう…大地と海が震えるほどのその強さ…まるで英雄だな。」
「…よしてくれよ。俺はそんなに大層な者じゃないよ。それで、見逃してくれる気になった?出来れば見逃してくれれば助かるんだけど…」
男は謙遜しながらも大剣を構え続けていた。次は君達に剣を向ける、そんな態度だった。だが、相手がセイレーンである可能性がある以上、引くことは出来なかった。
手詰まりだったその時、後ろから女性の声が響く。
「見逃すわ。だからもうこの戦闘をやめてくれないかしら。」
KAN-SEN達と男は声がした方向に振り向くと、黒の軍服に長い金髪…そして鉄血の旗を持ったKAN-SEN…ビスマルクがいた。
「ビ…ビスマルクさん!?どうして…?」
「今はそんな事は良いわニーミ。」
Z23の横を通り過ぎ、ビスマルクは男を見逃すと伝えた。男は安心しきった表情をしながら大剣を光に包み込ませ、そのまま消した。
「良かった…。いや〜出来れば戦いたく無いからさ。」
「それはこっちのセリフよ。あのまま戦ったら間違いなくやられていたのはこっち。」
オイゲンはお手上げ状態をアピールするように両手を小さく上げながら言った。確かに五人がかりでも男に傷一つ付けられなかっただろうとビスマルク覗く五人は認めていた。
「それじゃ、俺はこれで…」
「待って。見逃す代わりに貴方に聞きたいことがあるの。」
「おっとと…ま、見逃してくれるし一つだけなら良いよ。俺が答えられる範囲でだけど。」
「じゃあ遠慮なく。貴方…何者かしら?」
答えても良いのか、男は顎に手を当てて考えこんだ。今なら倒せるのでは一瞬KAN-SEN達は考えたが倒せるイメージが全く無い。無闇に攻撃したらそれこそ相手の逆鱗に触れるかもしれないからだ。男は考えついたのかこう言った。
「…ただの死人さ。」
そう言いながら男はこの海域から離脱した。KAN-SEN達は見逃したが、力の差的には見逃された方と感じていた。KAN-SEN達は圧のプレッシャーの縛りから解放され、心にゆとりが出来た。
「な、なんなのよアイツ…」
「死人て言ってましたね…一体どういう事でしょうか。」
「死人…」
ビスマルクは何か思いついたようだが確信が無い様子だった。
「ところで…ビスマルクはどうしてこんな所にいるのかしら?」
オイゲンが鉄血にいるはずのビスマルクが何故ここにいるのか本人に問いた。
「オロチを追いかける為よ。今確認出来た座標にオロチがいる…近くに重桜がいるから、間もなく戦闘が開始されるわ。」
「私達もその戦闘に加わると?」
「そうよ。オロチのことをこの目で見る最後のチャンスですもの。」
ついて来いと無言で命令するようにビスマルクは合図を出しながらオロチのいる所まで進んでいく。その合図を見た鉄血のKAN-SEN達はビスマルクについて行った。
_同時刻 オロチ甲板にて
「赤城姉様…一体何をあれは一体?」
「そんなに怯えないで。大丈夫よ…私はどこにも行かないわ。」
久しく義姉を見た加賀はオロチから発射されたミサイルに困惑していたが、その中にある不安をかき消すように赤城は加賀を抱き寄せる。だが、加賀にはその抱擁に違和感を感じた。まるで誰かに無理やりされてるような気がした。
「違う…!お前は一体誰だ!」
加賀は赤城の抱擁から抜け出すとすかさず赤城に…いや、赤城に成りすました何かに青い炎を浴びさせた。
だが、赤城を名乗った何者かは手に持っていた黒狐の仮面でその炎を防いだ。
「相変わらず…気難しい子ね。」
そう言うと赤城は急に倒れ、背後に炎が生まれた。そしてその炎の中から、倒れる赤城を支えるように抱き寄せた女性が現れた。和傘をさしており、赤城と似た雰囲気を持ったKAN-SEN…そして居なくなった筈の天城がそこにいた。
「天城…さん?」
もうこの世には居ないはずの天城を見た加賀は幽霊でも見るかのように天城を見た。だが、天城は確かにそこに存在していた。
「久しぶりね…加賀。」
声や話し方は確かにあの時の天城だが、やはり違う。加賀にはそれが直感的に分かった。
「やはり違う…!お前は誰だ!」
「私は天城よ。赤城がそう願ったから。」
「願った…?まさか、オロチなのか?」
天城は肯定するように禍々しい笑顔と圧を加賀に向けた。
「そうそう、こんな事も出来るのよ。」
オロチの周りからまた炎が生まれ、天城の姿が消えた一方で、今度は優海の姿に変えた。
「うん?どうしたんですか?加賀姉さん。」
「その姿になるのは止めろ!」
加賀はオロチに攻撃したが、オロチは見えない障壁を展開させ、炎を防いだ。
「随分と動揺するんですね。赤城姉さんもいるのに攻撃するなんて。」
オロチは優海の姿で目覚めぬ赤城に寄り添った。傷がないか確認するように体の隅々まで赤城に寄り添った。
「止めろ…その姿で…そんな事をしないでくれ…」
「あれ?良いんですか?赤城姉さんの願いを叶える為に赤城姉さんに尽くしたのに?だから天城姉さんをまた蘇らせたのに?」
オロチは優海からまた天城の姿を変えた。
「偽物が何をほざく…!」
「貴方だって偽物じゃない。」
「っ…!」
オロチは全てを見透かすように加賀を見つめた。加賀はまるで心の奥底まで見られてるような感覚に陥った。
「天城は赤城と優海を残して逝った。そして失われた天城の一部はある艦へと引き継がれた。」
「やめてくれ…」
「空母加賀…貴方は天城のパーツを使って改装された艦。赤城が貴方を愛したのは貴方の中にある天城の影を見たから。でもそんなのはまやかしに過ぎない。」
「姉様…私は…」
加賀は分かっていた。昔は会えば喧嘩するほどの仲だったのに、空母に改修したあの時からまるで人が変わったかのように赤城は加賀に寄り添った。
だが、それは天城の影を見たから。決して加賀を見てる訳では無いと…加賀はそんな事実を認めたく無かった。
加賀は事実を突きつけられ、そのまま膝を崩した。
「貴方は代用品すらない朽ちた部品の寄せ集め。海に浮かばぬテセウスの船。それが貴方なのよ。」
「違う…違う!私は…」
認めたく無いはずなのに、だがそれが事実だと言う事に加賀は涙を流す。それを見たオロチは愉悦にも浸り事なく、更に加賀の心を揺さぶる。
「でもあの子は違う。あの子なら貴方自身を見てくれて、愛してくれるはず…そう思ってるのでしょう?」
加賀はあの子と言うのは優海だとすぐにわかった。
優海はいつも天城の影を見ず、自分の事を見ていてくれた。それが加賀にとっての拠り所だった。天城では無く、自分を見てくれた優海を…
「そうだ…優海なら私を…」
「そうよ。だから早く助けないと…アズールレーンから…敵から…」
オロチは悪魔の囁きの如く、加賀の耳元で囁いた。
その囁きは甘い毒のように加賀の心に侵食していった。
「助ける…待ってろ。今助けてやるからな…」
加賀は目に光を灯さず、ただ優海を助ける為に動いた。
全てが思い通りになった事に少しの達成感を感じだオロチは笑みを少しこぼした。
「随分と姑息な手を使うじゃないか。」
先程のやり取りを全て見たマーレは物陰から姿を表した。マーレはオロチに近づくと倒れ込んだ赤城を見た。
「ただ私は加賀の願いを叶えようとしただけよ。」
「洗脳紛いな事をして何言ってるんだ。」
オロチはその事を自覚しているのか怪しく笑った。
「私は人の総意でありその願いを叶える存在…願いが叶うならそれで幸せでしょう?例えば貴方の今1番会いたい人私はなれ」
オロチが最後まで言うより先にマーレは剣をオロチの首根っこに寸での所で止めた。
「止めろ。」
「何故?」
「止めろ。猿芝居は見飽きた。」
マーレから明らかにオロチに対する敵意と怒りがあり、その全てを向けられていたオロチは悲観することも焦ることなくただマーレを嘲笑っていた。
「貴方に私は殺せない…何故なら貴方の目的には私が必要だから…」
「…やはり分かっていたか。まぁ、俺も俺の中にブラックキューブが備わっていた時期があったから当然か。」
マーレは剣を仕舞い、オロチから離れた。
「まぁ、この戦いが終わったらせいぜい利用してやるよ。」
「出来るかしら…?」
「…人を苛立たせるのが得意なやつだ。…どうやら来たようだな。」
マーレは接近している重桜艦隊を察知したが戦闘には参加する気は無かった。
「戦かわないのかしら?」
「まだ早い。」
マーレは強力な戦闘能力があるが、それ故に制限時間があるという弱点がある。無策に初めから飛び出して初めから戦闘に参加しても後々面倒になると考えたマーレは戦わずにいた。
「それとも…優海を待ってるのかしら。」
「…アイツは来る。必ずな。」
量産型セイレーンが本格的に動き出し遂に戦闘は開始された。
_同時刻 アズールレーン基地
窓から見つめる海を眺めているネージュはオロチと戦いに海を出たKAN-SEN達のことを心配していた。
「…そろそろ戦闘が始まった頃でしょうか?」
「と言うか…あれだけの戦力で本当に大丈夫何ですか?オセアンさん。」
「はっきり言って無謀です。ですが…レッドアクシズと協力すれば何とかなるでしょう。」
暗く、寂しい海の中で俺はそこに留まっていた。
冷たさも何も感じることは無く、とうとう俺は感覚まで失われたかと心の中で呟く。
戦い続けた結果、味覚、嗅覚、そして今は感覚を失った。それなのに、寂しさの痛みは感じていた。
「お兄ちゃんは本当にそれでいいの?」
突然聞いた事ない少年の声がした。しかし今の俺には誰が喋っているのかはどうでもよかった。
「…良いんです。俺はセイレーンで皆の敵…だったらずっとこのままここにいた方が良いんだ…」
「じゃあお兄ちゃんは死にたいの?」
「…それが皆の為になるなら。」
そうだそれが良い。こんな有るだけで迷惑な命なら消えた方がいい。きっとそれが皆の為になる…なるはずなのに…それを拒んでしまう自分がいる。
「…違うよ。お兄ちゃんは…」
少年が立ち去ると、それに伴って別の足音が聞こえてくる。それは紛れもなく俺と同じ顔をした者…本来の自分、セイレーンのコネクターだった。
「…最早お前に生きる理由は無い。元々お前はオロチのデータ収集が目的の為に生まれてきた存在だ。」
「…御託は良い。さっさと終わらせてくれ。」
コネクターは艤装を展開し主砲のビームをチャージした。その照準を俺に定め、俺の命を終わらせようとした。
「そうだ…これで…良いんだ…」
光が俺を呑み込むように包み込む。俺の命は…ここで終わる…
_赤城と加賀の事…よろしくお願いしますね。
「っ!?」
迫り来る光を防ぐ為、俺は無意識に大剣でビームを防ぐように構えた。ビームと剣がぶつかり合い、剣がビームを防いだ。俺の周りを通るビームの熱が俺の皮膚を少し焦がす。
「グッ…!」
まるでさっきまで死にたかった俺の気が消えるようにビームの光が消え始め、俺は困惑と疲労により膝を着く。
「何で…?今…俺は何を?」
無意識だった。光を見たら急に天城姉さんの声が聞こえた。あれは天城姉さんと別れた時の言葉だった。
俺は自分でも分からない行動で大剣を放し、頭を抱える。
しかしコネクターは容赦なく俺な狙いを定め、ビームを放つ。それを察知した俺は、大剣の取り、引きずりながらビームを回避するように走る。
(何やってるんだ…!俺は!)
今この足を止めれば、ビームが俺を貫き、俺は確実に絶命する。それなのにそれを拒むように俺の体は勝手に走り出す。
「…何故身を守る。貴様は死にたいんじゃ無かったのか。」
「俺は!…俺は…」
死にたい筈なのに、生きていたい自分がいた。そんな対立する気持ちが俺の心を掻き乱していた。かき乱された心が苦しくなり、俺は胸を掴む。
「それは…"生きたい"と言う本心があるんじゃないか?」
「え…?」
「人には必ず"生きたい"と言う無意識な本能があると聞く。貴様は本当は生きていたいんじゃないのか?」
「そんな事!…そんな事…」
いや本当は分かっていた。俺はまだ死にたくない。生きていたいと、だがそれで本当にいいのか戸惑っていた自分がいた。
「…俺はセイレーンなんだ…俺はお前なんだ。」
_お前はお前だ!
「…え?」
突然ジンさんの声が聞こえ、ここにいるのか辺りを探したがジンさんの姿は見えなかった。
「今のは…?」
_アズールレーン基地
「まだ目が覚まさないか…」
基地に残ったジンはまだ目を覚まさない優海を見ていた。その隣にはヨークタウンがいた。
「指揮官はまだ心を閉ざしているのかもしれませんね…」
「自分がセイレーンだからか…でもな…関係ないだろ。ここまで生きていた優海は自分がセイレーンだって知らなかったからな。」
「ですが事実は変わりません。」
知らなかったとしても優海はセイレーンである事実は変わらない。それが優海の心を閉ざしている原因でもあった。
「でもな…こいつはこいつだ。優海!お前はお前だからな!」
どこからともなく声が聞こえた。ジンさんだけじゃ無く、KAN-SEN達も声や今どうしてるか目の前で見え始めた。
「雪風様に任せるのだ!」
「よっしゃ!噛み付いてやるぜ!」
俺の目の前に映ったのは雪風と夕立が先行してオロチに向かっていた姿だった。だがオロチに向かう前に空に浮かぶセイレーンのテスターが行く手を阻んでいた。
「あら、可愛いお客さんね。テストデータをもらおうかしら?」
「上位個体…!」
恐らく初めてセイレーンの上位個体に会っただろう時雨は足を1歩後ろに下がった。
そして時雨が見ている光景は俺の目にも移っていた。
その光景と言うのはテスターは一人ではなく、無数に宙に浮いていた。
一人でもキツい上位個体なのにそれが無数にいたその時感じるのは絶望。
目線が切り替わり、今度は瑞鶴と翔鶴が俺の目に映った。
「厄介ね。これじゃあオロチに近づくことも出来ないわ。」
「でもやるしかないよ翔鶴姉。埒が明かないなら無理矢理にでも切り開く!」
無数のセイレーンとオロチを目の前にしても悲観はせずに前を見続けた瑞鶴はオロチに近づくことしたが、その前に立ちはだかる者がいた。それはセイレーンでは無く、重桜のKAN-SEN…加賀姉さんだった。
そして場面は変わり、今度は…誰の目線だ?いや、これは…俺自身の目線だ。辺りを見渡すと空は青く、青い海の上には量産型のセイレーンが無数にいた。
「ここは…オロチなのか?」
オロチの起動する為のブラックキューブの一つが今まで俺の中にあった為か、直感でここがオロチだとわかった。後ろに人の気配がした為、後ろを振り返るとそこには俺が今一番会いたかった人がいた。
「天城…姉さん?」
俺は天城姉さんに近づいたが、俺の体が天城姉さんを通り過ぎた。
そして景色は戻り、暗い水底に戻る。
「今のは…?」
「今起こってる現実だ。今KAN-SEN達はオロチと戦ってる。」
「なっ!?」
「だが関係ない。何故なら…死にたいのだろう?貴殿は。」
コネクターはセイレーンの艤装の主砲を俺に向けた。
確かに俺は死にたい。それは変わらない。だけど…
「今は…死ねない理由が出来た!」
俺は大剣を迷いを斬るように宙を斬って剣先はコネクターに突きつけた。
「…そうか。」
コネクターは艤装を下げ、道を譲るように避けた。
「だったら行くといい。」
コネクターは前を指さすとその場所から一筋の光が現れた。ここから出る出口なのか、コネクターを見ると、コネクターは肯定するように頷いた。
「なんでだ?どういうつもりだ?」
「…ただの気まぐれだ。」
撃ってくる様子もなく、俺は前にある光に手を触れようとした。
「なぁ…お前も一緒に来てくれないか。」
「何故だ。自分がいなかったら都合がいいはずだ。」
「そんなことは無い。お前の力が必要だ。」
オロチの力は未知数…だから使える力は使わなければ勝てないと踏んだ俺はコネクターに力を貸してくれと頼む。コネクターは無表情のまま悩んでいたが、やがて答えを出した。
「…良いだろう。
「…そうだな。」
コネクターは光に近づき、俺が光に手をかさずのを待っていた。俺は1歩ずつ確実に光に近づいた。
「俺はもしかしたら生きてる資格が無いのかもしれない。だけど…今だけは生きていきたい!」
(…さっきの言葉は訂正しよう。お前はお前だ。何故なら…お前は自分が願って生まれてきた。…一人の存在なのだから。)
コネクターは一つの過去を思い出した。その日は夕日が輝き、優海が生まれた日でもあった。
_ねぇ、貴方の願いは何?
夕日の逆光で、見えないが何故だが安心する存在の彼女は、自身が渡したメンタルキューブに願いを込めろと言った。
_自分は…心が欲しい。生きてると感じられる心が…
それが自分の願いであった。
もしもの話(R-18)を観測しますか?
-
Yes
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NO