もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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どうも皆さんこんにちは!
重桜編が終わり、さぁ次の舞台へGO!とは行くのはちょっとアレなので、1つの編を終える事に幕間の物語見たいなのを2,3話ぐらい作ろうと思います。
本編ではすごくシリアス線なので、この幕間だけでもほのぼの路線で行こうと思います。
まぁ、たまにシリアス路線でもありますが……

この幕間の物語では、主にキャラとの絡みや、テネリタスの一面を見せようと思います。

それでは、幕間の物語をお楽しみ下さい


第2部 幕間の物語 第一幕
月の下の露天風呂と嫉妬した蛇と一緒に


風が運ぶ潮の香りがする。

春の日差しが柔らかく、空を飛ぶカモメが鳴きながら空を泳ぐように飛んでいた。

 

「なんかこの感じ……初めてアズールレーンの基地に来たみたいだなぁ 」

 

まるで過去にタイムスリップでもしたかのような感覚だった。

そう言えば、指揮官に着任した時も今のような春の時期だった。そう言えば最初にあったKAN-SENはユニコーンで、ユーちゃんを探しに回ったっけ……あれから1年かぁ……なんだか随分昔のような気がするけど、それぐらいしか経っていないのが驚きだ。

 

「あら、ここが新しい基地なのね。いい場所じゃない 」

 

「中々広々としていますね。開放的で、伸び伸びと暮らせそうですね 」

 

次々と皆も艦から降りて、この基地の空気を味わった。

さて、聞くところによると案内の人……さしずめロイヤルメイド隊が来る頃だと思うけど……

そんな事を考えていると、後ろから大勢の足音が聞こえてきた。噂をすればなんとやらだ。

俺は後ろに振り返ると、懐かしいメイド服姿の人達が俺の目の前にいた。

 

「おかえりなさいませ、ご主人様 」

 

メイド達の先導を立ち、優雅にスカートを小さくたくし上げて挨拶を交わした彼女の名前を忘れる訳が無い。

ロイヤルメイド隊のメイド長【ベルファスト】……相変わらず優雅で規律正しい立ち振る舞いだった。

 

「うん、ただいま 」

 

ちゃんと戻ったよと伝わるように、俺はベルファスト笑顔を向けた。

 

「……本当にお戻りになられたのですね 」

 

「うん……遅くなったね 」

 

「……5秒お待ちください 」

 

そう言って5秒間、ベルファストは体ごと後ろに振り向いた。目の当たりを手で擦った所から、涙を拭ったのだろうと察した。

きっかり5秒間、ベルファストは涙を吹き、いつも通りの態度をとった。

 

「お待たせ致しました。お荷物等は他のメイドがお部屋まで運びます。まず最初にご案内する場所がありますので、どうぞついてきてください 」

 

他のメイド隊が荷物を預かり、俺たちは手ぶらでベルファストについて行った。

春の訪れを祝うように桜が咲き誇っており、離れたばかりの重桜の景色と重ねる。こっちの見る桜も中々いい感じだ。

 

こうして歩いてみると、ほとんど景色や道は前の基地とあまり変わらなかった。

新しい場所に来たよりかは、戻ってきたというか意識が大きかった。

 

「なんかあまり変わってないね 」

 

「はい、確かに外はあまり変わりませんが、設備等は増設しており、内装も変わっております 」

ふ〜ん……大まかに変えたのは中身なのか……確かにあちこち建物や寮らしき建物があった。

合同基地と言うから、かなり大規模な基地になったのだろう。

 

「優海、ちょっと良いですか? 」

 

辺りをキョロキョロと見渡していると、不意に天城母さんに肩を叩かれた。

何故か小声だってので、俺も小声でベルファストに気づからないように話した。

 

「どうしたの? 」

 

「あの……この猫……みたいな生き物を捕まえたけど……何かしらこれ 」

 

「にゃす! 」

 

「……え、何これ? 」

 

天城母さんが抱き持っていたのは未知の生物だった。いや、なんか猫っぽいけど体型が全体的に丸っぽいし、なんかドヤ顔してるし……何これ?初めて見るんだけど……少なくとも俺が知っている猫とは違う。

これには他の人たちも動揺が隠せず、それに気づいたベルファストが説明をしてくれた。

 

「あぁ、それは明石様が開発されたロボット【オフニャ】でございます。戦闘での指揮の支援等をしてくれる大変頼もしい存在でございます 」

 

「そうかロボット……えぇ!?これロボットなの!?嘘でしょ!? 」

 

「まぁ……これが機械仕掛けとは…… 」

 

これには俺以外も驚いた。

こんな愛らしい姿の正体がまさかのロボットとは……試しに天城母さんが抱いてるオフニャを指でつつくと、餅のようなプニプニとした感触がこれまた癖になりそうだった。

しかしオフニャ自身は嫌だったのか、天城母さんの腕から離れ、そのままどこかに行ってしまった。

 

「あ〜行ってしまった……ごめん、母さん 」

 

「別に良いのですよ。ふふ、ああして抱っこしたのは、優海がまだ小さかった頃以来でしょうか 」

 

「あ〜俺が廊下で寝て布団に運んでもらった時の頃か〜いやぁ恥ずかしいなぁ…… 」

 

昔話に華をさかせ、俺達は歩いた疲れも忘れて語りに語った。

いつの間にか目の前に大きな建物が見え、ベルファストはそこで一旦止まった。

建物は白く、基地では無く恐らくだがロイヤルの寮だろう。

城と思わせるような装飾と形は、まさに王家という名に相応しかった。

 

「到着致しました。ロイヤル寮にて、皆さんがお待ちしております。どうぞ中へ 」

 

ベルファストが扉を開け、中に入ると大理石の床に赤い絨毯が敷かれていた。

流石ロイヤルと言うべきか、外とは別世界のようだった。ベルファストを先導に廊下を歩き、いつしか巨大な扉の前に立った。多分パーティー会場の扉か何かだろう。

 

「ご主人様、どうぞお開きください 」

 

ベルファストは礼をしながら扉から離れ、扉を開けさせるようにした。俺は扉の前に立ち、扉のドアノブに手をかけた。

何となくだが、扉の奥に沢山の人がいる気配がした。

俺の帰りを待ってくれていた人達が、この扉の奥にいるんだ。

ドアノブをゆっくりと押し、重い扉を思いっきり押した。

 

瞬間、何かのクラッカーの破裂音と共に紙吹雪が舞いちった。破裂音に驚いたせいで無心になってしまい洗礼を受けるように紙が俺の頭に巻き付かれた。

しばらくして意識が戻り、目の前には懐かしい人々の笑顔があった。

 

「「おかえりなさい!指揮官!! 」」

 

皆が同時にそう言った。待っていたと言わんばかりに俺を祝福し、中には帰って来たことで涙を流した子もいた。それにつられて……いや、いつの間にか嬉しさで俺も涙を流していた。

 

「指揮官! 」

 

俺の姿を見た途端、颯爽と俺の元へと駆け寄ったKAN-SENが俺の胸に飛びついてそのまま抱きついた。長い銀髪の長髪に、軍帽で顔は見えないが、間違いない、エンタープライズだった。

 

「やっと……戻って来たんだな、指揮官……! 」

 

「……うん、ただいま。エンタープライズ 」

 

俺の服の裾をギュッと握りしめたまま、エンタープライズはそのまま涙を流して抱きとめた。

こういうのに厳しい赤城姉さんの反応のちらりと見ると、赤城姉さんはこの場の空気を読んでなのか、好きにしなさいと言わんばかりに目を閉じて頷いてくれた。

 

「っ……すまない指揮官。貴方が帰ってきた事実を目の前にしたら……体が勝手に貴方の元に行きたがっていた 」

 

そう言ってエンタープライズは涙を吹き、申し訳なさそうに俺から離れた。周りの目もあってなのか、自分の行動に羞恥心を感じてそうに顔を赤くし、帽子を深く被った。

 

「ヒュー、流石ユニオンの英雄。見せつけてくれるねぇ 」

 

笑いながらそういう男の人の声が聞こえた。KAN-SENでは無く、人間の男。それにこの声、聞き間違える事なんて無かった。

 

茶髪に赤髪のメッシュに、帰りを待っていたかのように腕を組んでたその人は、笑って俺を迎えてくれた。

 

「ジン……さん 」

 

「よぉ、久しぶりだな。優海 」

 

「あの……手紙ありがとうございます。俺、あの手紙で戻るって決めたんです 」

 

「だぁぁ書いた本人の前でそんなん言うな!恥ずかしい! 」

 

そう言ってジンさんはそっぽ向いてしまい、恥ずかしさのせいか頭を搔いた。

 

「……なんか随分とほんわかした雰囲気だな。それがお前の素か? 」

 

「え……あ、まぁそうですね 」

 

そうだ。俺は今までマーレさんとして生きてきたから、天城優海としての性格は他の人達には見せていない。ジンさんはそれを聞いたのだ。

 

「まぁ、でもそんなには変わらないような気もするけどね 」

 

ジンさんの後ろからまた懐かしい声が聞こえた。しっかりと凛とした声は、このパーティー中の中でもしっかりと聞き取れた。

 

「おぉ、リアか。それにリフォルとネージュも来たか 」

 

「当然よ。……おかえりなさいと言うのは変かしら 」

 

「いえ、変じゃありませんよ。……ただいまです。リアさん 」

 

リアさんと握手を交わし、次は相変わらず気だるげそうなリフォルさんと目を合わした。

ダボダボな白衣とボサボサの髪の毛からして、随分と急いで起きたのだろうか?

 

「……ふぁ、顔を見たから……私はこの辺で…… 」

 

「ち、ちょっとリフォルさん!折角なんですから最後までいましょうよ! 」

 

顔を見たからとこの場から立ち去るリフォルさんを、ネージュさんが腕を組んで必死に止めていた。

力的にはネージュさんの方が上な為、リフォルさんは諦めてネージュさんに持たれるように立った。

 

「もう〜!自分で立ってくださいよ〜! 」

 

「いや〜ネージュのこの栄養満点の2つの袋が柔らかくて丁度良い…… 」

 

「きゃっ……もう!どこ触ってるんですか!? 」

 

「ううむ……柔らかい……また成長した?」

 

「リフォルさん!! 」

 

リフォルさんはネージュさんの柔らかな胸部にうずくまってしまい、ネージュさんはそれを引き離そうした。いつの間にか立場が逆転してるが……良いのだろうか。

しかし、ネージュさんが抵抗してるせいで巨大な2つの胸が上下左右に激しく揺れ……少し目のやり場に困ってしまい、目を背ける。

 

「お、そんなに柔らかいのか〜じゃあ俺もちょっとだけ…… 」

 

「触ったら貴方の腕をへし折って上に報告するわよ? 」

 

「ヒェッ……すんません…… 」

 

リアさんがジンさんの腕をへし折るぐらい強く握りしめており、ジンさんが青い顔をして滝のような汗を流していた。

 

「……私だってあるにはあるんだから…… 」

 

「え?何だって!? 」

 

「な、なんでもないわよ! 」

 

「イデデデデ!!痛い痛い!腕へし折る気か!? 」

 

流石に悪いと思ったのか、リアさんはジンさんの右腕を離した。そして、何故かネージュさんの方を見ながら虚しい感じをしながら自身の胸を撫でていた。

 

「ふふ、賑やかなお友達ですね 」

 

天城母さんがこちらに近づき、ジンさん達に挨拶をした。

 

「こんにちは。優海がお世話になりましたね 」

 

「この人が……優海の母さんか……いや〜デカいn 」

 

ジンさんが何かを言おうとした瞬間、リフォルさんが血管を浮かばせるぐらい物凄い力でジンさんの腕を握りつぶし、骨が砕けるわうな鈍い音が聞こえた。

その音と共にジンさんは卒倒し、悶絶しながら地面に倒れた。

 

「空気を読みなさいよ……すみません、うちの馬鹿が…… 」

 

「いえいえ、とんでもない。……手紙の件、感謝しています。貴方方のお陰で、優海は前に進みました。本当に……ありがとうございます 」

 

そう言って天城母さんは深く頭を下げて感謝した。俺としても、あの手紙が無ければもしかしたら戻らなかったのかもしれない。本当に、感謝してもしきれなかった。

 

「いえ、感謝するべき人は他にいます 」

 

ネージュさんが誰かに道を譲るように1歩右に移動すると、その奥から深い緑色の軍服を着た人がいた。

コツコツと地面と靴が触れ合う足音を聞きながら、その人の姿を見つめた。

 

貫禄ある髭に、細い目ながらも優しさが伝わる目に眼鏡をかけていた。間違いない、あの人だった。

 

「お久しぶりですね、優海君 」

 

「オセアンさん!良かった……無事だったんですね! 」

 

オセアンさんはアズールレーン上層部の1人だ。上層部が壊滅し、死亡者も出たと聞いた時は本当に心配したが、今目の前には確かにオセアンさんがいた。しかしよく見ると、確かに無事だったのだが、左目には包帯が巻き付かれていた。

 

「……左目、どうしたんですか? 」

 

「あぁ、これですか?大した傷ではありませんよ。少し襲撃を受けた際、他の人を庇って出来た傷ですから 」

 

そう言って少し誇らしげにオセアンさんは左目の包帯を撫でるように触った。

 

「……湿っぽい話は後にしましょう。貴方が天城さんですね? 」

 

「はい、貴方が優海を救い、育ててくれてのですね……本当に感謝してもしきれません 」

 

「いえ、私は優海君に辛い思いをさせてしまった愚か者です。自分の息子に姿が似てるからと、自分の息子に仕立て上げ、望まない形で指揮官にさせたのですから…… 本当は真っ先に貴方達の元に帰すべきだったのに…… 」

 

そう言って、オセアンさんは帽子を脱ぎ、母さんと姉さん達に向かって深く頭を下げた。

 

違う。愚か者なんかじゃない。そんな言葉を否定したくて、俺はオセアンさんの前に出た。

 

「そ、そんな訳無いですよ!オセアンさんは俺を助けてくれて、一生懸命育ててくれて……あの……まるで、父さん見たいで…… 」

 

何言ってるんだ俺は……そもそもオセアンさんはマーレさんの父親なんだから父さんなのは当たり前だろ!

何がなんだか分からず混乱してしまい、俺は言葉を詰まってしまった。

 

やはり可笑しいと思ったのか、オセアンさんと天城母さんは小さく笑った。

 

「やはり、良い子ですね 」

 

「はい、私の自慢の……息子です 」

 

何故かオセアンと天城母さんで、話が進んでおり、訳が分からずさらに混乱してしまった。

 

そのまま談笑は続き、俺は母さんと姉さん達と共に、懐かしいKAN-SEN達と一緒にパーティーを楽しんだ。

 

「指揮官様〜この後私と一緒に1曲いかがですか? 」

 

「イラストリアス!ん〜どうしようかな…… 」

 

「ダメよ。船旅で疲れてるからゆっくりしていきなさい? 」

 

……そう言って笑顔なのに凄い剣幕の赤城姉さんに止められた。

申し訳ながらもイラストリアスの誘いを断り、またどこかで埋め合わせすると約束した。

 

「ねぇねぇ指揮官!あっちに凄い美味しい料理があるから一緒に食べない? 」

 

「ホーネットか、へぇ〜じゃあそっちに行こうかな…… 」

 

「優海、それならこっちで取り分けておいたわ 」

 

その後も、何かと理由をつけて赤城姉さんが他のKAN-SENとの交流を最小限に抑えていた。

別に船旅でそんなに疲れてはいないんだけどなぁ……

 

「ねぇ、赤城姉さん。俺そんなに疲れてないし、大丈夫だよ? 」

 

「ダメよ。あんな肩丸出しとか胸の殆どをさらけ出してるあばずれ達に優海は渡せないわ…… 」

 

そっちが本音なのね……というか赤城姉さん、服装の事だったら人の事言えて無いんだけどなぁ。

でも言ったらなんだか後が面倒臭いのでここは一先ず黙っておく。

 

しかし、パーティー会場を歩き回って分かったが、ここには鉄血のKAN-SEN達もいることに気づいた。

まぁ、アズールレーンとレッドアクシズが同盟を組んで、ここはその合同基地なのだから、当然と言えば当然だろう。

 

「あら〜?指揮官と〜赤城達じゃないの〜 」

 

顔を赤くし、べろんべろんの状態でこちらに絡んできたのはプリンツ・オイゲンだった。

最初は誰かと見間違いかなと思ったが、銀髪のツインテールに赤のメッシュ、何より顔を覚えているので間違いないのだが……性格が変わっていた。

 

いつもはもっとクールというか……なんか魅惑、いや、小悪魔って言えばいいのかな?余裕がある感じの性格だったのに、今は絡んでくる酔っ払いと言うしかほかなかった。

 

「ここには中々いいお酒が入ってるくわね〜!ほら、指揮官も飲んで飲んで〜 」

 

「い、いや俺はまだ未成年なので…… 」

 

俺は生まれて来てまだ18年しか経っていない。つまり未成年なのでまだお酒を飲む訳には行かない。

それなのにオイゲンは左手で頬を掴み、強引にお酒を飲ませようとしていた。

 

「ちょっとぐらいいいじゃないの〜ほらほら〜 」

 

「ちょっと〜、じゃないのよ!そんなに気安く優海に触らないで貰えるかしら!ああもう酒臭い! 」

 

そう怒りながら、赤城姉さんはそのままオイゲンをそのままどこかの場所まで引っ張った。

そのせいで俺は1人になり、それをチャンスだと思ってかKAN-SEN達が俺の事をダンスやら食事やら誘ってきた。

洪水のように押し寄せる誘いに俺は全て受け入れ、時間の流れも忘れてパーティーを楽しんだ。

 

そのせいで太陽は沈み、いつの間にか夜を迎えていた。

酔いつぶれた人、疲れた人はそのまま自分の部屋に戻り、賑やかだった場所が静かになった。

母さん達も酔いつぶれた人達を介抱したりして、いつの間にか俺一人になっていた。

お開き状態のパーティー会場を、メイド達が片付けており、邪魔にならないようにテラスに出た。

 

まだ少し冷たい夜風に当たりながら、俺はここから見える海を眺めた。

 

「ここにいたのね 」

 

探していたかのように声をかけられ、俺は顔を見ずともそれが誰だか分かった。

いや、ここに来てからある意味、1番会いたかったKAN-SENが後ろにいた。

後ろに振り返ると、そこにはいつもの黒い服を来ていた鉄血のリーダー的存在、ビスマルクがいた。

 

「パーティーの時見なかったから、この基地にはいないのかと思ったよ 」

 

「あまり賑やかな所は苦手なの。……私との約束、覚えているかしら 」

 

あの時の約束とは、俺がアズールレーンとレッドアクシズとの同盟の際に、ビスマルクからの手紙で書かれた内容の事だ。

 

同盟を受ける際、俺一人で鉄血に行くという条件があったのだが、オロチとの最終決戦の最後、俺は意識を失い、コネクターに意識を預けた状態だったので、その約束は果たされなかった。

今になってその約束が果たされる事が出来るという訳なのだが……

 

「間違えてたらごめんなさい……多分、俺の艤装やコネクターの力の解析の為に、鉄血に行くんだよね……? 」

 

「……そうよ 」

 

恐る恐る尋ねた理由が当たり、やっぱりかと俺は申し訳ない気持ちになった。

 

「だとしたら……ごめん。もうコネクターはいないし、セイレーンの力もあんまり残ってないんだ 」

 

ビスマルクが1番欲していた物を捨ててしまい、約束が半分踏みにじった事を俺は謝罪した。

ビスマルクは驚きながら言葉を詰まらせ、立て直すように咳払いをした。

 

「何故謝るの……貴方の艤装も他のとは違うから、その分調べるに越したことはないわ 」

 

「……てっきり約束は無しにされて同盟から抜けると思ってた 」

 

「私はそこまで愚かじゃ無いし、小さくもないわ。……それで、貴方はいつ鉄血に来るのかしら 」

 

それもそうだ。なるべく早い方がいいとは思うけど、折角アズールレーンに戻ったからか、もう少しここにいたいというか気持ちもあった。

2つの気持ちが天秤にかけられ、両方が同じ高さになるように見積もり続けた結果。俺は答えを出した。

 

「……2週間、ここに居て良いかな?」

 

「分かったわ。じゃあ2週間後、貴方の元に来るわ 」

 

1ヶ月の半分の長くて短いような2週間。ビスマルクはこれを了承してくれた。それに……俺にはもう1つの約束だってあるのだから。

話を終え、ビスマルクはテラスから中へ入ろうとしたのだが何故か足を止めた。

 

「……そう言えば、ここの重桜寮の近くに露天風呂があるらしいわよ。」

 

「え?どうしてそんな事を?」

 

「……ただの気まぐれよ 」

 

そう言ってビスマルクはテラスから姿を消してしまった。しかし露天風呂かぁ……小さい頃に行ったきりでもう随分と入ってないなぁ……。よくよく考えてみると、温泉なんて随分と久しぶりじゃないかな?

折角言ってくれたんだし、入ってみよう。

……KAN-SEN達が居ないことを祈ろう。多分いると入ってもいいと言われてこっちが混乱しちゃうから。

 

ロイヤル寮から外へ出て、道にある街灯が夜道を照らしてくれていた。お陰で迷う事も怖い気持ちも起きず、俺は重桜寮へ向かった。……と思いきや重大な事を忘れていた。

 

「……あ、道聞くの忘れてた…… 」

 

雰囲気とかが、前にいた基地とさほど変わっていなかったから、すっかり前と同じ構造だろうと考えていたが、そんな訳無い。急いで誰かに聞くか地図を見ようかと思ったが、こんな夜だ。誰もいないし近くに地図は無い。

はっきり言って迷子になった。

 

「ど……どうしよう…… 」

 

来た道を戻ろうにも、恥ずかしながらどうやって歩いたか覚えておらず、手詰まり状態になった。

適当に歩いて他のKAN-SEN達と出会って道を教えようかと考えるものの、こんな夜更けに誰かが歩いてる事なんて無いだろう。

そんな時、コツコツと靴底と地面がぶつかり合う足音が聞こえ、希望が生まれた。

徐々に足音が大きくなり、街灯によって姿が顕になった。腰まで長い白髪に赤い目を持った人、オロチさんがそこにはいた。

 

「あら、優海じゃない。どうしたの? 」

 

「え?あ、いや〜ちょっと散歩をしたり…… 」

 

迷子になった。なんて言うのも恥ずかしくここはあえて散歩したと言う。そこから何気なく重桜寮への行き方や、自分の部屋の行き方を訪ねたら問題無い。

そう……考えていたのに、オロチさんはそんな考えはお見通しと言わんばかりの笑みと視線を向けていた。

 

「ふふ、どうせ迷子でしょ?カッコつけなくていいのに〜 」

 

「ば……バレてる…… 」

 

迷子になった事実がバレてしまい、胸の奥から羞恥心が湧き上がり、そのままオロチさんと顔を合わせずらくなり、両手で顔を覆った。

その反応を見たオロチさんはクスクスとからかうように笑い、羞恥の中に少しの怒りが起こった。怒りといっても、ほんのじゃれつく程度の怒りだ。

 

「どこに行こうとしたの?お姉さんが一緒に行ってあげるから〜 」

 

まるで小さい子供に尋ねるような声のトーンと言葉遣いで、俺の中のプライドがなんだか許さなかった。

でもここで来て道を尋ねなくてまた迷子になるのは避けたい。

 

「えぇと……重桜寮の近くに露天風呂があると聞いて…… 」

 

「他のKAN-SEN達が入ってるところ覗こうとしたの? 」

 

「違いますっ!!温泉に久しぶりに入りたいだけです!もちろん誰かが入ってたら諦めますよ!! 」

 

明らかな否定を主張するように夜中に叫んでしまった。叫んだり、からかわれたりしたせいなのか妙に疲れてしまい、ゼェゼェと息を切らしていた自分がいた。

 

「はいはい、分かってるわよ。この時間にお風呂に入ってる子はいないから、安心して入れるわよ? 」

 

「そ……そうですか…… 」

 

それなら良かったと安心し、俺はオロチさんと一緒に重桜寮へと歩いた。

しばらくして、ようやく建物が見え、和風の建物が目に映った。恐らくここが重桜寮だろう。

 

「この隣が露天風呂よ。その他にも、電気風呂やジャグラー等、結構色んなお風呂があるわよ 」

 

「へ〜楽しみだな〜! 」

 

早速温泉の入口に入ろうとしたが、オロチさんが僕の腕を掴んで離さなかった。

妙に力を入れており、笑顔のまま僕の腕を掴んで離さず、動けなかった。

 

「ん〜ここまで来てお礼が無いのはちょっと味気ないわよ……ね? 」

 

「あ、そうだった……ありがとうございます。オロチさん 」

 

「あぁそうじゃなくて、もっと別のお礼が欲しいな〜って 」

 

別のお礼……?と言っても何もあげる物も無いし、何かをする事も出来ない。俺の頭の上には?マークが浮かび上がり、オロチさんはニヤリと妖しく笑った。

 

「私と一緒に……お風呂に入らない? 」

 

……………………??????

長い間意識を失い、長い長考と宇宙が見えたような気がした俺はようやく意識を取り戻した。

そしてようやく言葉の意味を理解し、顔から火が出るほど顔が熱く、赤くなった。

 

「な……なななななな何言ってるんですか!? 」

 

「これまた随分と面白い反応ね。ふふ、可愛い♡ 」

 

「かわ……!?兎に角、ダメです!それはダメです! 」

 

オロチさんの要望に全力で否定し、オロチさんを拒むように後ろにそっぽ向いた。しかし、オロチさんの攻め手は止まらなかった。

 

「え〜だってここまで案内した他にも〜重桜にいた時、貴方をマーレの攻撃から命懸けで守ったのよ〜?私の言う事をひとつぐらい、聞いてもいいじゃないのかな〜? 」

 

「うぐ……そう言われると…… 」

 

確かに、マーレさんの攻撃から命懸けで守ってくれたのは感謝してるけど……流石にこのお願いは……んん、聞けない。

いや別に嫌って訳じゃ無い。嫌じゃないけど……恥ずかしい。ただその一心だった。

 

「ねぇ〜良いでしょう?オ・ネ・ガ・イ♡ 」

 

いつの間にか後ろから抱きつかれ、そのまま耳元で囁き始めた。耳元から全身にビクリと体が震えてしまい、感じた事無い感覚に戸惑っていた。

 

「……可愛いわね。写真撮ろうと 」

 

「えぇ? 」

 

オロチさんは流れるような手つきで携帯端末を取り出し、そのまま俺と一緒に写真を撮った。

取られた写真には、笑顔のオロチさんと、顔を赤くさせた恥ずかしい表情をしている俺が写っていた。

自分からみても情けない顔をしている……

 

満足そうにオロチさんは写真を眺めていると、何やら思いついたようにまた笑い始めた。

鼻歌交じりに携帯端末を操作し、しばらくしてから俺に携帯端末の画面を見せた。

 

「ふふふ……お願いを聞いてくれないと……【艦船通信】にこの写真をアップロードして、『指揮官と温泉デート♡』って投稿しちゃうぞ? 」

 

「い、いや!それだけは! 」

 

艦船通信とは、俗に言うKAN-SEN達のSNSみたいな物だ。写真を投稿して、今の現状や思ってる事を呟いて、共感したり、共有したり出来る物だ。

 

新たな発見や、意外な発見もある為、俺も結構愛用している。

 

だが今はかなりの驚異と化していた。もしこれが投稿されて全てのKAN-SEN達に行き渡ったら……

 

「ふふん、明日は凄いことになるわね〜『指揮官!これはどういう事ですか!?』とか、『私とは入ってくれなかったのに! 』とか、修羅場になる事間違いないわね〜 」

 

俺が考えていた事を、オロチさんが代わりに説明してくれた。

悪魔だ……悪魔がここにいる……。現に悪魔のような笑顔したオロチさんが目の前にいるのだから。

こうされてはもう答えは1つしか無かった。空を見上げ、覚悟を決めるように息を吸って、吐いた。

 

「……わかりました。分かりましたよ!もう〜!! 」

 

「ふふ、ありがとう。この写真はお風呂に上がったら消しておくわね〜 」

 

俺は最高潮の速さで動く心臓の鼓動を感じながら、温泉の暖簾をくぐった……

 

扉を開き中に入ると、脱衣場では無く少し広いロビーがあった。自販機やテレビ、更には卓球場といったものがあり、お風呂上がりにくつろげる事間違いないだろう。

ロビーがあるなら、男湯と女湯が別れてるのではと希望を持ったが、そんなのある訳無かった。

そもそも重桜のKAN-SEN達が使用が主だからある訳が無かった。

 

「さぁさぁ、早速脱衣場に行きましょうね〜 」

 

グイグイと腕を引っ張りながら、強引に俺は脱衣場に連れていかれた。

脱衣場の扉を開き、微かに香る温泉の匂いがし、俺はオロチさんとは離れた場所で着替えようとした。

 

「隣で脱いでも良いのよ? 」

 

誘うようにオロチさんが服の隙間から胸をチラリとみせてきた。不意にオロチさんの黒い下着が目に移り、そのまま俺はオロチさんとは反対方向のロッカーに向かった。

 

「こっちが良くないですよ!! 」

 

緊張してるせいか上手く服が抜けず、やっとの思いで上着を脱ぎ、肌着を脱いで上半身を顕にさせた。さてお次はズボンを脱ぐのだが……やはり見せられない所は徹底的にガードしなければならない。

ズボンを脱ぎ、下着は脱がずにまずはその場にあったタオルを腰に巻き、そして下着を脱いだ。

 

「オロチさん、先に入ってますからね 」

 

「は〜い!……ちょっとこのブラ、キツいかしら…… 」

 

何やら変な単語が聞こえたが、俺は勢いよく扉を開けて温泉場へと足を踏み入れた。

オロチさんにからかわれ続け、神経が疲弊し、扉に持たれかけて温泉場を見ると、予想以上に規模は大きかった。

電気風呂やジャグラーは勿論の事、足湯や寝湯、打たせ湯やサウナまであった。温泉のレジャーランドと言っても良いぐらいだ。

 

「ま、最初は体を洗おうかな…… 」

 

体を洗うため、近くにはシャワーの椅子に腰をかけ、まずは髪をお湯で濡らした。シャンプーをワンプッシュの量を手に付け、そのまま頭をゴシゴシと洗った。

 

「全く……オロチさんたら……からかいすぎだよ…… 」

 

愚痴を零しながら頭を力強く洗い、そのまま泡立てて行く。

無心で頭を洗って行くと、不意にオロチさんの下着姿を思い出してしまい、煩悩を払うように頭を激しく洗う。

 

「あああ!別に期待してるとかそういうのじゃ無いのにー! 」

 

「あら〜?何を期待してるのかしら? 」

 

オロチさん本人の声が後ろから聞こえ、混乱しながら後ろに振り向いたせいでシャンプーの泡が目に入ってしまった。目から伝わる痛みで目を瞑り、そのままシャワーのお湯で洗い流そうとしても、視界が塞がれてシャワーが操作出来なかった。

 

「あぁ大丈夫よ。私がいるから 」

 

そう言ってオロチさんはシャワーを手に取り、お湯で頭についてるシャンプーを洗い流してから、優しくシャワーでめをすすいでくれた。痛みも徐々に無くなり、ゆっくりと目を開けると、そこには白い肌を顕にした裸体のオロチさんが目の前にいた。

 

「やっほ〜大丈夫? 」

 

「わわ!だ……大丈夫れひゅ!! 」

 

裸を見ないように目を閉じて手で目を覆いながら、動揺で思わず言葉を噛んでしまった。幸い、オロチさんの裸は温泉の湯気であまり見えなかったし、僕の……アレも反応していない。とりあえずは安心する。

 

「ふふ、背中……洗うわよ? 」

 

「だ……大丈夫です! 」

 

「艦船通信…… 」

 

「ああもう!分かりました!お願いします! 」

 

たった4文字の言葉で弱味を握られてしまい、僕はそのまま背中をオロチさんに見せた。

 

「胸で洗って欲しい? 」

 

「普通にタオルでお願いします!! 」

 

「は〜い 」

 

オロチさんはタオルにボディーソープを垂らしよく泡立ててから俺の背中を洗ってくれた。

強くも弱くもない丁度いい力加減で背中を洗わられ、少し心地が良かった。

 

「痒い所は無い? 」

 

「いえ、大丈夫ですよ 」

 

背中の中心は勿論、普通では洗いにくい場所までオロチさんは丁寧に丁寧に背中を洗ってくれた。

 

「前も洗おうかしら? 」

 

「自分で洗いますから!!」

 

「ふふ、じゃあ……桶にお湯を貯めるから、待っててね……その間に前を洗っといてね 」

 

「え……シャワーは使わないんですか?その方が早く終わりますけど…… 」

 

「ふふ、まぁ良いじゃないの〜 」

 

自分の体だって洗いたい筈なのに、オロチさんはわざわざ桶にお湯を貯めた。後ろからお湯が流れる音を聞きながら、俺は前の方を丁寧に洗った。

 

「……よし、4つぐらいだったら充分かな……そっちはどう? 」

 

「あ、もう大丈夫です。」

 

「じゃあ……流していくわね 」

 

オロチさんは1つの桶を手に取り、ゆっくりと肩からお湯を流した。

 

「あの……どうしてシャワーじゃないんですか? 」

 

素朴な疑問を投げかけると、オロチさんは手をとめずに答えてくれた。

 

「それはね……長い事一緒にいられるからよ 」

 

その言葉に思わず心臓が飛び出してしまいそうな衝撃と驚きを感じてしまった。

口調からしてからかってる様子も無く、本心からそう言ってるのだとわかった。

 

「2つ目行くわね、背中の方はもう無いから、ちょっと前の方にお湯を流すわよ 」

 

2回目のお湯が流れ、体から泡は全て洗い流された。

 

「さぁ、貴方の体は洗い終わったから……次は私の体をお願いね? 」

 

「……はーい…… 」

 

「あら?随分と素直ね? 」

 

「どうせ艦船通信で弱味握られてますから…… 」

 

「ふふ、じゃあ……お願いね 」

 

ほとんど心が折れて諦めてしまい、俺はさっきのタオルでオロチさんの背中を洗おうとしたが、オロチさんから止められた。

 

「あ、私、手洗い派だから手で背中を洗ってくれない? 」

 

「…………えええええ!?て、手でぇぇぇぇ!? 」

 

手って……腕についてるこれの事だよね?五本の指があって左右にふたつあるこれの事だよね?

これを?使って?オロチさんの背中を……洗……う?

 

いやいやいやいやめっちゃ恥ずかしいし、もし何かの拍子で胸とか……他の所を触ったら…………それ以上は恥ずかしくて考えられなかった。

 

「ふふ、じゃあ……手でしっかりとお願いね? 」

 

最早逃げる事も出来ないだろう。俺は諦めて手にボディーソープを馴染ませ、オロチさんの背中を触ろうとした。

温泉の湯気でしっとりとした肌の感触が、まるで吸い付くように柔らかかった。

白く、スベスベの肌は触っただけで心地よかった。

 

「そうそう……そのまま心臓に向かうように……優しく…… 」

 

「……何だかいけないことしてるような感じ…… 」

 

「ふふ、じゃあ、このままイケナイ事……しちゃう? 」

 

「しません!しません!しませんよ! 」

 

少し早歩きで背中を洗い終え、やっとの思いで背中を洗い終えた。まだ手にオロチさんの肌の感覚を覚えており、それと同じように恥ずかしさも覚えていた。

 

「前は……ふふ、その様子じゃ無理ね。前を洗い終えたら、次は腕もお願いね 」

 

腕もやるのか………何故か変な期待がある自分を叱りながら、オロチさんが前を洗うのをじっと待った。

前を洗い終わったのか、オロチさんは俺を呼んで右腕を横に伸ばした。

 

「じゃあ……優しくお願いね? 」

 

「……し、失礼します…… 」

 

そっと腕に触れ、根元から手の平にかけてゆっくりと手を滑らせた。

 

「手の平も指もきちんと絡ませて……そうそう上手よ 」

 

オロチさんの声が何だかいけないことをしてるような気がしてならない。大丈夫だ。これは体を洗ってるだけなんだ……それだけなんだ。それ以上何もしていないんだ……

そう自分に言い聞かせ、手の平までしっかりと洗い終え、左腕に手を伸ばした。

 

左腕も無事洗い終え、あとはお湯で体に着いた泡を洗い流すだけだ。

 

「あ、洗い流すのはそこの桶を使ってね 」

 

どうやらあとのふたつは自分が洗い流すのに使う為に準備したものだったらしい。用意が良いのか、それとも狙っていたのかは定かではないが、俺は桶を1つ手に取ってゆっくりとオロチさんについている泡を洗い流した。

 

泡が洗い流され、みるみるとその裸体が顕になり、俺は急いで最後の桶を手に取って全身の泡を洗い流した。

こうして、長かった体の清めが終わった。

いや……本当に長かった。しかし、それは体感的であり、本当はそれ程時間がたっていなかった。

 

オロチさんは首から下までタオルを巻き、俺は腰から下にタオルを巻いた。

 

「じゃあ……お風呂に入りましょうかね。どこにする? 」

 

「も……もうのぼせそうなので露天風呂で終わります…… 」

 

「あら、ちょっと刺激が強かったのね。ふふ、じゃあ少し待っててね、ちょっとある物を取りに行くから 」

 

そうしてオロチさんは風呂場から出てしまい、俺は露天風呂へと移動した。

扉を開けた瞬間、夜風の少し冷たい風で少し体が冷えてしまい、急いで露天風呂へと入ろうする前に、腰に巻いたタオルを脱ぎ、そのまま熱い温泉に入る。

岩で造られた露天風呂だけど、座り心地はとても良く、岩肌が柔らかくて岩とは思えない程だった。

 

「あぁ〜極楽ぅ〜! 」

 

あまりの気持ちよさに体の力も強ばりも抜け切った。

夜に浮かぶ満月を無心で見上げ、俺はオロチさんの接近に気がつかなかった。

 

「あら、随分と気持ちよさようね。どれどれ…… 」

 

オロチさんも同じお湯に浸かり、心地よさそうに声を漏らした。

 

「んん〜これは良いわね〜ここでお酒を……と 」

 

するとオロチさんは持ってきた小さな酒瓶に小さな盃を注ぎ、ゆっくりと口をつけて飲み干した。

 

「ふぅ……美味しい。貴方も飲む? 」

 

「飲めないの知ってるでしょ? 」

 

「そうだったわね 」

 

そう言ってオロチさんは小さな1杯のお酒を飲み終え、俺と同じように夜空に浮かぶ満月を見上げた。

 

「……ねぇ、少し寄りかかって良い? 」

 

「は、はい。良いですよ 」

 

オロチさんはありがとうと言って、そのまま俺の隣に近づき、俺の肩まで寄り添ってきた。

シャンプーとボディーソープの良い匂いと、艶のあって柔らかそうな唇を見ると、何故か体の内側が熱くなってしまう。何の隔ても無い肌と肌との触れ合いが俺の思考や理性を焼き切らすようになり、耐えきれずに俺はオロチさんと顔を見合わせず、ただ無心を貫いた。

 

「……ごめんなさいね 」

 

「へ? 」

 

不意にと言うか、急にオロチさんが申し訳なさそうに謝ってきた。何が何だか分からず、俺はその場に固まって困惑した。

 

「こうして無理矢理されるのは嫌でしょう?これはね、単なる私のわがままなの 」

 

「わがまま……と言うと……? 」

 

「私が【オロチ】として実体する前……私は単なるキューブだったでしょう?そして、何時でも貴方の内側でずっと貴方の事を見てきたわ。天城よりもずっとずっと長く……でも、貴方の周りには可愛い子がいっぱいいるから……ちょっと嫉妬しちゃったかもね? 」

 

確かに、俺とオロチさんはある意味誰よりも付き合いは長かった。オロチさんはブラックキューブとして俺の中に存在し、俺が生まれた時から一緒にいた。

 

「貴方の事なら何でも知ってるのよ?好きな食べ物とかは勿論、貴方が一人称を【俺】に変えてるのも、ただの格好つけたいだけだって事もね 」

 

「な……! 」

 

恥ずかしい事実を他人に言葉にされ、穴があったら入りたい程の羞恥心で俺は逃げるように湯船に潜った。

しかしそう長くは持たず、俺は直ぐに湯船から顔を出してしまった。

 

「……良いじゃないですか別に…… 」

 

「ふふ、本当に貴方と一緒にいると飽きないわ〜 」

 

俺の行動をからかい、笑い、まるで手のひらの上で遊ばさせられてるようだった。

もうこれ以上俺の心が恥ずかしさに耐えきれないと判断し、俺はその場に立ち上がり、露天風呂から出た。

 

「あら?もう上がっちゃうの? 」

 

「なんか……もうのぼせそうなんで 」

 

「うふふ、気をつけてね。あ、貴方の部屋は司令部にあって、道なりに進めば着くはずよ〜 」

 

「あ、ありがとうございます。それじゃあ……おやすみなさい 」

 

そう言って、俺は温泉から出た後、暑さから解放される為に牛乳を1瓶飲み干した。

温泉から出たのにも関わらず、まだ体と顔が熱く、満月の月明かりの下、無事に自室に辿り着いた。

 

 

 

 

「ホント……情けない嫉妬よね……何時からかしら、こんな気持ちになったのは 」

 

オロチは自分の卑しい気持ちに向き合いながら、月見酒を1杯飲み干した。

 

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