もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜 作:白だし茶漬け
現在、とある人に絵の依頼をしています。
以上です。夏休みの課題が地獄すぎる…!
「俺が…この戦いを終わらせる…!」
一人の男が大剣を天に翳し、戦争終結を宣言する。
その高らかな宣言に、ここにいる全ての者が注目した。
「あれは…指揮官!?」
「高雄ちゃん!あの子って…」
「あぁ。間違いない。優海だ!」
KAN-SEN達が優海に注目する中、優海は大きく息を吸う。
「全KAN-SEN達に告ぐ!KAN-SEN達全員は俺の指揮下に入れ!繰り返す!KAN-SEN達は全員俺の指揮下に入れ!」
「あら、随分と大胆なお誘いね。どうする?ビスマルク。」
「勿論決まってるじゃない。」
ビスマルクは優海に近づき、それに優海は気づきビスマルクに顔を向ける。
2人はしばらくの間、無言で互いの目を見つめ合い真意を図っていた。
「貴方…その左目…」
ビスマルクは優海の変わった左目を見つめていた。ビスマルクはセイレーンであるテスターの目を見るとそれと同じ目だとに気づいた。その事を優海が感づく。
「今は関係ない。それで俺の指揮下に入ってくれるのか…?」
「貴方がこの状況を打開してくれるなら話は別よ。」
「じゃあ任せとけ。」
優海はオロチとオロチと宙に浮かぶテスターを見る。
オロチの防壁、兵装、そしてテスターの数を算出し、今優海の頭の中にはこの状況下での最適解の答えを探していた。オロチの全長、兵装、防壁の強度、セイレーンの数…迫り来る情報量の荒波に耐えながらその答えに到達した。
_報告。オロチの甲板に赤城と天城、そしてその付近に現在、瑞鶴と交戦している加賀を発見。
「天城さんが…!?」
優海は亡くなった筈の人物を探す為、オロチの甲板部分を見る。するとこちらを見つめている赤城と天城の姿に化けたオロチが居ることを確認する。
「あの姿…間違いなく天城姉さんだ…でも違う…天城姉さんじゃない!」
姿形は間違いなく天城だが、昔一緒に暮らしてきた優海はその姿に惑わされる事無くその人物を否定した。
「多分オロチだな…寄りにもよって天城姉さんに成り代わるなんて…」
_戦う気が失せたか?
「逆だ…今物凄く怒ってるっ!」
死者への冒涜と、大切な人に成り代わっている怒りが合わさり、その怒りで自分の理性というものが爆発寸前の状態ようだった。
「ビスマルク、取り敢えずあの空にいるセイレーンの数を減らしてくれ。」
「オロチは良いのかしら?それに貴方と同じ顔のテンペスト…いや、マーレと言うべきかしら?あいつはどうするのかしら?」
「今この状況じゃオロチの防壁は破れない。それにマーレさんは俺のこの艤装が止める。」
俺は二つの艤装を切り離し、別行動させる。これでKAN-SEN達の負担が減るはずだ。
「正気かしら?この場にいる全員のKAN-SEN達の状況を確認しながら戦うなんて、はっきり言って不可能と思うけど。」
「一人じゃ無理だ。けど…今の俺は一人では無い。」
優海は人差し指を自分の左目に指を指すとビスマルクはその言葉の真意に気づく。
そう、今の優海の中にはコネクターが存在している。
つまり、今の優海は一人であり二人の存在となっている。
今の優海ならば、中にいるコネクターが戦況を確認し、それを知った優海はそれを元に戦術を練る事ができる。
「それに…作戦の指示はこうしてやる。」
優海はビスマルクにアイコンタクトをするように見ると、ビスマルクは頭の中に直接、優海の声が聞こえる奇妙な感覚に襲われた。
「これは…貴方のせいかしら?」
「まぁな、ちょっとコネクターの能力を応用したやつ。」
コネクターの力の本質は"繋がり"だ。KAN-SEN達のメンタルキューブと繋がることでその力を得られるのなら、このように声を出さずとも意思疎通が出来る筈だと考えた優海はぶっつけ本番で見事この技を得た。
「取り敢えず…作戦の指揮は任せるわよ。指揮官。」
「無理はするなよ。」
「当然よ。それにその事についてユニオンの英雄様が何かいいたがってるそうよ。」
ビスマルクの目線の方向に優海は顔を振り返ると、エンタープライズが何か言いたそうた目をしていた。
「指揮官…無理をしないでくれ。」
「あぁ…じゃあ頼む。」
俺は目を瞑り、KAN-SEN達の意識を辿る。そしてその意識の下で俺はKAN-SEN達全員に指示を通達する。
「なんだ…指揮官の声が頭の中に直接入ってくるようだ…?」
「コネクターの力を応用したんだ。これで素早く全員に指揮が出来る。」
KAN-SEN達は頭を抱え、指揮官の声を聞く。
「その指揮通りだ。…俺は加賀さんを止める。」
「私たちは残りのセイレーンに対応すればいいんだな。」
「うん。頼むよ。」
優海とエンタープライズは一旦別れ、KAN-SEN達はセイレーンを、優海は加賀を止めるべく動き出した。
量産型セイレーンとテスターの砲撃を掻い潜り、ようやく加賀さんの獣が目視した。俺はミサイルの目標を獣に定め、ミサイルを発射させる。
煙の糸を引きながらミサイルは獣に向けて突撃し、その装甲が獣に当たる。
「グォォォォォォ!」
獣は痛いと叫んでいるかのように吠え、そのまま海に倒れて炎となって消えてしまう。
「え?援軍?」
「翔鶴姉!あれ!」
最初に俺に気づいたのは瑞鶴であり、瑞鶴は俺の方に指を指す。傍にいた翔鶴、ジャベリン、ラフィー、そして綾波も俺に顔を向けた。
「指揮官!」
「大丈夫かジャベリン?」
「はい指揮官も大丈…夫です…か?」
ジャベリンは俺の顔…いや、左目を見て絶句した。それはそうだ。左目がセイレーンの目になっていたらそんなふうに驚く。
「指揮官、その目…」
「言うなラフィー。大丈夫た。」
ラフィーはそれ以上言わず、言いたい事を噛み締めた。
瑞鶴と翔鶴はそんな俺の目を見て警戒心を高めた。
「貴方、本当にセイレーンだったんですね。やっぱり私の予想は間違ってなかった…瑞鶴、離れなさい。」
「で…でも…」
「セイレーンは敵よ。倒すべきね…」
その認識は間違ってなかった。俺だってそう思ってる。別に悲しさや認めてくれって気持ちは無かった。
だから俺は今ここにいる。
「ここは俺に任せろ。皆はセイレーンを頼む。」
「良いのですか?加賀は指揮官の…」
綾波も俺の過去を知っているので、戦えるか心配しているのだろう。
「心配しないで。ただちょっと姉の暴走を止めるだけだから。」
俺は安心させる為に綾波の頭を優しく撫でた。綾波の柔らかい髪が少しだが感じ取れる。
…あぁ。やっぱり感触までかなり取られてるな。
運良く生き延びても、もう俺は物を手に取ってもその感触を得ることは無いだろう。
「指揮官…」
「…瑞鶴、翔鶴、この子達を頼むよ。」
俺は俺自身の意思でここにいることを主張する為に右目だけで彼女達の目を見る。この青い目に、俺の信念と意思が込めるように全力で目で意志を伝える。
瑞鶴はその目の意志を受け取り、翔鶴も俺の事を認めてくれたようにため息を吐いた。
「了解!加賀先輩の事よろしくね!」
「まぁ、ご勝手にして下さい。…頼みますよ?」
「あぁ…任せてくれ。」
俺の両隣に2羽の鶴が通り、俺の中で微かに感じるものがあった。加賀さんを止めたいのは何も俺だけじゃない。瑞鶴や翔鶴、綾波、重桜の皆だって赤城さんや加賀さんを止めたいという気持ちが、俺の胸の中に伝わってくるようだった。
そして俺は、一歩ずつ加賀さんに近づくと、ようやく加賀さんと目を合わせることが出来た。
「また会いましたね…加賀さん。」
「…やっと来たな。」
加賀さんは俺と自信を囲むように青い炎の壁をつくった。その炎は海水の上にあるのにも関わらず、消えずに燃え盛っていた。
「指揮官…!」
こちらの状況が分からなくて心配したジャベリンは俺の事を呼んでいた。加賀さんに気をつけながら俺はジャベリンの方に気を向かせる。
「大丈夫だから!早く俺の指揮に従って!」
「指揮官…どうかご無事で!」
水がかき分けられる音がしたので、どうやら俺の言う通りセイレーンの撃退に集中してくれたらしい。
これで心置き無く加賀さんを止められる。
「ようやく会えたな…優海。」
加賀さんは俺の左目のことは何も言わずにただ純粋に俺との再会を喜んでいた。
「…加賀さん、俺の左目の事…何も思わないんですか?」
「そんな事どうでも良い。家族とまた会えたんだ…これ程嬉しい物はないだろ?」
加賀さんは俺に丸腰で近づきにつれ加賀さんは本当の事を言ってるのを感じ取れた。
だが今の加賀さんは何処かおかしかった。何故だろうか、いつもより弱々しいようにも思えた。
やがて俺の目の前まで加賀さんは手を伸ばして俺の頬を撫でる。いつもの加賀さんなら絶対にしない事をされた俺は、戸惑いながらも加賀さんから離れた。
「なぁ優海…また四人で暮らそう。あの日のように…ずっとな…」
「四人…?天城さんはもう…」
「いるじゃないか。あそこにな。」
そう言って加賀さんは天城さんに成りすましているオロチの方に指を指した。
「…っ!あれはオロチですよ!?加賀さんだってそれを分かってるでしょう!」
「あぁ分かってるさ。だけど姉様があれを愛している以上…あれは天城さんだ。」
「ふざけるな!赤城さんは誰よりも重桜と天城さんや俺と…貴方を愛している!今までもこれからも…」
「違う!」
加賀さんは式神を俺の頬に掠めさせ、そのまま式神は炎の壁に巻き込まれて灰となった。
「姉様が愛したのは私の中にある天城さんだ!姉様は私を…私自身を見ていないんだ!」
「…え?」
「空母加賀…それは天城のパーツを使って戦艦から空母に代わった物だ。だから赤城姉様は私から感じる天城を愛した…」
「そんな訳無い!赤城さんは貴方自身を…」
「それが誰に分かるんだ!?」
加賀さんは今度は本気で俺に攻撃をあてようと俺に式神を投げつけた。咄嗟に俺は大剣で防いだが、攻撃の重みで少し俺は吹っ飛ばされ、炎の壁とは一歩の差で何とか止まった。背中から感じる熱さはもうほとんど感じられなかった。
「だが…何も知らないお前は違う…お前は私を…"加賀"を見てくれる!それが私の乾きを潤す唯一の物だった!」
その苦しさは俺にもよく分かる。マーレとして生きていた俺は、誰も天城優海として見ていなく、それどころか俺をただ救ってくれる英雄としか見ていなかった。
今の加賀さんの苦しみは分かる。だけど…赤城さんは確かに加賀さんを愛していた。天城さんは関係ない。
それを…何としても伝えなければならない。
「優海…私はお前を愛している…だからずっと私を見ていてくれ…天城では無く私自身を…!」
「…ごめんなさい。今の貴方を俺は好きにはなれません!」
加賀さんの告白を俺は剣で斬るように断って剣先を突きつけた。加賀さんは右手で顔を顔を抑え、よろめきながら笑っていた。
「そうか…ハハハ…そうか…アズールレーンに何か唆されたのか。お前がそんな事言う訳が無いからな。心配するな、直ぐに目を覚まさせてやるからな…」
最早何を言っても加賀さんに言葉は届かない。その曇った目を晴らす為には戦うしかない。
「行きます…加賀さん!」
大剣から刀に姿を変え、俺は加賀さんに近づく。
この刀は大剣よりも大きさは小さいが、刀の刃の部分の質量はどの近接武器よりも大きくなっている。だが、扱いが難しく下手に扱うと折れる可能性がある。
だが、刀の使い方は高雄さんから教わっている…!
「はぁぁ!」
刀を振り上げ、見えないカマイタチの如く斬撃が加賀さんに襲いかかる。だが加賀さんはいとも容易く避け、斬撃は炎の壁を斬るだけだった。
「相変わらず…いい動きだ…だが」
加賀さんは式神を投げつけ、それを交わすとその先で艦載機へと変化させた。艦載機は反転し、俺に向かって機銃を撃つ。迫り来る弾丸を全て斬り伏せた直後、また一方の艦載機が俺に爆弾を落とす。
「くそ…!」
爆弾ごと艦載機を斬撃で斬り伏せ、爆風は俺に届かなかった。しかし横からの加賀さんの攻撃を防ぐことは出来なかった。
加賀さんは式神を矢のような形に変化させて、俺の左肩を貫いた。
「グッ…!」
感覚が鈍くなっても痛覚はそのままなのか左肩に激痛が走る。最早左腕は使えない。これで俺の使える武器の幅は減った。
「お前とどれほど一緒に過ごしたと思ってる。お前の動きは手に取るように分かる。」
「それはこっちも同じですよ!」
「…?っ!上か!?」
突如上から砲弾が加賀さんに直撃し、咄嗟の反応で何とかダメージを抑えたようだった。
あの砲弾の正体は俺が予め撃って砲弾だ。加賀さんがこんな風に戦う事は予測できていたので、あの位置に落ちるように調整して撃っておいた弾が加賀さんに直撃した。
「やるな…優海!」
「はぁ…はぁ…グッ…!」
いきなり加賀さんの攻撃ではないダメージを受け、俺は膝を着く。恐らく…セイレーンの艤装のフィードバックが今ここに来たのだろう。となると敵は…マーレさんだ。
「これは…まずいな。」
空からKAN-SEN達を見下ろして分かったことだが、指揮系統がオセアンから優海に変わった為かKAN-SEN達の動きが変わった。
しかも優海の艤装が小賢しく俺の邪魔をするので戦いづらい。
「まずは優海の艤装を黙らせるか。」
優海の艤装にダメージを与えれば、フィードバックで優海にダメージが与えられる。そして戦闘不能になったら艤装も消える。
俺はビームの銃口をKAN-SENから優海の艤装に向ける。
だが、優海の艤装は二つある。もう一方の艤装が俺の背後から狙っているのは右の艤装である"スターゲイザー"にある一つ目で把握している。
「指揮官を傷つけさせない!」
「エンタープライズか…」
艦載機に乗ったエンタープライズが弓を引いて矢を放つ。しかし、矢は俺の剣に当たり、そのまま優海艤装に向けて弾いた。
矢は優海の艤装に刺さり、苦しんでる様子だった。
その隙にもう一方の艤装にビームを放ち、二つの艤装は海に落ちる。
「どうした、お前の矢で指揮官は苦しんでるぞ。」
「くっ…!」
ゆさぶりをかけようとしたが、エンタープライズは尚弓を引き続けた。やはりこの程度では折れないか。
迫り来る矢を弾き、お返しにビームを艦載機に向けて撃つ。
ビームと艦載機が当たる直前、エンタープライズは直前に艦載機から飛び降り、艦載機の爆発に巻き込まれずに済んだ。
「だが、その状態では動けまい。」
空中ではいくらKAN-SENといえどもまともには動けない。あれは左の艤装"シーサペント"の主砲を落下するエンタープライズに向ける。
「くっ…ん?あれは…?」
エンタープライズが左方角に目を向けたのを見え、俺は同じ方角に目を向ける。そこには艦載機が数十機こちらに向かっていた。だが、さして問題ではない。
艦載機を発艦させ、艦載機達に攻撃を仕掛けたら、狙いを定めたまま確実にエンタープライズを撃てる。
艦載機のドッグファイトは呆気なく終わり、向こうが爆発の景色が映る。
「さて、そろそろ…ん?」
「掛かったな。」
エンタープライズの不敵な笑みに疑惑を感じたその時、急接近する物体…いやKAN-SENがいた。
「まさか…!」
「貰ったァァ!」
そのKAN-SENは刀に炎を纏わせ、俺に斬りかかってきた。こいつは…瑞鶴!さっきの艦載機達に紛れ込んで爆風の衝撃を利用して接近したって訳か…!
炎の刀は右から来てる、俺の刀は左腕にある。
ここで体を回転させて剣で受け止めても艤装を斬り伏せられる…だったら残る手は…右手だけだ。
俺は右手で炎の刀を受け止めた。
「ガっ…!グゥゥ…!!」
「な!?右手で受け止めるなんて無茶な…!」
右手が無くなるほど熱く。熱すぎて感覚が無くなるほどだ。だが、こんな痛み…あの頃と比べたら…無いのも当然!
右手で刀をつかみながらそのまま全砲門を瑞鶴に向ける。
「その思い切りの良さには敬意を表すよ。お礼に全力でお前を…消す!」
「このぉぉ!」
瑞鶴はそのまま俺の右手を斬り伏せるように力を込めた。くい込んだ刃が更に奥に侵入し、遂には骨まで達した。
骨が炎で溶け、刀に斬られる痛みは俺の全身が離せと言っていると言うように痛みという悲鳴をあげていた。
「終わ…りだぁ!」
砲門は完全に瑞鶴を捉え、砲門の全てが瑞鶴に撃とうとしたその時、突如としてビームが俺と瑞鶴の間を通る。
ここでビームを撃てるのは一人しかいない…優海…お前はどこまで俺の…!
ビームの正体は優海の艤装の主砲だった。恐らくコネクターの能力によって瑞鶴の危機を察知した優海が力を振り絞った放った一撃だろう。その証拠に艤装は力尽きたように消えていった。
俺と瑞鶴はそのまま海に落ちていった。片手ではまともな受身が取れず、俺はそのまま海に転がった。
「…右手は使えないな。」
右手から右腕にかけて焼けただれた後と刀に斬られた後があり、腕をあげることすら出来なかった。そのため、右腕のビーム砲はお荷物当然となった。
「形勢逆転だ…マーレ。」
辺りを見渡すと量産型は全滅し、テスターの個体は少なくなっていた。
そして俺は完全にKAN-SEN達に包囲されていた。
「…悪いがまだ終わる訳には行かないんだ。」
左腕の剣からコードが伸び、それを左の艤装に直結させる。二つ分の出力が剣に集中し、剣は巨大なビームサーベルへと変わる。雲を突き破る光の剣を、俺は全身全霊を込めて振り下ろす。
「不味い…!奴を止め…」
「そうはいかないわ。」
「何!?」
突如上空からテスターの支援攻撃が開始され、先程減らされていたテスターの数は増え、上空はまたテスター一色へと変わった。
「残念。あの程度じゃ私は倒せないわ。」
「くっ…なんて奴だ…」
「そんな事より自分の心配をしたらどうかしら?エンタープライズ。」
「ぐっ…!」
テスターに一瞬でも気を取られたKAN-SEN達のスキを突き、俺は光の剣を振り下ろす。ビームサーベルの熱が海を蒸発させ、海そのものを割ろうとする勢いだった。
「終わりだ…!」
「あら、本当にそうかしら?」
「何…?」
振り下ろされたビームサーベルの先にはプリンツ・オイゲンとアドミラル・ヒッパー、イラストリアス、インディアナ・ポリスが立っていた。
「全くあの指揮官は可愛い顔して随分と無茶な指揮をするものね。もう頭の中の声が指揮官でいっぱいだわ〜」
「そんな軽口言ってる場合じゃないでしょ!ほら、さっさとシールド張る!そこのあんたもよ!」
「…あ、分かってる。私ちょっと反応が遅いだけだから…」
そんなやり取りの中で三人はシールドを合わせ、1枚の巨大なシールドを張った。
だがそんな程度容易に壊せる。だが…まだイラストリアスがいる。恐らくタイミングを測っているのだろう。
イラストリアスの"装甲空母"は強力な防御能力故に持続時間が短い。
「…だったらそれごと粉砕してやる。」
_今だイラストリアス!
「分かりました!聖なる光よ私達を守って!」
指揮官の指示を聞いたイラストリアスは俺の攻撃と絶妙なタイミングで"装甲空母"を発動した。
KAN-SEN達とシールドに光の壁が現れ、俺の剣とぶつかり合う。
光の盾と光の剣がぶつかり合い、ビームの熱がKAN-SEN達に襲いかかる。
一秒が途方も無い時間に感じ、KAN-SEN達はビームの熱に耐える。
"装甲空母"の持続時間は7秒だ。それまでにシールドを破壊したら俺の勝ちだ。だが、こちらもそろそろ制限時間が限界に達し、出力が思ったより上がらなかった。
「ぐっ…!こんな所で…終わる訳には…いかない…!」
俺は荷物当然になった右腕の二の腕を喰い尽くすように噛んだ。セイレーンの黄色い血が俺の顔と口に付着し、更に鉄臭い匂いが鼻につく。
「な…何やってるんだ!?」
エンタープライズだけでは無く、KAN-SEN達が俺の行動
を見て絶句した。ただの現実逃避の行動と思ってる者もいるからもしれない。だが違う。
俺は逃げない。あの時…全てを失った日にそう誓った…!
「グッッ…ウウウウ…!!」
腕を噛んだ歯が筋肉繊維に見事引っかかり、俺はそれで腕を上げようとした。右腕全体が尋常ではない痛みに襲われ、悲鳴をあげていた。
「あ、あんた!何しようとしてるのよ!」
口が塞がれているのでヒッパーの答えは口では答えられないが、行動でなら返せる。腕が避けそうな痛みに耐え、ようやくビームの銃口をKAN-SEN達に向けることが出来た。
「…まさか。」
オイゲンの予想は当たっている。俺はビーム砲の後部からコードを出し、それを"スターゲイザー"に接続する。
スターゲイザーの目が見開き、青い目から赤い目に変わる。
瞬間。ビームの銃口から光が集まる。それは全てを焼き尽くす灼熱の光であり、人が拒む光でもある。
「…!」
ビームの反動で口を離してしまってわ俺はビームの反動に耐えきれずに俺の腕は消滅し、俺は負ける。
そんな物に屈せず、俺は更に右腕を離さないように噛む。最大出力のビームの光はそのままKAN-SEN達のシールドに直撃する。ビームサーベルとビームの二つの最大出力を堪えていたが、肝心の盾にヒビが入った。
「これは…まずいわね。」
「…うぅもう…無理…」
「ダメです!もう光が…!」
何秒たったのだろうか?7秒というこの悠久の時が終わりを迎えていた。
やがて長い7秒が終わり、シールドとKAN-SEN達を覆っていた光の壁が消えた。
だがその瞬間、一筋の光が俺を襲った。
…気づくことが出来なかった。優海の艤装は自立式だって分かっていた。だが、それを忘れてKAN-SEN達に攻撃を仕掛けた俺は…バカだ。
光の正体は優海の艤装の主砲であった。そのビームが俺の艤装に当たり、フィードバックでダメージを受けた。
その衝撃で俺の歯は腕を噛みちぎりながら腕から離れた。最早俺の腕は見るも無惨な姿に成り果ててしまった。
「最後の…最後まで…お前はっ!」
やがて光が消え、シールドを張っていたKAN-SEN達はそのまま倒れ込むように膝をつく。
「今よ…エンタープライズ!」
オイゲンの合図でエンタープライズは弓の弦を手から離し、光の矢が俺の胸に飛び込んで来る。
死に間際に走馬灯が見え、そのおかげで右腕の痛みも無くなった。
世界の全ての時が遅くなり、俺はその走馬灯を駆け巡った。
_マーレ君、あの…このペンダントありがとうございます!ずっと大切にしますね!
女性に何かを渡すのは初めてだった。俺は俺なりに彼女が喜びそうな物を買ってプレゼントした。
俺は彼女にロケットペンダントをプレゼントした。
彼女の嬉しそうな顔が俺を安心させた。
_ほら、見てみろマーレ。今日の星空は綺麗だぞ。
まだ好きだった父親の顔が目に映る。これは…オセアンと流れ星を見に行った日だ。流れ星が流れる間に3回願いを唱えると願いが叶うと知った俺は、流れ星を待ち続けたが、結局は来なかったな…
「だが…懐かしい日だ。」
_私の愛しいマーレ。私の愛しい子供のマーレ。この海のように優しく、広い心を持つ人になる事を私は願っているわ…
「っ…母さん?」
あぁ…そうだ。これは俺の生まれた日だ。母はその白く透き通る手で赤ん坊を優しく抱いていた。
その美しい金色の長髪と、宝石のようなエメラルドグリーンの目を忘れる訳が無い。
_俺は…こんな世界なんてゴメンだっ!神でも悪魔でもなんでも良い…俺に世界を…!
崩れゆく家…助けを求める人の嘆き…この世の地獄を具現化した光景に俺がいた。
そして…これが俺が終わった日と変わった日でもある。
英雄としての誇りも、人間をも捨て、俺は世界を…!
「だがらこんな所で終われるかぁぁ!」
「何だと!?」
左腕で矢を受け止め、動かない筈の右腕が何故か動かすことが出来たのを戸惑いはしなかった俺は、無防備のKAN-SEN達に銃口を向ける。もう一度最大出力でビームをチャージし、俺は光を放つ。
「くっ…指揮官…!」
エンタープライズ達は諦めたように目をつぶった。だが、それを守る物がまだあった。その蛇のような体を盾にKAN-SEN達を守る兵器が二つ、KAN-SEN達を守っていた。
「これは…指揮官の艤装!?そんな、止めろ指揮官!そんな事すれば貴方が!」
だが、優海は止めなかった。ここまで自己犠牲を躊躇い無く行えるのは最早狂気だ。だが、その狂気的な自己犠牲のお陰でKAN-SEN達は守られた。
俺は全てを出し尽くし、膝を着く。
「はぁ…はぁ…やはり…お前に負けたか…優海…」
「っ!終わりだ…!」
今度こそ矢は俺の胸に飛び込み、俺はその矢を受け入れる。矢は俺の心の臓に突き刺さった。
俺は重量に従って後ろに倒れ、そのまま海の底まで落ちていく。
その冷たくも心地よい海の中でそれでも俺は諦めなかった。
(まだだ…まだ俺は世界を…何もかも…成し遂げてはいない…!)
「ハァハァ…マーレを…何とか…倒したな…」
「もう…私はごめんよ…あんな化け物の相手は。」
「それは…私も…同感だ。」
英雄はユニオンの英雄によって討たれた。しかしその代償は大きく、KAN-SEN達の被害はこれまでの戦い以上に大きかった。
「っ!そうだ…指揮官は!?」
KAN-SEN達を守った艤装はそのまま力尽きたように消えていき、鉄血除くKAN-SEN達は指揮官の安否を気にしていた。
「ガァァァァァァァっ!」
「今のは!?」
「ご主人様の声です!行きましょう!」
ベルファストがいち早く指揮官の位置を察知し、エンタープライズとベルファストがいち早く指揮官の元に駆けつける。
「…はは…やっぱりマーレさんの攻撃を防ぐのはキツいな…」
前身が撃たれたような痛みと、全身が燃え盛る熱さの痛みを同時に受け、俺の体は引き裂かれるような痛みの地獄を味わっていた。
その痛みのショックで、俺は加賀さんを目の前にして倒れる。
「どうした…?遊び疲れたのか。フフ…全くしょうがない奴だ。ほら、抱いてやる。そして帰ろう…私達の帰るべき場所に…」
もしもの話(R-18)を観測しますか?
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Yes
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NO