もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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どうも白だし茶漬けです。
いよいよこの小説の第2部がやってまいりました。
第2部は全ての陣営を描写するのでその際、小管理が【第2部 ○○編】と書きます。
タイトルも若干変更しましたので是非ともご確認ください。
それではどうぞ〜


第2部 プロローグ
失った英雄 蘇る英雄


世界は大きく変わった。敵対していたアズールレーンとレッドアクシズが手を取り合い、同盟を組んだその日、人類はまた新たなる一歩を踏み出した。

だが、その勝利の代償が、KAN-SEN達に深く心に突き刺さっていた。

 

「…君たちは…誰?」

 

突然、白い髪をした軍服のような服を着た女性が手を握ってきた。彼女は僕の顔を見て突然涙を流していた。

でも…誰なんだろう。そう言うと彼女の顔が変わった。流している涙の意味が変わるかのように絶望した顔になった。

 

「そんな…私だ!エンタープライズだ!…覚えて無いのか…?」

 

彼女は信じられないと言ってるかのような顔で僕に顔を近づけた。彼女は…僕のなんだったのだろうか?恋人…なのだろうか?だとしたら本当に申し訳ない。過ごしてきた記憶が僕の中には無いのだから。

 

「…ごめん。」

 

覚えてないとは言わず、僕は彼女に謝ることしか出来なかった。彼女は僕の手を握るその手を離し、漏れる涙声を塞ぐように手を塞いで、悲しみの涙を流しながら逃げるように部屋を出ていった。

 

「あ、エンタープライズちゃん!…すみません、私エンタープライズちゃんを追いかけますのでこれで…」

 

紫がかった長い銀髪して、紫基調のピンクのナース服をした彼女が、先程の女性を追いかけて部屋から出ていった。部屋には何やら言い難い空気が流れていた。

これを作り出したのは…間違いなく僕だ。

そして、ここにいる皆は恐らく僕の知人だろうが、僕は知らない。

 

「ねぇ優海…?私や加賀の事も覚えてないの?」

 

黒髪の狐耳をした人が僕に話しかけてきた。確か僕が目を覚ました時に1番に目に映った人だ。名前は赤城さん。話を聞くところによると僕と赤城さん、そして隣にいる加賀さんは兄弟だと言うが…

 

「…ごめんなさい。」

 

僕はただ謝る事しか出来なかった。赤城さんは僕のベットに体を倒れこませ、ベットを涙で濡らし、加賀さんは俯いて静かに泣いていた。

罪悪感が胸いっぱいに溢れ、胸が痛い。その痛みは決して消えること無く、これからも続いていくのだろう。

 

「…なぁ良いか?」

 

茶髪で赤いメッシュの髪をした人が皆に提案するように手を挙げた。何か考えがあるのだろうか?皆はそれに縋るように頷く。

 

「一度この基地を見せてみないか?そうすればふと思い出すなんて事があるかもしれないぜ!?」

 

「なるほど!もしかしたら有り得るかも知れませんね!」

 

白髪の女性が光明が見えた様に喜んだ表情をしながら僕に近づいてきた。だが、突然扉の先から出てきた女性がそれを否定してきた。

 

「残念だけど、やっても無駄だと思うわよ?」

 

白く長い髪にそれと対称的な黒い服を来た女性の赤色の目は、まるで蛇の目のようだった。目を細め、からかうように笑ったその女性を見たKAN-SEN達はその女性を警戒していた。

 

「貴方…誰かしら?」

 

赤城さんが今でもあの人に飛びかかりそうに睨む中、女性の笑みは消えなかった。それどころか滑稽と言わんばかりに小さく笑った。

 

「誰って…やだわそんな事…私を目覚めさせる為に色々やってくれたじゃない。」

 

「まさか…お前オロチか…?」

 

「ピンポーン!大正解!」

 

加賀さんが彼女を【オロチ】と呼ぶと、オロチと呼ばれた彼女は拍手をした。それを聞いた者は更に警戒心を強めた。KAN-SEN達はオロチから離れ、僕を守るようにベットの前へと立ち塞がった。緊迫した空気が充満し、KAN-SEN達の頬に冷や汗がかいている者がいた。僕には何が何だか分からず、ただ恐怖で怯える事しか出来なかった。

 

「ちょっとちょっと…そんなに怖がらなくても良いじゃない…もう私は貴方たちと戦うつもりは無いわよ。どちらかと言えば貴方たちKAN-SENの味方よ。」

 

オロチは投降する様に両手を上げた。だが、それでもKAN-SEN達は警戒心を解くことは無かった。

 

「そもそも貴方はオロチなのかしら?そんな喋り方はしてなかったと思うけど?」

 

「あ〜あれね…天城に姿を催していたし、人類の総意から生まれたからああゆうふうな口調が良いかな〜?って思ったけど。なんかあれ疲れちゃった。」

 

わざとらしく下を小さく出しておちゃめな性格を演じているが、それどもKAN-SEN達はオロチを睨む。

 

「味方と言ったな…そんな事…信じられると思うか?」

 

「優海の記憶を元に戻す方法を知っていたとしても?」

 

その言葉を聞いた瞬間、僕を含む全ての人達が興味を持つように…いや、縋るように目を見開いた。

もしもそれが本当なら僕の無くなった記憶を取り戻せるかもしれない。

 

「あの…本当に僕の記憶…元に戻るんですか?」

 

「知ってるわよ〜。ん〜教えようかなー?」

 

ベットから飛び出してしまいそうな気持ちで僕はオロチさんに記憶を取り戻す方法を乞う。オロチさんはどうしようかなと首を傾げて焦らしていた。それを見たKAN-SEN達の怒りは沸騰寸前だった。

 

「貴方…立場を分かっているのかしら…?今ここで貴方を沈めることも可能なのよ?」

 

赤城さんがオロチさんの未来を示すかのように、式神を灰も残さず燃やし尽くした。確かに、数的にはKAN-SEN達が有利だが、持っているカードはオロチさんの方が圧倒的に有利だ。だからこそ、KAN-SEN達は動けない。

もしここでオロチに危害を加えたら、それこそ僕の記憶を取り戻す方法を聞き出せないのだから。

 

「立場ねぇ…それは貴方達の方が分かっているのかしら?優海の記憶…どうなってもいいの?」

 

「くっ…」

 

勿論それはオロチにも分かっていた。自分がKAN-SEN達

の欲している情報を持っているというアドバンテージをこれみよがしに見せ付けていた。

 

「私が求めているのはただ1つ…味方よ。私はアズールレーンに入り、貴方達の味方になるわ。そして優海の記憶も蘇る…まぁお得!」

 

「貴方は何をしようとしているのかしら?」

 

赤城さんはやはり疑い続けた。完全に敵意むき出しの目がオロチへと突き刺さり、いつまでも目を離さないでいた。自分の目的を聞かれたオロチの目付きが変わった。

 

「…私は人類の総意から生まれたと思っていた。でも違った。私が総意と思っていたのはただの人の悪意だった。」

 

オロチはまるで裏切られたかのような屈辱を噛み締めるように、自分の腕を強く握った。唇を噛み、そこから血が出そうな程だった。

 

「だから私は人を知りたい。人とは何か…人の真意とは何かを…私はこの目で見てみたいのよ。総意から生まれた者としては…ね。」

 

オロチには確かな決意を感じられた。先程のようなおちゃらけた性格は無く。真っ直ぐと目的を見つめていたその目に嘘偽りは感じられなかった。

 

「…嘘は感じられないわね。」

 

赤城さんの言葉には全員が納得した。芯のある言葉と目がそれを物語っていた。KAN-SEN達はようやく警戒心を解き、オロチの話を聞いた。

 

「ですが、まだ問題はあります。オロチ様の言う、ご主人様の記憶を取り戻す方法ですが、貴方は先程こう言いました。【やっても無駄】だと。これはどういう事でしょうか?」

 

「そうね、今は無理よ。だって…」

 

オロチはそれ以上言わずに僕の事を見ていた。

 

「…ここではちょっと話せないわね。場所を変えましょう。そうね…執務室で待ってるわ。」

まるで僕に話を聞かせたく様に部屋から出ていったオロチはそのまま執務室へと移動した。

 

「…ジンって言ってたわね。優海を少し頼めるかしら?」

 

「あぁ、任せとけ。」

 

名前を呼ばれたジンさんは男らしくドンと胸を叩き、心配するなと豪語した。それを聞いた赤城さんはそれでも心配なのかジンさんに近づく。

 

「良いわね?もし優海に何かあったら…貴方をソウジするから覚悟しときなさい…!」

 

「わわわ分かったから!絶対に優海に危害を加えねぇからさ!」

 

本来KAN-SENは人類を守るべき存在…と聞いたのにこれではKAN-SENが人類を滅ぼすみたいな構図だ。明らかに立場が逆だ。ジンさんは赤城さんの威圧にひよってしまい、赤城さんから後ろに下がる。

 

「それじゃあ…行ってくるわね。優海。」

 

「あ…はい。行ってらっしゃい。」

 

オロチとKAN-SEN達が僕の記憶を元に戻す方法を聞いたて部屋を出た後、緊迫した空気から開放されたジンさんは背筋を伸ばしてリラックスしていた。

 

「さて…と、どうするかな…?」

 

「先ずは基地を見せた方が良いわね。と言っても…私達はこれで失礼するけどね。」

 

「あぁ、もうそんな時間か…」

 

ジンさんは腕時計で時間を確認すると、別れを惜しむように僕を見た。

 

「すまん、任せろと言ったが…俺たちは持ち場に戻らないとダメだ。だからさ…任せても良いか?ベルファスト。」

 

「お任せを。」

 

この部屋に残った唯一のKAN-SEN、ベルファストさんがジンさんに綺麗にお辞儀をした。

 

「ジン、私はここに残る。ちょっと聞いておきたい事があるから私も執務室に行ってくるよ。」

 

「あぁ…任せた。」

 

ジンさん、リアさん、リフォルさん、そしてネージュさんは僕に一言言ってからそのまま部屋を出ていった。先程まで大勢いたせいか、この部屋が随分と広くなったのを感じながら、最後まで残ったベルファストさんが優しい目で僕を見ていた。

 

「それではご主人様。早速ですが基地の案内をさせていただきます。よろしいでしょうか?」

 

「あぁ…うん。でもなんだか…足が動かないんだ。ごめんなさい…車椅子とか…無いかな?」

 

ベルファストさんは顔を強ばらせて僕の足を見た。

僕の足は何故か動かなかった。怪我とかしてる訳でもないのに、まるで足が石になったのように動けずにいた。

 

「し…承知しました。少々お待ち下さい…」

 

ベルファストさんは力ない声で部屋から出ていった。すると、ドア越しから泣いている声が聞こえた。この声は…ベルファストさんだ。

 

「ご主人様……あぁご主人様…っ!…私が至らないばかりに…っ!」

 

聞こえないと思っているのか、ベルファストさんは扉の前で泣いていた。姿は閉められたドアで見られないが、壁から聞こえる漏れ出る涙声は確かに僕の耳へと入っていく。そして、その声が罪悪感と言う針になるかのように僕の心に突き刺さった。今の僕からしたらここにいる人達は全員初対面の人…でも彼女たちからしたら僕は大切な人らしい…

 

「どうして…僕はあんなに良い人たちの事忘れたんだろう…」

 

前の自分を恨みながら、僕はベルファストさんの涙声を聞かされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_同時刻 執務室にて

 

オロチを先導にこの執務室に来たのは、ロイヤルのプリンス・オブ・ウェールズ、ユニオンのクリーブランドとホーネット、重桜の赤城と加賀、そしてリフォルであった。

 

「へぇ…ここがいつも優海が仕事をしている場所ね。いつもブラックキューブから介して見てたから、この目で見るのは初めてだわ。」

 

オロチはまじまじと執務室を細部まで観察するように見ていた。オロチの源である【ブラックキューブ】は今確認出来たもので11個ある。その内の一つは優海の中にもあった。そしてそこからオロチは優海の行動をいつも見ていた。勿論、基地の中もこの執務室も見てはいたが、自身の目で見るのは初めてであった。

オロチは優海が座っていた執務室の椅子に座ろうとしたその時…

 

「そこに座るな!」

 

突然プリンス・オブ・ウェールズが大声を上げ、オロチは体を跳ね上がらせて驚くとすぐ様その椅子から離れた。

 

「そこは指揮官が座る場所だ。勝手にお前如きが座るな!」

 

「なるほどね…でもあの子が帰ってくるとは限らないわよ?」

 

「指揮官は帰ってくる!必ず!」

 

断固とした意思でウェールズは優海が記憶を戻り、指揮官として戻ってくると信じた。しかし、オロチはそれを嘲笑うかのように微笑み、椅子には座らないが、椅子にもたれ掛かるようにした。

 

「帰ってくるねぇ…それがあの子自身が拒んでいたとしても…?」

 

「どういう事…?」

 

クリーブランドがそんな揶揄うオロチに苛立ちを感じるも、手を出さずに話を聞く。

 

「貴方達が大好きな指揮官…天城優海が何もかも忘れる事が望んでいたとしたら…貴方達はどう思う?」

 

「!?」

 

オロチの言葉にこの場の全員が驚いた。指揮官の記憶喪失は、外的要因もあるがその根本的な問題が指揮官が自ら記憶を失いたいと思ったからこそだとオロチは言った。

 

「そんなの信じられる訳無いじゃん!」

 

「貴方…デタラメを言うのもいい加減にしなさないよ…潰すわよ。」

 

KAN-SEN達はその事を信じられなかった。もしそれが本当だとすれば、指揮官がKAN-SEN達のことを拒んでいる事になるからだ。だが、執務室はそんな事を思っていない。KAN-SEN達はオロチの言う事がいい加減だと判断し、さらに敵意を向ける。

 

「あらあら、随分と熱烈な視線ね…でも本当よあの子自身が記憶を失いたいと思ったからこそ、あの子の記憶は失ったのよ。」

 

「だったらその理由はなんだ!」

 

「あの子がセイレーンだからよ。」

 

冷たく、淡々とした言葉と表情でKAN-SEN達の激昴を冷ましたオロチはKAN-SEN達を睨んでいた。それは獲物を捕食する蛇の目であり、KAN-SEN達は圧倒的な威圧感に襲われた。

 

「…あの子はセイレーンだった。本人はどう思うでしょうね…自分が倒すべき敵だと知り…それを知らずに貴方達と共に過ごした。こんな残酷な事があるかしら。」

 

オロチは執務室の机を触ると、優海の姿を思い浮かべた。敵として現れたにしても優海の中にいた時期もあったことからオロチにも思うところはあった。

 

「それに、一度優海が貴方達と戦った後…意識不明に陥った事あるでしょう?」

 

それは、優海の正体がセイレーンだった事とセイレーンとしてKAN-SEN達と戦った時の事だった。

セイレーンの【コネクター】として戦った優海はKAN-SEN達にその牙を向けた。KAN-SEN達は辛くも勝利したが、優海は意識不明に陥っていた。そしてそれは優海自身が目覚めるのを拒んでいたからと言う。

 

「彼は…貴方達の為にこれを選んだの。KAN-SEN達に危害を加えるなら目覚めない。…KAN-SEN達のためなら記憶を無くすとね。」

 

「そんな…」

 

KAN-SEN達は落胆し、壁に持たれかけたり床にへたりこんでしまった。指揮官自身が記憶を無くすと望んでいるのならどうする事も出来なかった。無理に記憶を戻そうとしたら、それは彼の意に反する事でもある。

 

「まだ根拠はあるわよ。そうね…あの多数決の時の事がいいわね。」

 

あの多数決とは優海を信じるか、セイレーンとして沈めるかのどちらかをKAN-SEN達に決めさせたあの時だ。

多数決といっても、優海はこの多数決に条件を追加した。それは、自分をセイレーンとして見ている者がいるなら、その人に自分を沈めさせる。と言う条件だ。

つまり、1人でもセイレーンとして見てるなら優海は死ぬ。だが、優海は生きている。つまりアズールレーンのKAN-SEN全員は優海の事を信じているのだ。

 

「あれは凄かったわね〜まさか1人でもセイレーンとして見てるならその人に沈めさせるなんて…とんだ自殺願望があるわね。」

 

「指揮官に自殺願望なんて…」

 

「こんな自分に不利な多数決なんて聞いた事無いわよ。優海は多分…自分を終わらせたかったのよ。」

 

「そんな事…」

 

「あるわよ。現に…自分から記憶を抹消したりしてるもの、自殺…破滅願望がありすぎるぐらいにね…」

 

もしオロチが言う事が全て本当なら…KAN-SEN達はもうどうすれば良いのか分からなくなってきた。しかし、赤城だけは違っていた。

 

「…さないわ。」

 

「赤城…?」

 

「そんなの絶対に許さないわ!貴方達の事ならともかく

私達家族の記憶まで無くすなんて!間違っているわ!」

 

赤城はキリキリと腹を立てて憂さ晴らしするかのように身振り手振りを激しく動かした。

 

「どうして私を忘れるのかしら…そんなのおかしいわ。…そうよ、おかしいなら戻しちゃえば良いのよ…!」

 

「でもそれはあの子の意思に背くわよ?」

 

「関係ないわよ。私の事を知らない優海だなんて優海じゃないもの。だから無理矢理でも思い出させるのよ、貴方の隣にいるべき人は誰なのかを…うふふ…」

 

また赤城の悪い癖が出たと言うように加賀も片手で頭を抱えながら溜息を吐いた。だが、赤城の言う事にも一理あるようにも思えた。

 

「確かにな、私は優海をそんな弱者見たいな考えをする奴には育てた覚えは無い。…それか私達を弱者と認識しているなら…それは改めさせなければならないな。」

 

加賀も赤城と同じく優海の記憶を戻す為事を賛同していた。だが他のKAN-SEN達は戸惑っていた。

仮に指揮官の記憶が戻ったとしても、それは彼の意に反し、また苦しく、残酷な鎖に縛られるのでは無いかと…いや最悪の場合、また指揮官と戦う事がKAN-SEN達は嫌であった。

だがしかし、KAN-SEN達は今この状況が最も嫌であった。

 

「私…指揮官の記憶を戻したい!そして今ここにある【アズールレーン】を見せたい!」

 

アズールレーンのKAN-SEN達も指揮官の記憶を元に戻すと豪語し、更なる決意を固めた。それを見たオロチは面白そうに小さく笑った。また何か言いたそうにしているのだが、それはリフォルによって止められた。

 

「待って、水を差すようだけど…聞きたいことがあるの。」

 

「何かしら?」

 

「…優海の記憶が無いのなら【コネクター】はどうなっているの?てっきり私は、その【コネクター】に人格とか乗っ取られる…と言うか、代わってしまうと思ってるのだけど。」

 

優海とコネクターは同一人物だ、言うなれば二重人格に近いものだ。優海の記憶が無くなったのであれば、コネクターにも何か影響があるのかとリフォルは考えていた。

 

「そうね…そもそも優海のメンタルキューブに問題があるからね…」

 

「メンタルキューブが…?」

 

メンタルキューブとはKAN-SEN達の心や心臓、核みたいな物だ。セイレーンである優海はKAN-SEN達と同じようなメンタルキューブを持ってはいないのだが、ある人に託されたメンタルキューブを所持していた。それを使い、優海は艤装【ズムウォルト】を使えるのだ。

オロチは優海の記憶喪失がメンタルキューブにもあると言った。

 

「優海のメンタルキューブはね、…いま壊れてるの。亀裂が沢山あって、ちょっと触れたら崩れちゃう程にね。多分だけど記憶の他に、身体的な問題もあるかもしれないわね。…足が動かせないとかかしら。」

 

「そんな…!」

 

「あ、でも悪いことだけじゃ無いわよ。優海のメンタルキューブはコネクターのメンタルキューブと合わさって出来てるの。そしてそれが壊れてる今、彼はもうセイレーンでは無い…この意味分かる?」

 

KAN-SEN達は目を合わせて考えを示した。セイレーンでは無くなり、メンタルキューブが壊れてる今はKAN-SENとは言い難い。…つまり

 

「今の優海は…ただの人間?」

 

「ピンポーン!」

 

皆の考えを言ったのはリフォルであった。オロチは正解と言わんばかりの笑顔を浮かべると、さらに情報を提示した。

 

「それと人間に戻ったのだから失った味覚や嗅覚…感覚全てが取り戻せてる筈よ。もし記憶が直り、同時にメンタルキューブを直したらまた優海は味も何も感じない日々に戻る。…それでも貴方達はまだ優海の記憶…つまりはメンタルキューブを修復させるのかしら?」

 

「味覚が…ってどういう事かしら?」

 

「あら、知らなかった?優海は戦う度に感覚を無くしているのよ?セイレーンの力を使ってね。最初は…味覚で甘味を感じられなかったわね。」

 

「甘味…あ。」

 

リフォルには思い当たる節があった。4年間学校で優海と過ごしたのだが、優海が一度も菓子類を食べなかった事を思い出した。

 

そう、優海はほとんどの五感を失っていたが、それは存在がセイレーン寄りになっていたからだ。

道具であるコネクターには五感を持ってはいなかった為、優海はその影響で五感を失っていたが、それが壊れている以上、彼の五感は戻っていた。

 

「どうするの?…そのまま指揮官とお別れするのか…それとも…どちらか選んでね?」

 

彼女は悪魔のような囁きで彼女達に残酷な現実を突きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優海を乗せた車椅子の車輪が地面を接して回り続ける中、ベルファストと優海は最初の頃と比べて見ると、随分と変わったこの基地を見ていた。優海からしてみれば初めて見る場所だが、ベルファストから見れば、ここは優海とKAN-SEN達が過ごした思い出の場所でもあった。

海風が運ぶ心地よい風と匂いが今日もまたこの基地を駆け巡っていた。

 

「色んな人がこの基地にいるね…」

 

優海は大通りでKAN-SEN達を見渡していた。服も髪も文化も何もかも違う人達が笑い合い、楽しそうに過ごしていた風景を眺めていた。

 

「これら全てご主人様が築き上げたのですよ。皆と手を取り合う道を模索し続け、ようやく皆が手を取り合える世界になったのですよ。」

 

ベルファストは自分の手を優海の手に添えた。優海自身の手でここまでやれることが出来たと思ったのだが、やはり優海の記憶は依然として失ったままだった。

まるで信じられないと言わんばかりの優海の困っている顔を見たベルファストは拭いきれない悲しさを感じた。

 

「あ!指揮官、目を覚ましたんですね!」

 

優海を見つけて近づいてきたのは、ジャベリン、ラフィー、ユニコーン、綾波、そしてZ23だった。彼女達は目覚めた優海を見た途端に遠くからでも見える喜びのオーラを放っていた。

 

「指揮官、足どうしたんですか!?」

 

「あ…いや大丈夫。ちょっと痺れて動けないだけだから…」

 

「…指揮官、大丈夫なんですか?」

ジャベリンが弁当箱なのか、四角いバスケットを持ちながら心配そうに優海を見つめていた。しかし、今の優海にとってはジャベリン達は初対面なのだ。

いきなり知り合い見たいな感じで近づかられた優海は反応に困っていた。

 

「…?お兄ちゃん、どうかしたの?」

 

異変に気づいたユニコーンが真っ先に反応し、優海とベルファストの心臓を跳ね上がらせる。

優海はなるべく自分が記憶喪失だとは言いたくは無かった。何故なら、KAN-SEN達が傷つくと言う単純な理由があるからだ。

先程聞いたベルファストの涙声がまだ頭の仲にこびりついており、罪悪感の痛みがまた疼き出した。

 

「…いや、なんでも無いよ。ありがとう。…ベルファスト、今度はあっちに行きたいな…?」

 

記憶を失っているとは悟られないように、どうにかしてこの場を乗り切ろうとした優海はすぐ様ベルファストにどこか別の場所に行こうと提案した。

真意を悟ったベルファストはジャベリン達に一言いってからこの場を離れた。ベルファストはゆっくりと車椅子を押し、その車輪を進ませた。

 

「…なんだか指揮官、元気無い。」

 

ラフィーがそう呟くとZ23覗く皆は頷いた。

 

「でも、まだ病み上がりな訳だし…そう言う可能性もあるんじゃない?」

 

病み上がりで元気が無いとZ23は推測したが、一緒に過ごした事もあって、ジャベリン達はそれは無いと首を横に振った。

 

「それよりもあの笑顔…なんだか元気が無かったのです。」

 

綾波は先程の力無い優海の笑顔を思い出した。その笑顔はまるで仮面をつけたように弱々しくてその場しのぎのように思えた綾波は不安に感じていた。

 

「…一度様子を見る為にこっそり後を着けちゃう?」

 

「うん、お兄ちゃんの事心配だし…!」

 

ジャベリンの提案に他の子も賛同し、一斉に首を縦に振る。ジャベリン達はベルファストと優海に気づかれないようにこっそりと後を着けていく。

…それが彼女達を苦しめる事とは知らずに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_某海域 ????

 

ある人を探す為に、俺はオロチの甲板へと出ていっていた。あの時の戦闘から俺はオロチを乗っ取り、この船を拠点としていた。あの時よりも数段階オロチは強化され、要塞と言っても良いほどにだ。

甲板を歩き、艦首の方までに歩くと人影が見えた。

海のように葵い髪とところ所々が大地の緑のような髪をしたその男…【アトラト・テネリタス】だった。

 

「ここにいたんですか。」

 

「おぉ10代目君。どうしたの?」

 

「今日は会議があるって言いましたよ。それなのに時間になっても来ないから、こちらから来たんですよ。」

 

「あ〜そうか…ごめんなさい。」

 

叱られた子供のようにしょぼくれたその人は本当にこの人が英雄と呼ばれた人なのかと疑う程だった。

だが…彼の実力は本物だ。現に俺と同じぐらいの力を持った彼は凄まじい戦闘能力を持っていた。

 

「それじゃあ僕は行ってくるね。」

 

アトラトさんはそのまま申し訳無さそうに俺に手を振りながら会議の場へと向かう。

全く…世話をやかせる。俺も早く行かなければ…

 

 

「ごめんなさい〜!おまたせしました!」

 

アトラトさんが元気良く扉を開けて会議室に入ると、他のテネリタスが待っていたといやんばかりの顔をしていた。

 

「おいおい遅いですよアトラトさん。子供の前ですよ?」

 

陽気な声でアトラトさんを出迎えたのは、6代目当主、【セイド・テネリタス】さんだ。騎士では無く、まるで西洋映画に出てくるガンマン見たいな服装をしており、とても英雄の家系とは思われないのだが、その実力は英雄に相応しい物だ。そして戦闘以外にも交渉に長けており、ロイヤルとユニオンとの有効関係を作った人物でもある。

 

「僕にとっては君たちは孫だからね。皆僕の子供さ。」

 

確かにアトラトさんは3代目であり、ここにいる全員は彼の血を受け継いでいる。紛れもなく、俺達はこの人の子供だ。アトラトさんが席に座り、これでようやく全員揃った。

 

「では、これより貴女方の状態やこれからの目的をこれから話します。」

 

1番奥の椅子に座り、先代のテネリタスに見られながらも俺は会議を進める。

 

「先ずは…貴女方の状態から説明します。結論から言うと、貴方達はセイレーンとKAN-SEN…その中間的な存在として、貴方達の全盛期の姿で蘇ってます。」

 

そう、ここにいるテネリタス全員の見た目の平均年齢は20代ぐらいだ。誰もが青年、乙女の姿をしていた。

その理由は、彼らの核であるブラックキューブが原因だ。

ブラックキューブは人の意思や思いを無差別に読み取る物だ。俺はそれを利用し、彼らの記憶を読み込ませた。

読み込ませる方法は簡単だった。それはそれぞれの代が大切したいた物、言わば触媒があったので何とかなった。触媒を読み取ったブラックキューブは、その英雄の全盛期を蘇らせたのだ。だからこそ、あのような若い姿で今を生きているのだ。

 

「死んだのに生きてるのもそうだけど、まさか私の若い姿で蘇るなんて…」

 

自分の手の若々しさに驚いている彼女は4代目当主の【シーア・テネリタス】さんだ。

アトラトさんの意志を最初に受け継いだ者であり、女性でもその雄々しさと勇敢な行動、そして戦士を奮い立たせるその振る舞いはまさにロイヤルのジャンヌ・ダルクであったそうだ。

 

「して…当方たちを蘇らせてまで達成させたいお前の目的は何だ?」

 

鋭い眼光で俺を睨む武士のような人は5代目当主【ロドン・テネリタス】だ。

彼はどちらかと言えば自分を鍛える武士道を重んじており、自分が強いと皆を守れると思っているらしい。

事実、彼は圧倒的な力で敵を屈服させ、仲間を守るらしい。いわゆる、武士道と騎士道のどちらも重んじておるのだ。

彼の言う事に俺は絶対的な正しさと、信念を持って答えよう。

 

「決まってる。…世界を変える事だ。」

 

こんな馬鹿げて、悲しくて、辛い世界を…俺は必ず変えてみせる…!

世界を見て知ったこんな世界を壊して俺は世界を作り替える。誰もが安心して、幸せになれる世界を…!

もしもの話(R-18)を観測しますか?

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