もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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家族の繋がり

張り詰める様な空気に、焼け焦げた車椅子の鼻を突くような匂い。だが、それほど気になる様な匂いでは無かった。

妙に頭が空っぽになったような清々しささえ感じる中!僕は何故か動ける両足で一歩ずつ前を歩く長い間車椅子で生活していたせいなのか、少し足がおぼつかなく、少しでも足から気を緩ませたら倒れてしまうほどだ。

それでも何とか歩き、同時に右腕を伸ばす。

同時に僕を守ってくれた2つの艤装の内、右側にいた艤装が前へと出る。

突き出した右手で指鉄砲を作り、それを男に向けて指先を向け、艤装も主砲と自身の口を開けて男に狙いを定める。

 

「なんで…なんで貴方がこんな酷い事をするんですか!」

 

遠目から見ても分かるその出で立ちから、僕は直ぐにあの時助けてもらった編笠の男の人だと分かった。

その人はくだらないと思っているように肩を落とした。

 

「それは当方と貴様が敵だからだ。」

 

「…っ!…行きます!」

 

手で銃を撃つように上に傾けると、一斉に片方の艤装は一斉射撃を行った。青く光るビームを戦闘に次々と実弾の砲撃が、雪崩のように男に襲いかかる。

 

「…はぁぁぁ!」

 

男は鞘に収めた刀を思い切り振り払い、残念で実弾を全て撃ち落とし、迫り来るビームを刀で受け流すように、刀の側面でビームの軌道を変えた。

ビームは男を避けるように軌道を変更させられると、雲を突き破ってそのまま消えてしまう。

 

「…そうか、やはり貴殿は…」

 

男は何か納得したように刀を鞘に収めるとそのまま後ろ歩きでこの場を立ち去ろうと、大きく飛び上がって後ろに下がった。

 

「逃げるつもりか!」

 

高雄さんの叫びと共に、余力のある重桜のKAN-SEN達はそのまま逃がさないように男に狙いを定めた。

だが、それは上空からのビームにより阻まれてしまう。上空のビームは男の人を囲むように照射し続けるとKAN-SEN達はそのビームを避けるように後退した。

 

「逃げる…か。この場合は逃げてやる…と言った方が良いのでは無いか?」

 

戦況はどう見ても向こう側が圧倒的に優勢…いや、完全に向こうの勝ちだ。

今ここであの人と戦っても正直いって勝ち目なんてない。敵はたった1人なのに、数人のKAN-SEN達が戦闘不能状態まで追い込まれ、向こうは傷一つ付いてない。

しかも向こうには上空にいる人だっている。本気で攻められたらこの重桜は間違いなく壊滅する。

にも関わらず、この場から撤退の意志を示した時には正直いってホッとしている。

でも、それが屈辱なのかそれに対して怒りを覚えているKAN-SEN達もいた。いやそれがほとんどだった。

 

「っ…」

 

劣等感が滲み出ていた声を押し殺し、KAN-SEN達は何も言えなかった。

完全な敗北を突きつけられたKAN-SEN達の戦意はもはやボロボロだった。

 

「貴様達を斬る価値は皆無だ。この刀は義を貫き、当方の障害を切裂き、悪を断罪する刀だ。貴様達は障害おろか、足をつまづかせる小石にも満たん。そのような者達にこの刀で斬る価値は微塵も無い!」

 

男の人はそのまま後ろに振り返り、立ち去ろうとしていた。KAN-SEN達も撤退させるのが懸命だと判断したのか、誰も後ろを向いたあの人を撃つ事は無かった。

 

「再度名乗ろう…テネリタス5代目当主、名は"ロドン・テネリタス"と申す。これは貴殿達への宣戦布告である。次に当方の元に現れたその時こそ、この刀に見合った力をつけると良い。」

 

ロドンさんが振り返り、突如として海の上に霧が生まれた。霧はロドンさんを隠すように立ち込めると、どんどん霧が濃くなり、ロドンさんの姿がその場で消えてしまった。

ロドンさんはいなくなったが、まだ上空に人がいる。

僕は上空にいる人を見つめたが、遠いせいかよく見えない…唯一分かるのは…禍々しい艤装を左右に装備している事だけだ。

 

「そう言う事か。また会おう…アズールレーン…そして…」

 

何やら空にいる人が呟いた様な様子を見せると、そのままその人はそのまま空へと飛びだって行った。戻ってくる気配が無い…2人ともこの場から撤退したようだ。

 

「…ロドンさん。」

 

戦闘が終わった静寂さと共に僕の中に虚しさが込み上げて来た。僕を助けてくれたロドンさんが敵だなんて思いたくも無かった。

あの時助けてくれたあの優しさは嘘だとは思えない。

でも、あんな険しい顔は…間違いなく僕達を敵と認識している目だった。

夕焼けで紅く輝く地平線の海を見つめ、ただ夕日にくれた海の上に立ち尽くしていた。

何故だろうか…だんだん視界が暗く狭まり、体が急に重くなった。 あまりの重さに足が耐えられなくなり、そのまま前のめりで倒れてしまう。

その時、塞がる視界の中で僕の体を支えるような感触がした。

最後の力を振り絞るように目を開けると、そこには天城母さんがいた。

 

「優海…!大丈夫ですか!?」

 

慌ただしい表示をした天城母さんと隣には赤城姉さんと加賀姉さんもいた。皆心配するような顔をしていたけど、謝ることも出来ずにそのまま僕の意識は無くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い暗いそこは、何も見えない所だった。どこでたっているかも分からず、どうやって立っているかも わからない。

 

ただそこには、風鈴か鈴のような、ガラスと金属が小さくぶつかり合う音が鳴り響いていた。 僕は縋るようにこの音がどこから出ているのか、暗闇の中を歩く。

本当に進んでいるのかと疑う程暗いこの場所は一体何処なんだろうか。けれども音はだんだん大きくなっており、音には近づいていた。

しかししばらくすると、音は聞こえなくなってしまった。

 

一気に不安が押し寄せ来て、どうるすことも出来ずに慌ててしまう。そんな時だった、目の前から何か光るものが揺らめきながら近づいてきた。人魂…では無い。何故ならその光は2枚の羽のようなものがあったからだ。

あれは…蝶だろうか?蝶は僕に近づくや否や僕の隣を通り過ぎた。今度はその蝶を追いかけるように歩くと、暗闇から抜け、見覚えのある光景が見えた。

ここは…僕の家?だけど天城母さんも赤城姉さんもいる様子は無い。僕は廊下を歩き、誰かいないかと探す。

 

「〜〜♪」

 

誰かの鼻歌が聞こえた。声的に小さい男の子だ。

鼻歌を頼りに僕は家の中を歩いていく。だんだん鼻歌かま大きくなり、1番大きく聞こえる部屋にたどり着き、少し躊躇ってから扉を開けた。

扉を開けた先は畳床で広い部屋であり、その中央で男の子が寝そべって何かをしていた。

 

「ん?誰?」

 

男の子は僕の方に振り向くと、僕はその雰囲気に驚愕した。なんだろうか、どこか僕と同じ雰囲気を持っており、驚く僕を男の子は不思議そうに見ていた。

 

「お兄ちゃん…誰?」

「え…えーと、君こそ誰かな?ここ僕の家なんだけど…」

 

「?何言ってるの?ここは天城お姉ちゃんの家だよ?」

 

「え…?いやでも…」

 

部屋の配置と見慣れた光景からしてここは間違いなく僕と天城母さんの家だ。でも、この子は今『天城お姉ちゃんの家』だと言った。どういう事だ…?

 

「もしかしてお兄ちゃんって…ドロボー?」

 

「い…いやいや!そんなんじゃないよ!」

 

「ふ〜ん?じゃあなんでここに来たの?」

 

なんでと言われても…蝶を追いかけたらここに来たなんて言えないし…しかもどうやらここは僕の家であって違うらしい。

ここでこの子に信頼してもらうには…そうだ、確かこの子は天城お姉ちゃんって言っていた。だったらあの人たちの事を言えば分かってくれるかな?

 

「えっと…赤城さんと加賀さんから君の様子を見てきてって言われたから来たんだ。」

 

「お姉ちゃん達から?」

 

知っている人の名前を耳にしたお陰か、この子から伝わってきた疑いの目は消えた。

どうやら安心してくれたのかな。

 

「ところで…今何してたのかな?」

 

「あのね…僕、天城お姉ちゃん達にお礼したいなって思って…絵を描いていたの!」

 

「へぇ〜どんな絵かな?」

 

「えっとね…これ!」

 

男の子は意気揚々に描いていた絵を僕に見せてくれた。

絵が上手い人からすると、下手な絵だと思うような絵だけど、気持ちがこもっているのが僕でも分かる。

クレヨンで一生懸命描いた絵の内容は、天城母さん達の絵だ。…でもあと一人は誰だろうか?青い狐のお面に灰色の髪…誰だ?

下の方には"いつもありがとう"と、大きな文字が描かれてあった。

あとの3人はやはり僕の知っている姉と知って驚いたが、それ以前に少し不安そうな男の子の顔を見てしまった。

恐らく、本当にこれで喜んでくれるのか怖いのだろう。でも、きっと喜んでくれる。この絵から伝わって来るこの感謝の気持ちは…必ず届くはずだから。

 

「うん…きっと喜んでくれるよ。」

 

「ほんと!?えへへ…喜んでくれるかな!」

 

嬉しさを抑えるように、男の子は絵が破れないように優しく抱いた。

 

「ただいま〜」

 

「あ、赤城お姉ちゃんだ!」

 

男の子は赤城姉さんの声を聞いた途端に部屋から出ていってしまった。それを追いかけるように僕も部屋から出ていくと、僕はまたあの鈴の音と共に意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん。あれ…?」

 

僕なんでベットで寝ているんだ…?さっきまで僕はあの男の子と部屋にいたはずなのに。

服がいつの間にか黒い和服のような就寝服になっており、いつも着ている指揮官服は部屋のハンガーにかけられていた。

 

「夢だったのかな…」

 

でも夢というにはなんだか…まぁ、夢だから僕の足は動けて普通に歩けてたと思うんだけど。

足と言ったせいか、僕の意識は足へと向いた。

 

「…ん?足がなんか違和感が…」

 

布団をはぎ、試しに右足を少しあげてみようとすると、問題なく足は動いた。足が動いて驚いたが、それと同時に嬉しさも感じた。ようやく足がまともに動き、自分の足で歩ける事に、僕は目を見開き、口を開けて喜んだ。

 

「…やったぁ!」

 

年端も行かない子供のように喜び、内に秘める嬉しさを動力源とするかのように、僕はベットの上で足をばたつかせた。僕の声が聞こえたせいか、部屋の扉が勢いよく開けられ、その先には赤城姉さんが忙しない態度で僕に近づいた。

 

「優海!もう起きて大丈夫なの!?」

 

赤城姉さんが目もくれずに僕の頬に優しく手を添え、僕に異常が無いか探していた。今のところ特に変に思う所は無いし、むしろ元気だ。

 

「僕は元気だよ。それに見てよ、僕足が動かせるようになったんだよ。」

 

驚いた赤城姉さんを信用させるように、僕は足を小さく上下に動かした。もしかしたら歩く事も出来るのではないかと考えた僕は、赤城姉さんの手をどけてベットから降りようとした。

地面に足をつき、いよいよ立ち上がろうとしたその時、足に力が入らず、そのまま倒れそうになった所を赤城姉さんが危なげに支えてくれた。

 

「おとと…あれ?どうして…」

 

「足が動いても、貴方はしばらくの間車椅子生活だったのよ。多分、筋肉が衰えているのよ。」

 

あぁ、そういう事か…そう言えば足を使わないでいたからまだ足に力が入らないのか。折角歩けると思ったのに情けない…。

赤城姉さんは僕をベットに座り直すと、落ち込んでいた僕の頭を撫でた。

 

「無理しなくて良いわよ。ゆっくり歩けるようになればいいから…」

 

「…うん。」

 

記憶が無くても、心が覚えているのか少し懐かしい感じがした。前にもこんな事があったのだろうか。頭から伝わる人肌の感触に集中するように僕は目を瞑った。

 

「で〜も〜ね…」

 

急に赤城姉さんが頭から手を離し、またも頬に手を添え…るのでは無く、頬をつまむようにしていた。

 

「どうしてあんな無茶したの!」

 

「いたたたたた!ご…ごめんなひゃ〜い!」

 

あんな無茶と言うのは、僕が戦闘に参加した時だろう。

そのせいで敵に狙われ、一歩間違えたら僕は死んでしまったのだから。

 

「全く貴方は…!」

 

両手で頬を引っ張られ、赤城姉さんの指をつまむ力が強くなった。あまりの痛さに涙目になりながらも、手足をばたつかせ、何とか痛覚から意識を逸らした。

赤城姉さんは気が済んだのか、僕の頬から手を離した。

頬が伸びきって居ないか心配するように、痛む頬を両手で癒すように僕は頬をさすった。

ヒリヒリとちりつくような頬の痛みは、こびりつくようにまだ残っていた。

 

「はいはい、そこまでですよ赤城。」

宥めるように赤城姉さんに注意したその声…天城母さんだった。その後ろには加賀姉さんとあと一人…誰だろうか?灰色の髪に青いキツネのお面…なんだか加賀姉さんに似ている人だった。

誰だか分からずにいた僕はその人に首を傾げると、彼女は悲しそうな顔をして顔を背けた。…あの人も僕の事を知っている人なのだろうか…

 

「…赤城、私達はお夕飯を作りましょう。加賀、土佐、優海のことはお任せします。」

 

土佐…?加賀姉さんの隣にいる人がそうだろうか。

 

「しかし天城さん…」

 

「貴方達にも積もる話もあるでしょう。赤城、行きますよ。」

 

「…分かりましたわ。加賀、優海の事を任せたわよ。」

 

赤城姉さんと天城母さんはそのまま部屋から出ていき、部屋には僕と加賀姉さん、そして土佐さんが残った。

すると加賀姉さんは僕の前に近づき、僕の額部分で人差し指に力を入れ、僕にデコピンしてきた。

 

「あいたっ…」

 

額に痛みが走り、思わず額に両手を添えた。

 

「私からはこれで終わりだ。全くお前と来たら…」

 

どうやらさっきのデコピンはお仕置なのだろう。呆れたようにため息を吐いた加賀姉さんは土佐さんに目を向けていた。

 

「土佐、お前も何かしてやれ。」

 

「し、しかし姉上…優海は私の事を…」

 

姉上?加賀姉さんの事を言っているのだろうか。という事は土佐さんは加賀姉さんの姉妹艦という事になる。

恐る恐ると土佐さんは僕に近づき、そのまま立ち止まった。

よくよく見ると目元辺りが加賀姉さんに似ていた。

良いとは言えない目付きに見つめられている僕の体は震え、少しの恐怖を持った。

怯えている表情を読み取った土佐さんの顔が少し悲しんでいる様にも見えた。

 

「…やはり怖いか?」

 

「え?」

 

土佐さんは1歩後ろに下がり、目を髪で隠すように顔を俯かせた。

 

「お前は昔から私の事を怖がっていたから無理はない。ましては私の事を忘れているとなると…今のお前にとって私は…」

 

それ以上は言いたく無いのだろうか、土佐さんは口を閉じてしまった。そしてまた一歩後ろに下がり、僕から離れていった。

確かに目付きが良いとは言えなくて、すこし怖かったけど…

 

「怖くない!」

 

土佐さんから目を離さないように目を開け、じっと土佐さんを僕は見つめた。土佐さんは顔を上げ、信じられないように僕を見た。

ここで目を背けたらまた悲しませてしまう。絶対に目を離さない。

 

「…ふっ、全く…変わって無いな。」

 

土佐さんは再び僕の前に立ち、ゆっくりと僕の頭に手を伸ばした。頭を叩くことはせずに、優しく僕の頭に手を置き、頭を撫でた。

 

「…ありがとう。」

 

土佐さんは笑ってお礼を言った。誰かの笑顔を見ると、それだけで嬉しくなってしまうせいか、思わず僕もつられて笑う。

 

「良かった。土佐さんが笑ってくれて。」

 

「…むぅ…」

 

土佐さんは頭を撫でる手を止め、なんだか不機嫌にしていた。何か悪い事言ったかな…?すると土佐さんは両手で僕の両肩を抱き、顔を近づかせた。

 

「うぇ!?と…土佐…さん?」

 

「……しい。」

 

「?」

 

よく聞こえなかったので、もう一度聞こうと耳をすませると、土佐さんは顔を真っ赤にして俯きながらももう一度言ってくれた。

 

「む…昔みたいに…土佐お姉ちゃん…とは言わない姉さんと…その、言って欲しい…お前とは過ごした時間は短いが、お前とは家族でいたい…」

 

土佐さんはさらに顔を赤くさせ、その顔を見せないように両手で顔を見えないように覆った。

そんな事をどうしてそんなに恥ずかしがるのだろうか…?

 

「そっか…うん、ごめんね土佐姉さん。」

 

「やはり懐かしいな…その呼び方は…」

 

「そうだな。その呼び方をされた最初の夜、お前は嬉しくて眠れなかったからな。」

 

「姉上!!」

 

土佐姉さんは顔をさらに赤くさせながら加賀姉さんに近づいたが、自分の姉だからか中々強く出ずにいた。

それを見た加賀姉さんは面白可笑しそうに小さく笑っていた。

 

「まぁ、ひねくれたお前からそんな事言うとは…中々面白いものを見させてもらった。」

 

「姉上ぇ!」

 

その時、2人の後ろから物凄く怖い圧を感じ取れた。2人もその圧を感じ、素早く後ろを振り返ると、そこには笑顔なのに怖い天城母さんがいた。

天城母さんは笑顔で2人の頭をゴツンという擬音が見える程の強烈な一撃を2人の頭に叩きつけた。

 

「ひゃう!」

 

「うぐっ!」

 

「うるさいですよ。そんなに騒いでどうしたのですか。」

 

痛みで悶絶している2人は何も喋る事が出来ず、僕は今までの事を話した。

 

「全く…それはそうと、ご飯にしますよ。」

 

「やった!今日のご飯は何!?」

 

丁度お腹が空いていたので思わず喜ぶ。献立の事を聞くと、天城母さんは懐かしむように笑って話してくれた。

 

「今日は冷えるから鍋にしました。今日は私達が揃ったのでちょっと奮発しました。」

 

今日は冷えるから鍋にしました。貴方が来たから少し奮発しちゃいましたよ。さぁ、食べましょう。

 

その言葉にどこか懐かしさを感じた。気のせいかもしれないけど、天城母さんの声が二重に聞こえたような気がした。

足が思うように力が入れないので、僕は加賀姉さんたちの力を借りて、居間へと行った。

鍋の匂いがお腹を刺激し、また僕を懐かしい気持ちにさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「親子水入らず…とはこの事ね。流石に邪魔は出来ないわね〜」

 

屋外の物陰から優海の姿を見ていたオロチは家族との間に入る事はせず、見守るように窓から優海の姿を見ていた。子供のような純粋無垢の優海の姿を微笑ましくも思えたオロチだが、オロチはそこに引っ掛かりを感じていた。

 

「でもあの子…純粋すぎるわね。まるで()()()()()()()()()()()()()()をしてる……」

 

これまで優海の反応を見ていたが、反応が幼すぎる所にオロチは気になっていた。

 

「それにさっきの戦闘…確かコネクターの艤装を使っていた…まさかあの子…」

 

これまでの反応とコネクターの艤装から、オロチは1つの考えに達した。しかし、彼女の中に確信は無かった。今ここで誰かにこの事を伝えても、返って混乱するだろ

うと考えたオロチは、考えを自分の胸にしまい込んだ。

 

「へっくち!うぅ…最近冷えるわね…鎮守府に行って中に入ろうかしら…」

 

オロチは摩擦で体を温めるように腕を擦りながら、そそくさと重桜の鎮守府へと向かった。

 

「家族か…私も優海の事ずっと見てきたんだけどなぁ…」

 

オロチは自分の胸に感じたことがない痛みと苦しさを抱きながら、走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜ん…あっつ!はふはふ…」

 

鍋で煮込まれた豆腐の熱さに悶えながらも何とか吐き出すことはせずに僕は飲み込んだ。

 

「あぁ、もうちょっと落ち着いて食べなさい。」

 

赤城姉さんがしつけるように心配し、僕の背中をさすった。

 

「全く…そうやって優海の事を甘やかすから軟弱者になるんだ。」

 

土佐姉さんは僕の事を呆れたように喋りながら、鍋の蟹を頬張った。

 

「ろくに帰ってこなかった癖によく言うわね…潰すわよ?」

 

「良いだろう。腰巾着の分際で私に勝てると思うなよ…?」

 

赤城姉さんと土佐さん姉さんが立ち上がろうとする勢いになっており、二人の間に火花が散っていた。それを止めようとしたが、僕より先に天城母さんが2人の頭にゲンコツをお見舞いした。

 

「いた!」

 

「あふっ!」

 

「全く…折角皆で食事をしているのに…怒りますよ?」

 

もう怒っているって言ったら怒られるかな…?そう思って僕はそのまま黙ってしらたきを噛み続けていた。独特な歯応えを感じながら、天城母さんの圧から逃げようと気を逸らさせていた。

殴られた赤城姉さんと土佐姉さんは涙目になりながらも食事を続けた。

 

「ほら、優海も沢山食べてください。蟹もまだまだありますからね。」

 

僕の隣にいた天城母さんは、僕の取り皿を取って沢山の具材を入れてくれた。

 

「…天城さんも優海にかなり甘いほうだと思うがな。」

 

「なにか言いましたか加賀?」

 

「いえ…何も…」

 

何故か加賀さんが天城母さんから目を逸らし、寒い時期だというのに汗を沢山流していた。

天城母さんは小さく笑い、僕達は懐かしさを感じながら心も温まるような食事を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お邪魔しま〜す…これ完全に不法侵入だけど、バレなければ良いわよね?」

 

鎮守府に勝手に入り、あまつさえ窓から侵入したのなれば完全にそれは不法侵入だが、自分に言い聞かせるようにオロチは鎮守府の中に入った。

寒さを凌げる場所ならどこでも良いと判断したオロチは適当な部屋で夜を過ごそうとすると、1つの光が盛れている部屋を見つけた。

好奇心で部屋の中を隙間から覗くと、そこには長門、陸奥、そして江風がいた。

 

「何を話してるのかしら…?」

 

3人が輪になっている事から、何かを話してる事は容易に判断できた。耳に神経を集中させ、聞き逃さないように長門達の話を聞いた。

 

「神子様…本当にやるおつもりなのですか?」

 

「あの者達…テネリタスの進行により、重桜は傷つき、信仰を失い初めている…民も不安がっておる。」

 

「しかし…優海が戻ってきたのですよ!」

 

「関係ない…関係ないのだ…」

 

何やら楽しい雰囲気では無く、何かをやろうとしているのは間違いない。そして、それは長門を犠牲にしてやる事もオロチは把握した。

 

「本当に良いの?お姉ちゃん、優海君が戻ってきて嬉しそうだったのに!本当に良いの!?そうしたらお姉ちゃんが…」

 

「…余の考えは変わらん。これも長の務めだ…」

 

長門は立ち上がり、部屋から出ようとしていた。オロチは咄嗟にその場から離れ、長門達に見つからないように物陰に隠れた。

 

「む、誰かいるのか?」

 

流石KAN-SENと言ったところなのか、長門は誰かの気を感じていた。オロチは心臓を跳ね上がるような驚きを殺し、完全に気配を消してやり過ごそうとする。

 

「…気のせいか。」

 

長門はそのまま自分の部屋へと戻って行った。安堵の息を漏らそうとしたが、部屋にはまだ陸奥と江風がいる為、オロチはゆっくりとこの場から離れた。

 

「あ…危なかったわね…それにしても何をやる気なのかしら。長門の身を犠牲にする感じはしたけど…」

 

しかし情報が少なすぎる為、これ以上の判断は出来ないと考えたオロチは、考えを止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_某海域にて

 

息を吐くと白い息が出るほど寒い中、オロチの甲板で一人瞑想している者がいた。寒さをものともせずに、じっと精神を統一していたその者は、ロドンだった。

 

「…………」

 

「おいおい、こんな寒いのに外で瞑想かよ。親父。」

 

呆れたようにロドンの隣に来たのは、6代目当主であるセイド・テネリタスだった。

血縁的にロドンとセイドは親子関係である為、セイドはロドンの事を父と呼ぶ。

 

「…セイドか。何の用だ。」

 

「別に、作戦はどうだったとか気になっただけだよ。」

 

セイドはロドンの瞑想を邪魔しないように、隣で寝転がった。

戦闘の事を思い出したロドンは、変に不機嫌になってしまい、自分の未熟さを恨んだ。

 

「…呆気なかった。重桜のKAN-SENがどんな者だと期待はしていたが…拍子抜けであった。」

 

「良いじゃねえかよ。楽に勝てるならそれでいいだろ。」

 

「当方は強さを求めたいのだ。誰にも折れず、絶対的な力を……弱き者と戦っても高みは目指せられぬ。」

 

ロドンは刀を抜き、自分の意志を示すかのように刀を構えた。

 

「…やっぱ悔やんでるのか。母さんの事…」

 

「……当方も未熟だったという事だ。」

 

ロドンは自分の過去を思い出してしまった。自分が強ければ、愛するものを助けられる。そう思っていた過去の自分が情けなかった。

傍にいてやれず、挙句の果てにはその命を守ってやれなかった自分を…殺したい程に恨んでいた。

 

「…もう良いだろう、次の作戦もあるから当方は寝る。お前も早く寝ろ。」

 

普通の父親のように、セイドの頭に手を置いたロドンは、そのままオロチの内部へと入っていった。

子供扱いされたセイドは、プライドで不機嫌になってしまうが、懐かしい行動に嬉しさも感じていた。

 

「…たく不器用だよな。」

 

セイドはポケットからタバコを取り出し、ライターで火を起こした後、タバコに火をつけた。

煙を吸い、味を堪能し、煙を吐く。その姿は英雄らしくはないが、彼はそれを気にしなかった。

 

「ふぅ……でもな、あんたのそういう所に憧れもしたんだぜ。」

 

星空は無いが、変わりに三日月が海の水面で映る中、セイドは静かにタバコを吸った。

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