もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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蒼炎と雛鶴と温もりと

燃え盛る青い炎壁に囲まれた優海と加賀の戦いは、終わりを迎えた。

優海はマーレの攻撃からKAN-SEN達を守る為、自分の艤装を盾にしてKAN-SEN達を庇った。結果KAN-SEN達を守る事は出来たが、その代償として優海は艤装のかつて無いほどのフィードバックを受けてしまい。

全身が切り裂かれる痛みを貰いながら、優海は倒れた。

意識を失い倒れた優海を見た加賀は、何かどうなったのか分からなかったが、どうでもよかった。加賀はようやく優海が大人しくなった事を喜び、優海を優しく抱き寄せた。

 

「ほら…帰るぞ。私たちが帰る場所に…」

 

加賀は青い炎の壁を消し、赤城がいるオロチまで優海を抱えて戻ろうした。だが、四人のKAN-SENに加賀は行く手をはばかれた。

 

「指揮官を返せ…!」

 

加賀の行く手を阻んだのはエンタープライズ、ベルファスト、瑞鶴、翔鶴の四人だった。

エンタープライズは矢を加賀に向け、ベルファストは主砲を向け、瑞鶴は刀を構え、翔鶴は笛に口を当て、いつでも艦載機を出す準備をしていた。

だが、加賀は優海を抱いている状態なので迂闊に攻撃は出来なかった。

加賀もそれを分かっての事か、はたまた優海を守りたい一心なのか、更に優海を強く抱く。

 

「返すだと…?それはこっちの台詞だ。優海は私の…私たちの家族だ!例え人間とKAN-SENであっても、血の繋がりが一滴たりとも無くとも、私たちは本当の家族だ!」

加賀のその思いに嘘偽りは無く、その思いは純粋である事がエンタープライズ達にも伝わった。

思わずエンタープライズ達は構えを解こうとしたが、その隙に加賀はエンタープライズを攻撃するだろう。

 

「お前らに分かるのか…?家族が離れ離れになってしまった胸の痛みを!お前ら分かるか…?家族が居なくなった日々の虚無を!お前らに…分かるか…わかるわけが無いっ!」

 

加賀はそんな日を絶対にこさせまいと優海を離さない。腕の中で必ず守るように庇った体制のまま加賀は外敵を睨む獣の如く鋭い目でエンタープライズを睨む。

 

「…家族とは実際に離れ離れになった事は無いが、家族が傷つき、居なくなってしまうかもしれない焦りと痛みは知っている。」

 

エンタープライズはかつて自分の不甲斐なさで、姉のヨークタウンの足は失った。

エンタープライズはその時、戦いの恐ろしさと言うものをこれまで以上に実感した。姉を失う焦りと恐怖が、エンタープライズを苦しめ、海を恐れさせた。

だからこそエンタープライズは加賀の言う痛みを理解できていた。

 

「戯言を…」

 

だが加賀はそんなエンタープライズを言葉を同情を誘うための戯言だと言って信じていなかった。

最早加賀には誰の言葉も届かない。…一人の男を除いては。

 

「戯言…なんかじゃ…無い…」

 

「…!優海!」

 

艤装によるフィードバックダメージを限界ギリギリで耐えていた優海は苦しみながら目を覚ました。無意識の中でエンタープライズ達の声を聞いたのか、優海は今の状況を呑み込んでいた。優海は加賀の肩を掴み、真っ直ぐ目を見て加賀を説得する。

 

「エンタープライズも…姉さんを失ってしまうかもしれない恐怖にずっと恐れていた。だけどそんな中でも誰かを守る為に戦ってきた!エンタープライズだけじゃない、ベルファストも瑞鶴や皆だって家族や友達を守る為に戦ってる!それを戯言なんか…言わせはしないっ!」

 

優海は力を振り絞り、艤装を展開して加賀の抱擁から抜け出した。

 

 

「大丈夫でございますか?ご主人様。」

 

「だ…大丈夫…だ。」

 

「大丈夫には見えませんけど?」

 

翔鶴が今にも倒れそうな優海を心配そうに見たのに気づいた優海は何とか心配させまいと気合いで立ち上がる。

 

「指揮官、無理はするな!ここは私たちに任せて…」

 

「ダメだ。…加賀さんと赤城さんを説得するまでは…!」

 

エンタープライズの制止を聞かない優海だが、やはりフィードバックのダメージが大きく、優海は膝をつく。

優海の全身は最早立っている事も出来ない状態であった。

 

「無茶しないで。何も指揮官だけが加賀さんを助けたい訳じゃないよ。」

 

「瑞鶴…って、今指揮官って…」

 

「ん?だって貴方指揮官でしょ?」

 

「それはアズールレーンの指揮官であって…」

 

まだアズールレーンとレッドアクシズは同盟も組んでいないため、俺を指揮官と呼ぶ理由は無いはずだ。

そんな事にも関わらず俺の事を指揮官と呼んだ瑞鶴を俺はポカンと見つめた。

 

「今はそんなの関係ないんじゃないですか?というかKAN-SEN達は俺の言うこと聞け〜なんてこと言ったのは貴方じゃないですか、指揮官?」

 

今度は翔鶴がからかうように指揮官よ呼びながら俺の頬をツンとつついた後、瑞鶴の横に立った。

確かに、KAN-SEN達は俺の指揮下に入れとは…言った。

 

「そうですよご主人様。ご主人様は1人ではありません。少し行動を自重しないとこの前のエンタープライズ様みたいになりますよ?」

 

「それはどういう事だ?」

 

エンタープライズは目を細めてベルファストを睨んだがそこには怒りは感じられない。むしろ友達にからかわれたみたいな空気を感じられた。

 

「はは、それはちょっと嫌かな〜」

 

「指揮官まで!…今の私は違うと思うが…」

 

「あぁ。やっと本当のエンタープライズを見れたような気がするよ。」

 

エンタープライズの顔はこれまで以上に生き生きとした顔になっていた。俺が今まで見たエンタープライズはどこか諦めたような暗い底にいるような感じが印象的だったが、今は全く感じられない。

エンタープライズは軍帽を被り直し、もう大丈夫だと言うように俺に小さく笑いかける。

…そう言えば、エンタープライズの笑顔…見たこと無かったな。そのせいか新鮮さも感じた。

 

不思議と力が戻ってきて、俺はようやくまともに立ち上がる。だが、流石にダメージが大きいのかセイレーンの艤装は出せずにいた。

 

(コネクター、あと俺はどのぐらい戦える…?)

 

_艤装の残存能力を基に推測…戦闘可能時間…5分。

 

(…充分だ。でも今ここでは戦わない。その間にオロチのあのバリアの解析を頼む。)

 

ここで加賀さんを説得出来たとしても問題のオロチが残っている。グズグズしている間にもオロチはまたあのミサイルを基地に向けて撃つはずだ。

最早俺にそれを止める余力は残っていない。オロチが何とかあのミサイルを撃つ前にケリをつけなくてはならないが、オロチには鉄壁のバリアがある。恐らく俺のレールガンも突破は不可能だ。だがらこの戦いの間、何とかコネクターには突破口を見つけてもらわなければならない。

 

「瑞鶴、翔鶴、まずは加賀さんの動きを止めてくれ。その後、どうにかして説得する。」

 

「うん。説得、頼んだから!」

 

「と言っても…あの加賀先輩の動きを止めるのは相当苦労しますよ?」

 

「それなら私達も加勢する。これなら問題無いだろう。」

 

エンタープライズとベルファストは俺の前に立ち、戦闘体制に入る。エンタープライズは瑞鶴の隣にたち、瑞鶴は隣のエンタープライズをまじまじと見た。

 

「私の顔に何かをついてるか?」

 

瑞鶴からの視線を感じたエンタープライズは瑞鶴と顔を合わせる。

 

「いや…まさかグレイゴーストとこうして隣に立って戦うなんて…こんな日が来るなんて思わなかったから。」

 

瑞鶴の言うことは最もだった。アズールレーンとレッドアクシズ、敵対する二つの勢力が今こうやって隣に立ち、力を合わせているのは奇跡と言っても過言では無いだろう。その事を瑞鶴に言われて実感したエンタープライズは感慨深い物を感じた。

 

「そうだな…では行くぞ!重桜の戦士!」

 

「行くよ!灰色の亡霊(エンタープライズ)!」

 

瑞鶴は刀を、エンタープライズを弓を加賀に向けて構える。瑞鶴は空母でありながらも加賀に向けて突撃をかけた。加賀は式神を瑞鶴に投げつけたが、全てエンタープライズの矢によって撃ち落とされる。

 

「もう!私だっているのよ瑞鶴?」

 

「では、私達も負けないようにしましょう。瑞鶴様?」

 

「そうね…足でまといにならないようにね?」

 

「ご心配には及びません。」

 

ベルファストと瑞鶴は加賀を挟撃するように左右から近づくが、上空にいるテスターの砲撃により瑞鶴とベルファストは加賀には近づけなかった。

 

「お邪魔するわよ。」

テスターは高みの見物と言いたそうにこちらを見下して笑った。テスターから先に何とかしなければ加賀さんには近づけないし、テスターに気を取られたら加賀さんはその隙をついて確実に倒しに来る。 しかもテスターは一人じゃない、何人もいる。それもあって恐らくは能力は下がってるだろうがやはり数が多すぎてキリがない。

 

「エンタープライズ、ベルファスト、翔鶴…上空にいるテスター達を頼む。加賀さんは俺と瑞鶴で何とかする。」

 

この戦闘で何よりも欲しいのは突破力だ。今いるKAN-SEN達の中で最も突破力があるのは瑞鶴だ。だがその突破力も上空のテスター達の妨害でどうしても届かない。

だからこそその妨害を無くすためにエンタープライズを支援にまわらせる。

 

「何を言ってるんだ!そんな体では…」

 

「大丈夫…瑞鶴もいるんだ。そう簡単に無茶はしない…というか無茶したら止めるだろ?」

 

「当たり前だ。」

 

「じゃあ心配無い。」

 

エンタープライズに心配させないように俺は笑顔でエンタープライズの肩を叩く。だけどどうしてもエンタープライズの顔は変わらず、心配そうに俺を見ていた。

俺もそんな顔を見て顔を歪めそうになったが、俺までそんな顔すると余計に心配をかける。

下がる口角を必死に上げ、何とか笑顔を保つ。

 

「分かった…絶対に無理はしないでくれ…」

 

「分かってるよ。」

 

と言っても…艤装の機能が半分くらいダメになってるから無理は出来ない状態だけど。

エンタープライズ達は俺の指揮通りに上空にいるテスターの迎撃を開始した。

 

「でも指揮官…私達だけで加賀先輩を止められる?」

 

「加賀さんの攻め方は知ってるよ。あと、これ渡しておく。」

 

俺は瑞鶴に俺の刀を渡した。瑞鶴は刀に手に取ると刀を試すように素振りを始める。

 

「なにこれ…すっごく軽くて使い易い!…折れない?」

 

「そこら辺の武器よりは頑丈だよ。まぁ…刃の部分に質量が集中してるから…折れやすいかも…」

 

「ええ!?」

 

折れやすいと言う言葉を聞いた瑞鶴は急に俺の刀を持ってる左手を震えさせた。まぁ、他人の武器だから仕方が無いと思うが、瑞鶴だって刀を使ってる。使い方さえ分かっていればそう簡単には折れないだろう。

 

「大丈夫だって、いつも通り使えば良いよ。」

 

「いつも通り…う〜ん…」

 

瑞鶴は目をつぶって自分の刀の扱いを思い出していた。

俺は瑞鶴の戦い方を良く見てはいないので分からないが…刀を使ってる分扱いは慣れてるだろう。

何故か瑞鶴の表情が歪んでるのは気の所為だと思いたい。…え?待って、そんなに刀に負担かけさせる戦い方してるの?

 

「ま、まぁ大丈夫かな!二刀流は初めてだけど!」

 

「そ、そう…」

 

だが、エンタープライズ達のおかげでテスターからの妨害の心配も無く、瑞鶴の突破力も上がった。

 

「それじゃ…行くぞ!一航戦!」

 

「雛鶴風情が獣に勝てるか!」

 

瑞鶴が加賀さんに一直線にで突撃をかけた。加賀さんは式神を投げつけ、炎の矢へと形を変えさせ瑞鶴の頭を狙った。炎の矢を右手の刀で切り伏せ、猪突猛進する。

 

「血迷ったか!」

 

加賀さんは炎の矢を次々と瑞鶴に撃ち込んで行く。

 

「左に避けた後次が来るから刀で防げ!」

 

瑞鶴は俺の声を聞き、すぐ様左に避ける。一発の矢は瑞鶴の横に通り過ぎ、次にくる矢が瑞鶴に襲い掛かる。

しかし、来ることが分かっているなら防御は簡単だった。瑞鶴は俺の刀を使い、矢を斬り伏せる。

 

「はぁぁぁぁ!」

 

瑞鶴と加賀さんの距離が狭まり、お互いの顔がはっきりと見える距離まで近づいた。瑞鶴は足を1歩踏み込むと刀を構えた。

 

「舐めるな!」

 

至近距離にも関わらず式神を炎に変え、青い炎の渦を作り壁を生み出した。瑞鶴はその炎の渦に巻き込まれてしまう。

 

「しまっ…!」

 

「瑞鶴!」

 

名前を呼ばれた瑞鶴は目を見開き、刀に艦載機を取り込ませ、刀に炎の纏わせる。だが、これでは足りない。そう感じた瑞鶴は優海から貰った刀を同じように艦載機を取り込ませる。優海の刀は赤い炎ではなく、白い炎が纏う。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

赤と白の炎を纏った二つの刀は青い炎を切り裂き、道を作る。その道の先には加賀を結ぶ一直線の道しか無かった。瑞鶴はその道を駆け抜け、遂に加賀の目の前までたどり着く。

 

「一航戦加賀!目を…覚ませぇ!」

 

瑞鶴は俺の刀を捨て、空いた左手で加賀さんの服をつかみ、そのまま頭突きをお見舞した。加賀さんは頭突きされた衝撃でそのまま倒れてしまう。

 

「おいおい…マジか。」

 

加賀さんが放った炎の渦から抜け出したのもそうだが、まさかあの加賀さんに頭突きを食らわせるのは…多分重桜の中で初めてなんじゃないかな…

俺は捨てられた刀を拾い、刃こぼれが無いか確認する。

幸い刃こぼれが無く、折れても居ないので少し安心した後、加賀さんの元に近づく。

 

「滅茶苦茶だ…なんなんだお前は…」

 

頭突きを仕掛けた滅茶苦茶な奴だと言う意味合いもあるかもしれないが、それ以前に何故刀で自分を斬らなかったのかとという事を言っているのだろう。敵は倒すべきだと言わんばかりに加賀さんは瑞鶴を睨んでいた。

 

「加賀さん。分からないんですか?この人たちは…いや、ここにいる全員、貴方達を本気で助けようとしてるんです。」

 

「助けるだと…?誰も助けてと言った覚えは…」

 

「苦しかった…そうですよね?」

 

「…!」

 

加賀さんはまるで自分の心の中をいい当てられたかのように目を開き、目を背けた。俺は膝をついて加賀さんの手を取り、加賀さんの体を起こした。

海に倒れた加賀さんの背中は濡れており、俺はその背中を右手で支える。こうして見ると、本当に加賀さんは変わっていない。それが懐かしく思ったが、その思いは振り払う。

 

「加賀さん、言ってましたよね。姉様が愛したのは、私の中にいる天城の影だって。」

 

「そうだ…だから姉様は私を愛した…」

 

「違う。赤城さんは加賀さん、貴方自身を愛しています。」

 

「そんな事…!」

 

加賀さんは左腕で目を隠し、俺と目すら合わせてくれなかった。だけど、俺は話を続ける。そうじゃないとこの戦いの意味が失ってしまう。

 

「俺だって生きる為に"マーレ・テネリタス"になったんです。皆、俺の事を"天城優海"なんかじゃなくて、英雄のマーレ・テネリタスとして見ていたんですよ。だから…加賀さんの苦しみが分かるんです。」

 

そう、生きる為に俺は英雄のマーレ・テネリタスになった。当然、人々は俺の事を英雄としてしか見ておらず誰も本当の俺を見ようともしなかった。

苦しかった。辛かった。誰も本当の俺を見てはいないその辛さが苦しかった。

だけど、少ない人達だけど俺を"天城優海"として見てくれた人がいた。ジンさん、リアさん、リフォルさん、ネージュさん、そしてKAN-SEN達…

 

「だけどそんな俺を…真剣に接してくれた人達がいた。それは加賀さんも同じだ。貴方のことを慕ったり、尊敬したり、愛してる人だっている!貴方の影にいる天城さんではなく、空母加賀!貴方自身を見ている人達がこんなにもいるんだ!赤城さんだって貴方自身を愛してるんだ!」

 

加賀さんは腕を退けてようやく俺の目を見てくれた。

加賀さんは瑞鶴の目を見た後、真っ直ぐに俺をの目を見た。

 

「私は…」

 

加賀さんは自分の手を胸に当てた。恐らく、まだ天城さんの影という事について引っかかっりがあるのだろう。

正直、加賀さんの中に天城さんがいるなんて事はどうでもよかった。だって加賀さんは加賀さんなのだから。

 

「…少しは弟を頼っても良いんじゃないですか?加賀()()()?」

 

「…!お前…」

 

何時ぶりだろうか、俺は久しぶりに加賀さんの事を加賀姉さんと呼んだ。最近の赤城さんと加賀さんをこうやって呼ぶのは抵抗があった。それは昔とは大分雰囲気が違っていたからだ。だから俺はこう呼ぶのを躊躇っていた。だけど今は違う。今の加賀さんは…昔俺と住んでいた加賀さんだ。あの強気で厳しくて、それでも優しい…俺の姉の加賀姉さんだ。

 

「…頼む。姉様を…止めてくれ。」

 

「…はい!でも…加賀姉さんも一緒に…!」

 

「だが、私は…」

 

俺は加賀姉さんの腕を強引に引っ張り、無理やり加賀姉さんを立たせた。自分はそんな資格は無いと言ってるように加賀姉さんはそのまま顔を俯かせている。

俺はそんな加賀さんの頬を両手で掴み、そのままこねくるように加賀さんの頬を弄った。

 

「どうしたんですか〜?俺の知ってる加賀姉さんはもっと強気なのにな〜?」

 

「ゆ…ゆふ!ひゃめろ!手をはなしぇ!」

 

俺に頬を弄られてるので中々言いたいことを言えない加賀さんは俺の手を掴んで離した。だが、顔が下を向く事は無かった。

 

「優海!お前と言うやつは…全く…」

 

「あはは。寒い日はこうやってお互いの手を温めたりしたでしょ?」

 

「…そうだな。…お返しだ!」

 

「あ、ちょっとま…むにゅ!?かがねぇひゃん!はげひ!」

 

加賀さんの倍返しを食らった俺だが、それ故に昔こうやって互いの暖かい頬を添えて冷たい手を温めたのを思い出した。加賀さんは満足したのか俺の頬を弄ることなく、ただ手を添えた。

 

「…やはりお前の頬は暖かいな…」

 

「……」

 

俺は加賀姉さんの手の感触を確かめるように手に触れたが、やはり度重なる艤装の展開により、俺の体はセイレーンに戻りつつあった。その証拠に、加賀姉さんの手の感触と手の温もりが…薄かった。

 

(あぁ…やっぱり感覚薄くなってるな…でも…これは暖かい事を俺は知っている。)

 

まだ残っている温もりを感じるように瞳を閉じ、残った感覚だけで加賀姉さんの温もりを全身で感じる。

 

「あ…あの〜そういう事は後の方が良いんじゃない?」

瑞鶴が見かねたように間に入り込むようにすると、俺と加賀さんは気恥しさで1歩下がる。しかも周りを見ると、瑞鶴だけでは無くこの辺りのテスターを倒したエンタープライズ達やジャベリン達、そしてはたまた愛宕さん高雄さん、それに鉄血の指導者ビスマルクまでいた。

 

「…指揮官、今は戦闘中だ。そういうのは後の方が良いとは思うが…」

 

「あ〜いやこれはその…はい、そうですね…」

 

最早言い逃れができない俺は、観念するようにエンタープライズに謝罪する。

 

「あらあら優海君〜?お姉さんの事は愛宕お姉ちゃんとは呼んでくれないのかしら?」

 

「いやお姉ちゃんはちょっと…出来て愛宕姉さん…かな?」

 

もう子供では無いと流石にお姉ちゃんと呼ぶのは周りの目からも俺のプライドからも許せないので流石に呼べない。その事に不満を感じた愛宕姉さんは頬を膨らませたが、満更でも無い様子だった。

 

「愛宕!今はそんな事言ってる場合じゃ無いぞ。優海、あのオロチの防御壁を何とかする方法は無いのか?」

 

「そうよ。そんなに馴れ合っているのなら何か突破口があるはずよね?」

 

地味にビスマルクの言葉が刺さる中、突破口ならコネクターの答えにかかっている。

 

「それなら…」

 

俺はコネクターに念じるように話しかける為、目を閉じて意識をコネクターに集中する。

 

(コネクター、何か分かったか?)

 

_解析完了。オロチのバリアは質量が決まっている。

突破方法は一つ。バリアを全体に覆わせ、強力な攻撃の一点に集中する。よって防御許容量を超えたバリアは破壊される。

 

成程…つまりKAN-SEN達をオロチの周りに配置させ、全範囲でバリアを張らせれば、もうそれ以上バリアは張れない為どうしても脆い部分は生まれる。

そこを強力な一撃で決めれば…バリアは破れるという事だ。強力な一撃か…どのくらい強力なら良いんだ?

 

(コネクター、その強力な一撃は俺のレールガンで充分か?)

 

_解析…問題は見当たらない。

 

(よし、ありがとうコネクター。)

 

_…任務を果たしただけだ。

 

素直じゃないな…ともかくこれで突破口は見つかった。

俺は意識を現実に戻し、目を開ける。

目を開けた先はKAN-SEN達が心配そうに俺を見つめる姿だけが見える。どうやら、意識をコネクターに集中していた俺を心配していたのだろう。

 

「指揮官?大丈夫か?」

 

「心配しないで、エンタープライズ。それにオロチの突破口を見つけた。…でもこれはKAN-SEN達全員の力が必要だ。…力を貸してくれないか?」

 

「勿論だ。」

 

「全てはご主人様の為に。」

 

「それしか方法が無いならやるしかないわ。」

 

「姉様…助ける。」

 

ユニオン、ロイヤル、重桜、鉄血…KAN-SEN達のほんの一部しかここにはいないが、四大陣営の確かな繋がりが今ここにはあった。

 

「よし、皆…行くよ!」

 

俺は刀を剣に変え、御旗を掲げるように剣先を点に向け、オロチへと道を示す。

俺が戦える時間はたった5分…その前に…絶対に赤城姉さんを助ける…!

 

「さぁ…運命の5分間の始まりだ…!」

 

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