もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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どうもこの度三稜釜次郎さんに優海くん達を描いてもらって喜んでいる白だし茶漬けです。
いや〜遅れた遅れた…


救いと繋がりと共鳴と

姉…もしくは兄弟と喧嘩した事はあるだろうか?普通の家族なら些細な事で喧嘩するだろう。お菓子を食べたとか勝手に部屋に入ったとか、自分の方が凄いとかそんな感じで喧嘩が始まることもある。昔は赤城姉さんと加賀姉さんはよく喧嘩していた。それこそ些細な事でいつもだ。それを始まっては天城姉さんが止めてたりしていた。だが、俺は一度も赤城姉さんや加賀姉さんとは喧嘩していない。今思えばこれが初めての兄弟喧嘩という事になる。

 

「来たわね…優海。」

 

「赤城姉さん…」

 

俺を見るあの虚ろな目は最早昔の面影が無くなり、別人と言える程だ。 赤城姉さんはそんな目で俺の目を見ていた。見つめられたせいなのか俺はあの目には吸い込まれそうになり、振りほどくように顔を振る。

 

「あら、折角会えたのにそんな怖い目をしてどうしたのかしら?」

 

「その下手な三文芝居はやめたらどうだ…オロチ!」

 

姿形と声は天城姉さんと全く同じだが、違う。天城姉さんの姿に成りすましたオロチは天城姉さんのように振舞っていた。その行動が俺の記憶を汚されていくように感じ、怒りの溶岩が沸騰しそうな程だ。

 

「辞めると言えば貴方の方よ。赤城は天城に会う為にここまでしたのよ?そしてこうして私にも会えた…貴方は赤城の願いを踏みにじるのかしら?」

 

オロチは赤城姉さんにその身を抱き寄せ、見せつけるように俺に怪しい笑みを浮かばせる。

…天城姉さんに会いたい。それは俺も何度も思った事がある。だから赤城姉さんの願いを全否定は出来ない。

だがこれだけは言える。これは間違ってる。赤城姉さんが会いたがってた天城姉さんはお前とは違う!

 

「お前は天城姉さんじゃない!」

 

「いいえ正真正銘の天城よ。声も姿も記憶も全てあの天城のままなのよ?鏡に映っている人物もその人物と全く一緒のように、私は言わばそれを映す鏡…」

 

「だから自分は天城だと?」

 

「そうよ…優海。」

 

その呼び方は間違いなく天城姉さんだった。優しく、暖かく、そして愛おしく俺の名前を呼ぶその声は間違いなく昔の赤城姉さんそのものだった。一瞬本当に天城姉さんが生き返ったのかと思ったがやはりどこか違う。

 

「さぁ…こっちにいらっしゃい。また一緒に昔のように過ごしましょう?」

 

「…やっぱりお前は天城姉さんにはなれないよ。」

 

「何…?」

 

俺は躊躇いなく剣を振り上げ斬撃を飛ばす。斬撃は天城姉さんに成りすましたオロチの頬を掠め、オロチの頬に傷が入り、血が流れでる。オロチは入った傷ではなく、俺の行動が有り得ないと言ってるかのように目を見開いて俺を見た。

 

「俺の知ってる天城姉さんはそんな俺の歩みを止めるような人じゃない。…歩き続ける。それが天城姉さんとの約束だ!」

 

俺はその約束を体現するように1歩ずつ意志を載せるように足を踏み込む。右足を踏み込み、左足を浮かして前に動かして踏み込む。そして右足を動かし、また左足を動かす。足を踏み込む度に俺はこれまで生きてきた日々を思い出す。

セイレーンとして生きていた日々、天城姉さん達と過ごした日々、マーレ・テネリタスとして生きていた日々、そして。指揮官としてKAN-SEN達と一緒に過ごした日々…そのどれもが鮮明に思い出せた。

楽しい事、嬉しい事、辛い事、苦しい事が一杯あった。

でも…それでも俺は歩いて来れた。

 

「そんな馬鹿な事が…有り得ない!」

 

オロチは有り得ないと連呼しそのまま後ろに数歩下がり、赤城姉さんから離れた。

 

「天城姉様!」

 

赤城姉さんは自分から離れたオロチの手を取ろうとしたが、オロチの心を動揺を示すかのように、赤城姉さんがたっていた甲板が一部崩れ去り、赤城姉さんはそのままバランスを崩して海へと落ちていく。

 

「赤城姉さん!」

 

それを見た俺は咄嗟に赤城姉さんの元に走り出し、右手を伸ばす。KAN-SENだから海に落ちても大丈夫だとか、そんな事は良い。今この手を伸ばして赤城姉さんを助けなければ赤城姉さんの心には届かないと感じたからだ。伸ばしたその手は赤城姉さん姉さんの手に届き、手を繋ぐ。

瞬間。辺りの景色は変わり、燃え盛る海へと変わる。

 

「ここは…何だ?…コネクターの力で俺はまた意識の世界に飛び込んだのか?」

 

この海は、俺が意識の中でコードGと出会った場所に似ているが…少し違う。燃え盛る海は同じだが、船が沈んでいない。辺りを振り返り、前を向くとそこには赤城姉さんが立っていた。

 

「赤城姉さん…!」

 

俺は赤城姉さんのところに近づこうとしたが、赤城姉さんは式神を俺に投げつけ、俺の足を止めた。

 

「…もう邪魔はしないでちょうだい…」

 

「え?」

 

俺は言っている意味が分からずもう一度赤城姉さんに近づこうとしたが、またもや俺の足目掛けて式神を投げつけた。咄嗟の反応で足を下げ、式神は海に刺さりそのまま小さく燃え尽きた。どうやら本気で俺の足を狙ったようだった。

 

「私には…貴方や重桜を守れる力なんて無かった…だから悪魔に心を売ってここまで来たの…」

 

「じゃあ…赤城姉さんがオロチを起動させたのは重桜を守る為に?」

 

俺はてっきり、天城姉さんを蘇られせるとばかり思った為、この事実に俺は驚かせる。しかし、逆に俺は赤城姉さんは変わってない事に安心した。赤城姉さんはたまに気持ちが暴走したりする事もあるが、基本的に自分よりも他人の意を尊重している。

オロチを起動させたのは自分の為ではなく、あくまでも重桜の為だと言った赤城姉さんだが、きっかけが分からない。…いや、恐らくきっかけは二つある。しかしそれは俺の口ではなく、赤城姉さんの口から話された。

 

「私の不甲斐なさが天城姉様を逝かせてしまった…私に力が無かったから、貴方と離れてしまった…だから求めたのよ…私の愛で私が護りたい物を護れる力を私は求めた!」

 

「それがオロチだと…?」

 

「そうよ!だからお願い…もう私の邪魔をしないで!そしてずっと一緒にいましょう?昔のように、あの暖かくて幸せな日常をずっと…ずっと…」

 

赤城姉さんは光の無い目で俺に手を差し伸べた。だが、俺はそんな赤城姉さんの目を否定するように目を見ると、赤城姉さんは嘘だと言うように目を見開いた。

 

「どうして?どうしてなの優海!?私は貴方の為なら何だってするわよ?どんな障害からも守ってあげられるし、どんな望みでも叶えてあげられる!なのにどうして?なんで?どうして拒むの?」

 

「じゃあ赤城姉さんは本当にこれで良いと思っているんですか?」

 

「…っ」

 

赤城姉さんはそう言われると俺から目を逸らし、痛み出した心を何とかするように胸に手を当て、服を掴んだ。

 

「もう分かってるでしょう?こんなのただ圧倒的な力の恐怖で縛ってるだけだって。」

 

「それでもよ…それでも私は!」

 

赤城姉さんは引かなかった。いや、もう後戻りは出来ないと思っているだろう。セイレーンと手を組んで、世界を滅ぼす程の艦オロチを使うと決めてからずっと赤城姉さんは後戻り出来ない所にいた。

だが、もうそれは終わりしなければならない。

俺はそれを終わらせる為に赤城姉さんに1歩ずつ近づく。

 

「来ないで!」

 

赤城姉さんは俺の顔に式神を投げつけたが、式神は俺の頬を掠めるだけだった。赤城姉さんは何度も何度も式神を投げつけたが、依然として俺には当たらなかった。

俺が避けてる訳じゃない、赤城姉さんがわざと外しているのだ。揺れ動く意思が赤城姉さんの狙いを狂わせ、俺には一度も攻撃が当たらず、俺は遂に赤城姉さんの前に立つ。

 

「私は…あぁ!」

 

揺れ動く意思が傾くように赤城姉さんは突然バランスを崩し、そのまま燃え盛る炎に落ちようとしていた。

俺は右手を伸ばし、赤城姉さんの右腕を掴み、そのまま腕ごと体を引っ張りあげる。

赤城姉さんの体が俺に近づく度に景色にヒビが入り、景色は現実の景色に戻る。そんな現象を俺は気にせず、赤城姉さんの背中を左手で支え、そのまま抱き寄せる。

抱き寄せた瞬間、先程の燃え盛る海は消え、元の青い海へと戻り、今たってるところがオロチの甲板に戻った。

 

「やっと…やっとここまで届いた…!」

 

あの時…マーレさんの攻撃により俺は赤城姉さん達と重桜離れ離れになり、俺はオセアンさんに拾われて生き延びた。戻ろうにもアズールレーンとレッドアクシズは対立状態で戻ることは出来ず、俺は唯一会える手段である指揮官になったが、そのまま重桜と戦って…傷つけ合った。だが、ついにここまで…俺の手がここまで届いた…!

 

「優海…」

 

赤城姉さんは抱き寄せられた事に戸惑いはしたが、拒みはしなかった。赤城姉さんの目に光が灯り、元の赤城姉さんの雰囲気に戻りつつあった。赤城姉さんは懐かしむように笑い、俺の事を見つめていた。

 

「やっぱり大きくなったわね。私を抱くこの腕も背丈も…本当に…」

 

赤城姉さんは俺を抱き返すように腕を俺の背中に回し、そのまま強く抱いた。

最早俺は温かさと人肌の感触を感じられる体では無くなったが、これがとても心地よく、暖かい物だと俺は知っている。今の俺にとってはそれだけで良かった。

 

「有り得ない…我の演算より遥かに超える現象など…」

 

オロチは苦しむように後ろにふらつき、破られたバリアの修復に入った。恐らくオロチはまたミサイルを発射させようとしてるのが分かるが、今は赤城姉さんの安全を優先した俺はそのまま赤城姉さんを抱えてオロチから離れる。

 

(コネクター!バリアの強度はそのままか!?)

 

_否定。強度が三倍強化されたのを確認。

 

嘘だろ…KAN-SEN達全員で攻撃してようやく脆い部分を狙い撃ってようやく壊れたバリアが今度は三倍の硬さを持って復活してしまった。

しかもそろそろ俺の艤装が限界だと言ってるように火花が飛び散っているのが背中から伝わり、一旦俺は海に着地する。

 

「優海!しっかりして!」

 

苦しむよう俺を心配するように赤城姉さんは俺の肩を支えた。大丈夫だと言いたいが流石に限界のダメージは応えた為、俺はそのまま立ち上がれずにいた。

 

「指揮官!」

 

俺がオロチから脱出したのを見たのか、エンタープライズ達、アズールレーンのKAN-SEN達が一斉に俺に駆け寄った。アズールレーンのKAN-SEN達は赤城姉さんの姿を見て、警戒した顔を見せた。

 

「待ってくれ皆、赤城姉さんは…」

 

「…心配するな指揮官。貴方の顔を見れば分かる。」

 

エンタープライズは警戒心を解き、そのまま赤城姉さんに近づき、手を差し伸べた。この光景に俺や赤城姉さん、アズールレーンのKAN-SEN達は驚きを隠せなかった。

 

「…先程の光景…私にも見えた。貴方も護りたいものを護る為に戦っていたんだな。」

 

「あの光景って…まさかエンタープライズもあそこに?」

 

「あぁ…どういう事か分からないがな。」

 

恐らくだがコネクターの影響?確かに俺はコネクターの力でエンタープライズの力も使ったが、それだけだと他のKAN-SEN達だって同じ光景を見るはずだ、だが、周りのKAN-SEN達はその景色を見えたとは到底思えない雰囲気であった。どうやら、俺と赤城姉さん、そしてエンタープライズだけかが同じ景色を見たのだろう。

 

「赤城、陣営や信念は違っても私と貴方の思う気持ちは同じだ。…今は敵味方関係ない。共にオロチを討とう。」

 

「…まさか亡霊にそんな事言われるとは思わなかったわ。…これは私が引き起こした事…責任持ってオロチは沈めるわ。」

赤城姉さんはエンタープライズの手を取り、そのまま握手を交わした。これを見たKAN-SEN達はどう思ったのか、驚きか、驚愕か、はたまた喜びか、俺は喜びだ。この光景を俺はどんなに夢見たのだろうか。そんな夢がこの目で見られた感動は言葉には表せない。

 

「ご主人様、どうぞこちらに。」

 

ベルファストが俺の隣でしゃがみ、俺の肩を持とうとしてくれた。俺はその言葉に甘えて、ベルファストに肩をかすが…赤城姉さんが支えている左肩が急に持ち上げられ、ベルファストに肩を貸せなかった。

 

「心配は要らないわ。どこぞの馬の骨も分からないメイドに私の愛しい優海は渡せないわ。」

 

馬の骨と言う言葉にカチンと来たのか、ベルファストは笑顔なのに怖い雰囲気をかもしながら笑ってない目で赤城姉さんを見た。

 

「あら…そうですか…これでもご主人様とは夜を共に過ごした事があるのですが…」

 

「え?」

 

「…は?」

 

なんて言った?夜を共に?全く身に覚えが無いんだけど…待って赤城姉さん、そんな目で見ないでエンタープライズも信じられない見たいな目で見るのは辞めて?本気で知らないんだ。

俺は全否定するように首を激しく横に振り、全力で知らないと主張する。

しかしそんな事信じられないと赤城姉さんはどんどん俺に詰寄る。

 

「優海…?私がどれだけ寂しい思いをしたのかも知らずに貴方はあんな卑しいメイドごときと一夜を共にすごしたのかしら?そうだわ…オロチの前にまずはあのメイドをソウジしようかしら…」

 

「待って待って!本当に俺はしらないんだよ!ベルファスト!お前もなに言ってるんだ!」

 

本気でベルファストをどうにかしようとしてる赤城姉さんを抑えるが、ベルファストの挑発するような笑みはますます赤城姉さんを刺激させる。赤城姉さんの目が本気で何かしでかそうとしてる目になったので、俺は全力で赤城姉さんを抑える。

 

「とにかく!今はオロチの事をどうにかすることが先だから!」

 

俺は強引に話をねじ曲げ、オロチについて作戦を考える。もう俺の艤装は悲鳴を上げているように機能を失い、これ以上の無理ができない。かと言って、追い詰められたオロチはより強固な防御壁を作り出している。

今新しく来てくれたKAN-SEN達で果たしていけるのか?

俺はすがるように右腕にあるレールガンを見つめ、強引にでも無理をしてオロチを倒そうと考えていた。

 

「指揮官。」

 

どうするか悩んでいたその時、エンタープライズが俺の肩を叩く。

 

「指揮官、大丈夫だ。今はこれ程志を共にしている仲間達がいる。貴方一人で背負う必要は無い。」

 

「そうでございます。ご主人様は決してお独りではありません。」

 

ベルファストにそう言われて俺は辺りを見渡した。俺を囲むKAN-SEN達が俺を本気で信頼してる目で見ていた。

ユニオンもロイヤルも重桜、そして鉄血も半ばセイレーンと化している俺を敵視すること無く、優しくて暖かい目で見ていた。

 

「皆…」

 

その目だけで俺の嫌な考えは海に溶けるように消えていった。それと同時に湧き上がる絶対的な自信と安心感が俺を奮い立たたせてくれた。

 

「何かいい考えがあるのかしら?」

 

しかし関わりが薄い鉄血にその目は無く、俺の指揮を待ち望んでいた。…この状況ではやれることは1つしかない…

 

「それは勿論シンプルでいい考えがあるよ。」

 

俺はオロチに指を指し、指揮官人生で最もシンプルな作戦を言い渡す。

 

「ここにいる全員で全身全霊!オロチに向かって全力砲撃だ!」

 

「…それが作戦かしら?」

 

ビスマルクは馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに頭を抱え、ため息をつく。まぁ俺も馬鹿馬鹿しくも単純な作戦だと思うが、今のこの状況だとこんな作戦しが思いつかない。かなり雑な作戦だが、またオロチのバリアの脆弱性を生み出し、そこにまた強力な一撃を叩き込むしか他ならない。

 

「…確かに馬鹿馬鹿しいと思うけど、現状これしか方法が無いんだ。」

 

こちらの戦力が増したと言ってもそれはオロチも同じだ。オロチは自身を強化させ、周りにはまた新しい量産型のセイレーンの艦が生み出されている。どう考えても長期戦は無理だ。だからこそ、持てる力全てをぶつけてオロチを沈める。いわば背水の作戦…だがそうなると問題は突破力だ。KAN-SEN達の中でオロチのバリアを壊せるのは誰だ…?俺は全ての記憶を頼りにして、最後の一撃を撃たせるのは誰かと決めようとしたその時、コネクターが制止するように俺の中に響いた。

 

_結論。KAN-SEN達では突破は不可能。

 

(…そうか。)

 

そうなってしまえば終わりだ。既にアズールレーンや先に来た重桜のKAN-SEN達に余力は残っていない。

後から来た援軍だけではオロチは突破出来ない…つまり詰みだ。

全身に寒気を感じ、俺は荒い息で何か手立ては無いかと懸命に考える。これまでの戦略、戦法、全ての経験を使って何か出来ることは無いかと探したが、どれもこれもが決定打になる事は無かった。

それでも何とかたどり着いた答えは、結局俺の手だった。

俺はレールガンを見つめ、ある決意を抱こうとした。

 

(…ま、こうなるか。)

 

何となく分かっていた。これは俺しか出来ないと、そしてこの戦いが終わったら…恐らくだが俺は……

いや、これ以上言葉にするのは良そう、きっと俺は最後に怖気付いてしまう。現に俺の腕が震えているのだから。だが何故だろうか、この命が終わると分かった瞬間、頭がすっとするような感覚になった。

これまでの事が鮮明に思い出し、そのどれもが懐かしく、愛しく、誇らしかった。だがそれ以上に寂しくなった。

 

(…さよなら)

 

俺は皆に心の中で別れを告げ、決意を決める。

 

「…よし、行くぞ!」

 

「ユニオン戦士たち…突き進め!」

 

「王家の栄光を示しなさい!」

 

「重桜の者よ!余に続け!」

 

「鉄血…進軍開始!」

 

ユニオンのエンタープライズ、ロイヤルのクイーンエリザベス、重桜の長門、そして鉄血のビスマルク。

四大陣営の先導者のKAN-SENが今一つになり、共に戦ってくれた。

轟く轟音、艦載機が飛び立つ音がこの海域を覆い尽くし、オロチを沈めようとした。しかし、オロチの紅く輝くバリアが全てを拒むかの様にKAN-SEN達の攻撃を防いでいた。

 

 

 

「無駄よ…貴方のお陰でオロチはより強くなった…全てのKAN-SEN達が束になってもオロチは墜ちはしないわ。」

 

オロチの甲板にいるオブサーバーは誇るようにクスリと笑い。KAN-SEN達の無駄な攻撃を静観していた。そして、そのオロチを強化させてくれた優海を見たオブザーバーは新たなる可能性を感じていた。

 

「そしてコネクター…貴方はどこまでいくのかしら?やっぱり…貴方を造って良かったわ…。ふふっ…」

 

 

 

「赤城!私達も行くぞ!」

 

「分かってるわよ。…優海、貴方は早くここから離れなさい。」

 

「待ってくれ…!」

 

エンタープライズと赤城姉さんは自分達も先行し、俺抜きでオロチを堕とそうとした。だが、それでは無理だ。

俺は2人を呼び止め、2人の前まで歩く。

艤装の限界が身体まで響き、歩くことさえままならかった俺は何とか2人の前まで近づき、赤城姉さんが倒れる俺を支えてくれた。

 

「はぁ…はァ…その前に…俺の手を握ってくれないか?」

 

「手を?…どうするつもりだ。」

 

「それは…」

 

俺の艤装は最早限界寸前で艤装から青い火花が飛び散っていた。こうなると俺の攻撃方法は一つ…コネクターの能力による攻撃だ。俺が持つセイレーンの艤装も限界ギリギリだが、オロチのバリアを突き破る程の力はまだ残っている。

俺のやりたい事…それはエンタープライズと赤城姉さんの力をコネクターの力で俺の力にする事だ。

だが、二人は最早ボロボロの俺を一刻も早くこの場から立ち去りたいと思っているはず…こんな考えを受け入れてくれるとは考えにくく、俺は言い出せなかった。

歯切れが悪くなった俺を見た2人は、俺の考えてる事を察したのか、険しい顔つきをした。

 

「まさか…指揮官!」

 

エンタープライズが動き出した直前、上空からこちらに近づく光線が槍のように降ってきた。俺たちは咄嗟にそれを回避し、上空からの攻撃に警戒し辺りを見渡した。

すると上空にはこちらを楽しそうに見下しているピュリファイヤーの姿があった。

 

「なんだが楽しそうだね〜?私も混ぜてよ!」

 

「ピュリファイヤー!」

 

「指揮官下がれ!」

 

エンタープライズはピュリファイヤーに狙いを定め、矢を撃ち続ける。 ピュリファイヤーは迫り来る矢を軽々と避けるが、赤城姉さんが放った式神までは避けきれずそのまま直撃を喰らい、体勢を崩してそのまま海に落下し、落ちた衝撃で水柱が出来た。

その水柱が弾け飛び、その影からピュリファイヤーがまるで戦いそのものを楽しんでるような狂気的な顔をしながらこちらに近づいた。

 

「コネクター?私には分かるよ?あんたの考えが。…あんた、自分の力を使ってオロチにトドメを刺そうとしてるんでしょ?」

 

「……」

 

俺の考えがピタリと当て、俺は何も言えずにいた。その沈黙が図星だと察した二人は、やはりかと言うように俺を見ていた。

 

「でもいいのかな?そんな事するとまたあの時のようになっちゃうよ〜?」

 

「あの時の事…?まさか指揮官がまた暴走を!?」

 

「暴走…?違う違う!こいつはセイレーンなんだ。セイレーンの力を使ったらその分セイレーン寄りの存在になって私たちの管理下になる。そしてあとはちょちょいと命令するだけさ。」

 

あの時とは、マーレさんとピュリファイヤーがアズールレーンの基地に攻めた時、俺がセイレーンの力をフルに使ったあの時だ。

セイレーンの力を存分に使った俺は、存在がセイレーン寄りになり、彼女達の管理下になる。そして、彼女達の命令には逆らえず、俺はKAN-SEN達の敵になる。

それが…KAN-SEN達に武器を向けた理由だ。

 

「だとしたら…尚更指揮官を戦わせるには!」

 

「でもそれだとオロチのバリアは破壊できない。だからコネクターの力が必要って訳。さぁさぁどうするのかな〜?」

 

ピュリファイヤーの言う通り、オロチのバリアを破るには圧倒的火力で一点突破が可能な武装が必要だ。

俺のレールガンは艤装の限界で最早使えなく、可能だとしたらコネクターの力を使うしかないのだが、そうすれば俺はまたエンタープライズ達と戦うことになるかもしれない。

 

「まぁ、そんなのはさせないけどね!」

 

ピュリファイヤーはビームを俺たちに向け撃ち続ける。

俺は回避に専念しようとしたが身体の限界が応えたのか、足の激痛が身体中に走り、足が動けずにいた。

避けられないと確信した俺は咄嗟に身を構え、ビームに対して防御の姿勢をとった。

しかし、俺の目の前に赤城姉さんの多数の式神が壁を作り、ビームを防いでくれた。だが、ビームの火力の方が上だった為、式神は耐えきれずにそのまま爆発してしまう。俺は爆発に巻き込まれ、その衝撃で吹き飛ばされたがビームよりかはダメージが抑えられた。

 

「あっはは!無様だね〜コネクター!もはやお前は何も出来ない鉄くずだよ!お前の使命は終わったんだ!諦めてさっさと沈みなぁ!」

 

「俺が沈むのは…オロチを倒してからだ!」

 

そうだ。いずれ俺は自分の身を終わらせなければならない。だが今はその時じゃない。せめてオロチだけは倒さなくては…俺は俺自身を終わらせられない。

 

「それは違う!」

 

その時、エンタープライズが俺の言葉を否定し、守るように俺の前に立った。それに合わせ、エンタープライズの隣に赤城姉さんも立った。

 

「指揮官はこれからも生きて行く!」

 

「そうよ、また勝手にどこかに行くなんてもうさせないわ」

わ。」

 

俺の最後を否定した二人は尚も俺に生きろと言った。

しかしそれを見たピュリファイヤーはそれに目に見える苛立ちが見えた。

 

「…は?なにそれ。イラつくなぁ…ムカつくなぁ!お前らとコネクターは兵器なのによぉ!何でそんなにも生きているんだよぉ!」

 

先程の戦闘を楽しんだ笑顔は消え、変わりに苛立ちに満ちた顔をしながらピュリファイヤーは一筋のビームを俺に放った。咄嗟に俺は大剣を出しビームを防いだが、白い大剣はまるで俺の限界を示すかのようにヒビが入り、砕け散った。砕け散った剣の衝撃で俺は吹き飛ばされ、砕け散った剣は虚しく俺の横に転がった。

 

「指揮官!」

 

「優海!」

 

エンタープライズと赤城姉さんが吹き飛ばされた俺を見て後ろに振り返った。だが、その隙をつくようにピュリファイヤーは二人に目掛けてビームを放つ。

二人は攻撃に気づいたがもう遅かった。ビームの熱が二人と俺を呑み込むように近づきつつあった。

ここまでなのか…そう思った時、景色は変わる。

 

 

そこは何も無い白い空間だった。いや、うっすらとだが美しく満開な桜が一本あり、周りには薄い桃色の桜が舞い上がっていた。俺はその空間で力無く倒れていた。

 

「…ここは?」

 

立ち上がる力が無く、俺は顔だけを上げて当たりを見渡す。皆はどこだとKAN-SEN達を探すが、どこにもいなかった。

 

「…やられたのか?」

 

見た事もない場所と、ピュリファイヤーの攻撃を受けた記憶がある事から、俺は死んだのかと考えたがそれを否定する声が俺の耳に届いた。

 

「それは違うわ。貴方はまだ生きているわ。」

 

「…誰だ?」

 

「今はそんな事気にする事じゃない。さぁ…立ちなさい。」

 

俺はその声に従い、立とうとしたがダメだった。体に力が入らず、何度やっても立てずにいた。俺は諦めて地面にへばりつくように倒れ、そのまま倒れ込んだ。

 

「無理だ…力が入らない…」

 

「それは貴方がそう思っているからよ。貴方はまだ立ち上がれる。」

 

そうは言っても体が言うことを聞いてくれない。無茶を言う声に俺は少々苛立ちと自分の無力さを痛感し、俺は手を握りしめる。結局…俺はまた何かを無くすのか?

重桜の時だって、俺は何も出来ずに赤城姉さん達と離れ…今度はアズールレーンの皆を守れずに…

 

「俺はまた…」

 

「大丈夫…貴方にはまだ繋がりがあるわ。KAN-SEN達との繋がりがある。」

 

声の人物は俺の考えてることが分かってるかのように、俺を慰めてくれた。…それにしてもこの声、何処かで懐かしさを感じる。誰だっけ…暖かくてまるで母さんのような…感じだ。

 

「さぁ立って…そして歩き続けて。貴方が目指したい場所まで…一歩ずつ…」

 

「歩き続ける…」

 

それはある人との約束でもあった。一歩ずつ、小さくても良い。目指す場所まで歩き、地に足をつけて生きる。

俺がここまで来れた約束の言葉…それを知ってる人は1人しかいない。謎の声の人物を確かめる為、俺は無くした力を取り戻すように体に力を入れ、重い体を起こす。

体がまるで数十倍の重力がかかっているかのような重さだ。それでも俺は腕を伸ばし、膝を着きながらも上半身を起き上がらせ、最後の力を振り絞り、足を伸ばし、ふらつきながらも立ち上がる。すると白い空間は一変し、それは青く、周りは満開な桜で彩られた。

謎の声の人物を探す為、俺は変わった辺りを見回す。

すると一番奥の桜の木の下に和傘をさしていた女性を見つけた。その人は紺色の着物に赤の羽織を来ていた。

 

「あの人は…!」

 

俺は全身の痛みに抗いながら、和傘の女性に向かって歩く。重い足を上げ、一歩ずつ確実に足を踏み込み彼女に近づく。舞い上がる桜の花びらが俺の道を遮るように吹き荒れる。だが、それでも歩みを止めず俺は真っ直ぐ歩き続ける。不思議と段々痛みが無くなり、俺は吹き荒れる桜を越え、ようやく彼女の元に辿り着いた。

彼女は振り返りもせず、和傘をさしてただ俺に背中を向けていた。

 

「…よくここまで歩いて来れましたね。その成長を嬉しく思いますよ。」

 

俺は嬉しさを噛み締めて彼女を見た。その声で褒められると顔が緩んで不思議と笑顔になってしまうが、今だけは堪えて体の内で喜びを噛み締めた。

 

「貴方には繋がりがある…それは貴方の功績であり、貴方が示す可能性…」

 

「可能性…?」

 

「そう…そしてその繋がりは想いとなり、貴方の力となってくれます。」

 

繋がり…力…コネクターの能力の事だろうか?

 

「だからその繋がりを恐れないで…その想いが…貴方を守るわ。」

 

彼女は振り返り、和傘で顔を見せないようにした。だが、口元は見えたのでそれを見た、彼女は笑いながら俺に近づいた。

 

「さぁ…皆が待っていますよ?…私はいつまでも見守っています。」

 

彼女の右手が俺の胸に触れると、そこから蒼い光が溢れでた。その光に恐怖どころか、安心感を感じた。

 

「行ってらっしゃい…優海。」

 

 

 

 

目を開け、意識を覚醒させる。腕を伸ばし、体を上げ、足に力を入れて前に踏み出す。エンタープライズと赤城姉さんの間を通り抜け、2人を守るように俺は前に立つ。その時、俺の周りに紅の炎が包み込んだ。

 

「指揮官!?」

 

「身を呈してKAN-SEN達を守るのかい!?コネクターぁ!」

 

ビームがすぐそこまで近づき、光が俺を呑むこもうとしていた。だが恐怖は無い。俺があるのは…これを防げる絶対的な自信だけだった。

 

「"謀を帷幄の中に運らし勝つことを千里の外に決す"…!」

 

俺がそう唱えると、周りの炎が消え、俺の前に炎の盾が現れ、ビームは炎に吸収されるかのようにビームは消えた。

 

「何!?」

 

ピュリファイヤーは驚き、再度ビームを放とうとするがさせない。俺はズムウォルトの艤装やセイレーンの艤装とは違う艤装を出し、主砲の銃口をピュリファイヤーに向ける。

 

「あの艤装は…!そしてあの言葉…!」

 

赤城姉さんが何か思い返したように呟くきその艤装をまじまじと見た。そして、信じられないと言ってるように俺の装備している艤装をただ見ていた。

 

「"砲身轟かせば機先を制す"…!」

 

俺は主砲を放つと轟音共に、俺の周りに炎に包まれた砲弾が生まれ、炎の砲弾が一斉にピュリファイヤーに向けて襲い掛かる。最初に放った砲弾も紅の炎に染まり、ピュリファイヤーに直撃し、残った炎の砲弾全てがピュリファイヤーに直撃した。

 

「がハッ…そんな嘘だろ…?」

 

ピュリファイヤーは砲弾の爆発に巻き込まれ、その後はどうなった分からない。だが…確実に仕留めたのは確かだ。俺は爆発の行方を見届けるように爆風の終わりを見つめた。

 

「し…指揮官…?その姿は?」

 

姿と言われ、俺は自分の姿を見る。俺の服が白い軍服から紺色の着物に変わり、その上に赤い羽織を被っていた。そして左手にはいつの間にか赤い和傘を持っていた。無我夢中だったので、持っている事さえ気づかなかった。目に見える前髪が少し栗色に変わってる事から…ちょっとだけ髪色も変わっている。

 

「優海…その姿はまるで…」

 

俺は後ろに振り返ると、エンタープライズ達が驚いてる姿を目にした。赤城姉さんに至ってはまるで死人を見たような目だ。…まあ、確かにそうだ。この姿は…天城姉さんから借りた力によって変わった姿なのだから。

 

共鳴(リンク)…天城。…さぁ行くよ!天城姉さん!」

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