もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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守るべきものとは

通信機越しから聞こえるのは荒れ狂う風のノイズ音だけであり、KAN-SEN達の声は届かず、モニターだって機能しなかった。

埒が明かないと判断した俺は急いで基地の外に出て外を見ると、空が黒く荒れ、一部の海上が黒い靄のような物が蠢いていた。

 

「あの黒い靄って……長門の時と同じような奴か……? 」

 

直感的だが違うようで似ているあの靄を見た俺は急いで艤装を展開し、海上に着地して急いでKAN-SEN達と合流する。通信を仕様にもあの靄で電波を乱しているのか、それとも誰かがジャミングしているのか分からないが一切の通信が出来ない状況だった。

 

「間に合ってくれ……頼む! 」

 

神に祈りながら俺は自分が出せる全速力で海を駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グッゥゥゥ……アッ……ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙! 」

 

ブラックキューブを取り込んだビスマルクは声とは言い難い叫びと共に発砲し、赤黒く染まった砲弾はリュウマを一撃で大破させるまでに至っていた。

その荒れ狂う行動は暴れ足りない獣のように荒々しく、他のKAN-SEN達も多少の被害を与えようとしていた。

 

「ちょっとビスマルク!何してるの!?こっちまで全滅させるつもりかしら!? 」

 

オイゲンの叫びはビスマルクには届いておらず、ビスマルクは無視するように攻撃を続けていた。

砲弾から何か違う漆黒の砲弾を撃つと、海上にて爆散して巨大なブラックホールを作り出した。

近くにいたセイレーンとリュウマはその引力に為す術なく引っ張られ、ブラックホールは一定時間経つと爆発を起こした。

 

「何……あの武装……? 」

 

「まるで……セイレーンのようね 」

 

それだけでは無い、ビスマルクは更にセイレーンが使えるはずのビームを上空に放ち、ビームを拡散させて光の雨を振らせた。ビームの雨にセイレーンは襲われ、投入されたリュウマを半分以上単騎で劇中して言った。

しかしそれと同時に、鉄血のKAN-SEN達はビスマルクを恐れ、畏怖していた。

 

「指揮官とも連絡取れないし……どうすればいいの!? 」

 

「とにかくここを離れましょう。ほらティルピッツも早く 」

 

「いや……でも姉さんが…… 」

 

「今はそんなこと言っている場合じゃないよ!ほらこっちこっち! 」

 

姉の変わり果てた姿を見たティルピッツはビスマルクに近づこうとするが、ハインリヒに腕を捕まれてしまいそのままティルピッツはビスマルクとの距離が離れていく一方だった。

 

戦艦だからこのまま腕を振りほどく事も出来たはずなのにも関わらず、ティルピッツは何が何だか分からず力が入らなかった。

 

それに関しては他のKAN-SEN達もそうだ。いきなりビスマルクが暴走し、敵味方見境なくこうげきしているのもそうだが、荒々しい彼女の行動は普段の彼女からは想像できない程でもあった。

 

「カミが……ワタシのネガいをカナエてクレル……! 」

苦し紛れの理性の中でビスマルクは何かを呟き始めていた。【神が願いを叶えてくれる】と、何度も何度も切望するように、神の恵みを懇願する人のように彼女は叫び続けていた。だがその叫びは轟音によってかき消され、誰にも届かずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし……間に合った! 」

 

KAN-SEN達の姿が目視で確認できた俺は一先ず安心し、彼女達に向かって大声をだす。通信機が壊れた以上、こうするしか確認のしようがないからだ。

俺の声に気づいたのはハインリヒであり、俺の声が届いたと示すように手を振ってくれた。

 

「あ、指揮官君!ビスマルクが! 」

 

「あぁ、分かってる 」

 

ビスマルクがいる方向に顔を向けると、ビスマルクがどこか苦しそうに戦っていたコトが感じられた。

普通よりも何倍もの強さを誇るが、俺はどこかそれに危険視していた。

それにあの感じ……長門と同じような雰囲気もそうだが、同時に暴走したエンタープライズと無意識に重なった。

 

「あの時のエンタープライズと同じ……なのか? 」

 

「いや違うな。あれはそれとは別のものだ 」

 

俺の考えを否定した男の声は上空から聞こえ、見上げるとマーレさんとミーアさんがこちらに向かって着水した。

剣先がギリギリ当たる距離までマーレさんが近づくと同時にKAN-SEN達は主砲を向けていた。

 

「待ってくれ皆!今はそんな時じゃない 」

 

「ですが指揮官!」

 

俺はマーレさん達を庇うように腕を広げ、マーレさん達に背中を向けた。

 

「お前は馬鹿か……こんな至近距離で敵に背中を向けるなんて撃ってくれと言ってるようなものだぞ 」

 

「でも貴方は撃ってない。それはどうしてですか? 」

 

そう、今俺はマーレさんのどんな攻撃にも対応は出来ない。背中から撃たれようが斬り伏せられようがどっちにしろ俺は艤装を粉々にされて死んでしまうだろう。

 

だがマーレさんはそれをしなかった。背中を向けた瞬間に俺をどうにか出来た筈なのにわざわざしなかった。それどころか俺達に声をかけたのだ。何か理由がある筈だと考え、俺はこの行動をとった。

 

KAN-SEN達はマーレさんを撃とうにも俺が邪魔であり、仕方なく武器を下げた。

 

「ではこちらも武器をお下げしますね 」

 

「……?貴方は武器なんて持ってないでしょう 」

 

ミーアさんには武器らしき武器が無く、俺含む一同は戸惑っていた。ミーアさんは笑って何も無い所から本の様なものを取り出すと、俺たちの周りに銀色の自立兵装らしき物が突然として現れた。

 

宙に浮かぶ兵器はミーアさんを囲むように漂っており、繋げてみるとまるで鎖みたいな武装をしていた。

 

「!?いつの間に囲んだの!? 」

 

「ずっとですよ。私の艤装の名は【ウィズダム・サルパ】と言って、分類は空母に当たりますね。この本から自立兵装(この子達)を呼び出して、この子達は如何なる原子や分子、性質にも変化する事が出来ます 」

 

「原子や分子を変化……? 」

 

「例えば、光の屈折等を計算したりしてこの子達の誘電率と透磁率を変化させて負の屈折を起こしたりすると…… 」

 

すると周りにあったサルパが急に姿を消し……いや透明になると、何も無い所から細いビームが何本も近くのセイレーンに直撃した。

 

自分の力を示すようにはるか遠くの量産型セイレーンを撃沈し、笑顔で何気なくやっている所が恐怖を植え付けられそうでもあった。

 

「そして、こんな風に炎や氷、稲妻等作ったりも出来ますよ 」

 

ミーアさんは何気無い顔でサルパから炎や氷を作り出しているが、それを0から作るのには相当の知識量が居るはずだ。しかもそれをひとつじゃ無くて無数に操作しているのがとんでもない……

ある意味マーレさんよりも恐ろしい所だ。

 

「無駄話はここまでにして本題に入ろう。優海、お前はビスマルクを助けたいか? 」

 

「なっ……そんなの当たり前ですよ!! 」

 

「だったらそれに協力してやる 」

 

「え…… 」

 

今、なんて言ったんだ?協力……?そう聞こえたようにも感じたが……?

きっと俺の顔はもう一度言ってくれと言ってるような顔をしているのだろう。マーレさんはため息をついてもう一度はっきりと言葉を繰り返した。

 

「ビスマルクを助ける為に、お前達と協力すると言ったんだ 」

 

聞き間違いでは無い言葉に皆は動揺し、少しだけ周りに混乱を与えた。無理もない、今までこちらに牙を向けて少なからずの被害を与えてきたマーレさんがいきなり協力を持ちかけたのだから。

 

「……どういうつもりですか? 」

 

こちらとしても願ってもいない最高の戦力だが何か裏がある、もしくは考えがあるのは間違い無い筈だ。問い詰めるように質問するとマーレさんはビスマルクに指をさして質問に答えた。

 

「あいつが使ったブラックキューブを取り出す為だ。あんな状態じゃ取り出す事も出来ない。その為にはお前の力が必要だ 」

 

「俺の力……?いや、そもそもブラックキューブってオロチに使ってたやつですよね?今は貴方とオロチさんが持ってるはずですよね? 」

 

問い詰めようにも戦場の真っ只中な為、砲撃で会話が途切れてしまい、もう考える余地はあまりない様だった。

 

「どうするんだ?助けるのか?見捨てるのか? 」

 

「……見捨てる訳無いでしょ。俺はビスマルクを助ける! 」

 

「あら、それなら私達がお邪魔しようかしら? 」

 

聞き覚えのある声の主の方角に振り返ると、空に無数の触手を束ね、今の状況を面白がっているように見つめている目を持ったオブザーバーが現れていた。

 

オブザーバーだけじゃない、隣にはピュリファイヤーもいた。マーレさんにやられたせいなのかかなり不機嫌そうに睨んでいた。オブザーバー達はゆっくりと落下し、俺達に立ち塞がるようにビスマルクと俺達の間に降り立ったが、戦闘態勢では無い。何かあるのか……?

 

「面白い組み合わせね、ある意味兄弟である2人が初めての協力なんて、見ものだわ 」

確かに……俺はマーレさんを基に作られたセイレーンだったから、ある意味俺はマーレさんの弟と言ってもあながち間違いでは無い。だが今更そんな事に気づいても嬉しさとかは微塵も湧いてこない。

 

「戯言はよせ。何の用だ 」

 

「そんなの決まってるじゃない。私達の目的は、進化の過程とその先の結果。それを観察するのに今この戦場は最適だもの 」

 

「傍観者気取りが……!とっとと失せろ! 」

 

マーレさんは右腕の銃を構えた。今撃てば確実に当たるのにも関わらず、オブザーバーは笑っていた。

ここでやられても復活するという事が分かっており、ここで私を倒しても無意味だと理解しているからだ。

 

「えぇ、私達とリュウマの試験データを取れたことだし、もうこの場に用は無いわ 」

 

「お前らの目的はそれって事か 」

 

「いいえ違うわ。目的の大半は貴方の排除よ 」

 

オブザーバーの声のトーンが低くなり、今まで飄々の態度が一変し、明らかな敵意をマーレさんに向けていた。

 

「貴方の目的は人類にとって進化の妨げになる……だからここで貴方を排除したいと思ったけどそれは叶わないようね 」

 

「目的……? 」

 

ここでセイレーンの謎であるセイレーンの目的についての話題があがり、KAN-SEN達は多少なりとも興味を示した。

 

「コネクターなら分かるんじゃないかしら? 」

 

わざわざ俺に説明をさせるということは、俺はセイレーンだと示す為だろうか?KAN-SEN達と過ごし、人間として生活しても貴方の本質はセイレーン。そんなふうに俺は聞こえた。

 

「……コネクターがいなくなったから、俺にはセイレーンとしての記憶がぼんやりとしか覚えてないけど。セイレーンの目的は人類の滅亡では無い。それだけは確かだ 」

 

「そんな!だってセイレーンは少なからず人類に被害を与えています!そこには重傷者は勿論命を落とした人だって…… 」

 

「恐らくそれは目的の為の犠牲だろうな。こいつらは人類の命を有象無象の物だと思っているさ 」

 

二ーミの意見にマーレさんは答え、その答えは俺も同意だ。オブザーバーの表情も正解だと言わんばかりに笑っていた。

 

「犠牲って言ってるけど……実際はそうじゃない。人類は戦いによって進化を遂げ、その戦いによって犠牲は多く生まれたのよ。それって、犠牲によって進化は遂げたと言っても過言じゃないのかしら? 」

 

「だからって人の命を奪って言い訳がない! 」

 

「あら?じゃあどうして人を殺めてはいけないのかしら? 」

 

「は……? 」

 

オブザーバーが突然何か分からない事を言い出した。

人を殺めてはいけない?そんなの当然じゃないのか?

だがオブザーバーが求めているのは多分そこじゃない。その理由だ。人を殺めていけない理由、オブザーバーはそれに問いてる。

 

だが、俺はその答えを出せなかった。人が人の命を奪うのはいけない。その事実だけは確かだがその理由は持っていなかったのだ。

 

「人を殺してはいけないなんてルールは存在しない。そんなものは人が秩序を保つ為に作り出したルールに過ぎない 」

 

俺の代わりに答えたのはマーレさんだった。しかし、その答えはあまりにも冷たかった。

 

「人の命を奪っていけないだと?日常では確かに罰せられるが、戦時中だと殺した数だけ英雄になれるのにか?笑わせる 」

 

「だからって命を奪っていい事にはならないはずだ! 」

 

「良いんだよ。少なくとも、死んでいい奴から奪うのはな 」

 

「なっ……!そんな人いる訳」

 

「いるさ、ここにな 」

 

そう言って、マーレさんは自分自身に親指を指した。

 

「俺達は人類に敵意を向け、上層部を壊滅寸前にまで追い込んだいわば人類の敵……いや、癌だ。人類にとっては死んで欲しい奴だろ? 」

 

「それは理屈です! 」

 

「だが事実だ 」

 

マーレさんの意思は変わらず、話は平行線のまま収束していった。

 

「だったら存在事消してあげるわ 」

 

「やって見せろ、傍観者 」

 

オブザーバーの合図と共に、多数の人型のエクセキュターシリーズが出現しこちらに総攻撃を開始した。

 

「これじゃビスマルクに近づけない……! 」

 

俺たちとビスマルクの道を塞ぐようにセイレーンが増えたのでこれではビスマルクに近づけず助けにはいけない。突破口を開こうにも物量があちらが圧倒している以上多少の被害は覚悟をしていたが、いきなりセイレーン達は海から突如として生まれた氷によって全身が包み込まれ、そのまま氷漬けにされてしまった。

 

「私の孫を傷つける人は……誰であろうと許しません 」

 

トーンが低く氷のように冷たい声のままミーアさんは本を開いてまたサルパを呼び出すと、サルパは宙で銀色に変色し、まるで刀の刃のようだった。

刀となったサルパは氷漬けされたセイレーンに突撃をかけ、瞬く間に氷ごとセイレーンを切り裂いた。

 

「凄い…… 」

 

「こっちも負けてはいられないわ。KAN-SENの力を見せつけてやるわ 」

 

先程の攻撃でKAN-SEN達は戦意を昂らせたのか、KAN-SEN達は破竹の勢いで量産型や人型のセイレーンを撃破していった。物量が徐々に縮まっていき、ビスマルクを助ける為の道が僅かながら生まれた。

 

「よし、後は長門の時のように助ければ…… 」

 

状況は違うが今のビスマルクの状態はどこか長門と似ているような気がした。状況が似てるなら長門と同じ様にメンタルキューブに入り込めば……

 

『やめた方がいいわ 』

 

突然どこかから聞いた事がある声を耳にし、俺はその声の必死に探し回るようにあらゆる方角に体を向けた。

 

『ポケットよ、ポケット 』

 

「ポケット? 」

 

俺はポケットに手を入れると、何かコツンと固いものが人差し指に当たったような気がした。その硬いものを握り、ポケットから出すと黒い石のような物が小さく黒く光だした。

 

これって確か……鉄血に行く前にオロチさんから貰った物だ。

 

『うんうん、やっぱり大事に持ってくれて嬉しいわ 』

 

「うぉっ!? 」

 

いきなり石からオロチさんの声が聞こえたと同時に、声と合わせるように石が光を放った。驚きで思わず石を手放してしまい、石を海に落としてしまうがマーレさんが驚異的な反射神経で石を海に落ちる前に拾ってくれた。

拾ってくれた黒い石を解析しているのか少し見つめると、マーレさんは俺に石を投げつけて返してくれた。

 

「それは恐らくオロチの一部だな 」

 

「え?オロチさんの……一部? 」

 

『まぁそんな感じよ。それよりも、あなたの力を使うのはやめなさい 』

 

「でもそれじゃあビスマルクを…… 」

 

助けられない。その言葉を言う前にオロチさんは俺の言葉を遮るように俺より先に言葉を発した。

 

『貴方自分の状態を分かってるの!?貴方は長門にそれを使ったばかりで、貴方の様態は悪化するのよ!? 』

 

「それでもです!! 」

 

俺は一際大きな声で俺の考えを押し通し、オロチさんを黙らせた。

 

「それでも俺は……俺は誰かを助けたいっ!救える力があるなら、俺はそれを使って手を伸ばして助けたいんです! 」

 

もしも、もしもここで我が身が可愛くて力を使えず、ビスマルクを助けられなかったら……俺は一生後悔してしまうから。いや、後悔すら生ぬるい、生き地獄のような呪いにかかりそうで……怖い。

 

だが、助けたい事は確かだ。自己満足なんかじゃない。ビスマルクを慕っている鉄血の皆の為に、俺はビスマルクを救う。そんな俺の意志を汲み取ったのか、オロチさんはため息をついた。

 

『……はぁ、分かったわ。全く…… 』

 

「……ありがとうございます 」

 

「だが今のビスマルクの状態では話をまともに聞かせられる状態では無い。多少なりともこいつの力は必要だろう 」

 

『そう、せめて説得にはビスマルクと距離が近いKAN-SENが必要ね 』

 

ビスマルクとの距離が近いKAN-SEN……そんなの俺が見た限りでは1人しかいない。俺はその人を呼び止めるように彼女達に近づき、声をかけた。

 

「……ティルピッツ! 」

 

「こんな時になんの用かしら 」

 

「ビスマルクを助ける方法が見つかった。でも、その為にはお前の協力が必要だ!頼む、手を貸してくれないか? 」

 

ティルピッツは驚きを隠すように口に手を当て嘘かどうかを確認するように再度俺の目を見た。

 

「……どうやら本当のようね。でも……私には出来ない 」

 

「なっ……どうして! 」

 

「私と姉さんはそれ程関係は良好じゃ無いわ。それに私は、時々姉の存在を…… 」

 

「大丈夫。必ず君の声は届くはずだ 」

 

俯いていくティルピッツの手を差し伸べ、俺は手袋越しの彼女の手を握る。ティルピッツの意識は俺に向けられた。

 

「君が姉の事を忘れていても、ビスマルクは君の事を覚えている筈だ。それに、これから話し続ければ良い。自分の趣味や、苦手な事とか何でもいい。ティルピッツがビスマルクに大してしたかった事をすればいい。だから……頼む!待っているだけじゃダメなんだ……! 」

 

不意に俺はティルピッツの冷たい手を少し力強く握り、ティルピッツは何を思ったのか、少し考え込んでいた。

 

(待っているだけじゃダメね……待つことには慣れて、孤独や寒さには慣れたつもりだけど…… )

 

そうしてティルピッツは俺の右手を挟み込むように、残って左手を握り返した。

 

「分かった。姉さんを助けましょう 」

 

「ありがとう……! 」

 

「あの!私にも手伝わせてください! 」

 

俺の話を聞いたのか、海中からU-556が飛び出してきた。

 

「私もビスマルクのアネキを助けたいんです!だって、アネキにそう誓ったから!お願いします指揮官!私も連れていってください! 」

 

U-556の目はまるで何でも貫き通す槍のように真っ直ぐで真剣な目付きだった。俺はその目を信じ、U-556の肩を叩いた。

 

「よし、行こう……!皆でビスマルクを助けるんだ 」

 

「ありがとう!指揮官! 」

 

「だが、簡単には行かないようだな 」

 

マーレさんがそう言うと同時に、ビスマルクへの道を遮るように人型のセイレーンが次々と飛び出してきた。

四方に囲まれ、逃げ場もない状況となってしまい万事休すとなってしまった。

 

「悪いけど、まだビスマルクにはあの状態になってもらうわ。まだまだ良いデータが取れそうだから邪魔しないで貰えるかしら 」

 

オブザーバーの言葉を引き金に、俺の中の何かがプツンと途切れたような気がした。腸が煮え返り、血管が沸騰する程の熱さが込み上げてきそうだ。

 

「お前……命を道具として扱うんじゃないっっ!! 」

 

「命……?おかしな事を言うわね、KAN-SENに命なんて 」

 

「無いとは言わせない!!お前らみたいに命を弄ぶ奴はぜったいに許さないっ!!」

 

敵意をむき出すように大剣を呼び出し、大剣を槍へと変形させた。敵意はオブザーバーに向けてるが、今俺がやるべき事はビスマルクを何とかする事だ。

今ビスマルクはセイレーンと戦っているが、どこか苦しそうな感じだ。声は途切れ途切れになっており、動きの間に体のよろけが見て取れる。あの状態が続けば……ビスマルクが危ない。

 

「マーレさん、時間が無い。まずは俺たちで突破口を開きましょう 」

 

「馬鹿言え、お前が援護しろ。……ちゃんとついてこいよ 」

 

「……当然です。ティルピッツ、U-556、俺たちが道を開く。後に続いてくれ 」

 

「了解よ 」

 

「はい! 」

 

「よし、行きます! 」

 

俺の合図と突撃と共にマーレさんも同時に飛び出し、ティルピッツとU-556は後について行くように少し遅れて飛び出した。

 

前面の敵だけに攻撃を集中させ、無理やりにでもビスマルクの所に辿り着く強引な作戦だが、今の所は順調だ。俺が槍で突撃し、マーレさんもそれに合わせて要所要所に的確な射撃で援護してくれている。

正直に言えば、今までの戦いの中で1番組みやすい人だった。

 

「……!マーレさん右! 」

俺は槍を二丁拳銃に変形させ、右側からマーレさんを狙うセイレーンに攻撃を仕掛けた。銃口から出たビームはマーレさんのギリギリを掠め、セイレーンを撃沈した。

 

「お前こそ左がガラ空きだ 」

 

今度はマーレさんが背後から俺を狙うセイレーンを撃沈させた。

 

「次が来るぞ。ついてこい 」

 

「マーレさんこそ! 」

 

 

 

「ん?指揮官君、あのマーレって人とすごく息が合ってるね! 」

 

「まぁ当然じゃないかしら。だって、あの二人は何度も何度も命をやり取りをしているのよ?お互いの動きは手に取るように分かるはずよ 」

 

「えぇ。今のあの二人を止めることはこの世には存在しません。今この世で最も強い存在は……あの二人しかいませんから 」

 

「指揮官とマーレが手を組む……考えただけでもゾッとしますね…… 」

 

 

 

 

「もう少しだ皆! 」

 

無数のセイレーンをなぎ払い、ビスマルクが目視で確認出来る距離まで近づけた。人型のセイレーンをあらかた片付ければ、後はビスマルクに接触すれば、俺の力で2人をビスマルクの深層世界に連れて行けるはずだ。

 

「そうはさせないわ 」

 

突如上空から巨大なビームが降り、俺たちは足止めを食らってしまった。ビームの主はオブザーバーであり、隣にいたピュリファイヤーと一緒に海上へと着地し、俺達の前に立ちはだかった。

 

「ここから先は通さないわ 」

 

「邪魔をするな! 」

 

「おいおいこっちにも構ってくれよ〜弟よ 」

 

「誰がお前らの……! 」

 

「挑発に乗るな 」

 

頭に血が登った俺を止めるようにマーレさんが前へと立ち、俺を落ち着かせた。

 

「俺が奴らを食い止める。その間にお前達はビスマルクを何とかしろ 」

 

マーレさんはこう言ってるが、それではマーレさん1人で多数のセイレーンと戦わないといけないし、それにオブザーバーとピュリファイヤーもいる。流石にマーレさんだけだと限界がある筈だ。

 

「マーレさん俺も手伝いま」

 

「お前がいると邪魔だ。それにお前はビスマルクを助けるんだろ。だったら早く行け 」

 

「でもそれじゃあ…… 」

 

「あの程度の雑魚は俺一人で十分だって言ってるんだ。早く行け 」

 

「指揮官、行きましょう 」

 

ティルピッツに言われ、俺は納得行かないながらもこの場はマーレさんに任せ、ビスマルクの元に進んだ。ピュリファイヤー達はマーレさんの攻撃に警戒してなのか、俺達をすんなりと通してくれた。

 

 

 

 

「……ふん、世話をやかせる 」

 

「あら?随分と余裕そうだけどこの戦力差をどう埋めるのかしら? 」

 

確かに周りにはエクセキュターシリーズであるセイレーンが俺を囲み、オブザーバーとピュリファイヤーも上空で俺に狙いを定めている。普通ならここでくたばっているな。

 

「おいおい、さっきまでの威勢はどうしたんだァ? 」

 

「いや、この程度で戦力差と言っているお前らが滑稽だからな 」

 

「……何ですって? 」

 

これにはオブザーバーもお怒りなのか、珍しく不服そうな目でこちらを見ていた。

 

「お前らで試してやる。本能のままに暴れる獣の力をな……! 」

 

呼吸を整え、俺の中にある【ワタツミ】と赤城から奪った【黒箱】に語りかけるように胸に手を当て、姿勢を低くした。

 

「グルルル…… 」

 

心臓がこれ以上なく大きな鼓動をあげると、俺の中の何かが暴れ出すように呼吸が荒くなり、唸り声が抑えられなかった。

 

「グォォォォォォォ!!!! 」

 

身体中が熱くなり、マグマのように破壊衝動が迸る。ついに俺は力の限り大空に向かって吠えた。咆哮と共に俺の艤装が獣のような姿へと変化した。

爪も心無しか牙のように鋭くなり、感覚も鋭敏に研ぎすまれた。

 

「何だその姿……?」

 

「さぁ……狩りの始まりだ……! 」

 

俺は獲物を狙う獣のように荒れ狂う嵐よりも力強く、敵を潰す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビスマルクっ!! 」

 

ようやくビスマルクの元へとたどり着き、ビスマルクは俺の声を聞いてすぐ様こちらに振り返った。

 

「ァ……ティルピッ……ツ? 」

 

「姉さん……! 」

 

ビスマルクは苦し紛れにティルピッツの名を呼び、それを心配したティルピッツはビスマルクの元に駆け寄った。震えるビスマルクの手をティルピッツは差し伸べようと手を伸ばしたが、ビスマルクは手を振り払い、主砲をティルピッツに向けた。

 

「ティルピッツ! 」

 

最大加速でティルピッツの肩を持ち、そのまま振り回すようにティルピッツを後ろに飛ばした。

そのまま銃口は俺に向き、あと数秒で砲弾が俺の体へと直撃してしまう。回避は不可能。だからといって防御も無理だ。絶体絶命、どうする事ない状況だったが、すんでのところでU-556がビスマルクに向けて魚雷を放ち、魚雷はビスマルクに直撃こそしなかったが、ダメージを与えた。

 

「ごめん、ありがとうU-556! 」

 

「いえ!それよりも、なんでアネキはティルピッツさんを狙ったんでしょうか…… 」

 

「……まさか、敵味方区別がついてないのか? 」

 

もしビスマルクが敵味方見境なく……というか見えるもの全て敵だと認識していたら……最早説得はあまり効果は無いのかもしれない……!

 

「ビスマルク!ティルピッツだぞ!分からないのか!? 」

 

「ガッ……テキ……ワタし……は……!カ……クノため……二…… 」

 

まるで壊れた機械のように苦しく、途切れ途切れの言葉を繰り返しながら、ビスマルクは主砲を乱発した。狙いも定まっていない砲弾は当たり構わずに着弾し、俺達には当たらなかった。

 

「姉さん!私が分からないの……? 」

 

「アネキ!私です!U-556です! 」

 

2人の声は届かず、ビスマルクは俺たちに向けて攻撃を仕掛けてきた。あまりの近さに回避は不可能だと判断した俺は武器を大盾へと変形させ、2人を守るように前に立った。

盾のおかげでダメージは無いが、これではジリ貧だ。

 

「マモる……マモるまもル……マモるまもるまもる……! 」

 

ビスマルクの様子が可笑しく、もう時間はほとんど残されていない事を示しているよであった。

どうする……どうすればいい……!?

もしもの話(R-18)を観測しますか?

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