もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

70 / 159
こんにちは白だし茶漬けです。
今更ですが小説のタグに『独自設定』というタグを追加しました。
今回はゲームのイベント『墨染まりし鋼の桜』に出てきた神木『重桜』が出てきますが、その際に独自の解釈と設定を付け加えましたのでご了承ください……

少し話がそれますが、アニメ『びそくぜんしんっ!』をネット配信で視聴しました。(こっちの地域やと放送しないんだもん……)
いやあ〜いい雰囲気でしたね。
いつかはあんな風なほのぼの雰囲気のシーンも書きたいな……


交差する思い

海がまるで、2人の人間の事を恐れているかのように波もたてずに佇んでいた。

空気がピリピリと肌を刺激し、戦闘の意識を離さずにいた。

いつ戦闘が始まってもおかしくない状態をマーレが止めるように構えを解いた。これには流石の優海も戸惑いが隠せずにいたが、武器を握る手の力は緩めずにいた。

 

「なんのつもりですか……? 」

 

「ここで戦ってもあまり意味は無いからな俺は()()()()に移行するさ 」

 

そう言ってマーレは指を鳴らすと、突然背後に黒色の靄がかかったワープゲートを出現させ、後ろ歩きで優海を見ながらその中へと入る。

 

「どこに行くつもりですか! 」

 

「俺の目的は『ワタツミ』だ。もう分かるだろ?……そこで待っているぞ 」

 

そう言い残し、マーレはワープゲートと共に消えていった。マーレの目的はあくまでも『ワタツミ』を手に入れる事、つまり行先はもう優海には分かっていた。

意識下の状態であっても、優海は記憶を失っていた頃の記憶は覚えており、今はどういう状況なのか理解していた。

 

「……重桜、そこに行ったのか 」

 

『ワタツミ』もそこにあり、優海は重桜に封印された長門を起こしに今ここにいる。だが、今はマーレによって負傷した綾波とオロチの安否確認が優先した優海は、膝をついていた綾波に寄り添った。

 

「綾波、大丈夫か? 」

 

「問題無いのです……っ 」

 

綾波は受けた傷を癒すように、怪我をした所に手を当てたが、そんなもので治る訳もなく、綾波は痛みで声を殺してしまう。

 

「やっぱり大丈夫じゃないな。とりあえず、あそこの小島に行こう、オロチの安否も気になるしね。ちょっと体を持ち上げるよ……っと 」

 

優海は綾波の傷が開かないように綾波を優しく、ゆっくりとお姫様抱っこをした。

綾波に少しの羞恥心が込み上げ、頬を赤く染めた。

 

「綾波?ちょっと顔が赤いけど……どうしたの? 」

 

「な……何でも無いのです!」

 

「そ、そう……」

 

綾波は羞恥心の正体に気づきながらも、知らないフリをしながら素直に優海に抱かれ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_現時刻 重桜海域

 

「ふむ、どうやらこれで最後らしいな 」

 

涼しい顔でロドンは最後のセイレーン艦を破壊し、この海域にいたセイレーンはロドンと重桜のKAN-SENによって全滅した。

と言っても、敵戦力の7割程ロドン単体で倒し、KAN-SEN達はロドンの驚異的な強さに圧倒されていた。

 

「なんて人なの……あれ本当に人間なの……? 」

 

息を切らしながら呟いた翔鶴の一言にロドンは反応し、訂正を行った。

 

「ふむ、それは違う。当方達はどちらかと言えば貴様達と同じ存在だ 」

 

「どういう事だ?お前達はKAN-SENとでもいうのか? 」

 

三笠のいう事は最もだった。第一、KAN-SENとは史実に存在した軍艦のデータを元に、メンタルキューブを介して産まれてくる存在だ。

ロドン達テネリタスはブラックキューブによって生み出され、その点に関してはKAN-SENと同じだと言えるだろうが、ロドンに至っては艤装らしきものは無かった。

 

「そうだ、当方の艤装は……この鞘だ 」

 

「鞘が……艤装? 」

 

「驚くのも致し方ない、当方が少々特殊なだけだ。気にしないでもらいたい 」

 

KAN-SEN達は鞘の方に目を向けると、確かに普通の鞘とは少し違っていた。鞘は鉄製の機械仕掛けであり、所々に赤いラインが浮かび上がっていた。

 

「さて、では邪魔者がいなくなった為、戦闘を続けるとしよう…… 」

 

「っ……! 」

 

ロドンが刀に手を置いたのと同時に、KAN-SEN達も再度戦闘態勢に入る。しかし、セイレーンの撃退でKAN-SEN達はかなり消耗しており、それに対してロドンは息のひとつも乱れていなかった。

この状況で勝つのは明らかに不可能に近い……いや、不可能であった。誰しもがそう思った時、赤城は覚悟を決めるようにある物を手に取った。

 

「赤城、何をしているのですか? 」

 

赤城の行動に不審と思う天城は赤城に問いかけるが、赤城はその問いかけに無視するように顔を背けた。

 

「天城姉様……この状況を抜け出す事が出来るのとすれば、これしかありません…… 」

 

赤城が取り出したのは、黒い正方形の形をした物、どこかメンタルキューブと似ているものでもあったが、違う。それはまるで、オロチ完成の為に使われた『ブラックキューブ』であった。

 

「姉様、それは……!」

 

何か事情を知っている加賀は赤城を止めようとしたが、赤城は加賀を睨みつけ、加賀を有無を言わさず黙らせた。

「もうこれしか方法が無いのよ……!」

 

赤城が黒いメンタルキューブを使おうとしたその時、まるで時間が飛んだかのようにいきなり赤城の目の前にロドンが出現した。

先程いた場所にロドンはおらず、いつの間にか赤城の前にロドンがいたのだ。

 

「なっ……えっ? 」

 

赤城は全く反応出来ず、ロドンに黒いメンタルキューブをあっさり奪われてしまう。またもロドンは時間を飛ばしたかのように赤城の前から姿を消し、先程いた場所に戻った。その右手には、赤城が持っていた黒いメンタルキューブが握られていた。

 

「今……何したの?まるで時間が飛んだかのように移動して……え? 」

 

あまりの事実にKAN-SEN達は混乱し、戦闘に対する意識が薄れつつあった。

 

「時間が飛んだ……などと言っているが、当方にそんな芸当は出来ぬ。ただ赤城の元に近づき、これを取った後ここに戻っただけだ 」

 

どうやら時間は飛んでおらず、ロドンの身体能力のみの現象だったらしいが、それを聞いたKAN-SEN達はさらにロドンの力に恐怖した。

あの動きがもし制限なく動けたとしたら、間違いなく攻撃は当たらず、ロドンの攻撃に対して防御は困難だろう。

もはや万事休すと思われたが、ロドンは構えを解き、まるでこれ以上戦う意思は無いと見られる様子だった。

 

「当方の目的は達成した。これにて失礼させてもらうぞ 」

 

「何……? 」

 

KAN-SEN達にとっては願ってもいない状況だが、あまりの飄々とした行動に困惑するばかりであった。

 

「当方の目的はこの黒箱だ。貴殿らを追い込み、誰かが使うであろうこれを奪う事が本来の目的だ。貴殿らに最初から眼中には無い 」

 

屈辱、KAN-SEN達は全員体の内側からそう感じていた。最初から自分達など赤子の手をひねるよりも簡単に倒せると言っているようにも思えたロドンの言葉に、怒る事も出来ず、むしろ受け入れるようにKAN-SEN達は引き下がっていた。

もはやどちらも戦う意思は無く、ロドンは背後に黒いワープゲートを出現させた。

余裕があるようにロドンはKAN-SEN達に背を向けていた。

 

「強くなれ、さもなくば大切な物を守れず、後悔するのは自分達だ 」

 

そう言い残し、ロドンはこの場を去ってしまった。セイレーンを撃退し、ロドンの威圧から解放されたおかげか、KAN-SEN達は重りが取れたかのような開放感を得たのと同時に、ある者に対しての不信感を得た。

 

「赤城……あの黒箱の事、説明してもらいますからね……」

 

「はい……天城姉様 」

 

そう、赤城が持っていた黒箱の事だ。性質的に同等かは定かではないが、黒箱はオロチ機動の為に使われ、今はマーレによって殆ど使われ、1つは優海の中にある筈だ。にもかかわらずに赤城が黒箱を所持していた。

明らかにこれはおかしかったが、今の状況ではそれを言及する暇さえ無かった。

 

「ですが、まずは優海を追いかけましょう。今ならまだ間に合う筈です 」

 

天城の指示の基、KAN-SEN達は前進した。ロドンが最後に放った言葉に引っかかりを覚えながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし……一応の応急処置はこれぐらいかな。母さんの過保護さに救われたな。 」

 

出撃前に待たされた応急処置セットを母さんから無理やり渡されたのが幸運だった。

綾波の外傷は殆ど無く、布で傷口を塞ぐ程度の応急処置でも問題ない程だった。

あまり考えられないが、マーレさんは手加減をしていたのだろうか……?そんな事する理由も、する人とは考えにくいけど……

謎は深まるばかりであった。

 

「面目無いです……」

 

「いやいや、良いよ。駆けつけてくれて嬉しいよ。さて、次はオロチさんをと…… 」

 

世辞も何も無い本心なのだが、綾波はどこか納得いかない顔をしていた。それはそうだ、駆けつけたのにも関わらず、マーレさんに対して何も出来なかった事実が、自分の無力さを浮き彫りさせているのだから、誰だって落ち込むはずだ。

 

だが、俺にはそれを慰める言葉も行動も思いつかず、逃げるようにただオロチさんの手当に専念した。

オロチさんの傷はかなり深く、手持ちの応急処置用具では全て使ってもその場しのぎが関の山だ。綾波が来たとなれば、他の人達もいずれここに来るはずだ。

その時に戻って手当をさせよう。とにかく、手持ちの用具を全て使い、何とか止血は済ませた。意識はまだ無いのが心配だが……

 

「あの、綾波に手伝える事は…… 」

 

手持ち無沙汰でいられないのか、綾波が手伝いを申し出たのだが、残念ながら処置はもう済ませてしまった。

綾波もそれを見て察したのか、悲しそうな顔をしてしまった。

 

「本当に……情けないのです。もっと綾波が強ければ……! 」

 

ついに綾波は涙を流し、自分の弱さを責め始めた。言葉をかけようにも、どうすれば良いのかも分からず、考えに考えた結果、綾波の頭を優しく撫でた。

 

「……ほへ? 」

 

綾波はキョトンと頭に?マークが見えるような顔をしていたが、泣き止んだ。

 

「昔そんな風に泣いていた時、母さんや姉さん達にこうされたから…… 」

 

昔、俺が大泣きしていた時にはいつも母さんや姉さんに頭を撫でられていたっけ……って、それが他の人にも通用する訳無いだろう!

自分でも阿呆な行動だと思い始め、咄嗟に綾波の頭から手を離そうとしたその時だった。

 

「悪い気はしないです…… 」

 

「そ、そう……? 」

 

このまま撫で続けても良いのか……?本人からすれば悪い気はしていないらしいので、このまま頭を撫で続け、綾波はようやく泣き止んでくれた。泣いたせいで目頭が赤くなっており、頬も涙の跡が残っている。

……こんな子が戦っていると思うとなんだか申し訳ない気持ちになってしまう。

 

勿論KAN-SENは戦うために生まれた兵器だって事は分かっている。だけどそれだけじゃない、人間と同じように生活してるのを見ると、兵器である事を忘れてしまいそうになり、本当は人間なんじゃないのかと思ってしまう。

 

「……手が止まっているです 」

 

「あ、あぁ……ごめん 」

 

考え事をしたせいか撫でている手を止めてしまい、何故か綾波を怒らせてしまった。

 

というより何故俺は怒られたのだろうか……女心というのはやはり複雑だ。

 

「あの〜重症人の前でイチャイチャしないで貰えない……?こっちは死にそうな思いなんだけど…… 」

 

怒っているがかすれ声で圧がない声が背後から聞こえ、咄嗟に振り返ると、オロチさんが苦しそうに体を震えさせていた。

 

「おおびっくりした……!意識を取り戻したんですね 」

 

「まぁね、あいたたた……でもあの子、どうやら手加減してたようね 」

 

「やっぱり…… 」

 

今回は……というか()()()と言うべきなのだろうか、マーレさんは基本的に何故か手加減をしているように思えた。さっきの戦闘も、その気になれば一瞬で俺達を全滅出来たと思うし、オロチさんも綾波も今もこうして無事でいる。

それに今までの戦闘だって、マーレさんはKAN-SEN達に対しては致命傷を負わせていない。

何か理由があるのだろうか……。

 

「ところで……貴方、優海よね? 」

 

「え?そうですけど……」

 

「じゃあ、記憶を失っていた今までの優海って……コネクター? 」

 

「……はい 」

 

オロチさんはやっぱりと言うような納得した顔で頷き、綾波に関しては疑問に思っている顔をしていた。

 

「あの……話が見えないのです…… 」

 

「結論から言えば、記憶を失っていた俺は、俺じゃなくて、セイレーンのコネクターだったんだ。その時の俺は意識下でずっと引きこもっていたよ 」

 

「そりゃ記憶もない訳よ。なんだってその時の貴方は優海じゃないものね 」

 

そう、いわばあの時生きていたのはコネクターであり、あの場で初めて『心』を持ったので、ほぼ産まれたての赤ん坊のような状態だった。

それはそうだ、知識はあっても、経験がない状態なのだから、初めて見た世界はどれも新鮮だったはずだ。

 

記憶に関してもそうだ。俺とコネクターは記憶を共有出来ない為、()()()()()()()()()()()()()()()()

周りは記憶喪失だと言ったが、実際その場にいた俺はコネクターだから思い出なんて無いし、ある訳が無いのだ。

 

「あの、なら何故指揮官としての記録や話はコネクターは知れなかったのですか? 」

 

「……それは俺のせい。何かの拍子でコネクターがコネクター自身って気づき、俺の事を起こすのが嫌だったから。だから、見れないようにしたり聞けないようにしてた 」

 

まぁでも、マーレさんのせいでアイツは艤装を出してしまい、ほんの少し自分自身の存在に気づき初め、アイツは俺の事を……こうして呼び覚ました。

そのせいで……アイツはもういない。アイツだってもっと世界の事見てみたかっただろうに。

 

無性に無力さが情けなく思い、思わず砂浜の砂を一握り掴んでしまう。悔しさなのか、それとも後悔、あるいはどっちても言えるべき感情を押し殺すように砂を握りつぶすようにしていた。

 

「そういえば……コネクターは?まだ貴方の中いるの? 」

 

「……コネクターはもういません。もう2人で存在する事に限界が来てたらしいので……」

俺の中であいつの存在は完全に消え、もう俺はコネクターの艤装とほとんどの力は使えない。

だが、アイツから受け取った『想い』はまだ残っている。だから俺は、あいつの分までしっかり生きねばならない。

それも含めて、俺が今したい事なのだから。

 

「……俺、そろそろ行くよ 」

 

「なら綾波も…… 」

 

「綾波はオロチさんを頼む。この重症なのに、放っておく気か? 」

 

流石の綾波も重症人を放っておく訳には行かず、なんの反論もなくそのまま食い下がってくれた。

少しいじわるな気もするが、こう言わないと恐らくついて行こうとする。もうどこかには勝手に行かせないようにと……でも、心配は無い。ちょっと人一人を起こすだけなのだからすぐに終わる。だから……

 

「絶対帰るさ 」

 

「……はい、待ってるのです 」

 

「行ってらっしゃい、起きて早々やられないようにね? 」

 

「分かってますよ 」

 

長居は無用、俺はすぐさま艤装を再度展開し、海上へと移動する。艤装はコネクターの艤装では無く、俺の艤装、『ズムウォルト』の方になっていた。いつもの可変式の武器も問題無く現れ、準備は万端だ。

 

「よーし、待ってろよ長門……! 」

 

全速前進で海をかけ、俺は神木、重桜へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……行っちゃったわね 」

 

「はい…… 」

 

見送った優海の姿が見えなくなり、2人はなんの意味も無くたそがれていた。

先程セイレーンやマーレとの激戦があったとは思えない程辺りは静まり返り、2人はただ無言のまま過ごしていた。流石に気まずいと思ったのか、オロチは綾波に対して話を切り出してきた。

 

「ねぇ、貴方優海の事……好きなの? 」

 

「そ、そんな事は無いです。ただ綾波は、恩返しがしたいだけなのです 」

 

綾波の言うことは間違いでは無かった。綾波は優海に対して様々な恩があった。戦いに迷った時に言葉をかけてくれた事、戦闘で助けてくれた事、何度も優海に助けられ、いつしか恩返しがしたいと綾波は考えていた。

 

「へぇ〜? 」

 

「むぅ…… 」

 

しかしそれは建前だと思ったのか、オロチはからかうように笑う。明らかに動揺を見せた綾波に対し、図星を突いたと確信したのだ。

綾波はそんな態度に怒り、頬を膨らませ、そのまま体ごとオロチに背を向けてしまった。

 

「あはは、ごめんごめん、で?どうなのどうなの? 」

 

わざとらしく謝ったオロチは綾波の気持ちを気になり初め、グイグイと綾波の体に密着していた。体格はオロチの方が大きく、綾波はオロチの上半身に包まれ、頭の上にオロチの胸部がのしかかった。

頭の上から伝わる程よい重さと弾力が羨ましく思えたのか、綾波はつい自分の胸を確かめる。

無いわけでは無いが、オロチと比べると天と地程の差があり、綾波は頭上に雷が落ちたかのようなショックを受け、オロチを完全に無視した。

 

「もうオロチとは喋りたく無いのです。プイッなのです 」

 

「え〜聞かせてよ〜私も言うから〜。ね?お願い〜!」

 

「喋る舌なんて無いのです。つーんなのです 」

 

和気あいあい……なのかは知らないが、そんな二人の元に、ようやく天城達の艦隊が追いついた。

その証拠に、2人の上空には瑞鶴の偵察機が徘徊していた。

 

「どうやらあっちもようやくこっちに着いたようね 」

 

「全員無事で何よりなのです……」

 

ロドンの戦闘からよくぞここまで辿り着いた事に、綾波は安堵の息を漏らした。

気持ちが緩みきった綾波の隙をつくように、オロチは綾波の耳元に口を近づかせた。

 

「ち・な・み・に、私……優海の事は結構気になっているな〜? 」

 

小さな吐息と声が綾波の耳から脳に伝わり、背筋と頭が電流が走るかのような感覚に陥るも、綾波はオロチの放った言葉に対して興味を湧き始めた。

 

「なっ……そ、それってどういう意味なのですか……!?」

 

「ん〜?どういう意味なのかしらね〜?」

 

「教えるのですっ! 」

 

子供とじゃれ合う親のように、オロチは笑い、綾波は小さくオロチの胸を叩き付けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

轟音が徐々に近づきつつあり、前方にある重桜の木も目の前にある事から、とうとう祭儀に辿り着いたと思ったら辺りは中々酷い有様だった。

セイレーンの残骸が辺りに転がっており、とてもここが神聖な場所だとは思えない程だ。

 

爆煙の匂いもキツく、冬だと言うのに残骸から燃える火が多く、暑い程でもあった。

こんな戦闘があって、長門やここで戦っているKAN-SEN達は大丈夫なのだろうか……

艦載機の音や砲撃の音がまだ続いている事から、まだ戦闘は続いてると見る。

 

「マーレさんもここにいるのか……? 」

 

あの人の目的は『ワタツミ』だ。それがここにあるというのなら、あの人もここにいるという事になるが……まだ姿が見えないでいた。どこかに姿を隠し、後ろから不意打ちをかけるつもりなのではと考えたが、マーレさんの性格上それは有り得ない。

その理由に、これまでマーレさんは全ての戦闘において真正面から向かっている。

腐っても英雄……いや、ロイヤルの騎士と自覚しているのかどうかは分からないが、不意打ちする事はまず無いだろう。

 

「それにしても……ここ本当に大事な場所なのかな…… 」

 

周りを見ながら進んでいくにつれ、少しばかり気になっていた事がある。あちこちある祠があまりにも寂れているのだ。祠と言っても、極小さな物が沢山あるだけだ。

今はセイレーンがいるから近寄れないとは思うが、手入れした痕跡が見当たらない。

 

重桜の者にとってもここは大事な場所の筈なのに、誰も手入れしていないのは明らかにおかしい。本当は、ここはそんなに大事な場所なのでは無いのではと考える程にだ。

 

それに重桜という土地は年中桜が咲き誇っているのにも関わらず、神木の『重桜』は何故か枝の所々が枯れている。かろうじて枝に張り付いているかのように桜の花びらが何枚かあるだけで、美しさも何も無かった。

ただ感じるのは虚無感と悲壮感だけだった。

 

しかし、それは一瞬で終わりを迎えた。突然『重桜』の気が薄い桃色に光だし、枝々に桜が息を吹き返したかのように咲き誇り、美しい満開の桜が咲き誇った。

 

「……おぉ 」

 

あまりの衝撃的な展開と美しさに言葉を忘れ、思わず見とれてしまうも、すぐに我に返る。

首を激しく横に振って意識を取り戻し、辺りを見渡すと、寂れていた祠が見違えるように綺麗になっていた。

 

……なるほど、手入れをしない訳じゃない。

()()()()()()()()()()()()()。どういう訳か、『重桜』とこの辺の祠は繋がっており、『重桜』が本来の力を取り戻したら、こちらも同じように力を取り戻すというのが個人的な考えだ。

だが、綺麗になっただけで特になにも無く、それ程脅威は無いと思えたが、それは間違いだと思い知らされる。

 

またも『重桜』が眩く光り出すと、突然『重桜』からビームらしき光線が俺とは全く違う方向に飛んだ。

何かに着弾したのか、着弾点から爆発が起き、同時に聞こえていた轟音も消えた。

どうやらあのビームが決定打になったのか、戦闘は終わったらしい。

 

「おいおい……なんじゃありゃ 」

 

またも衝撃的な展開で言葉を失い、意識を保とうと頬を掻く。あれでは最早兵器の一種だ。

しかもビーム兵器を所持してるって……考えてる内にまた『重桜』が眩く光り出すと、今度はいきなり俺の方向にビームが迫ってきたが、俺がいる場所とは見当違いの場所に着弾した。

 

しかも出力もかなり抑え目であり、牽制の為の攻撃だと一目瞭然だった。

 

立ち去れ……

 

「え? 」

 

急にどこからか声が聞こえた。かすれ声で良く聞こえないが、女性の声……しかも子供の声がうっすらと聞こえた。

 

立ち去れ……

 

立ち去れ……

 

立ち去れ……

 

声が徐々に大きく、反響しており、まるで亡霊がこの場を死守しているようでもあった。

幽霊とか正直苦手であり、それを考えた瞬間心無しか体が重く、背筋が氷になったように一瞬冷たくなった。

 

思わず耳を塞いでしまいそうな不気味さだが、声が大きくなったお陰で声の主が分かった。

 

「その声……長門だろ!?その木にいるのか!? 」

 

すると声は沈黙し、図星をつかれたかのように黙っていた。

だとすると、さっきのビームも長門自身がやった事であり、俺に来るなと言っているような物だ。

 

いや事実そうなのだろう、さっきの言葉も長門自身の言葉だとしたら、もうここから出ていけ、私には構うなと思っているのだろう。

……そうだとしても、俺はこんな事を、はい分かりました。と言って納得する訳には行かないし、そもそも納得なんて出来るわけない。

 

「俺はお前を絶対にそこから引きずり出してやる!だから……待ってて! 」

 

いてもたっても居られず、俺は全速力で海を駆ける。俺を拒むようにまた『重桜』からビームが俺目掛けて放ってくるが、当てる気がないかのようにビームは俺に当たらなかった。

 

難なく『重桜』がある島まで辿り着き、ようやく長門に会えると思っていたが、そこには立ちはだかるように護衛の重桜のKAN-SENが多数いた。全員知らない人だ……

歓迎してくれる雰囲気では無さそうだ……

 

「その見た事ない艤装……貴方が指揮官……いえ、天城優海さんですね? 」

 

獣耳での変わりに鬼の角のような物が2本あり、山吹色の上着着物を着たKAN-SENが俺の名前を言ってきた。

多分長門から聞いたのだろう。

 

「私は軽空母『龍鳳』です。来て早々ですが今すぐ立ち去っ」

 

「嫌だ。俺は長門を起こしに来たんだ。戦う気なんて無い、……そっちこそそこをどいてくれないか? 」

 

龍鳳が最後まで言うより先に、俺は有無を言わさず断固としてここを通す意志を見せた。

しかし向こうも下がらず、尚も行く手を阻んでいた。

 

「それは出来ません。この『重桜』は何がなんでも枯れさせてはならないです。これは重桜の民を護り、無くてはならない物なのです。貴方は重桜を……その手で滅ぼそうと言うのですか? 」

 

「滅ぼすつもりなんて無いよ 」

 

「この『重桜』なくしてこの国に未来なんて無いのです。貴方がしている事は、重桜を破滅させる行動なのですよ!? 」

 

「じゃあその為に人一人を犠牲にしても良いっていうのか? 」

 

「それは……」

 

ここで初めて龍鳳が言葉を詰まらせ、動揺を顕にした。龍鳳……いや、この場にいる全員恐らくだがどこか納得いかない所もあるにはあるのだろう。

だが考えは変わっていないらしく、全員の意思は変わっていなかった。

 

「……それでも私達の考えは変わりません。立ち去ってください 」

 

「断る 」

 

「……だったら仕方ありません。少し強引に出ていって貰いますっ! 」

 

龍鳳が艦載機を発艦させたのと同時に、他のKAN-SEN達も一斉に散開した。包囲して逃げ場を失わせて俺を無力化させる戦法なのだろう。

 

龍鳳が出した艦載機から爆撃が投下され、俺目掛けて落下してくる。

 

でも、関係ない。俺は戦いに来たのではないのだから。真っ直ぐ、1歩ずつ進んで前を歩くだけだ。

爆撃は俺に直撃し、衝撃で俺はそのまま後ろへと飛び石のように跳ねながら吹っ飛ばされる。

「な……何で避けないのですかっ!? 」

 

これには流石の相手も驚き、動揺するが、何もそれを誘っている訳でもなければ作戦でも無い。

 

ただ戦う理由が無いからだ。だから俺は攻撃もしないし、回避もしない。流石に今の攻撃を無防備という訳にもいかないかので流石に防御はするが、それでも結構痛い。体の節々が悲鳴をあげているようでもあった。

 

それでもまだ俺は倒れず、俺は再度『重桜』に向かって歩いていく。

 

「鬼怒、何考えてるのかしら……あの人 」

 

「知らん、だが徹底的にやるぞ能代 」

 

鬼怒と能代と呼ばれたKAN-SENが今度は前方斜め2方向から砲撃を放ち、俺はそれを回避もせずに真正面から防いだ。

 

防いだと言っても、致命傷を避ける為の防御なのでダメージはモロに受けている。

 

俺はまたよろけ、海に膝をつくがまだ大丈夫だ。俺は、痛みを堪え、歯を食いしばりながら立ち上がり、歩き続ける。

 

「響……あの人どうしたのかな?ふわりんも凄く動揺してるよ 」

 

「ん〜ただの馬鹿とか?とにかく私達も加勢するよ〜! 」

 

今度は駆逐艦なのだろうか、幼いKAN-SENが左右から挟撃をしかけ、同時に魚雷を撃ってきた。

これも回避はせず防御体制をとることに専念したが、流石に魚雷の直撃は致命傷とはいかないものの、かなりのダメージを受け、またもや吹き飛ばされてしまう。

 

その後もKAN-SEN達の荒い攻撃を避けず、受け止めるように堪えた。

艦載機の爆撃、主砲の砲弾、魚雷を全て避けずに、全て防御する。

 

服が所々傷がつき、傷も少しばかり出来て出血も起こしてしまった。それはそうだ、ここまで全ての攻撃をほぼまともに受けているんじゃこうもなる。

傍から見れば狂っていると思うこの光景を、龍鳳は戸惑い、攻撃の手を止めた。

 

「な……何故避けないのですか!?貴方一体、何がしたいのですかっ! 」

 

そんなの決まっている。

 

「言っただろ……俺は……戦う気なんて無い。ただ長門を……起こすだけだって……! 」

 

でも全ての攻撃を受けながら進むのが無茶があった……身体中痛いし、痛みのせいで目が冴えたり意識が朦朧としたり気分が悪くなってきた……

 

思わず倒れそうになり、咄嗟に大剣を呼び出して海に突き刺し、杖代わりとして何とか体を支えるぐらいダメージが酷い……

 

だが、こうでもしないと俺の意思は届かないし、分かってくれない。無茶の甲斐があったのか、龍鳳達は攻撃を止めた。

俺はその間に1歩、また1歩『重桜』を近づき、ついには龍鳳の目の前まで辿り着いた。

 

「貴方は……一体なんなのですか! 」

 

「何って言われても……俺はただの…… 」

 

ただの人間、と言おうとしても艤装を付け、しかも実はセイレーンだからそれはちょっと違うと直前に思い留まった。

 

KAN-SEN達の目の前で腕組みしながら目を瞑り、自分はなんなのか考えていた。俺のあまりにも悠長な行動に周りはざわついてはいたが、あまり気にしない。攻撃はしてこないはずなので、今は自分がなんなのか再確認する。

 

……とは言ったが、これっぽっちも思いつくことは何も無かった。

別に何かを成し遂げた事は……まぁ指揮官になれた事はそう言っても良いかもしれないが、あれは俺一人じゃ絶対出来なかった事だし……

 

なった後もそうだ、ベルファストやウェールズ、他の皆にも助けられて何とかやっていけたぐらいだ。

 

いつも通り、昔と変わらず俺はKAN-SEN達と過ごし、生きてきた。

もしかしたら、そんなに考え込む必要は無いのかもしれない。俺は俺、答えは笑える程シンプルだったんだ。

 

「俺はただの……少し変わった人間さ 」

 

艤装があっても、セイレーンだったとしても、俺はこの世界に生まれた人間でありたい。それが俺の答えだ。

 

「………… 」

 

しかし龍鳳達は呆気に取られたかのようにそのまま黙り込んでしまっていた。

 

「あ……あれ?自分的には結構しっくりきた答えだとは思ってるんだけど……何か変だった? 」

 

「あ、いえそういう訳では無いのですが…… 」

 

気まずい空気になってしまい、謝罪のキャッチボールをしてしまったせいで戦闘を続ける空気にはならなずにいた。

 

「……コホン、貴方の意思は分かりました。ですが、この『重桜』無くしてこの国に未来はありません。……貴方がやろうとしているのは間違いなく重桜という国を滅ぼす一手です 」

 

「……さっきからあの木は大事な物だって言うけど、あれは何なんだ? 」

 

俺はあの『重桜』がどれ程重要なのかはよく理解が出来ていない。そもそもあれがなんなのかもよく分からないのだ。

そもそもビームを撃つ時点で本当に木なのかどうかさえも怪しいものだ。

 

「……あの木は民の信仰によって花開き、あの木に封印された者は『タマシイ』を見据えることが出来ると言われてます 」

 

「『タマシイ』……? 」

 

タマシイ……って人が持っている目に見えない物、魂の事なのだろうか?だが、なんだか訛りがあるせいか、その言葉に妙に引っ掛かりを感じる。

 

「正確には『量子情報』とも言います。人が築いた歴史、信念、技術……そして何より、セイレーンの情報も見据えることが出来ます 」

 

「……つまり、あれに取り込まれたら神様見たいになれるって事? 」

 

聞いてみれば明らかにあれは他の植物とは違う。植物というか……機械っぽい。

先程の光線や、『量子情報』というものを見て他の陣営の技術、そして何よりセイレーンの情報が見れるなんて、まさに神様そのものじゃないか。

 

「有り体に言えばその通りです。そして民達に加護を施し、重桜は安泰するのです。……分かってくれましたか?」

 

「……分かるわけ無いだろ。」

 

血が沸騰するような熱さと、湧き上がるこの気持ちは……怒りだ。

怒りを原動力に変え、これまで堪えてきた痛みがスっと消え、自分の足だけで体を支える事が出来た。

 

「……長門は、屋敷から外に出ず、外の世界に憧れていた 」

 

だから日記を書いた。自分が見てきた世界を見てもらう為に、世界はこんな風になっているって伝える為に。

それを見た長門は目を輝かせていた。俺にとって何にでもない日常は、彼女にとっては絵本のような出来事なのだと昔から分かっていた。だから……だからこそ……

 

「象徴とか、威厳とか、それ以前に長門は一人の……命ある人だっ!そんなお前達の都合で責任を全部押し付けて、あんな木に封印してるお前らの考えなんて分かるわけ無いだろっ!!! 」

 

怒りが具現化するように衝撃が俺の周りに飛ぶ。凄まじい衝撃波は周りにいる龍鳳達の体勢を崩すかのように強く、重みを持っていた。

 

突風……いや嵐とも呼ばれる衝撃波は龍鳳達の吹き飛ばし、『重桜』への道を開いてくれた。

 

「な、なんて人なの……ですが!」

 

最後まで抵抗する龍鳳は、数枚の札を投げつけ、それが重なり、巨大な山部色の龍へと姿を変え、俺に向かって牙を剥く。

 

「あれがなければ……重桜の未来は無いのです! 」

 

龍鳳の信念を込めた龍は雄々しく叫び、山部色の炎をさらに萌燃え盛らせ、その炎が矢のごとく俺の手足に向けて放ってきた。

やはりこの人達は俺を殺す気なんて無い。今までの攻撃だって、防御したのもあるが、予想以上に損害は無かった。

長門からの命もあると思うが、命を摘み取ろうとする気なんて無いのだろう。でも、今回はそこに付け入らせてもらう。

炎の矢を最小限の動きで避け、大剣を刀に変形させ、居合切りの構えに入る。

 

深呼吸で怒りを抑え、心を無にする。集中し、一太刀であの龍を斬ることだけに意識を向ける。

瞳を閉じ、刀の間合いに入るまでその時を待つ。

龍の咆哮が近づき、ここだと言うように桜の花びらが見えたような気がした。

 

目を開くと、目の前には龍がいたが、不思議と驚きも恐怖もしなかった。あるのはただ、斬れるという確信のみだった。

 

「未来の道は……1つじゃない! 」

 

「……!」

 

横一線に刀を振り抜き、龍はそのまま俺を通り過ぎ、天へと登るとそのまま花びらのように散っていった。

炎を斬るなんてやった事無いから自信が無かったけど、何とかなったようだ。

 

でも……怪我ばかりの体で疲労したのか、もう足腰に力が入らず、そのまま海を仰向けで倒れてしまう。

それはそうか……全部の攻撃受け止めたんだから仕方ない。意識が朦朧とする中でそれでも長門元に進もうと、息を荒らげた立ち上がろうとするも、腕にも力が入らない。

目を閉じ、意識すら暗闇に解けるその時だった。

 

『重桜』がまた淡く光り輝くと、ビームでは無くひとつの桜の花びらが俺の体にヒラヒラと降ってきた。

すると僅かな暖かみを帯びながら、まるで花びらが傷を癒すかのように、薄桃色の光が俺を包み、傷を治していく。

ご丁寧な事に、傷だらけも服も元通りになった。

 

「なんだこれ……? 」

 

「……どうやら長門様が傷を癒したようですね 」

 

多分これに懲りたらもう帰れって言ってるんだろうな。でもここまで来たからには戻る訳にはいかない。長門には申し訳無いが、俺は君の元に行くよ。

 

「……私達の負けです。どうぞ『重桜』へ足をお踏み下さい 」

 

「え……良いの? 」

 

「……貴方の言葉と思いに負けました。私以外のみなさんも同じように思っています 」

 

龍鳳以外のKAN-SENもこれ以上戦う気は無いと意思表示なのか、重桜への道を開けてくれた。

 

「ですが、行ったとしても長門様本人が折れるとは限りません。あの方も貴方以上に責任感がお強い人ですから。それにあそこには…… 」

 

「江風さんがいる。……でしょ? 」

 

龍鳳は小さく頷いた。まぁ、長門がここにいるのに、それを護衛するあの人がいないのも可笑しいし、ここにいない時点であの『重桜』にいる事は何となく分かっていた。

 

あの人とは今のように言葉だけでは倒せない。だから俺の思いを全身全霊でぶつけるしかない。

 

「じゃあ行ってくるよ。……あ、それと……分かってくれてありがとう 」

 

最後にお礼を言い残し、俺はついに『重桜』へと足を運ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「未来への道はひとつじゃない。ですか…… 」

 

「あの人の言葉を思い出してるの? 」

 

能代が龍鳳のつぶやきに反応し、龍鳳はこくりと頷いた。

 

「……私も本当にこれで良いのか分からなかったの。上層部の人たちの言う事も最もだけど、あの人の言葉も間違っていない……」

 

「だから信じてみると? 」

 

「そう、あの人ならもしかしたら、重桜を別の未来に…… 」

 

 

「だったらその未来とやら……潰してやるよ 」

 

背後に男の声が聞こえた瞬間、KAN-SEN達は振り向いた。周りを寄せ付けない冷たい雰囲気を帯びたその男は……マーレだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごいな……ここだけ別の世界みたいだ 」

 

『重桜』がある島に足を踏み入れると、そこは桃源郷のような景色だった。木の枝が島を覆い尽くすほど大きく伸びており、その枝一つ一つがまるでひとつの桜の木のように桜が咲き誇っていた。

幻想的な桃色の景色は、まさに神秘な世界だ。

 

「あの時見たいに……道に迷う事はないな。一本道だし。 」

 

あの時と言うと、俺が初めて陸奥と出会ったあの日だ。確かあの日は暑い夏であり、カブトムシを取ろうと森の奥まで行ったら迷子になって泣いてたっけ……

そんな時陸奥と出会い、屋敷の抜け道を使って長門と再会出来た。今思えばあれが交流の始まりだったのかも……思い出したらなんだか懐かしさで頬が緩んで笑えてきた。

 

陸奥もここにいるのかなと考えながら進むと、急に開けた場所到着した。中央には海がここまで流れており、円状の海のステージがあった。

そして、その中央に江風さんが立っていた。

 

「待っていたぞ……優海 」

 

「江風さん…… 」

 

江風さんは抜きみの刀のような目つきで俺を睨み、普段の威圧さが一気に増した。

 

「お前を……通す訳には行かない……! 」

 

『重桜』の桜が舞い散る中、彼女は静かに刀を構えた。

もしもの話(R-18)を観測しますか?

  • Yes
  • NO
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。