もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜 作:白だし茶漬け
戦いがまた始まった。オロチの四方にはアズールレーンと重桜のKAN-SEN達が量産型のセイレーンの壁を突破し、オロチに向けて砲撃を続ける。だが、オロチの強固な防壁によってオロチは傷つけられずにいた。
「これは中々の防壁だな。」
並のKAN-SEN達では絶対に突破出来ない防壁の内側にいた俺はその防御力に感心しながら、余裕の欠伸をした。
暇は良い。時間を無駄に捨てる事は平和の証だ。
俺はオロチの甲板に寝転び、空を見上げた。このような雲ひとつない美しい晴天の下で戦いが起こっているとは空を見上てるだけでは想像出来ない。
やがて晴天に黒の煙が混じり、煙の匂いが俺の鼻につく。防壁があっても自然から放たれる力には適わないのだ。
「さてと…加賀の様子はどうだ。」
寝ていた体を起こし、オロチの口車にまんまと乗せられた加賀を探す。辺りを見渡すと白い九尾の尻尾、つまり加賀を見つけた。加賀はどうやら瑞鶴と翔鶴の五航戦と戦闘を行っていた。
「加賀先輩!どうしてセイレーンに手を貸すの!?こんなの間違ってる!」
瑞鶴が加賀を説得しながら艦載機を加賀に向けて飛び立たせるが、やはり戦ってきた経験の差という者が大きいのか、加賀の艦載機が瑞鶴の艦載機をあっという間に全滅させた。
「黙れ…」
加賀は虚ろ目のまま、白い獣を呼び出した。獣は吠え、途端に瑞鶴と翔鶴に無数の青い炎を撃ち続ける。
「ああもう!いつもの澄まし顔はどうしたのかしら!」
翔鶴は瑞鶴を庇うように前に立つと、ありったけの艦載機を壁にするように配置した。
炎に当たった艦載機はそのまま爆散したが翔鶴達と守った。だが、炎の数が多かった為残りの炎が爆風を突き破り翔鶴達に襲いかかる。
「まずい…!」
翔鶴が瑞鶴を庇うように両手を大きく広げ、炎が翔鶴を焼き尽くそうとしたその時、空から複数の迎撃機が炎の弾を撃ち落とした。
「あれは…アズールレーンの?」
アズールレーンが使ってる迎撃機を見た翔鶴はその迎撃機を行先を見つめた。迎撃機は持ち主の所に帰っていった。その持ち主とは翼が生やした獣を上に乗っていたユニコーンだった。…いつ見ても奇妙な生き物だ…あの珍獣は。
「2人とも大丈夫ですか!」
「この声…綾波!?」
瑞鶴は綾波の声を聞き取り、その方角に向いた。そこには綾波の他に、ジャベリンとラフィーがいた。
「ちょっと待って綾波。その2人…アズールレーンのKAN-SENだよね…どうしてそいつらと一緒に…?」
瑞鶴と翔鶴はジャベリンとラフィーに敵意を向けた。無理もない、この前の戦闘では敵として戦ったのだから敵意は向ける。相変わらずジャベリンとラフィーは戦いたくないと言わんばかりに敵意を向けてはいなかった。
「待つのです。この人達は…」
綾波はジャベリンたちの前に立ち、瑞鶴達の説得に出た。綾波が庇ったのが予想外なのか瑞鶴達は戸惑っていた。
「この人達は…綾波の友達です。」
「友達…?」
全く予想出来なかった答えに翔鶴はこれ以上なくポカンとしていたが、瑞鶴は綾波の曇りなき目を見つめていた。
「…そう!分かった!」
「瑞鶴!?」
「大丈夫だよ翔鶴姉。この子達…いや、アズールレーンの人達は悪い人達じゃないよ!」
瑞鶴は警戒心を解き、ジャベリン達に戦闘の意思は無いと言うように笑顔を振りまいた。ジャベリン達もその笑顔を見て、瑞鶴の考えを察し、笑顔で首を縦に振った。
「まぁ…貴方がそこまで言うなら…」
「じゃあ決まり!さて…続きを始めましょうか!加賀先輩!」
「いくら雑兵が増えようとどうでもいい事だ…」
「どうでも良くないのです。」
綾波は1歩ずつ加賀に近づき、剣先を向けた。
「綾波…私と姉様の邪魔をするのか?」
「違うのです。皆を助けに来たのです。」
「助けに…?一体何から助けると言うんだ。私から見ればお前がやってるのは私達の邪魔だ。」
「違うです。こんな事間違ってるのです。」
「間違い…?…お前に…お前に何がわかるっ!」
自分の心を否定された怒りをぶつけるように加賀は獣の前脚で綾波を殴りかかる。綾波はその餌食となり、剣で防御したので直撃は免れたが、そのまま吹き飛ばされてしまう。
「ぐっ…!」
「どうした!結局は口だけなのか!」
「綾波ちゃん!」
ジャベリンとラフィーは主砲を獣に撃ち込んだが、獣は虫に刺されたのかと言ってるようにその弾を脅威と見ていなかった。獣は虫を叩く人のように軽く脚を下ろすと、その水しぶきにジャベリン達は呑み込まれる。
潜水艦では無いジャベリン達は波のような水しぶきに流されるがままに綾波から離れていく。これでは綾波と合流するには時間がかかる。
「綾波ちゃ…」
「大丈夫なのです!加賀は…綾波が止めるです!」
「違うよ。私達も、」
「一緒よ。」
「ゆ、ユニコーンもいるよ!」
空母三人、駆逐一人…状況は少し綾波達の方に傾きつつあると思われるが、加賀にはあの巨体な白い獣がいる。まずあれをどうにかしなければ勝ち目は無い。
「さて、どうする…」
「高みの見物の所申し訳ないけど、そろそろ貴方にも出てもらうわよ。」
KAN-SEN達の戦闘を高みの見物出みていた俺の隣にオブザーバーが隣に座っていた。
「なんだ…まだ早いと思うが?」
「鉄血が来たわ。しかもビスマルクがわざわざこちらに来てくれて…フフ、嬉しいわ。」
オブザーバーの目がその鉄血陣営がいる所に向くと、俺はつられてその方角に目を向けた。確かに、重桜艦隊を援護する鉄血の姿がそこにはあった。
「ほら、ボサッとしない。」
鉄血のプリンツ・オイゲンは主砲の一撃を一人のテスターに直撃させ、一撃で沈めさせた。
「しっかりしてください。」
「ボヤボヤしてるとやられちまうぜ?」
Z23とZ1が先程被弾した夕立を煽るように声をかけると、その煽りを真に受けた夕立は怒りを糧に立ち上がった。
「くそ〜!倍返しだ!」
夕立はまたもや先行して敵陣に切り込んだ。それを見たZ23はやれやれと頭を抱えていた。
「なんて短絡的な…はぁ、同じ事の繰り返しにならなければ良いのですが…」
「良いじゃないか。俺はあの戦闘スタイルは好きだぜ。」
「でもどうすんの?鉄血と重桜…それにアズールレーンもこの戦闘に参加したらしいけどまだまだ戦力的に不利よ?」
「あら、姉さんったら胸だけじゃなくて自信まで無くしちゃった?」
「はっ倒すわよ!?」
オイゲンはその胸を見せびらかすようにヒッパーを煽り、その挑発にヒッパーは怒りと無いものがない悲しみを怒りに変えていた。
「落ち着きなさいヒッパー。ともかく、今あるカードで手を打つしか無いわ。ニーミ、アズールレーンの指揮官とコンタクトを取って。」
「了解しました。」
Z23は通信機を取り出し、オープンチャンネルでアズールレーンの指揮官にコンタクトを取った。
「さて、この破滅のプレリュードの前奏を我らはどう奏でると言うのかな?」
「貴方は相変わらずね、ツェッペリン。…言ったはずよ。今あるカードで最大限の力を引き出すだけよ。」
「すみません、ビスマルクさん。少しよろしいでしょうか。」
「どうしたのニーミ。」
「今アズールレーンを指揮してる指揮官…どうやら別人のようです。すぐに変わります。」
ニーミから通信機を受け取ったビスマルクは通信機を口に近づけ、言葉を放つ。
「こちら鉄血陣営代表、ビスマルクよ。」
『こちらアズールレーン指揮官代理のオセアン・テネリタスです。』
「オセアン…?本来の指揮官はどうしたのかしら?」
こんな時に以前見た指揮官がいないという状況にすこし戸惑ったビスマルクだが、相手に悟られないように平静を装っていた。
『マーレは…敵の攻撃を受けて意識不明です。だから私が代わりに指揮を執っています。』
(言葉の歯切れが悪い…どうやら何かあった事は間違いないわね。1番思い浮かべられるのは…指揮官自身の問題…あのセイレーンの艤装かしら。)
ビスマルクはオセアンの歯切れの悪さからいくつかの考えを出していた。
その中で一番怪しく思ったの今ビスマルクの中で最も不確定要素のセイレーンの艤装であった。
ビスマルクは恐らくそこに何かあったのだろうと思ったが今は戦闘に集中した。
「分かったわ。でも、鉄血の指揮権は私にあるわ。」
『ええ。ですがまずは敵の数を減らしましょう。こちらの戦力が分散されてる今、オロチに決定打を与えられません。』
「それは同意するわ。じゃあ私達はこちら側の敵を排除するわ。」
『頼みます。』
オセアンからの通信が終わり、通信機をニーミに返したビスマルクは呼吸を整えた。
「それでは行きましょう。まずはあのセイレーンを何とかするわ。」
「「了解。」」
ビスマルクは旗先を宙に浮かぶ無数のテスターに向けて進撃した。
「この程度だったら俺は要らないだろう。」
「知ってるかしら?人は絶望に直面した時、希望を見つけ出そうとする…そしてその希望の為ならどんな事でも起こせる…奇跡でも、同士討ちでもね…?」
「つまり、最初から全力で潰せと?」
オブザーバーはそうだと言うように怪しく笑った。
「今回はちょっと人数が豪華だからこちらもそれ相応のおもてなしが必要でしょう?」
「メインディッシュは最高の瞬間まで取っておく物だ。まだ出すには早い。」
「なら、私がその最高の瞬間と言う物を提供しましょうか?」
オロチが突然話に入り込むと、赤城の指先がピクリと動いたのを確認した。
「ん…天城姉様…?」
戦闘の騒動でようやく目を覚ました赤城は、朧けながら天城の姿に成りすましたオロチを見つめていた。
赤城は一瞬こちらを見たのに気づいた俺は咄嗟に後ろに振り返る。
俺と優海の顔はほぼ似ている。優海と勘違いされたら面倒事になるのは確実なので顔を見せないようにする必要がある。
「私は…何を?」
何の心配もいらないわ赤城。貴方の願いは叶っているのだから。」
声も手つきも喋り方も完全に天城そのものだった。虚ろな目をした赤城の耳元に囁くようにオロチは赤城に寄り添う。
「永遠の愛はここにあるわ…」
「私の願い…私の愛…私は重桜を…」
「…くだらん。」
虚空の存在に唆されている光景に見飽きた俺は赤城の目に届かない所に移動する。
「あら?どこに行くのかしら?」
「お前らの口車に乗ってやる。…出ればいいんだろ。」
「うふふ…ありがとう。」
「心にも無いことを言うな。」
オブザーバーの上っ面だけのお礼に俺は何の嬉しさも喜びを感じること無く、俺はただ戦場に降り立った。
「女王陛下に栄光あれ!」
陛下の誓を轟かせながら先行する、ウェールズに続くようにロイヤルのKAN-SEN達はセイレーンの量産型を次々と撃沈していく。
「戦士たちよ!突き進め!」
「ロイヤル達に遅れをとる訳には行かないからね!私達も行くよ!」
エンタープライズの号令とクリーブランド達の先行により、ユニオンのKAN-SEN達はロイヤルに負けまいと士気を高めた。
「果たしてその意気込みがいつ続くかな?」
槍のようにKAN-SEN達の神経を突き刺さるような冷たさと威圧感を持った声にKAN-SEN達は立ち止まった。
KAN-SEN達は宙を見上げると、そこには殺意の目をしたマーレがいた。
「マーレ…」
「どうやらアイツはまだ来てないらしいな。」
エンタープライズ…いや、KAN-SEN達はマーレが言った"アイツ"とは指揮官の事だと悟った。
「指揮官は来ていない。いや、もう指揮官を戦わせたりはしない!」
「馬鹿か、アイツ無しでどうやって俺に勝てる。」
KAN-SEN達とマーレの戦闘力は雲泥の差程あった。もしここでKAN-SEN達全員がマーレと戦っても、KAN-SEN達は負ける。それはKAN-SEN達自身が分かっていた事だった。
だが、それは戦わない理由にはならなかった。
「それでも私達は貴方に立ち向かう。」
エンタープライズは弓をマーレに向けて構えた。他のKAN-SEN達も主砲をマーレに向けて息を呑んだ。
「…はぁ。じゃあ、これでもお前は戦うのか?」
「何…?」
マーレは左腕の剣と、左の艤装の尻尾を構えた。その目はまるで鞘から抜かれた抜きみの刀のように鋭く、冷たい眼差しだった。
「っ!エンタープライズ様!こちらに!」
「何っ!?」
「姉貴!伏せてください!」
「モントピリア!?」
ベルファストや他の数名のKAN-SEN達はマーレから感じ取れる危険を察知しそれぞれ近くのKAN-SEN達を庇った。
マーレは剣と尻尾を刹那の瞬間で宙を斬り、瞬間、KAN-SEN達は次々と倒れていく。
「え…?」
次々とKAN-SEN達は自分達が何をされたのかも認識出来ずにそのまま戦闘続行不可能となる。唯一KAN-SEN達に庇われたごく数名のKAN-SEN達は無事だが、圧倒的に被害は甚大であった。
「ベルファスト!大丈夫か!?」
「えぇ…なんとか…」
ギリギリでマーレの攻撃を避けたベルファストは負傷を受けたKAN-SENの中でも比較的まともな方だった。
「モントピリア!大丈夫!?」
「す、すみません…姉貴…ボクは…もう…」
「もういいから!テンバー、コロンビア!モントピリアを頼むよ!」
「分かった!姉貴も気をつけてね!」
クリーブランドからマーレの攻撃を庇ったモントピリアはそのまま意識を失ってしまう。
クリーブランドはテンバーとコロンビアにモントピリアを託し、二人は後方にいる明石の所に戻ろうとした。
「…逃がすか。」
マーレは閃光の如く海を掛けていき、一瞬でモントピリア達の前に立ちはだかる。
「嘘…いつの間に…」
「悪いが今回の俺は最初から本気だ。」
一切の躊躇いも無く、マーレは剣を振り下ろした。
「止めろぉぉ!」
クリーブランドは主砲をマーレに向けたが、予めマーレが発艦させておいた艦載機に邪魔をされ、主砲が撃てない状況に陥り、妹達がやられる姿を見る事しか出来なくなってしまう。
「ごめん…姉貴…!」
テンバーは目を瞑り、これから起きる現実を受け入れようとしたその時、金属同士がぶつかり合う音がつぶられた目の暗闇越しから聞こえた。そっと目を開けると、最初に目に映ったのは黒い犬のような耳と尻尾、そして白い軍服を着たKAN-SEN…そう。テンバー達の前に現れたのは重桜のKAN-SEN、愛宕だった。
「大丈夫かしら。ほら、早く行きなさい!」
「え、う…うん!」
「行こう!コロンビア!」
テンバーとコロンビアはマーレを振り切るように最大出力で離れていく。
「まさかお前たちがアズールレーンのKAN-SENを助けるとはな…!」
敵を逃した苛立ちを今度は愛宕にぶつけるようなマーレは左の艤装の砲塔を愛宕に向けた。だが、それは愛宕も同じ事だった。愛宕は左の艤装では無く、右の艤装を狙い主砲を放った。
主砲は見事右の艤装に命中しそのダメージのフィードバックをマーレは受けてしまう。
「チッ…!」
「確かに貴方の2つの艤装は強力だけど、これだけ近ければ流石に当たるわよ。」
「そして…とったぞ!」
「気づいてないとでも思ったか…高雄!」
背後で斬りかかろうとする高雄の存在に、右の艤装の一つ目で把握していたマーレは高雄の刀を左の艤装の尻尾で受け流す。
高雄はこれ以上は踏み込まず、体制を整える為少し後ろに下がる。
「貴方達は…どうして…」
「話は後よエンタープライズ!早く怪我した子を下げなさい!」
「だが、負傷している者が多くこれでは撤退すら出来ない…」
「だったら私たちに任せてください!」
突如、エンタープライズ達の後方から重桜のKAN-SEN達が続々と負傷したKAN-SEN達を保護していた。
「ほら、肩に捕まれ。」
「ここは取り敢えず私達に任せて。」
重桜のKAN-SEN達がアズールレーンのKAN-SEN達を保護する光景は今の世界の状況からでは想像出来ないものであった。戦いあっていた敵が今では敵を助ける光景はまさに奇跡であった。
「ほぅ…まさかこんな事がな。」
「よそ見してる場合かしら?」
すかさず愛宕は主砲をマーレに向けて放ったが、訳もなくマーレは砲弾を回避する。
「初めて会った時は仮面越しだったわね。ようやくその素顔にご対面…っ!?」
「どうした愛宕!」
「なんだ?溺愛している男の顔と似てるだけでそこまで動揺するものなのか?」
マーレの素顔を見た愛宕はあまりにも優海に似ていた顔に愛宕は戸惑いを隠せずにいた。愛宕の様子を確認する為に、高雄は愛宕の近くまで移動した後にマーレの顔をみて高雄も動揺した。
「似ている…けど違うわ。優海君はもっと優しい目をしていたわ。」
「優しいか…反吐が出る。」
「貴様…!」
高雄と愛宕は優海の事を侮辱されたような言葉遣いに怒りを覚え、獲物を食い殺す獣の目付きでマーレを見つめる。
「それはマーレ君も同じはずです。」
「なっ!?」
マーレの事を君付けで呼ぶ者はこの世で1人しないない。だが、今ここにいるとしたらそれは戦場のど真ん中で自殺行為に等しいものであった。
有り得ない。そんな事を抱きながら声のする方向に振り返るとそこには雪のような長い髪をなびかせてマーレの目だけを見ていた彼女…ネージュが艦の上で叫んでいた。
艦種は恐らく…ホーネットだろう。現にホーネットが庇うようにネージュの前に立っていたのだから。
「ネージュ…なんでこんな所にいるんだ…!」
「マーレ君!どうしてセイレーンと一緒にいるんですか!」
マーレの呟きはネージュには届かずネージュの一方的な会話だけが成り立っていた。ネージュの叫びにマーレは応えずただひたすら黙っていた。
「黙ってないで答えたらどうだマーレ。」
「…オセアンか。」
「もう昔のように父さんとは言わないのか…」
子供叱りつける父親とそれに反抗する子供のような感じだが、マーレに関しては敵を見るようにオセアンを睨んでいた。
「お前…なんでネージュをこんな所に連れてきた…お前の差し金か…?」
「これはネージュの意思だ。」
「何だと…?」
マーレはもう一度ネージュの目を見た。確かに昔のネージュには無かった目を感じ取れたマーレはオセアンが言っていた事が真実だと理解する。
「そうか…強くなったなネージュ。」
マーレはこの時、ネージュに向かって笑った。慈愛に満ちた優しい目と笑顔は間違いなくネージュの知ってるマーレであった。
「…!マーレ君!やっぱり貴方は…」
「……」
マーレは無言で右の艤装で艦載機をホーネットの艦に飛び立たせる。
「ごめんネージュ!残念だけどこれ以上ここに留まるのは無理!」
ホーネットは迎撃機を発艦させ、マーレの艦載機をうち落とそうとした。ホーネットは明らかな戦闘力の差を痛感していたがマーレの艦載機はまるで殺気が無く、迎撃機の機銃になすがままに当たった。
「え?どうしてこんなにあっさりと…とにかくチャンス!後退するよ!」
「待ってください!マーレ君…!マーレ君!」
ネージュはそのまま柵から身を乗り出す程マーレに近づこうとしたが近くにいたオセアンに止められてしまう。
そしてその弾みのせいか、ネージュの首にかかっていたペンダントのチェーンがちぎれてしまった。
「あぁ!ペンダントが!」
「…!」
敵が後ろに居るにも関わらずマーレはネージュが落としたペンダントを海に落ちる前に拾った。着地の隙を突かれる事を避ける為、マーレは艤装の砲塔をKAN-SEN達に向けて放った。
「くっ…ちゃっかりしてるわね。」
隙を突こうとした考えが止まれたと思い込んだ愛宕はマーレと一旦距離を置いた。その隙にマーレはペンダントを受け止めると、そのペンダントを見つめた。
「これは…まだ持っていたのか…」
マーレはペンダントの中身を確認することも無く、服のポケットに入れ、戦闘体制に戻った。
(いつか返す…それまで待っててくれ…)
「離して下さいオセアンさん!オセアンの息子ですよ!?なのにどうして!」
「…すみません。」
オセアンは素早くネージュの首に手刀を打つと、ネージュはそのまま気絶してしまう。強引な手を打ってしまったオセアンは自分自身がやった行動を憎んだ。
「…私だって止めたい…ですが今は…オロチを止めるのが先です…すみません。」
自分の息子の安否と世界の命、天秤にかけたくない事だが、このどちらかを天秤にかけ、どちらか選ばなくてはいけない。この苦悩の選択にオセアンは己の無力さを痛感し唇を噛み締める。
「…皆さん、重桜の皆さんと協力してマーレを止めます…!」
「残念だが俺を止めてももう遅い。」
マーレの背後にいるオロチが赤く光だし、やがてその光は中央に集まる。光が消え、オロチの中央に何か出てきた。それは…間違いなくミサイルであったが、何処か違和感があった。
「あれはなんだ…?」
「ビスマルクさん…あれって…」
「えぇ、フリッツXによく似てるわ。」
「フリ?ブリ?なんだそれ?」
夕立が聞きなれない言葉を聞き取ると、鉄血は沈黙を貫いた。まるで知られたくないように。
「企業秘密よ。」
「ま、端的に言うと…厄介って事よ。」
オイゲンに言われなくともKAN-SEN達は本能であの平気の恐ろしさが肌を通して伝わってくるようだった。
「一体何を…っ!あいつは!」
エンタープライズは赤城の後ろにいた天城の姿を見た。エンタープライズはあの天城がオロチだと分かっていた。エンタープライズの頭の中で様々な考えが張り巡らさていたが、今は目の前にある脅威の事を最優先に考えた。
「さぁ、赤城…始めましょう。」
オロチは赤城の頬を撫で、まるで飼い猫を飼い慣らすようであった。それに喜びを感じた赤城は虚ろな目のまま、笑みを浮かべたその表情は狂気を感じる事が出来るほどであった。
「えぇ。始めましょう…本当の戦争を。」
光に手を伸ばそうとしたその時、背後から黒い弓矢が俺の頬を通り過ぎた。弓矢と頬の摩擦熱が頬から伝わり、一筋の血が流れ出た。
「誰だ!」
背後に振り返り、誰かの足音が近づく。足音が大きくなる度に心臓の鼓動が早まり息苦しくなる。
「コネクター…お前も協力してく…あれ?おい!コネクター!どこにいった!?」
隣にいたはずのコネクターの姿が見えず、見えるのは広がる暗闇だけだった。足音がどんどん大きくなり、俺は戦闘態勢に入る。
武器を大剣から二丁拳銃に切り替え、中距離での戦闘に備える。
やがて暗闇から姿を表した人物はボロボロの黒マントに銀の短髪の姿をしており、エンタープライズと同じような弓を持っていた。
「…エンタープライズ?」
何故だが直感的に俺は彼女をエンタープライズだと感じた。いや、実際彼女とエンタープライズは似ている。
だが…雰囲気が明らかに違う。エンタープライズでは無いのか…?
「お前は誰だ!」
しかし、彼女は応えなかった。それどころか俺の頬を掠めた弓を構えずにいた。
「…そこから先は行くな。」
「え?」
いきなり彼女が口を開けると、やはりエンタープライズと同じ声をしていた。
「…貴方の未来は破滅だ。ずっとこのままの方が貴方は幸せになれる。」
「まるで見てきたかのようだな。」
「…」
肯定と言う意味合いなのかは分からないが彼女は黙っていた。俺の未来は破滅…それは合っている。結局セイレーンである俺は必ず破滅するのだから。
「あいにく俺はその破滅の未来を受け入れてる。」
「そんな事は分かってる。だから…私が止める。」
彼女は弓をノーモーションから矢を放つとあまりの速さに俺は直感で回避をした。幸い矢は俺の回避方向と反対方向に突き抜けていった。
「お前は…誰なんだ!エンタープライズなのか!?」
「…私は…【コードG】今はそう呼ばれている。」
景色は変わり、空が夜空に、そして海の上には撃沈された艦がその身を焦がす炎を受けながら朽ちていきながら沈んでいくものだった。
「…大丈夫だ。私が…貴方を護る…!」
「全く…行動と言動が一致してないのに!」
俺は二丁の銃口を彼女に向けた。その矢先に彼女の目が何故か悲しげに見えた気がした。
(あぁ…指揮官。そんな貴方だからこそ…私が護ってみせる…必ず。)
もしもの話(R-18)を観測しますか?
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Yes
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NO