もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜 作:白だし茶漬け
いやぁ…良い。すごく信濃がかわゆい。
絶対この小説にも出そう(決意)
ま、出てくるのはもうちょい先ですが…
星が輝く夜空の中、冷たい夜風が私の灰色の髪をなびかせていた。海が夜の星空で輝きを持たせ、昼とは違う表情をさせていた。こんな風に海を眺めるなんていつぶりだろうか。こんな気持ちで海を眺める事が出来るのは、指揮官のおかげだ。
指揮官は私に戦う意味を教えてくれた。海を恐れていた私を救ってくれた。だが、その指揮官が記憶を失い…私の知る指揮官は…もういなくなってしまった。
指揮官が重桜への移動が決定した。…いや、帰ると言った方が正しいのだろう。指揮官は元は重桜の者。
厳密にはセイレーンなのだが、彼にとって本当の居場所は重桜にある。
家、家族、思い出…指揮官においての人生があの重桜にあるのなら私は止めない。…止めるべきではない。
潮風が私の体をすり抜けて通るように、私の知る指揮官も風のように消えてしまった。
全身に重りが乗っているように体が重く、そのまま私は丘の上の草原に座り込む。
何度もため息を漏らし、私は指揮官との思い出を振り返る。
「…改めて思い返すと、いい思い出なんて無いな。」
思えばこの丘では何度も指揮官と衝突した。自分を兵器だと説く私、それを否定する指揮官とは、意見がぶつかり合い、衝突する事が多かった。
今思えば後悔している。何度も指揮官を突き放し、何度も指揮官を否定した。
だがそれでも指揮官は私に近づいた。何度否定されても何度衝突しても、最終的に指揮官は私の中にある心を目覚めさせてくれた。私が戦う意味を理由を指揮官がもう一度目覚めさせてくれた。
本当に感謝しかない。どんなに言葉を並べてもどんなにお礼をしても返しきれない程にだ。
だがそれは出来ない。もう私の知る指揮官はいないのだから…
「…サンドイッチを食べようと約束したのにな…」
それは、オロチとの戦闘が終わる時に指揮官と約束した言葉だ。指揮官が着任して間もない頃、私は外で指揮官と食事を共にした時がある。その時はホーネットとヴェスタルも一緒だった。恐らくベルファストが作ったであろうサンドイッチを皆は楽しそうに食べる中、その時の私は心に殻をしていた時なので、ぶっきらぼうだったと覚えている。
あまり指揮官とは話さず、ただ食べ物を食べるだけのあの食事はあまりにも寂しかった。
だからこそ、今度はお互いの事を話し合って食べようと思ったが、その約束は果たせそうにない。
「ここにいたのね。」
後ろから聞きなれた声が聞こえた。それと同時に翼の羽ばたきも聞こえた私は後ろに振り返る。長い白髪に黒のコート、そしてその腕にはいーぐるちゃんが止まっていた。
「ヨークタウン姉さん…どうしてここに…」
「いーぐるちゃんがここだって教えてくれたのよ。」
ヨークタウン姉さんは私の隣に座り、そのまま丘の上から見える海を眺めた。
「綺麗な場所ね…私も最近ここを知ったのよ。後でハムマンちゃんとここでランチを食べようかしら。」
楽しそうな未来を思い浮かべていたヨークタウン姉さんはそのまま小さく微笑んだ。
私もいつかはここで指揮官と一緒にランチをしたかった…そんな叶わない未来を思い浮かべた私は、英雄の名を汚すかのように落ち込んだ。
「…ここで初めて指揮官と会ったんだ。」
少しでもこの寂しさを紛らわすように私は誰かに話を聞いて欲しいように、前触れもなく話をした。
ヨークタウン姉さんは驚きもせずに、ただじっと私の話を聞いてくれた。
「最初は驚いた。声の感じと実際の雰囲気がまるで違ったから、本当に指揮官なのかと疑った程だ。」
それから私はこの丘の出来事をヨークタウン姉さんに話した。対立した事、意見が別れた事、私の本心をぶつけた事、全てがこの丘で起きた出来事だ。会う度に喧嘩し、会う度に指揮官は私と面を向かって意志をぶつけた。
以前の私はそれに苛立ちを感じ、指揮官の事を一向に認めずにいた。それでも指揮官は何度だって私に手を差し伸べてくれた。指揮官がいたから…私は自分の恐怖を…海を乗り越えられた。
だが指揮官…それは貴方がいてくれないと意味が無いんだ…
「指揮官…っ指揮官…」
隣にヨークタウン姉さんがいるにも関わらず、私は情けなく涙を流してしまう。見られないように帽子を深く被り、声で悟られないように声を押し殺していたが、やはり涙を隠しきれていなかったのか、ヨークタウン姉さんは何も言わずに私を抱き寄せた。
「エンタープライズも指揮官に救われたのね…私も深海のように暗い底にいた私を、指揮官が救ってくれたわ。本当にあの人は光のような存在ね…」
そう言いながらヨークタウン姉さんは私を泣き止ませるように私の髪を撫でた。
優しく、子供を泣き止ませるようなその優しい手つきは私を落ち着かせていった。
「ねぇ…指揮官の記憶が元に戻す方法があるらしいの。良ければ…今から指揮官の部屋に行ってみない?それを知っている子達が今頃、指揮官の部屋に居るわ。」
「…!」
それを聞いた私は途端に立ち上がり、ヨークタウン姉さんを振り切って指揮官の部屋へと向かった。
「…頼んだわよ。エンタープライズ。」
今1番求めていた手段が見つかった私は無我夢中で基地を走り回った。血の味が混じる呼吸、足から伝わる疲労感。それでも私は彼の元に走り続ける。
ついに指揮官の部屋の目の前に来た私は、無我夢中で扉を開けて眠る指揮官をその目で見る。他に赤城や加賀、ジャベリンやベルファスト、そしてオロチもいたが、今の私の目には指揮官しか映らなかった。
「指揮官…!」
「何かしら?こんな遅くに獣のような荒い息をして…なんの用?」
目障りなように赤城が私を睨みつけ、私は済まないと思いながら指揮官に近づく。
規則正しい寝息をたて、良く眠っている。睡眠の邪魔をせずに済んだ私は胸を撫で下ろしながら安心する。
「ちょっと…一体なんの用かしら。」
赤城が私の肩を掴み、指揮官から離れさせる。走ったせいか足に力が入らず、私は赤城に思うがままに体を動かされる。勿論、ただ指揮官に会いに来たわけじゃ無い。
私は指揮官の記憶を元に戻す為に来たのだから。
「ん〜どうやら指揮官の記憶を元に戻しに来たって感じね。」
オロチは関心するように右手で頬を添えて笑っていた。
しかし、一体どうやって指揮官の記憶を戻すのか、皆目見当もつかない。
「ん〜ま、5人ならまだ大丈夫か…それじゃあ始めるけど…その前に1つ注意事項がありま〜す!」
いよいよ指揮官の記憶を戻す時が来たと思いきやオロチは注意事項があると言う。オロチは指揮官の前に立つと、私たちの目を真剣に見つめた。先程の態度が嘘のように、鋭い目は私たちの体を突き刺すようだった。
「優海の記憶喪失は優海自身が望んた事よ。必ず何かしらの抵抗があると思うから覚悟しといた方が身のためよ。」
「抵抗?それはどんな…?」
ジャベリンが不安そうに指揮官を一目見てからオロチに質問をした。やはり、指揮官自身が記憶を無くすことを望んでいると改めて実感した今、指揮官にとって今の私達は障害…指揮官は全力で抵抗をしてくる事はジャベリンも分かってはいるはずだが、やはり不安というものがこびりついているのか、恐る恐る問いかける。
「ん〜ま、もしかしたら指揮官と戦う事は覚悟した方がいいと思うわね。」
「…やっぱりまた指揮官と…」
ジャベリンが思う事は私達も同じ気持ちだ。また指揮官と戦う事になるなど、もう二度としたくは無いし、しかも今回は指揮官自身の意思で私達に剣を向ける。
この事実だけでも私たちの戦う意思が削がれるような気分だ。現にそれを聞いた皆は戦いたくは無いように目を逸らしていた。
「皆様、少しよろしいでしょうか。」
突然ベルファストが私たちを止めるように声をかけてきた。真っ直ぐ私たちを見るその目は、まるで何かを止めようとするような目だった。それと同時にどこが迷っているような弱々しい目でもあった。
「…本当にご主人様の記憶を元に戻す事が良い事なのでしょうか?」
「な…何を言っているんだ!」
まさかベルファストが指揮官の記憶を戻す事に否定的な意見をここで出してきた。一同はベルファストに注目し、赤城に至っては目で殺すような鋭い視線をベルファストに送っていた。
「メイド風情が何を言い出すと思ったら…貴方は優海がこのままで良いと思っているのかしら。」
「…そうでございますね。失礼致しました…」
ベルファストは赤城に深く頭を下げ、1歩下がった。
しかし、一体どうしたんだ…ベルファストだって指揮官と一緒に過ごした時間は長いはず…それなのに何故あんな事を言い出したんだ。だが、今は指揮官のことに集中しなければ…
「余計な時間を取ったな。オロチ、さっさと始めろ。」
「はいは〜い。」
加賀は準備は出来たと言うようにオロチを急かし、いよいよ指揮官の記憶を戻す事になる。オロチは気前よく返事を返した後、私達に向けて手を伸ばす。
「これから貴方達は優海の意識の中に飛ばすわ。原理は簡単、優海の本来の存在、コネクターの力を使えばまぁ可能な筈よ。」
「根拠はあるのか。」
「そうね、私との戦いの最後、優海は天城の姿をしていたでしょう?あれは驚いたわホントに…まさかKAN-SENの意識を共鳴させるなんて…そして、今度はそれを応用して優海の意識に貴方達を送ることが出来るのよ。はい、説明終わり!」
確かにオロチとの戦闘時、指揮官は私が見たKAN-SEN…天城と言う者に姿形を似させていた。オロチが言うには、あれはコネクターの新しい力らしい。KAN-SENの能力をコピーするのとは全く違い、意識そのものを共鳴させるという。
今回はそれを使って、逆に指揮官の意識に入り込むと言うが…
「ま、貴方達は目をつぶって指揮官の事だけ考えてて、あとは私がやるから。」
「…分かった。」
「オロチ様、私は今回辞退させていただきます…」
「ふん、優海の記憶を戻さない奴と戦っては足でまといでしかならないからな。懸命な判断だ。」
ベルファストは加賀の言う事に反論せず、全てを受け入れるようにまた1歩後ろに下がった。
「ベルファストさん…」
それを心配そうに見ていたジャベリンにベルファストは気づき、大丈夫だと言うような笑顔を振舞ったが、ベルファストらしくもなく、その顔は曇っていた。
その曇り笑顔を見たジャベリンは気持ちを切り替えさせるように自分の頬を叩いた。
「よし…待ってて下さい!絶対に指揮官の記憶を取り戻して見せます!」
「どうやらやる気充分ね…それじゃあ行ってらっしゃい!」
指揮官を思いながら目を閉じた私達は暗闇に意識が飲み込まれるかのように、ゆっくりと、海に溶ける雪のように意識を失った…
意識を失ったのか、エンタープライズ達の体は途端に床に寝転んでしまった。それを見たベルファストは急いで全員に何があったのか確認した。
どうやら全員、命には別状がない。どちらかと言えば眠っていると言った方が良かった。
「…成功したのでしょうか?」
「成功したわよ。あとは待つだけの簡単なお仕事よ。」
オロチはそのまま欠伸をしながら机の椅子に座り、そのままエンタープライズの帰りを待っていた。その間に、ベルファストはオロチに言われ、予め持ってきていた毛布をエンタープライズ達の体にかけていった。
「…本当に良かったの?」
「はい、迷っているような気持ちでこのまま行けば、私は皆様の足でまといにしかなりませんから…」
自分の気持ちに迷いがあったベルファストはエンタープライズ達とは共に行かず、残る事を決めた。
ベルファストは迷っていた。指揮官の記憶を元に戻し、いつも通りの日常を過ごすせるのだが、それでは指揮官はまた戦い、傷つき、五感のほとんどを失ったまま…
元には戻さず、このまま重桜の者と共に静かに暮らさせ、普通の人間としての人生を生きられるが、自分達とはもう会えない…
ベルファストはそんな葛藤を胸に秘めて悩んでいた。
メイドとして主人に尽くす考えなら、後者の考え…つまり記憶を元に戻さない事を選ぶのだが、どうしてもそれを拒んでしまう。
指揮官にもう会えない。過ごしてきたあの指揮官が戻ってこないと考えると、その考えを止めてしまっていた。
「私はメイド…ご主人様に仕えるのが私の使命でもあります。…ですが…」
「ずっと傍にいて欲しい自分がいると?」
オロチは全てを見透かしてるかのようにベルファストにそういうと、ベルファストは小さく頷いた。
「しかし優海も罪な男ね〜。もうKAN-SEN達の好感度高すぎっちゃありゃしない!もうモテモテ。あ〜羨ましい。」
「はい、本当に…ご主人様は自分よりも他人の事を第一に考えています。ご自分の事なんて考えてないぐらいに…」
ベルファストは指揮官の机を見て、指揮官が夜遅くまでずっと執務に励んでいた事を目に浮かびながら思い出していた。
より完璧で安全な指揮を実現させる為に、自らの命を削るような生活を送り、KAN-SEN達の為に生きていると言っても良かった程だ。
「ですからご主人様には…幸せに生きて欲しいのです。これは、私の本心なのですから…」
「ふぅん…自分が不幸でも?」
「…はい。」
キュッと胸が掴まれた心を押し込めるようにベルファストは自分の胸に手を当てた。
「…っ、ここはどこだ…?」
エンタープライズが目を覚ますと、そこには暗い深海のように暗い空間が広がっていた。幸い自分の手足は視認出来、エンタープライズは周りを見渡し、赤城達を探す。
「…冷たいな。」
妙に温度が低い空間の中にいたエンタープライズは寒い程では無いが、その冷たさを気にしていた。まるで寂しさか悲しさが具現化した良うな寂しい冷たさがエンタープライズの肌に襲いかかる。赤城達を捜索し、暗闇の中を歩いていると、目の前にある人影がいた。
エンタープライズはその後ろ姿を見て確信した。
あれは指揮官だと。
「指揮官っ!」
エンタープライズがそう叫ぶと、人影はそのまま逃げるように歩き出した。エンタープライズはその人影に追いかけ、暗闇の中を走り続けた。
しかし、走っても走っても一向に距離は縮まらず、むしろ遠ざかっていた。あちらは歩きでこちらは走りのにも関わらず、どんどんエンタープライズと影の距離は遠ざかるばかりであった。それはまるで、指揮官とエンタープライズが衝突していた距離感のようでもあった。
「待ってくれ指揮官!待って…!」
手を伸ばし、届かない指揮官の手を握ろうとしたが、影はその暗闇に溶けるように消えてしまった。
それを見たエンタープライズは走るのを止め、再度周りを確認した。景色は変わらず、肌に感じる冷たさがさらに増してるような気を感じたエンタープライズは、どうすればいいか分からずにいた。
「指揮官…」
「待って…優海っ!」
「この声…赤城か?」
赤城の声を聞いたエンタープライズは声がした方向に顔を向けると、影を追う赤城の姿を発見した。
だが、エンタープライズが見た影とは少し違っていた。背丈が少し小さく、まだ子供のようでもあった。
まるでどこがお出かけに行くように影は嬉しそうに飛び跳ねながら赤城から遠ざかっていく。
そして、影はまたもや暗闇の中に消えていった。
「そんな…優海…!」
その場にへたりこんだ赤城を見たエンタープライズは、赤城に向かって走っていく。それに気づいた赤城はエンタープライズを見つけ、顔を背けた。
「赤城!今のは…指揮官か?」
「…ええ。あの姿形は間違いなく優海がまだ重桜にいた頃の時よ…」
「では、私が見た影も指揮官なのか…?」
何故自分と赤城が見えた指揮官の影が違ったのかと疑問に思ったが、それより考えより前に向こうから加賀とジャベリンがエンタープライズの元へと辿り着いた。
「待ってください指揮官!…ってあれ?エンタープライズさん?」
「待て優海!…姉様…?優海はどこに行った…?」
どうやら2人も指揮官の影を追いかけてここに来たらしい。エンタープライズも指揮官の影を追ってここに来たと伝えると、情報交換を設けた。
「指揮官の影ですか?私はいつも見てる指揮官の後ろ姿を見て来ましたけど…あ、でもなんだか元気そうな感じでしたよ。」
「私は優海の幼き頃を影を追いかけて来た。…姉様が見た影とは恐らくもっと幼い姿をだ。」
どうやらエンタープライズ達は別々の指揮官の影を追いかけていたらしい。これが一体なんの意味を持つのか分からず、エンタープライズ達はその場で制止してしまう。 しかし、わかったことがある。それは、まるで影がここに誘導したということだ。
その時、コツコツと1つの足音が徐々に大きくなり、誰かがこちらに近づいてきた。エンタープライズ達はその足音を聞こえる方向に顔を向けると、そこには1人の影がいた。
「…指揮官?」
エンタープライズがそう呟いたが、それは直ぐに違うと判断した。影から帯びる圧がエンタープライズ達に恐怖を植え付けるように、彼女達にまとわりつくように襲いかかる。
その圧を振り切るように、エンタープライズ達は艤装を展開した。影も目を青く光らせながらその姿を変え、黒い地面が水のように蠢き、それが鎧になるように影の周りに装着された。
「どうやら…戦うしかないようだな…」
エンタープライズは弓を、ジャベリンは槍、赤城と加賀は式神を構え、影に対して戦闘態勢を整える。
黒い鎧を纏った影はゆっくりとエンタープライズ達の元に近づき、背後に艤装を展開させた。
黒い霧がやがて姿を変え、いつもの指揮官が展開してる艤装、『ズムウォルト』とセイレーンの艤装、『リュウグウノツカイ戦場・空舞』を展開させ、右手に巨大な黒い大剣が姿を表した。
「あの艤装と武器…指揮官の!?」
「じ、じゃあ、あれは…指揮官!?」
確信は無いが、影の姿や艤装や武装からして、あれは間違いなく優海…指揮官であった。
KAN-SEN達は指揮官自身が拒絶している事を実感し、戦う意思が揺れ始めていた。
「指揮官!私です!ジャベリンです!分かりませんか!?」
ジャベリンが説得しようと持ちかけたが、影は何も言わず、戦艦の役割を持つ『リュウグウノツカイ戦場』の主砲を何も言わずに放った。
放たれた砲弾は無慈悲にジャベリンへと襲いかかり、ジャベリンの直撃は避けられないものであった。
咄嗟の反応でジャベリンは防御したが、砲弾を受けたジャベリンはそのまま吹き飛ばされてしまう。
「きゃぁぁぁぁ!!」
「ジャベリン!」
吹き飛ばされたジャベリンの被害を確認する為、エンタープライズはジャベリンに目を向けた。
ジャベリンはボロボロになりながらも何とか立ち上がり、まだ戦うと言ってるような目を見せた。
無事と安心したエンタープライズは影に武器を構え、弓を引いた。
放たれた矢は暗闇を照らすように輝き、真っ直ぐに影へと向かっていくが、影は大剣を振り、軽々とエンタープライズの攻撃を防いだ。
お返しと言わんばかりに、今度は『ズムウォルト』の主砲と『戦場』の主砲の銃口をエンタープライズへと狙いを定めた。
「くっ…!」
影が放った轟音と同時にエンタープライズは矢を拡散させて砲弾を撃ち落とした。矢と砲弾がぶつかり合い、凄まじい爆発を起こした。エンタープライズと影の間の視界は煙に覆われ、どちらも目の前が見れない状況だった。
影はそんな状況をよしとしないと判断したのか、大剣を思い切り振りかぶり、煙を薙ぎ払った。そして、ようやく何かに接近した事に気づいた。
「はぁぁぁぁぁ!!」
突如煙の先からジャベリンが槍を構えて突撃をかけていた。
ジャベリンはエンタープライズが攻撃したのと同時に影へと突撃をかけ、今この隙を突いたのだ。
だがその隙など無いように、二つの『リュウグウノツカイ』の艤装がジャベリンの行く手を阻むようにジャベリンの目の前に現れた。
「っ!」
ジャベリンは咄嗟に片方の艤装を槍で抑え込むが、もう一方の艤装がしっぽでジャベリンを薙ぎ払おうとしていた。
「私たちを…」
「忘れては困るな!!」
いつの間にか上空にいた赤城と加賀は式神を炎の弾へと変化させ、槍の雨のように影の頭上に振り投げた。
影は『ズムウォルト』の艤装からミサイルの発射口を開き、そのままミサイルを頭上に発射させた。
ミサイルが曇の糸を引きながら炎の弾と衝突し、そのまま爆風を発生させる。
しかし、物量では赤城と加賀の方が勝っている。このまま押し切ろうと赤城と加賀は再度攻撃を仕掛けようとしたが、煙を突き破るように『空舞』の艤装が赤城達に襲いかかる。
「しまっ…」
『空舞』はそのまま1つの艦載機を発艦させ、そのまま主砲で自分の艦載機を撃ち落とした。
撃ち落とされた艦載機はそのまま大爆発を起こし、赤城と加賀を呑み込んだ。
爆発の衝撃を受けた赤城と加賀はそのまま海へと落下してしまい、戦闘続行は不可能であった。
「まさか…こんな…」
「赤城さん!加賀さん!」
ジャベリンは2人を心配したが、その隙をつくように影は無防備のジャベリンにそのまま蹴りを入れた。
無防備な所を蹴られたジャベリンはその力の勢いを受け止める事が出来ず、勢い良く吹き飛ばされてしまう。
吹き飛ばされたジャベリンを受け止めるようにエンタープライズは体を張ってジャベリンを抱えたが、力の勢いが凄まじく、エンタープライズ諸共吹き飛んでしまう。
「ごホッ…かはっ…!」
「ジャベリン!しっかりしろ…!」
苦しそうに蹴られた腹を抱えながらうずくまるジャベリンに寄り添うエンタープライズと、先程のダメージと落下のダメージでボロボロの赤城と加賀…勝負にならなかった。圧倒的な力は圧倒的な拒絶を意味しているのだろうか、今の指揮官にはKAN-SEN達の言葉と思いは届きはしなかった。
「指揮官…貴方は何故それほど拒絶する…」
影は何も言わずにただ右腕を構えた。その腕から黒い水が地面から現れ、何かを型どるように変化する。形をとり、実態を得たその武器は…『レールガン』。
優海が持つ武装の中でも最も破壊力がある武装であった。
「指揮官っ!思い出してくれ!指揮官!」
聞こえない。届かない。感じない。影はただ黙々と敵を倒すように動き、レールガンを構え、とどめを刺すようにエンタープライズを狙った。
「……指揮官。」
エンタープライズがそう呟くと同時にレールガンは轟音と共に弾丸を射出した。空気を切り裂き、何者にも防げぬその弾はエンタープライズの体を貫いた。
エンタープライズは力無く後ろに倒れ込み、そのまま暗闇に意識を奪われてしまう。
「まだ…だ…めな…の…か…し…きか…ん」
重くなる瞼と冷たくなる自分の体を最後に噛み締めるようにエンタープライズはゆっくりと瞼を閉じた。
もしもの話(R-18)を観測しますか?
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Yes
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NO