もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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こんにちは〜最近ブルーアーカイブ初めて先生になった白だし茶漬けです。
ベータテストに受かってやり始めたブルーアーカイブですが、まぁそこまでガチガチにやってないです( ̄▽ ̄;)

ブルーアーカイブで1番の推しは砂狼シロコちゃんです!
ストーリーでの名セリフ?の「銀行を襲うの 」が1番ツボりましたね。
全く、面白い女だぜ……!
ブルーアーカイブの小説とか書きたいなぁ……でもただでさえ投稿頻度遅いしなぁ……(´;ω;`)



自分は自分と過ごした人が一番よく知っている

「__なさい 」

 

どこからか声がする。でも体が重く、まるで金縛りにあったかのように全く動かない。体がダルいがこのだるさが何故か心地よい。もう少しこのままでいたい。

 

「お__いと……___するわよ? 」

 

「うう……ん? 」

 

声が近づき、吐息も近づく中、俺は重い瞼を開けた。

そうか寝ていたのかと朧気な思考のまままぶたを開けると、そこには天井では無く、赤城姉さんの顔が目に映った。

 

「おわぁぁぁぁぁぁ!? 」

 

俺は横に転がりながら布団から離れ、壁に背中を持たれかけた。

 

「あら起きちゃったのね……残念だわ 」

 

「何が!?何が残念なの!? 」

 

「このまま起きなかったら……接吻しようと思ったのに……」

 

接吻!?それってキスの事……だよな?え?あのまま起きなかったら俺、赤城姉さんにキスされそうになったの?思わず口元を塞ぎ、赤城姉さんは何故か四つん這いでどんどん俺に近づいた。

 

「な……なんで近づいてるの……? 」

 

「ふふ、なんでだと思う……? 」

 

四つん這いで近づいている為、赤城姉さんの着物から見える胸元がはっきりと見え、俺は逃げようとしたが壁際にいるので逃げられない。

徐々に距離が近づき、ついには赤城姉さんが俺の目の前にたどり着き、逃がさないようにと壁に手を当て、俺は壁ドン状態にされた。

 

人生初の壁ドンがまさか受けで相手が姉だとは思っていなかった

いやそんな事どうでもいいよ。どうするのこれ?諦めて受け入れるしかないの?でも順序があると思うですよ赤城姉さん。

近い、唇が近い!もうこれ起きても寝てても関係ないよね!?誰かァ!誰かァァァ!!

 

「何をしているのですか……赤城? 」

 

俺の心の叫びが届いたのか、部屋の前に天城母さんが立っていた。朝からものすごく怖い笑顔で赤城姉さんを見つめ、赤城姉さんは汗を滝のように流していた。

 

「あ……天城姉様……これは朝の挨拶のつもりで」

 

「ほぅ……接吻が挨拶ですか……? 」

 

「すみませんでした…… 」

 

早い。折れるのが早い。いやこれは仕方ないと言えば仕方ない。誰も天城母さんには勝てないのだから……

拳骨は免れ、赤城姉さんはそそくさと部屋から出ていった。

 

「全く、変な育ち方になりましたね……さ、優海も早くいらっしゃい。もうすぐ朝食ができますから 」

 

「は、はーい…… 」

 

天城母さんの怒りで目が覚め、俺は一緒に居間へと移動する。

居間に近づく度美味しそうな匂いが鼻にたどり着き、食欲を刺激させた。居間へと到着し、食卓には姉さん達と朝食が揃っていた。

 

「いつも通りお前が最後か 」

 

「あはは……おはよう、加賀姉さん 」

 

「寝坊助は相変わらずのようだな 」

 

「土佐姉さんまで、手厳しいなぁ 」

 

加賀姉さんと土佐姉さんに挨拶し、俺は椅子へと座る。机には白米と味噌汁、そして卵焼きと焼き魚という、豪華な重桜食だ。

 

「わぁ……今日も美味しそう……! 」

 

「さぁ、冷めないうちに食べましょう 」

 

全員席に座り、いただきますと礼儀良く挨拶してから食にありつけた。

まずは綺麗に焼きあがっている卵焼きをひとつ一口食べると、中はじんわりふわふわとろとろな食感でなんとも美味だ。

 

ほんのり甘く、食べやすいので何個でも食べられそうだった。しかし、皿には卵焼きがふたつしか無く、内1つを食べてしまったので、これは最後に取っておこうと心に誓った。

 

「優海、そう言えば長門様から少しお話があるそうですよ 」

 

「長門が? 」

 

そう言って天城母さんは一通の手紙を差し出した。何が書かれておるのか気になり、その場で読もうとしたが天城母さんから止められた。

 

「こら、行儀が悪いですよ。朝食が食べ終わったら読みなさい 」

 

「はーい…… 」

 

気になるのにと小さくつぶやきながら、俺は朝食を食べ始めた。手紙の内容が気になるが故、今日の朝食は早めに食べ終えた。

最後に残った卵焼きを一口で食べ、手早く飲み込み、最後にお茶を一気に飲み干し、朝食を食べ終えた。

 

「ふぅ〜ご馳走様でした!それじゃ、手紙読むから! 」

 

「あ、こらちゃんと歯磨きを……」

 

忙しなく俺は部屋へと戻り、居間へと出ていった。

 

「全く……」

 

「良いじゃないか天城さん、優海の気持ちも分からなくも無い 」

 

「土佐……まぁ、今回は目を瞑りましょう 」

 

(((優海には甘いな…… )))

 

この時の3人の心は同じだった

 

 

 

 

 

部屋へと戻り、白い手紙の封筒を丁寧に開け、中にある手紙を広げて声には出さず目で読み始める。

手紙の内容はこうだ。

 

久しぶりだな。元気にしておるか?

早速だが、この手紙が届いた今日の昼、余の屋敷に来て欲しい。

入口に江風がいるから心配はいらぬ。待っておるぞ

 

「何か……あったのかな…… 」

 

心配はあるが、とりあえず昼に屋敷に行けば何か分かるはずだ。

でもその間は暇で手持ち無沙汰だ。何をしようかな……

 

「あ、そうだ…… 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?もう行くの優海? 」

 

玄関で靴を履いている時、赤城姉さんが声をかけてきた。確かに昼にはまだ早いが、この間にやっておきたい事があるからだ。

 

「うん、ちょっと綾波に会ってくるよ 」

 

「綾波に……?どうしてかしら……? 」

 

なんか赤城姉さんの目が怖くなった。まるで綾波の事を敵視しているかのような目をしている赤城姉さんを直視出来ず、そのまま訳を話した。

「この前の戦闘……綾波が助けに来てくれたから、そのお礼を言おうと思って。この数日会ってないから、昼までに探してお礼でもしようかなって 」

 

「そう……それなら良いわ……だ け ど 」

 

赤城姉さんは後ろから抱きつき、耳元で囁いてきた。

 

「みだらな行為はダメだからね……?でないと私……どうなるか分からないわ…… 」

 

「しないから!大丈夫だから!もう…… 」

 

赤城姉さんはたまにこうなるから怖い……

 

「じゃあ、行ってきます〜! 」

 

「行ってらっしゃい、優海 」

 

返事を済ませ、俺は家の扉を開けて外へと出た。

 

 

 

 

「……よし、加賀もいるのでしょう?出ていらっしゃい 」

 

「はぁ……どうしたのですか赤城姉様…… 」

 

「決まってるじゃない……尾行よ!優海に近づく女をソウジする為に! 」

 

「……左様ですか 」

 

 

 

 

 

 

 

_数時間後 重桜 街道にて

 

しまった……ある重大な問題を忘れていた。初めから気づけば良かったんだ……こんな事、誰だって最初から気づくはずなのに。

自分の不甲斐なさを恨んでしまう。思わず道中なのに膝をつき、手に地面を置いて悔しさに押しつぶされそうになった。

 

「綾波がいる場所が……検討つかない……!! 」

 

そう、これだ。綾波に会うにしろ、まず綾波がいる場所と行きそうな場所を把握しなければまず昼までに綾波は会えない。

 

「どうすればいいんだ…… 」

 

「あれ……そこにいるの優海君だよね? 」

 

落ち込みで体が沈みそうなその時、後ろから声をかけられた。

後ろに振り返ると、黒髪でふたつの赤色のリボンで髪を下ろしており、白いカッターシャツに黄色いカーディガン、黒いスカートでまるで女子高生のような服装をしているKAN-SEN、【長良】が心配そうに声をかけてくれた。

長良とは昔から出会っており、幼なじみ的な存在だ。

 

「やっぱり優海君だ!こんな所でどうしたの? 」

 

「あぁ、実は綾波を探しているんだ。綾波はこの前お世話になったからお礼を言おうと思って……何か知らないかな? 」

 

「綾波ちゃん?ううん……そう言えばこの頃ずっとお部屋にいるような気が…… 」

 

部屋にずっと?何か病気にでもかかったのかな……凄く心配だ。もしそうなら薬とか前もって買った方が良いのかな……

 

「そうか……じゃあ綾波がいる場所を教えてくれないか? 」

 

「うん、えっとね綾波ちゃんがいるところは…… 」

 

その時、長良の胸のボタンが何故か挙動不審な動きをしている事に気づいた俺は、無意識に長良のボタンに目がいった。

蠢くシャツの第2ボタンが何かに耐えてるような感じだったのだが、耐えきれなかったのか、第2ボタンが弾け……超高速で俺の額に激突した。

 

「へ? 」

 

「あいたぁ!? 」

 

激しく額にボタンとぶつかり、思わずそのまま後ろに倒れ込んでしまった。

 

「ゆ、優海君!?大丈夫?ってわわ!」

 

俺の事を心配して長良が近づいてきたが、地面の段差で足をつまづいてしまい、そのまま俺の方に倒れ込んできた。避けようにもこのままでは長良が地面に衝突してしまい、俺が受け止めてやるしか無かった。

 

むにんとした柔らかな感触が伝わる中、俺は倒れる長良を受け止めた。

ぶつかった衝撃なのか、それとも別の要因があるのか分からないが、長良が着ているシャツの第三ボタンも外れ、胸元を大きく見せる構図になってしまっていた。

 

「あいたた……優海君、大丈夫? 」

 

「う……うん 」

 

俺たち2人は立ち上がり、幸い何処にも怪我は無かった。額に傷は無いし、無事と言えば無事だ。問題と言えば……

 

「おかしいなぁ……ついさっきまでピッタリだったのに……洗濯して服が縮んじゃったの……か……な…… 」

 

ようやく自分の服装の変化に気が付き、長良は耳まで顔を真っ赤にして胸元を腕で隠した。

 

「ち、違うの優海君!これは決してその……そういうのじゃなくてその……〜〜!ごめんねぇぇぇ!! 」

 

「え?あ、おーい!綾波の場所はぁぁぁ!? 」

 

いつもゆったりな口調の長良が、いつも以上に早口で忙しなくなり、そのまま逃げるように俺から離れていった。別に気にしていないのだが……

 

長良を見失ってしまい、結局綾波の場所は分からずじまいであり、どうしようかと悩みながら俺はとにかく街を歩いた。

 

 

 

 

 

「淫行……! 」

 

「姉様、今のは事故なのでは無いでしょうか…… 」

 

一部始終を物陰から見ていた赤城は、優海に近づき、あまつさえ優海に密着していた長良をソウジしようと長良を追いかけようとしたが、事故だと判断した加賀はそれを止めた。

したし優海はそれに気づかず街を歩く。

 

 

 

 

 

 

 

 

長良のおかげで綾波は部屋に閉じこもっているという事は分かったが、 綾波が居る部屋が分からない。

1歩進んでいるようにも、全くもって進んでいないような気がする……

 

「うーん……誰かに話を聞こうにも誰が良いんだろう…… 」

 

やはり1番は綾波と同じ駆逐艦の子だろう。同じ駆逐艦の同士なら、繋がりもあるだろうし、綾波の事も分かる筈だ。

そんな事を考えてると、後ろから何か車輪が回る音がした。後ろに振り返ると、何やら人が荷車を引いていた。

 

「うんしょ……うんしょ…… 」

 

茶髪で牛のような耳と尻尾がある事から、KAN-SENなのは間違い無いが、会ったことが無い人だった。

荷車には多くの荷物が積まれており、いくらKAN-SENと言えど重そうな雰囲気だった。しかもここは坂道……相当辛い筈だ。見て見ぬふりという訳にも行かず、声をかけることにした。

 

「あの……手伝いましょうか? 」

 

「あ、大丈夫ですよ。いつも運んでいる量ですし、これが私の仕事ですので 」

 

「でもここ坂道ですよ?押すだけならしますよ? 」

 

「ですが…… 」

 

彼女はこの先の坂道の斜面を見ると、予想以上の斜面を見て少しだけ絶句していた。

 

「あ〜じゃあ……お願い出来ますか……? 」

 

「お任せを 」

 

早速俺は荷車の後ろにつき、押す準備をした。その際荷車に積まれた荷物を覗くと、ダンボールや木箱が丁寧に積まれていた。

 

「それじゃあ行きますよ〜 」

 

「あ、はい! 」

 

彼女が荷車を引くと同時に、俺は荷車を押した。

荷車を押した瞬間に重たい荷物の圧力が体全体に押し寄せた。

この人……今までこんな重たい荷物を引いて来たのか。KAN-SENの中でもかなりの腕力の持ち主だろう。

 

「うわ重たい!こんなのよく持っていきましたね 」

 

「こう見ても力はありますから 」

 

「凄いな……えっと……名前は? 」

 

「あ、これは失礼しました。私は運送艦の【樫野】と申します。趣味は温泉で、身長と体重は……」

 

「あ、そこまでは大丈夫ですよ!? 」

 

流石にそこまでの情報は悪いので、慌てて遮る。

一方的な自己紹介だと悪いので、こちらも自己紹介を始める。

 

「え〜と、俺は【天城優海】です 」

 

「天城優海……あ、もしかしてあの天城さんの息子さんですか? 」

 

「まぁ、そうですね 」

 

そこまではっきりと天城の息子だと言われた事はあまり無かったので、少し気恥しい。

 

名前を名乗り、趣味を話そうとしたが、何も出てこなかった。そういえば、ずっとマーレさんとして生きていたから、趣味もずっとあの人のままだ。

自分自身の趣味なんて……無かった。

 

「趣味は……ありません 」

 

「あら?そうなんですね。てっきり色んな事をしているものかと思ってました 」

 

「趣味を見つける暇が無かったから…… 」

 

俺は小声で樫野さんに聞こえないようにそう呟いた。

今思えば、生きる事に必死で趣味を見つけるなんて眼中に無かった。

重桜に帰りたくて指揮官になり、生きる為にマーレさんに成りすまし、失望されないように必死で出来ることを、やれる事をやってきた。

 

でもこうして重桜に戻って来て、今は指揮官でもなんでもない自分って……何があるんだろう……

そんな暗いことを考えたせいで、荷車を押す力を弱めてしまい、荷物の重さに押しつぶされそうになってしまう。

直ぐに力を戻し、何とか坂道から転げ落ちる事は無くなった。

 

樫野さんは心配で声をかけてくれたが、こんな事相談するのは気が引けるので、無理やり笑って誤魔化してしまった。

坂道が終わり、1つ休憩を入れた。重い荷物を押したせいか、少し腰が痛い。

 

「ふぅ〜ありがとうございますおかげで助かっちゃいました 」

 

「いえいえ、役に立てて良かったです 」

 

さて、これからどうしたものか……綾波の場所も分からないまま、このまま昼まで時間を潰しかないのだが……

 

「えーと次は……綾波さんですか…… 」

 

会おうとした名前の人の名前を聞き、俺は恐る恐る尋ねてみることにする。

 

「あの、俺実はその綾波に会おうとしていて……良ければ、ついて行って良いですか? 」

 

「あ、構いませんよ。さっきの事もありますし 」

 

無事に承諾を得り、俺は樫野さんについて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……相変わらず優海はお人好しだな 」

 

「でも、それがあの子なのよ。加賀だって、それは分かっているでしょう? 」

 

「まぁ……そうですね 」

 

相変わらず物陰に隠れて優海の動向を監視している赤城と加賀は、優海の性格を再認識していた。

……しかし、赤城は優海のある行動を嫌悪していた。

 

「ところで……今優海は綾波の部屋に行くのかしら……? 」

 

「会話ではそう言っていましたが…… 」

 

すると赤城はまるで背後に炎が燃え盛っているように激しく静かに怒っていた。心無しか周囲の植物の一部が熱で焦げているようにも見えた。

 

「フフフ……ダメよそんな事は……他の女の所、ましては他の女部屋に行くなんて……フフフ……フフフフフ 」

 

いつも不気味な赤城だが、不気味な笑い声と呟きと目が笑っていない笑みで更にそれが浮き彫りになっていた。

近くにいた鳥が逃げるように飛びだっていき、隣にいた加賀もこれには絶句していた。

最早止める気にもなれなかった加賀は、このまま逃げる事も出来ずに赤城について行かされる事になった。

 

「さぁ行くわよ加賀! 」

 

「はぁ…… 」

 

意気込む赤城とは対照的に勘弁してくれと言わんばかりの加賀のため息がこれまで以上に大きく吐かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_現時刻 重桜 横須賀鎮守府内部にて

 

「じゃあ、綾波さんの荷物、お願いしますね 」

 

「はい、任されました。それじゃあこれで…… 」

 

樫野さんと別れ、俺は鎮守府にいる綾波の部屋に荷物を届ける。荷物は段ボールに入っており、持てなくは無いが結構重い。

落とさないように気を遣い、転ばないように慎重に足を進ませる。

 

鎮守府の中は結構洋風形式であり、扉もアズールレーンの基地と差程変わっていなかった。違いと言えば、内装が和風よりだと言うことだけだ。

 

「えーと……綾波の部屋は……あ、あったあった 」

 

数ある扉の中から、ついに綾波と書いてある表札を見つけ、俺は重い荷物をゆっくりと地面に下ろし、扉をノックした。

 

「綾波〜?いる〜? 」

 

扉をノックして声を出しても、中から返事は無かった。聞こえなかったのかと思い、今度はノックの力を強めて少し声を大きめにして呼んでみるものの、やはり返事は帰って来なかった。

 

どうやら部屋には戻っていないらしい……取り越し苦労かと方を落としながらため息を漏らし、持ってきた荷物は入口にいた饅頭達にでも預けるかと思ったその時だった。

 

「ダメです……そんな事したらダメなのですっ!! 」

 

扉越しから聞こえる綾波の叫び声が聞こえた。切羽詰まった感じの声が聞こえ、もう一度聞くために扉に耳を張り付かせ、耳に全神経を集中して綾波の声を聞く。

 

「このままだと……やられるのです……! 」

 

綾波の部屋に誰かが入り、綾波に危害を加えているのだろうか、それでもかなり危険な状況だと判断した俺は扉を開けようとドアノブに触れる。鍵は閉まっているだろうと思った中、ドアノブを回すと鍵は閉められていなかった。

どうやら、綾波の部屋に侵入者がドアの鍵を閉め忘れていたのだろう。

好都合だ。俺は白い銃を手に呼び出し、何時でも侵入者を攻撃できる用意をする。相手が誰であろうと、今は綾波の無事が先決だ。

 

息を整え、自分が良いと判断したタイミングでドアノブを捻り、同時に部屋に突撃する。そう頭の中で何度もイメージし、呼吸を3回行った所で、行動を開始した。

 

ドアノブが取れるくらい思い切り捻り、ドアが壊れる程思い切り足でドアを蹴り倒し、銃を部屋に向ける。

 

「綾波っ!!大丈夫……? 」

 

「し、指揮官……? 」

 

昼間なのにカーテンが閉められ、電気を点けてない薄暗く、何か沢山の物が積み上げられている部屋の中、綾波がポカンとした顔でこちらを見ていた。

綾波は無傷であり、耳にヘッドホンといつも見る服じゃなく、白いダボダボな服を来ていた。

 

身の丈に会ってない服のせいで肩が露出しており、下には何も履いていないのか肌色の太ももが丸見えだった。

服にはよく分からない文字が描かれており、とても先程緊迫した声とは思えない状況であった。

 

「指揮官?どうしたのですか、そんな急に大声を出して…… 」

 

「え?いやだって、綾波がやられるとかなんとか言ってたから…… 」

 

部屋に侵入者がいるのか確認すると、それらしき人物はいなかった。部屋に隠れられるスペースは無く。

綾波にも怪我は無いのを見ると、侵入者なんて初めから存在しなかったのだろう。

じゃあ……なんで綾波はあんなに必死だったんだ?

答え直ぐに聞けた。

 

「指揮官……それはこれなのです 」

 

綾波が光る方向に指を指すと、そこには赤い文字で『GAME OVER』と映し出されたテレビがあった。

 

「なにこれ? 」

 

「ただのゲームなのです……そもそも指揮官はなんで綾波の部屋に入って来たのです? 」

 

気まずい空気の中、俺は汗を流し、勘違いの恥ずかしさを隠すように声を荒らげた。

 

に……荷物をお届けに来ました!!

 

 

 

ものの数分後、荷物を綾波の部屋に置き、気まずい空気の中に取り込まれてしまった。

このままじゃお礼も言えずにそのまま部屋から追い出されてしまう。何とかして話を切り出さなければならない。

 

「「あ……あの……」」

 

綾波と同時に口を出してしまい、どちらから話したらいいか更に分からなくなってしまい、更に気まずくなった。部屋はテレビから聞こえる音だけが流れ、俺たち2人は喋らずにその場を過ごしていた。

 

この場でお礼を言うのは場違いなので、諦めてまた日を改めて言おう……

俺は部屋からそそくさと立ち去ろうとすると、急に綾波が服の裾を引っ張り、俺の足を止めた。

 

「待つのです……まだ、お礼を言っていないのです 」

 

「え……? 」

 

「……ありがとうなのです。綾波をあの時助けてくれた事や、ずっと前の事も 」

 

綾波は笑顔でそう言った。あの時というのは、この前の戦闘の事で確かな筈だが、ずっと前の事と言うのがよく分からなかった。

心当たりが無く、腕を組んで首を傾げた。

綾波はクスリと笑った。

 

「指揮官には随分と助けられたのです。綾波に戦う意味を教えてくれた事……指揮官には、色々助けられたのです 」

 

「別に俺はそんな大層な事してないよ。それに、今の俺、指揮官じゃないし…… 」

 

「綾波にとっては指揮官は指揮官なのです 」

 

「そうは言ってもね…… 」

 

服の裾を掴んでいる綾波の手を離させ、俺は綾波の隣で三角座りで腰を下ろす。

そう言えば、こうして指揮官って言われるのは随分久しぶりだ。

アズールレーンから離れて、もう数週間と経ち、今でもKAN-SEN達は帰りを待っているのだろうか。

 

「……?指揮官はもう指揮官じゃ無くなるのですか? 」

 

「……俺が指揮官になった理由、覚えてる?多分、結構前に話したと思うけど 」

 

綾波はこくりと小さく頷き、どうやら覚えていてくれたようだった。

 

_戦ってる時は怖いって感じてるはずなんだ。だからその怖さを無くすためが一つ。二つ目はKAN-SEN達は戦うためだけの存在じゃないことを伝えるのが二つ目。三つ目は……これはいいかな……

 

俺は昔俺が綾波に言った事を思い出していた。

でも、これは殆ど建前であり、本当になったのは三つ目が全てだった。

 

「俺が指揮官になった理由は……単に重桜に帰りたかっただけなんだ。昔みたいに、また姉さん達と過ごしたかったんだ 」

 

綾波に言えなかった三つ目の理由……いや、本当の理由を綾波に話した。情けないと軽蔑されたのかと思うと怖くなり、防衛本能なのか逃げるように綾波から数センチ離れる。

 

「じゃあ、どうしてあの時指揮官は重桜の指揮官にならなかったのです? 」

 

綾波は興味を持ったのか質問をした。確かに、赤城姉さん達によって、俺は昔アズールレーンから重桜に連れ去られた時があった。

あの時点で俺の本来目指していた事は達成はできていた。でも、違った。姉さん達は変わっていたんだ。

 

「あの時の赤城姉さんの目がどこか遠くを見るような目をしていたんだ。だから、どうしても帰って気がしなかった。むしろ、どこか別の場所に来たような…そんな気がした 」

 

「だから、赤城達と戦ったのですか? 」

 

俺は何も言わず、小さく首を縦に振った。でも今は違う。昔のままで、まさか天城母さんもいる。

 

「でも今は、望んだ場所にいまここにいるよ…… 」

 

「じゃあ、もう指揮官にはならないのですか? 」

 

そう言われると、胸が痛くなる。重桜に帰りたかったからなった『指揮官』という責任を、そんな簡単に捨てられると言えば無理だ。

確かに、元々の目的ならもうここで指揮官なんか戻らずずっとこの重桜に居る選択肢だってある。

 

だがそう考える度、頭の中でアズールレーンのKAN-SEN達の顔が過ぎる。なにより、自分を許せないと言うように心が痛みで主張してくるのだ。

 

いや、もう分かっていたのだ。あそこが……たった何ヶ月過ごしたあの場所は、もう俺の第二の故郷になっていたのだ。それに、約束したからな。

 

「なるよ。だって必ず帰るって約束したんだから 」

 

綾波はその言葉を待ち望んでいたかのような笑顔で俺を見つめた。

 

「良かったです。綾波は、とっても嬉しいのです 」

 

今まで見た事ない綺麗な笑顔に少し見とれてしまい、思わず顔を背けてしまう。無邪気であろうその微笑みは綾波が浮かべた笑顔の中で一番の物だった。

 

「……?どうしたのですか、指揮官? 」

 

「い……いや……別に何でもない……そ、そうだ!綾波がやってたこれ、なんて言うの? 」

 

変な気を無くすように、俺は綾波がやっていた機械を指を指す。機械は少し厚みを持った白い正方形の形をしており、何やら後ろでコードが伸びており、それをテレビの後ろに繋げていた。

何かの放送なのかなと思ったが、テレビ画面がGAME OVERから何一つ変わっていなかった。

 

すると綾波はキョトンとしたような顔をしながら質問に答えてくれた。

 

「?これはただのゲームなのです……指揮官、知らないのですか? 」

 

「げぇむ? 」

 

どこかで聞いた事あるような単語だな……どこだったっけ……記憶を遡り、ようやくゲームの存在を思いだした。

確かロングアイランドがいつもやっていたのがゲームという奴だった筈だ。

だが、やった事もあまり見た事ないので、どういう物なのかは分からない。

天城母さんや姉さん達にも教えられなかったし、オセアンにも教えられなかった。

 

頭の上に?マークが浮かぶのが見えるような顔をすると、綾波の顔が「嘘でしょ……?」と言うような顔をしていた。

 

「指揮官……ゲームを知らないのですか……!? 」

 

「う……うん、やった事も無くて…… 」

 

「なん……だと…なのです!指揮官のような若者はレアなのです! スーパーウルトラレアなのです……! 」

 

なんかいきなり人の事をレア物と言い出したぞこの子。

そういえばロングアイランドにもそんな事言われたな……

 

綾波とロングアイランドを合わせると、気が合いそうだ。綾波がまたアズールレーンの基地に戻ったら会わせてあげよう……なんて考えていると、急に綾波は立ち上がり、テレビの前に置いていた機械を手に待ち、こちらに差し出した。

 

機械は何やら変な形をしており、色んな図形が書かれたボタンやレバーやらあった。

 

「ゲームのコントローラーなのです。これで一緒に遊ぶのです!さぁ、指揮官も世界を救う物語に飛び込むのです 」

 

「え?世界を救う?何言ってるの綾波? 」

 

目をキラキラさせた綾波に逆らう事も出来ず、俺は綾波と一緒に人生初めてのゲームを楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_現時刻 重桜 鎮守府外にて

 

「良いのですか姉様……優海の事を見ていなくて 」

 

「もう良いわ。あの子なら多分問題無いでしょうし、これ以上付きまとうのも優海に悪いわ 」

 

「……もしや、優海の言葉を気にしているのでは 」

 

加賀の言葉を聞いた赤城は、図星をつかれたのかその場で立ち止まった。

流石と言うように1つ息を吐き、寒さで白い息を見上げながら、赤城は振り返るように空を見上げた。

 

「思えば随分と酷い事をしたものね……まんまとあのタコ女に唆され、あの時の私の目は天城姉様と優海しか見えいなかったもの。あまつさえ、私は優海の足を撃った……姉失格ね 」

 

逃がさないように、自分の元から離れないように、赤城は優海の両足を撃った事があった。

それだけじゃない、重桜の皆を騙し、何も言わずに自分の願いを叶うことだけのその行動もした。

もちろん皆はもうその事を責めてはいないが、赤城自身それを許さなかった。

どれだけ許されようとも、起こった出来事がまるで足枷のように絡まり、赤城を逃がさなかった。

 

「ねぇ加賀、私は……あの子と貴方の姉に相応しいのかしら……? 」

 

自身無さげに赤城は加賀に顔を合わせずに質問すると、加賀は答えに悩まず、即答した。

 

「何を今更……私も優海も、これからも姉様と共に行きますよ 」

 

加賀は歩き、赤城の隣に立った。

その言葉に救われたような気持ちになった赤城は心無しか体が軽くなり、加賀を見つめた。

加賀は照れ隠しのつもりなのか赤城から顔を背けていたが、耳が赤く染まっている事を赤城は見逃さず、その初々しさにクスリと小さく笑った。

 

「ふふ……ありがとうね、加賀 」

 

「ふん…… 」

 

加賀は早歩きで歩き、それに追いつくように赤城も歩いた。起きた事実という足枷はまだ消え去ってはいないが、それでも赤城と加賀は前へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_数時間後 重桜 長門屋敷前

 

綾波と時間まで遊んだ俺は息を切らしながら屋敷の前まで走っていった。

初めて体験したゲームがこれまた面白かったせいだ。自分でキャラクターを動かせる楽しさ、敵をバッタバッタとなぎ倒す爽快感、なにより、惹き込まれるストーリーに夢中になってしまい、約束の時間を30分過ぎてしまっていた。

 

俺の予想が正しければ、間違いなく屋敷前にはあの人がいる。屋敷が目線に入ったと同時に、離れていても伝わる、怒りのオーラが滲み出ているあの人がいた。

銀髪の長髪に白い服、そして腰にかけているあの刀……間違いなく江風さんだった。

 

江風さんとの距離が近くなり、俺は倒れるような姿勢に移行し、額に地面をぶつけようとする。

頭を保護する為に額に手を乗せ、そのまま体を曲げる。

いわゆる、土下座の体勢だ。

そのまま走った勢いを殺さず、地面との摩擦で丁度よく江風さんの前に俺の体は止まる。

 

「遅れて申し訳ございませんでしたぁぁぁ!! 」

 

その瞬間、俺は全力の謝罪をした。余程うるさかったのか、江風さんは両手で耳を塞ぎ、目を瞑っていた。

 

「うるさいぞ、どこで油を売っていたのか知らないが、神子様が待っている。早く来い 」

 

「あれ……?怒らないのですか……? 」

 

てっきりガミガミ言われるのかと思ったけど……良かったのだろうか、恐る恐る尋ねると江風さんはいつもの澄まし顔でこちらを見た。

 

「なんだ、説教をくらいたいのか? 」

 

「い……いや〜くらいたく……無いです 」

 

「……ふっ、冗談だ。さっさと来い 」

 

横顔で良く分からなかったが、江風さんが笑ったような気がした。あの人が笑う姿を見たのは初めてなので新鮮な気分だ。

重かった足取りが軽くなり、俺は屋敷への階段を軽々と登った。

 

 

屋敷の中に入り、謁見の間である大きな襖を開けると、そこには奥で長門が正座して待っており、その他にも来ていた人がいた。

右側にオロチさんと陸奥、そして左側には知らない人が2人いた。

……いや、片方の人、長い銀髪で青い着物を着ており、胸の上部が大胆にさらけ出しているあの人は知っている。確か……夢で会った人だ。

 

しかし夢なので同一人物なのか分からない。もう少し観察するべくその人を見たが、眠っているのか目を瞑っていた。

 

「うむ、待っていたぞ優海。こっちに来てくれないか 」

 

「あ、あぁ 」

 

とりあえずあの人の事は今は放っておこう。多分自己紹介とかで分かる筈だ。

それにしても、なんでオロチさんがここにいるんだ?

というより、俺に用って一体何だろうか……そんな考えを浮かべながら、俺は用意された座布団の上に正座した。

 

「良かった、元気そうだね 」

 

「あぁ、そなたのお陰だ。改めて礼を言うぞ 」

 

目の前にいる長門はとても元気そうだ。無事だとは他の人から聞いたけど、この目で確認してなかったから少し不安だった。けれども目の前で確認したので、不安は安心へと変わった。

 

「さて……お主を呼んだのはある事を伝える為だ 」

 

「ある事……? 」

 

長門の声のトーンが低くなり、辺りは一気に緊張感に包まれる。そして、長門の口からとんでもない事が放たれた。

 

 

「アズールレーンとレッドアクシズ……いや、全陣営の上層部が、テネリタス達に壊滅された 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本来、これは俺がやるべき事だったんだ。

この後を考えれば俺が手を汚すべきだったんだ。だが、その人達は代わりに自分達がやると言い出した。

俺は反対した。俺がやるべき事なのだからと手を出すなと言った。

だが、彼らは言った。

 

_お前が手を汚す必要は無い。

 

ふざけるな……俺は……俺は……

 

 

俺は人類の敵になるんだっ!!

 

「キャッ!?」

 

いつの間にか眠っていたのか、俺の意識は突然覚醒した。周りを見ると知っている部屋であり、オロチ内部である俺の部屋だと認識した。

近くにいた俺の祖母【ミーア・テネリタス】が驚いたようにこちらを見ていた。

祖母とは言うが、俺が全盛期事態に蘇らせたおかげで20代ぐらいの容姿になっているのだが。

英雄とは思えないおどおどした態度でこちらの容態を気にしていた。

 

「あ……お、おはよう……なのかな?体の方はもう大丈夫……? 」

 

「……別にもうなんともないですよ 」

 

昨日、重桜で奪った【黒箱】と【ワタツミ】を取り込んだせいなのか、俺は気を失ってしまった。

感覚的には丸一日寝た感じなのだが、実際には分からない。

 

「俺、いつまで寝てましたか? 」

 

「え……と、大体半日ぐらい気を失っていたよ 」

 

意外と短かったんだな……本当に2つとも取り込んだのか心配になる。現に体の方は今までと変わらず、何か不思議な力に目覚めたと言った感じは無い。

体が慣らしているのか、俺に反応が無いかの2択になるのだが、戦闘で分かることだ。

 

「ミーアさん、手合わせの方を頼め」

 

「ダメ、今日は休みなさい 」

 

先程のおどおどした態度と対照的に、はっきりとした態度で俺の目を見ていた。思わず圧倒され、言葉を失った。

 

「戦い続けて疲れでしょう?今日はもう休みなさい 」

 

「でも…… 」

 

「でもじゃないの。おばぁちゃんの言うことは聞きなさい 」

 

「その容姿でおばぁちゃんって言われてもな…… 」

 

すごく違和感しかない。生前、俺はこの人と会ったことがあり、顔もちゃんと覚えている。

髪は白く、顔には年齢相応にシワだらけで、手も足も冷たくて細かった。

それを今でも覚えているのだから、今の顔と重なってすごく違和感を覚えている。

 

「私もすごく変だよ、口調も性格も、体も……全部あの時の私だのもの…… 」

 

自身の体の若々しさを確かめるように手で肌のハリを確かめていた。雨の水を弾きそうな若々しいその肌はきっと人々を魅了するのだろう。

 

「ふふ、ピチピチのお肌は久しぶりだなぁ…… 」

 

昔の若々しい肌がまた実感出来たのが余程嬉しいのか、ミーアさんは愛おしく自分の肌を触っていた。

 

「はぁ……もう良いですよ…… 」

 

さっきまでの態度はどこに行ったと思いながら、俺はミーアさんの隣に座った。

性格の緩急が激しく、もう手合わせするする気も無くなった。

何もせずにただぼうっとしていると、急にミーアさんが俺を倒し、自分の膝に俺の頭を乗せた。

 

「なっ……! 」

 

結果、膝枕されている状態となり、俺はその場から離れようとしたが体が動かなった。力が上手く入らず、体が重りを持っているかのように重かった。

 

「ふふ、どうやら体はすっごく疲れてるようだね……そんな状態で手合わせなんて出来ないから、私は反対したの 」

 

この人……一目で俺の状態を把握したのか……自分の事は自分が1番理解していると言うが、この人前ではその言葉は通用しないように思えた。

目の前にある柔らかな目は、まるで全てを見通しているような目に感じられ、少しの恐ろしさを覚えた。

 

「もう夜だからぐっすり寝てね。寝るまで私が傍にいるから……貴方があの時、私が死ぬまでいてくれたように…… 」

 

「……! 」

 

彼女が言ったあの時とは、彼女が病院のベットで息を引き取ったあの日だ。その時俺はすぐ側で心配そうに彼女を見ており、彼女が最後の力を振り絞っているかのような声で手を差し伸べたあの日だ。

 

俺はあの時、生き延びてと心で叫びながら彼女の手を握った。しかしそれは虚しく届かず、彼女は満足そうに目を閉じて逝った。そのお返しなんだろう。

 

「……すきにしてください 」

 

「うん、すきにするね 」

 

そう言って俺はベットの上にあるミーアさんの膝枕で静かに目を閉じた……

 

「おやすみなさい……私の愛しい孫……」

 

 

 

 

 

 

 

「……寝たのか? 」

 

「あ……ロドンさん…… 」

 

彼女の三代目前……つまりは曽祖父に値するロドンがマーレの部屋に入ってきた。

ミーアはマーレを膝に載せているので立つわけにも行かず、そのまま座りながら深くお辞儀した。

 

「そんなに気を使わなくても良い。……マーレの容態は? 」

 

「見た所それ程酷くはありません。【黒箱】と【ワタツミ】を体に取り込んだので戦闘力は上がっている事は確実ですが…… 」

 

「なら良い 」

 

そう言ってロドンは壁に静かにもたれかかった。マーレの容態を確認したかったのだろうかロドンはマーレを見つめていた。

 

「あの……ロドンさん……例の件、ありがとうございます…… 」

 

「む、なんの事だ……? 」

 

「この子が……上層部の人達をこの子自身が殺める事を反対してくれた事です 」

 

「……構わん。人を殺めるのは初めてでは無いからな 」

 

マーレはある目的の為にアズールレーンとレッドアクシズの上層部……つまり人を殺めようとしていた。

しかし、ミーアはそれに反対しようとしたが、マーレの意思は固く、ミーアは先代のテネリタスに頼み込みマーレ自身が手を下す事を止めてくれたのた。

 

結果、マーレ自身は手を下さず、代わりに先代達がその手に血を染めることとなった。

と言っても、ロドン達はそこまで嫌悪感は無かった。何故なら、彼らは生前、人の命を多く奪ったのだから……

 

「しかし、上層部の人間を殺害する事にはお主は反対していなかったな? 」

 

ロドンはこれには意外と思っていた。テネリタスは7代目から戦闘には介入さず、絶対不可侵と絶対守護を生業としていた。

ロドンは殺害事態を反対するかと思いきや、それに反対しようともしないミーアに対して好奇心が芽生えていた。

 

「……私は、この子が創る世界を信じています。誰も苦しまず、人類全員が幸せに暮らせるのなら私はどんな事でも受け入れ、どんな事でもします。でも、この子の手は…… 」

 

「汚したくないと? 」

 

ロドンの問に、ミーアは小さく頷いた。

 

「傲慢だな 」

 

「分かっています……ですが…… 」

 

「……別に良いが、そいつの意思は固い。いずれは自ら手を汚すつもりだ。それを忘れるな 」

 

「……はい 」

 

「当方もそやつの世界に賛同している。だから今日、刀を血で染めたのだ。そやつの世界は……優しいからな 」

 

「貴方も……そのような世界を目指したのですか? 」

 

興味本位での質問にロドンは俯かせ、部屋から出ていこうとした。

 

「……英雄と呼ばれたからな 」

 

目指したという意味なのか、ロドンはそれ以上何も言わず部屋から出ていった。

静寂と月明かりが部屋を支配する中、ミーアはマーレの頭を愛しく撫でた。

 

「マーレ……貴方が考えてる世界は確かに誰にとっても優しく、人類の理想郷に近い。……でも貴方自身も幸せにならないと意味ないのよ……? 」

 

そう言ってミーアは月明かりが灯る部屋の中、静かに目を閉じてマーレのそばにいた。

手を繋ぎ、もう離れないように……

 

 




優海君はコントローラーごと動かすタイプ。
レースゲームだとカーブの時、絶対体を曲げます。

もしもの話(R-18)を観測しますか?

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