もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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どうも、ガンダムでアヴァランチ乗ってる白だし茶漬けです。
いやぁ最近ガンダムvsの配信見てるんですが面白そうで自分もやってみたい気持ちがありますね〜
いつかはしてみたい
あとTwitterに小説更新するの思い切り忘れてた…!

いつもランキングに乗る時、大体30位とかそこら辺なんですよね。もっと頑張って20位ぐらいにはなりたい…!



約束 待ち続ける者たち

重い瞼を開け、まず目に映ったのは天井だった。

これは…私の部屋の天井だ。確か私は指揮官の部屋にいたはずだ。それなのに何故こんな場所にいるのか分からず、意識が朦朧としてしまう。そんな私を上から覗くように、突如私の視線にオロチが映り込んできた。

 

「おっはよ〜!って言ってもまだ午前4時だけどね。」

 

「お前…なんで私の部屋に!」

 

体を起こそうとしたが何故だが力が入らない。起こせたのは上半身だけであり、これでオロチを部屋から追い出すことも出来ない。

 

「ちょっと、たとえ意識の中の出来事でもダメージは受けてるから、まだ安静にしてちょうだい。」

 

そう言ってオロチは私の肩をつかもうとしたが、私はそれを拒むようにオロチの手を跳ねのける。しかしオロチは諦めず、私を押し倒さんとしていた。

上手く力が入らない私は呆気なくオロチに破れ、ベットに寝転がってしまう。

 

「大丈夫よ。朝までぐっすり眠れば体力は元に戻る筈よ。」

 

そう言ってオロチは持ってきたのであろうリンゴをひとつ手に取り、果物ナイフを片手にリンゴの皮を剥き始めた。1つの切れ目もなくリンゴの皮はスルスルと剥かれ、型崩れする事無く、綺麗な形で皮は剥かれた。

するとオロチはいきなりリンゴを宙にほおり投げると同時に、素早く皿を手に取り、空中でリンゴを切った。

切られたリンゴは綺麗に8等分され、皿に着地した。

その手際の良さに私は思わず見はいってしまい、そのまま手渡されたリンゴをまじまじと見た。

 

「はい、どうぞ。」

 

「…随分と手際が良いな。」

 

「なんかね、こんな風に切る人がいるらしいから試しに真似してやってみたんだけど…中々面白いのよこれ。貴方もやってみる?」

 

「いや…遠慮する。」

 

そんな事をしてもなんの意味も持たないと考えた私は綺麗に切られたリンゴを見つめる。食べる気はしなかった。寝起きのせいか食欲が起きないのもあるが、何よりこのリンゴを持ってきたのはオロチだ。何かあるのではと疑ってしまう。

 

「毒とか入ってないわよ?」

 

見透かされていた。疑った申し訳なさで私はリンゴを手に取り、異常が無いかよくリンゴを観察する。

腐ってもいなく、何かを入れた痕跡も無い…大丈夫な筈だ。

恐る恐るリンゴを一口かじると、スッキリとした甘さと果汁が飛び出し、口の中が程よい甘味で満たされた。充分に咀嚼をした後、噛み砕いたリンゴを飲み込み、半分になった1切れのリンゴを今度は一気に頬張る。

 

「ね?大丈夫でしょ。」

 

「あ、あぁ…疑ってしまってすまない。」

 

「ま、そんな反応される自覚はあるし、別に構わないわよ。」

 

オロチはそのまま黙って空いてる椅子に座り、まじまじと私の部屋を見渡す。

…ベルファストに掃除はされている部屋だが、机の上が散らかっているのであまり見ないで欲しいが、それ以外に私の部屋には何も無い。

オロチは机の上にある大量のスティックバーを凝視していた。

 

「…貴方栄養バランスは大丈夫なの?」

 

「大丈夫だ。あれでも充分な栄養はとれる。」

 

現に私はほとんどこの食生活を過ごしてきた。たまにベルファストに強引に食堂に連れてこられたりもするが、基本的にこれで済ませる。

別に料理が美味しくないとかそんな物じゃない。

ただ必要性が感じられないだけだ。私は兵器、兵器に食事は必要にない。ヒトと同じ体を持っていてもそれは変わらぬ事実だ。

 

だが、最近に関してはそれが揺らいでいるのが感じられた。ベルファストや指揮官を通じて私の考えは大いに変わった。指揮官ら兵器としてでは無く、私をヒトと同じように接した。その事で私と指揮官は衝突したが、今となってそれがいかに愚かな考えだと気づいた。

だから今度は私が助ける。私を助けてくれた指揮官を必ず…

 

「…オロチ、もう一度私を指揮官の」

 

「無理よ。何度やっても貴方は負ける。」

 

最後まで言うより先に確信を持つようにオロチはそういった。まだ何もやっていないのにも関わらず、決めつけの態度が私の癪に障った。

 

「そんな事ない…!今度こそ必ず…!」

 

「だーかーら、無理!絶対に無理!貴方達は完膚なきまでに負けて、貴方達は完全に拒絶されてるの。だから、まずはそれをどうにかするのが先決よ。あの優海は拒絶=力になってるからね。」

 

「…そんな事どうすればいいんだ。」

 

指揮官に最早私の声は聞こえない。届かない。こんな状況で一体どうしたら良いんだ?

力になれずにいた苛立ちで布団の一部を握りつぶし、歯を食いしばる。オロチはそんな私を見て憐れむようにため息を着き、私の隣に立った。

 

「…はっきり言うわ、貴方じゃ無理。貴方じゃ優海の拒絶の鎧を剥がすことは出来ない。」

 

「なんだと…?」

 

足でまといと言われたような感覚を受けた私はオロチの胸ぐらを掴んだ。それでもオロチは冷たい目で私を見下していた。

 

「私では力不足だと言いたいのか!」

 

「そうよ。貴方…優海との繋がりがある程いい思い出があるのかしら?」

 

「それは…」

 

無かった…指揮官との思い出は、意見の衝突しか無かった。改めてそれを思い返した私は、どうする事も出来ず、オロチの胸ぐらを離し、落胆した。

 

「だからこそ、ここは重桜のKAN-SEN達に任せておいた方が良いわ。…貴方が本当にあの子の事を思っているなら…分かるでしょう?」

 

そうだ…重桜は指揮官の故郷だ。そこに行けば、指揮官の拒絶も弱まるかもしれない。私に出来ることなど無い。

…結局私は戦うことしか出来ないのだろうか。今でも恩人を助ける事が出来ず、戦うことしか取り柄が無い私には、それ以外何かあるのだろうか…

 

「やはり私は…変わる事などできないのか…」

 

結局私は前の頃と変わらない…あの時のままなのだろう。まるで時が止まっているかのようだった。

私に何かを成すことも、変わる事など出来ないと思ったその時、オロチが私の肩を叩いた。

 

「ヒトは変われるって私は学んだわ。変わることに遅い早いも無い。だから…変われるわよ…貴方なら。」

 

かつて脅威の敵だったものへの激励は、屈辱的な物は無かった。むしろ私を前へと進めてくれるような感じがした。私が前見た時は天城というKAN-SENに姿を借り、人を見下してるかのような態度をとっていたが、今はその雰囲気は全く感じられない。

口調も何もかも変わっており、今では私達の仲間…までとはまだ信用していないが、敵ではない。これだけは確実に言える事だ。

 

「…変わったな…貴方も。」

 

「でしょ?貴方もそんなうじうじする性格も改めたら?」

 

「…努力はする。」

 

そうすれば…指揮官も良いと思ってくれるのだろうか…

思ってくれたら…私は嬉しい。

窓の外から陽の光が差し込んで来た。どうやら夜が明けたらしい。

 

「もう朝か〜ふわぁ…無理…私朝弱いから寝る…」

 

蛇は夜行性のと言うから…オロチもそうなのだろうか。

眠い瞼を擦り、眠そうな足つきで自分に与えられた部屋へと向かっていた。

しかし、そうはさせまいと私はオロチの腕を掴んだ。

オロチは驚くような声を発しながら私を見た。

 

「朝から寝るとは関心しないな。そうだ、私と一緒に朝食を撮ろう。」

 

「い、いやぁ…私はもう寝たいな〜?」

 

「そう言うな。もしかしたら指揮官とだって会えるのかもしれいないからな。さ、行くぞ。」

 

「いやぁぁぁぁ〜!朝は嫌なの〜眠いの〜!」

 

ズルズルとオロチを引きずり、私は清々しい気持ちで朝を迎えた。こんな気持ちは…初めてだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_某海域にて

 

ゆらりゆらりとまるで彷徨うように、俺たちの船は海の上に漂う。目的がないわけではない。むしろ、目的は見定まっている。

だが、まだ動く時では無い。テネリタスの方達は燻りを感じているとは思うが、しばらくは我慢してもらおう。

潮風が体を通る中、甲板を歩く足音が聞こえた。

振り返ったその時、ある女性の姿が移った。本を抱え、メガネの位置を調整するようにメガネに手をかけた薄桃色の髪色をしたその人は8代目当主…【ミーア・テネリタス】さんだ。血縁的に…俺の祖母に当たる人だ。

祖母と言っても、彼女の姿は全盛期の頃の姿であり、祖母とは言えないぐらいの若い女性の姿であった。

 

「何か用ですか?」

 

「あ…別に用があるわけじゃ無いんだけど…」

 

英雄らしくない、モジモジとした態度をしながら、彼女は俺の隣に立った。

俺はその顔を見ると、思わず自分の父、【オセアン・テネリタス】の顔を思い出してしまった。

自分が嫌う父の顔を何故かここで思い出してしまったのは、彼女はあのオセアンの母親だからか、顔が似ていたせいだ。

目に見えて不機嫌になった俺は、思わず彼女から目を逸らした。

 

「あ…私、何かしちゃったかな…?」

 

俺の不機嫌が自分にあるのかと誤解した彼女は更に弱々しい態度になった。…この人本当に英雄なのか?

史実では災害が起こった時、彼女の知識のおかげでさほどの被害は出ずに、建て直した地域は数え切れない程と聞くが…俺にはどうしてもそう思えない。

少々落胆した俺だが、それは直ぐに改めてしまう。

 

「もしかしてオセアンの事…かな?」

 

「…!」

 

何も言ってないのに、考えを当てられた俺は思わず目を見開いて彼女の顔を見た。

彼女は当たったと喜んでいるかのように小さく笑った。間違いなど有り得ないとも見て取れるが…

 

「私、結構そう言うの当てるの得意なの…どう?おばあちゃんの事…少しは見直してくれた?」

 

まさか俺が少し落胆してるところまで勘づいてるのか…まるで人の心が見えてるような感じで少し気味が悪い。

 

「心なんて読めないよ。みんな…そういう風に言うけど…ちょっと考えれば分かることなの。この人はこんな人だからこんな風に考えるかも…って。」

 

「…本当は心、読めるんじゃないんですか?」

 

彼女は小さく首を横に振り、限りなく広がる海を見た。

懐かしさを思わせるようなその目は、俺の祖母だと改めて感じられた。

俺は赤ん坊の頃、1度だけこの人にあった事があると話は聞いてはいるが、申し訳ない事にそんな事は全然覚えていない。

その直後に彼女は息を引き取った。原因は病気による死亡…昔から体が弱いと聞いたが、まさかそれで死ぬとは、悔やみに悔やみきれないだろう。

 

…静寂が続き、どうしても気まずさが生まれる中、何を話そうか悩んでいた。

折角の祖母との出会いなのにこんな事はあんまりだ。何か話題はないのだろうか…

 

「ねぇ、オセアンは…元気にしてた?」

 

俺の事を察してなのか、彼女から話を振ってくれたが、それは難しい質問だった。俺とオセアンは敵同士であり、しかも、俺はオセアンの事はかなり嫌っている為、その話はしたくはないのだが、オセアンの母親である彼女にしてみれば、どうしても聞いておきたい事なのだろう。

 

「…元気にはしてます。アズールレーンの上層部にもなって、まぁまぁ良いみたいですよ。」

 

「そう…元気そうで本当に良かった…」

 

自分の息子の安否を安心するように、彼女の笑顔は輝きをましたように感じられた。

俺には、その気持ちがよく分からないでいた。あいつは俺と母さんより、自分の立場を守る為に見捨てた最悪の父親だ。はっきり言って…殺したいぐらいに憎い。

血が出るほど歯を食いしばり、拳を握り続けていると、それを見た彼女の笑顔は消えた。

 

「貴方とオセアンの間に何があったのか分からないけど…オセアンは貴方の思ってるような人じゃ…」

 

「そんな事分かってますよ!だけど、事実は変わらない。変えられないんですよ…」

 

分かっている。アイツは…良い奴だ。アイツの息子である俺は、誰よりもその優しさと偉大さを知っている。

だが、あの事件のせいで俺はオセアンを…許せなかった。

 

「…もう良いでしょう。そろそろこっちも動く準備を進めます。」

 

苛立ちでこれ以上は話す気は起きず、俺はそのままオロチの内部へと戻った。取り残された彼女はどこか悲しそうな目をしていたが、俺はそれを気にせずにいた。

 

「親子同士で戦うって…どんなに残酷な事か分かってるの…?本当にそれで良いの?マーレ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_アズールレーン基地にて

 

車椅子の車輪の音が着いていく中、眠気を覚ますように目を擦りながら食堂へと向かっていく。

勿論1人ではない、ベルファストさんが車椅子を優しく押してくれて、本当に助かっている。

 

「ご主人様、今日の朝は何をお食べになりますか?」

 

「そうですね…何が良いんだろう。」

 

洋食か和食か…どっちが良いんだろう。

…和食と言えば、僕は明日の朝に重桜に行く…と言うか、帰ると言った方が正しいのかな。覚えてはいないが、僕は重桜の出身であり、そこで育ってきたらしい。

重桜のKAN-SENである、赤城さんと加賀さんと一緒に暮らしており、血の繋がりは無くても、家族だと言ってくれた。

その言葉に嘘偽りは無いのだろう、現にあの人達の隣にいるととても安心する。

…それなのにどうして僕は忘れてしまったんだろう。

 

「…ご主人様?」

 

ベルファストさんに声をかけられ、ハッとして僕の意識は目覚める。

 

「あぁすみません!朝食は和食にしようかな…?」

 

「かしこまりました。では、そのように準備を致しますね。」

 

話をしている内に食堂へと辿り着き、その扉を開けると、朝なのに沢山のKAN-SEN達が食事をとっていた。

 

「あ、指揮官!おはよう!」

 

黒い帽子に金髪のツインテールで、何やら露出が凄い服装を…と言うか水着見たいな服を着たKAN-SENが僕を見つけると真っ先に挨拶をかけて来た。えーと…彼女は確か… ホーネットさんだ。

現段階で僕の記憶が無い事を知っているのは、極わずかであり、ほとんどのKAN-SEN達は僕のことを知らない。

 

「あぁ、おはよう。」

 

記憶喪失を悟られないように、僕は記憶を失う前の僕の態度を装った。なんだか騙してるようで申し訳無いけど、僕が重桜に行くのにこれ以上あまり心配はかけたくは無い。

 

「そう言えば指揮官、重桜に行くんだってね。ちょっと寂しいけど…直ぐに戻ってくるよね!」

 

「あ…あぁ。多分…」

 

恐らくその直ぐは二度と来ないかも知れない。僕は記憶を無くし、指揮官としての価値も無くなった今、僕はここにいる資格は無いのだから。

彼女達はそんな事も知らずに、僕が絶対に戻ってくると信じて疑わなかった。心が軋むような苦しさを感じながら、それでも僕は仮面をつけた笑顔を振舞った。

どうしてか分からないけど、これだけはすんなりと出来た。

 

ホーネットさんと別れ、僕は朝食の準備を進める。

ベルファストさんは朝食を取りに行くと言って、一旦僕と別れた。暇ができたので、僕は動かない足を動かそうとしてみたが、やはり足はまるで時間でも止められたかのように動かない。

腕に力を加えて重心を浮かし無理やり立とうするが、車椅子の不安定なバランスで重心がぐらついてしまう。

 

「あ…!」

 

そのまま左右の力加減の天秤が右に傾き、僕はそのまま車椅子から転げ落ち、思わず目をつぶる。その時、誰かの手が僕の肩を持ち、バランスを取り戻してくれた。

颯爽と現れたその人は黒いコートと灰色の髪を靡かせていた、エンタープライズさんだった。

 

「大丈夫か?指揮官。」

 

「あ…はい。ありがとうございます。」

 

ようやく重心を保つ事が出来た後、エンタープライズさんは僕の肩から手を離した。

 

「一体何があった?」

 

「あ、いや…足を何とか動かす事が出来ないかなって思いまして。…ずっと車椅子で、ベルファストさんに迷惑をかけてますから…」

 

「そんな事はありませんよ。これは、私が好きでやっている事なのですから。」

 

ベルファストさんの声が後ろから聞こえ、後ろに振り返ると、ベルファストさんが朝食を手にこちらに来ていた。

手に持っているのは出来たてなのか、食事から湯気が出ていた。ご飯に味噌汁、そして大根おろしが乗せられていた玉子焼き。まさに重桜の食、和食であった。

 

「わぁ…美味しそう!」

 

食事のいい匂いが食欲を刺激し、思わずお腹がなってしまった。それ聞いたベルファストさんとエンタープライズさんは、小さく笑った。

 

「ふふ、ご主人様は食いしん坊ですね。」

 

「うぅ…面目無いです。」

 

「いや、いい事だと思うぞ。私も食事をとるとしよう。」

 

「エンタープライズ様が…ですか?」

 

ベルファストさんが意外そうにエンタープライズさんの顔を見ており、それに気づいたエンタープライズさんは小さく笑ってベルファストさんの顔を見た。

 

「まぁ、流石にあのスティックバーだけでは…な。」

 

「…ふふ、かしこまりました。では、エンタープライズ様には栄養バランスを重視した料理をお持ち致しますね。」

 

「…レモンは抜いておいてくれ。」

 

「かしこまりました。ではご主人様、こちらにお座りになって下さい。」

ベルファストさんは空いているテーブルの上に食事を置き、エンタープライズさんの分の料理を取りに出かけた。

 

「それでは指揮官、席に座ろう。車椅子…押すぞ。」

 

僕は小さく頷き、エンタープライズさんはゆっくりと車椅子をテーブルにまで移動させた。

テーブルの前までたどり着くと、テーブルの高さに合わせるように車椅子の座高を調節し、食べやすい高さまで調節を完了すると、美味しそうな食事を目の前にした。

 

「…ん?指揮官、食べないのか?」

 

食事を見るだけで、全く手に付けない僕を不思議に思ったエンタープライズさんは、思わず僕に話しかけてきた。

 

「はい、どうせなら皆と一緒に食べたいので。」

 

確かにお腹は空いてるが、やはり食事は皆で食べるべきだと考えた僕は食事に手をつけず、エンタープライズさんの食事を運ばれるのを待った。

 

「そうか、しかし待たせてしまってるのは申し訳ないな…少し話をしようか。指揮官の事だ。」

 

エンタープライズさんは僕の向かいの椅子に座った。

おそらくは昔の僕の話をしようとしていると思うが、僕に関する事は、ノイズが混じって聞こえないのを、昨日ベルファストさんと確認した。

僕が書いた日記は文字が見えず、ベルファストさんが音読しようとしてもそれがノイズ混じりで全く聞こえなかった。

多分だけど、今回もそうなると思い、僕は無意識に身構えた。手足にも力を入れ、迫り来るノイズに耐える準備をしたその瞬間、その時がやって来た。

 

「指揮官は…⿴⿻⿸■□▪でとても◇◇■な人だったんだ。」

 

迫り来るノイズと他のKAN-SEN達の賑やかな喋り声が耳の中で暴れるように混じった。

耳の中で暴れるよう声が頭の中まで響き、破裂しそうな勢いだ。耳を塞ごうと手を動かそうとしたが、それでは不振に思われてしまう。

でも悪いことだけじゃ無かった、エンタープライズが昔の僕の話をする時、とても嬉しそうな顔をしていた。

尊敬する人の話をしてるような、大切な人の話をしているかのように、エンタープライズさんは優しい笑顔で話を続けた。

 

耳から聞こえるノイズ音が心無しか聞こえなくなり、僕の体の怖張りが無くなり、大分落ち着きを取り戻した。

たが、ノイズが無くなったからと言ってエンタープライズさんの声が聞こえる訳ではなかった。

ノイズが聞こえなくなっただけで、エンタープライズさんの声は聞こえない。

僕の耳に届いているのは、周りのKAN-SEN達の喋り声だけだ。

 

「…と言う訳だ。指揮官、少しは思い出してはくれただろうか…?」

 

ノイズのせいにより、正直言って何一つ聞こえはしなかったが、エンタープライズさんの顔を見て分かった事がある。

僕は…KAN-SEN達をとても大切にしていた事だ。少なくとも、悪い人だった訳じゃないことに安心した。

 

「…思い出せてはいませんけど…少し安心しました。僕は…悪い人じゃないって。」

 

「貴方が悪人なんて、そんな事無いじゃないか。だから待っている…貴方が帰ってくることを…」

 

重桜から帰ってくることでは無く、恐らくは僕の記憶が戻る事の意味を込めての事だろう。

待っているのはエンタープライズさんだけじゃない、ここにいるKAN-SEN達全員がそう思っている事だろう。

…もし記憶が戻ったら謝らないと…待たせてごめんって。

 

「エンタープライズ様、朝食をお持ち致しました。」

 

やる事を決めた後すぐにベルファストさんがエンタープライズさんの朝食を持ってきた。お皿には野菜がびっしりと乗せられており、栄養重視の料理となっていた。

それを見たエンタープライズさんは少し顔を歪ませてしまった。

 

「おい…これほどの野菜を私は頼んでは…」

 

「エンタープライズ様の今までの食生活は目に余るものでしたからね。今日からはキチンとした栄養をとって頂きます。」

 

聞いた話だけだと、エンタープライズさんの食生活は余りにも乱れていたらしい。意外だ…そういう所きっちりとしてる人だと思ったのに…

だが、僕の思っているのとは少し違っていた。

ベルファストさんが言うには、エンタープライズはいつもスティックバーで食事をとっており、まともにこの食堂に来る事はなかったと言う。

それだったら…うん、その野菜だらけの料理を提供するのには納得する。

 

「さ、どうぞエンタープライズ様。よろしければ私が直接食べさせてあげましょうか?」

 

「ぐっ…分かった。食べれば良いんだろう…」

 

ベルファストさんの高圧的で恐ろしい笑顔にエンタープライズさんは怯んだのか、諦めるようにフォークを手に取ってそのまま朝食を食べ続けた。

それを見たベルファストさんは、どこか満足そうに小さく笑った。まるで母親と子供のような雰囲気だ…

そんは微笑ましい光景を見ていると、不意に誰かがこちらに近づく足音が聞こえてきた。足音はどんどん音を大きくし、足を引きずるような音をしていた。

 

「ふわぁ…眠い…すっごく眠い…」

 

足と体をふらつかせ、眠そうな瞼と欠伸をしながらオロチさんがこちらに近付いてきた。

 

「本当に朝が弱いんだな…」

 

「蛇は夜から活発的になるんです〜」

 

そのまま僕たちの机に突っ伏すように倒れ込むと、そのまま動かずにここで寝てしまいそうな勢いだった。

 

「オロチ様、そのご様子だとお食事は済まされていない様子、寝る前に一度朝食をおとりになってはいかがでしょうか。」

 

「ん〜じゃあ食べる…ヨーグルトだけで良い…」

 

「なりません。せめて何か少しお食べになって下さい。」

 

「そんな事言われてもね〜…」

 

食欲がわかないのか、オロチさんは朝食をその程度で済ませようとしていのに対し、ベルファストさんはもう少しだけ何か食べろと折檻した。

口論の結果、オロチさんは軽めのサンドイッチとヨーグルトを頼み、それならと納得したベルファストさんはまたもや食事の準備に取り掛かった。

 

しかし…ベルファストさんは食べないのだろうか。先程から僕とエンタープライズさんとオロチさんの朝食の準備に取り掛かっているばかりで、自分はなんの食事もとっていないように見える。

 

「何だか申し訳ないですね…あんな風になんでもかんでも任せるのは。」

 

「別にメイドってそんなものでしょ?」

 

オロチさんの言う通り、確かにメイドは奉仕に尽くすといったイメージがあるが、ここまでされると逆に申し訳なさを感じるのは僕だけなのだろうか。

そう思うと、折角美味しい朝食の箸も止まってしまう。

たが、お礼と言っても今の僕に何が出来るのだろうか、記憶を失って、足も満足に動かせない僕は…出来ることがあるのだろうか…

 

「指揮官?どうしたんだ。」

 

「いや…僕に何かお礼とかそんな事出来ないかなと…」

 

つい弱気でエンタープライズさんに話してしまうと、エンタープライズさんは小さく笑った。

 

「相変わらず…そんな所は変わってないな…」

 

「…?」

 

変わってない…?昔の僕もこんな風な弱々しい感じだったのだろうか…だとしたら安心したような…何だか皆に申し訳ないような、入り交じった気持ちになってしまう。

 

「いや…何でもない。早くしないと朝食が冷めてしまうぞ。」

 

「あぁ本当だ…」

 

ただでさえエンタープライズさんのことを待っていて少し冷めてしまってるのに、これ以上橋を止めるとご飯が冷めてしまう。

和食だからか、どこか懐かしい感じを噛み締めながら、僕は朝食を食べ終えた。

 

「ふぅ…ご馳走様でした。」

 

「流石はベルファストだな…指揮官、この後時間はあるだろうか。」

 

満腹にはったお腹を擦りながら、僕はエンタープライズさんの問について考える。

この後何か用事がある訳でも無いので時間はあると言えばある。

 

「はい、ありますよ。」

 

「そうか…では、貴方と一緒に行きたい所があるんだ。」

 

僕が明日重桜に行くせいか、どこか思うようにエンタープライズさんは僕のことを見た。

別段断る理由も無いので、快く僕はエンタープライズさんについて行く事にする。…まぁ、ついて行く事は無理で、エンタープライズさんに車椅子を押してもらうんだけど…

 

「それじゃあ私達はこれでお別れね〜デート、楽しんでね〜」

 

「な…何を言っているんだ!…コホン、指揮官、それでは早速行こう!」

 

デートと言われて混乱したのか、エンタープライズさんは慌てて僕の車椅子を押した。

慌てて押したと言っても、しっかりと僕がバランスを崩さないように、丁寧に押してくれた。

 

「あら〜、初々しい反応。」

 

「本当でございますね。」

 

「貴方も一緒に行けば良いのに。」

 

「…いえ、私はメイドですから。」

 

「…相変わらずね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

草原が生い茂る坂道を登り続け、僕達はどんどん基地から離れて言った。

どうやらこの先に穴場スポット的な丘があるらしく、エンタープライズさんはそこに行こうとしていた。

坂道が続いているので、エンタープライズさんの負担がかかってしまうと気に病んでしまうが、エンタープライズさんがその事に察して、問題ないと言い続けていた。

 

ようやく頂上が見えはじめ、坂道が緩やかになり、いよいよ丘の上へと到着した。

目の前には蒼い海が太陽によって輝いて見え、絶景が一望出来た。

 

「わぁ…凄い!」

 

「昔たまたまここに訪れた時に見つけてな…そこから私しか知らない秘密の場所だと思っていたが、少しずつ知られてしまっているんだ。」

 

確かに、海の絶景と柔らかそうな草が見事に調和しているこの場所を独り占めしたいと言う気持ちは分からなくも無い。ピクニック等には最適だろう。

 

「あの…僕を地面に座らせてはくれませんか?」

 

「勿論。では、体を失礼するぞ。」

 

柔らかそうな草原に座りたい気持ちがうずうずと燻るように感じだ中、我慢出来ずにエンタープライズさんに頼み込んでしまった。

エンタープライズさんは快くそれを受け入れ、僕を優しく横抱きした。

…確かこういうのお姫様抱っこって言うんだっけ、本当は僕がやるべきなんだと思うけど、足が動かないのでこうするしか他なかった。

あとはエンタープライズさんが僕を地面に座らせるだけだが、何故かエンタープライズさんは固まってしまったように僕を抱え続けていた。

何度も呼びかけても、じっと僕の方を見ていた。

 

「…ずっとこうして貴方の事を支えていけば良いのに…」

 

「…エンタープライズさん?」

 

「こうして貴方を抱きとめて置けば、貴方をずっと守れるのに……済まない、少しどうかしていた見たいだ。ゆっくりと座らせるから、安心してくれ。」

 

ぶつぶつと何か言っていたような気がしたが、声が小さく、早口だったせいか上手く聞き取れなかった。

エンタープライズさんは我に返った後にゆっくりと僕を地面に座らせた。

 

柔らかい草原が下半身と腕を優しく包み込むような感触であり、思わず寝転がってしまいそうだ。だが、そうしてしまえば、足が動かない僕はエンタープライズさんの力なしでは上手く立ち上がらなくなってしまう。

寝転びたい気持ちを我慢して、僕はじっと座って海を眺めた。

 

「いい場所ですね。何だか懐かしい気持ちになります。」

 

「ここは貴方と私が最初に出会った場所でもあるんだ。」

 

「そうだったんですか…!」

 

どこか懐かしい気持ちになったのはそのせいだろうか、潮風が心地よく体を貫き、そのまま何かを思い出せかもしれないと思った僕は、目をゆっくりと閉じる。

…だめだ。全く思い出せない。まだ何か突っかかりと言うか、誰かが思い出すのを止めているかのような感じだった。

…もしかして、昔の僕が思い出すのを拒否しているのか?何でそんな事しているんだ…?

 

「指揮官…」

 

エンタープライズさんの声が聞こえ、考えを一旦中断して、エンタープライズさんの方に顔を向ける。

エンタープライズさんは僕の姿を忘れいないように目を焼き付けるように僕のことをじっと見つめていた。

思わず恥ずかしくて目を逸らそうとしたが、エンタープライズさんが右手を伸ばして僕の頬を添えた。

 

「指揮官…私はずっと待っている。貴方が記憶を取り戻し、またいつもの日常に戻るのを…待っている。」

 

僕では無く、昔の僕に向けたその言葉はどこか心が痛かった。僕自身の存在が否定されたような気は全然しない。何故だか分からないが、罪悪感が込み上げるように、心が針で刺されたような痛みに襲われた。

「…エンタープライズさん。絶対に僕は僕を思い出して見せますから…待っててくれませんか?」

 

「…あぁ。ずっと待っている…」

 

僕は添えられた手を掴み、約束の指切りの代わりに両手で優しくエンタープライズさんの手を握った。

エンタープライズさんだけじゃない、きっとこの基地にいる皆も僕の帰りを待っている筈だ。

その人達のためにも僕は記憶を取り戻そう。たとえ…忘れたいと願った僕自身から阻まれようとも…

決意が型どるように、風が一瞬強く吹き荒れ、僕は風の冷たさで気が引き締まった。

 

 

そして月日は流れ、僕は重桜へと帰る時がやって来た。

基地にいたKAN-SEN達は別れを惜しむようにしており、涙を流す人だって居た。

 

「指揮官!またすぐ会えますよね!?」

 

ジャベリンさんが僕の手を握ってそのまま離せないでいたが、そろそろ出発の時間だ。僕も別れは悲しいが、行かなければならないので仕方ない。

だが、これで永遠のお別れでは無い。

 

「大丈夫だよ。すぐ戻ってくるから。」

 

「お気をつけて…ご主人様。」

 

「ありがとう…ベルファスト。」

 

皆からのエールを貰った僕は、赤城さんに車椅子を押され、空母赤城に乗り込む。

 

「それじゃ、行きましょう優海。私達の故郷に…」

 

「故郷か…」

 

本来なら懐かしい気持ちで1杯になるところだろうが、僕にとっては道の領域に行くように不安が高まっていた。でも、そこが僕の故郷なら記憶を取り戻すきっかけも必ずあるはずだ。期待と希望を胸に抱き、僕はアズールレーンのKAN-SEN達と別れる。

船が初期加速に入り、海をかき分けて進んでいく。

甲板から見えるKAN-SEN達が全員手を振って最後まで見送っていた。

 

「指揮官!待っているからな!」

 

「はい!絶対に帰ってくるから!待ってて!」

 

物理的にだけではなく、僕は必ず記憶を取り戻してみせる。そして、本当の意味で帰ってみせる…KAN-SEN達の元に…!




ここまで読んで下さりありがとうございます。
この話で2部のプロローグが終わり、いよいよ第2部が本格的に始まります。
第2部の最初の舞台は重桜であり、数々の仲間や新たなる敵が続々と登場します。

2部の反応がどうかと心配していましたが、皆さんのご意見や評価によると、中々の高評価で安心しました…!
これからもよろしくお願い致します!
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