もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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伝えたい事は

どこか冷たく寂しい海の上で、異形の形をした艤装が俺を睨んでいた。

この空気もあってなのか、全身の細胞があの艤装に恐怖しているように少し震えているようだった。

 

艤装の性能も特性も分からない今では、迂闊な行動は出来ず俺とビスマルクの間で火花が散っている睨み合いが続いていた。

 

睨み合いが続くの中、最初に手出ししたのはビスマルクだった。ビスマルクはほとんどの主砲を放ち、圧倒的な弾幕で俺を倒そうとしていた。撃ってるのはビスマルク1人だけなのにまるで一艦隊の砲撃のような弾幕は回避は困難だった。

 

ミサイルで弾幕を迎撃しようにも多勢に無勢であり、あまり効果が無い。

 

「くっそ……! 」

 

とにかく直撃の可能性がある弾だけを中心に撃ち落とし、残りの砲弾は無視して迎撃したが、無視した砲弾は着水と同時に爆発し、爆炎と爆風の衝撃でどうしてもダメージを貰ってしまう。

 

(やっぱり1人じゃキツい……!せめてサポートに回れる人がいれば…… )

 

たが今はそのサポートに回れるティルピッツとU-556はビスマルクの攻撃によってダメージを受けてしまい、まだ戦闘に戻る程回復はしていない。

かといってここで引く訳にはいかない。何とかして突破口を見つけなければ……!

 

「コノちからがアレば……ノゾンだミライに……! 」

 

「それは違うよビスマルク!それじゃお前がどうなるか分からないんだぞ!! 」

 

「ネガイがハタセルなら……私ガ……ドウナッテも…… 」

 

ビスマルクは余りある自分自身の力に苦しそうにもがきながらも、俺への攻撃を緩めなかった。むしろ激しさが増しており、回避すら許されず防御を強要された。

武器を盾へと変形させ、自分の防御に集中した。

防御に集中したおかげで何とかダメージは軽減したが、その場に動かなかった俺を狙うようにビスマルクは艤装の主砲のビームの出力をチャージしていた。

 

「まずい……! 」

 

あればっかりは防御をしても無事では済まされないと本能で察知し、何とかして回避をしようとしても周りには砲弾と氷が阻んでいるせいで回避は出来ない。残された手段は防御だけだが、それでも耐えきれるかどうか分からない。

 

「それでもやるしかない! 」

 

自分自身にそう言い聞かせるように言葉を口にし、俺は大盾に武器を変形させて防御に全神経を研ぎ澄ませた。

程なくしてビスマルクは大出力のビームを放ち、盾はそれを受け止めた。

盾で防御していてもビームの光熱が俺を襲い、盾もその熱で溶けそうになっていた。しかしビームは止まることを知らずに出力を上げ、衝撃で食い止められそうに無かった。

 

(もう……ダメだ……! )

 

諦めるように膝をつき、諦めかけていたその時だった、不意に俺の腕にある一つのお守りが目に映った。

このお守りは……長門がくれた物だ。俺が無事でいるようにと、長門自らの手で作った不格好なお守り……形がどうであれ、長門が俺の為に……無事を祈った作ったお守りを見た俺は、諦めの気持ちを吹き飛ばし、抗うように曲げた膝を伸ばす。

 

「ここ……で……諦める……ものかぁぁぁ!!! 」

 

その時、お守りが光り出すと俺の背後に巨大な白狐が現れ、口から炎の渦をビスマルクに向けて放った。

ビスマルクは直ぐに攻撃を中断して炎を避け、ビームは消えて俺は何とか無事で済んだ。

 

「え……えぇ!?」

 

何が起こったのか分からず、俺の思考はショート寸前だったが、白狐はそのまま俺に向かって突撃してきた。

 

「ちょ……待っ」

 

白狐の突撃を堪えようと身構えたが、白狐は既の所で体を赤白い炎へと変わり、炎は俺を包み込むように燃え広がった。

 

「指揮官!! 」

 

ティルピッツが今にも飛び出しそうな勢いでこちらを見つめたが、見た目よりかは熱くはなかった。しかも外側では無く、何か俺の中に何かが湧き上がるような鈍い熱さが感じられた。

もどかしく、早くここから出たいと叫んでいるようなこの熱さを解放するように力を貯め、一気に爆発させる。

 

「ぐっ……あああああああ!!! 」

 

海の上で消えない炎の柱が立ち上り、ビスマルクとティルピッツは息を呑んでその光景を見つめていた。

炎で周りにあった氷は全て溶けだし、やがて炎は消えた。

消えた炎がまるで俺に移ったかのように体が熱く、力が溢れていた。

 

(……何だが頭と腰に違和感があるような )

 

違和感を探る為、右手で頭の上の違和感を感じる部分に触れると、何やら柔らかい感触が手に伝わってきた。

……毛?いや違う。それよりももっと柔らかで、自分の皮膚を触っているかのような感覚で毛が生えている……もう少し形を探ろうと触りまくると、段々と形の全体像が見えてきた。

 

「……え?これって…… 」

 

まさかとは思いあえて答えは言わず、今度は右手で腰の方に手を当てる。すると骨盤の硬さではなく先程の頭の上に触った物と同じ毛触りが感じられた。

 

「指揮官……?その姿は……? 」

 

ティルピッツが不思議そうに見つめた姿をみると、俺の中で疑惑が確信に変わった。

間違いない。俺の頭には獣耳が生え、腰には九尾のような尻尾が生えていた。

 

「なにこれぇぇぇ!? え?尻尾?耳?どうなってるのこれ!?!? 」

 

ビスマルクがいるのにも関わらず俺は自分自身の姿の変化に戸惑ってしまい、辺りをウロウロしてしまった。

 

「って艤装もちょっと変わってるし……! 」

 

俺の艤装も少し変化していた。全体的なフォルムは炎に包まれ、まるで艤装が炎を纏っているようだった。

炎は赤く燃えており、触れても熱くはなかった。むしろ心地よい暖かさが感じられた。

腰には2本の刀が添えられており、俺が持っていた武器はなくなっていた。恐らくだが、武器は刀しか使えないようになったのだろう。

 

「何だがこれ……重桜の艤装……いや、重桜のKAN-SEN達の集大成見たいな感じだな…… 」

 

狐耳や尻尾……そして、艤装も間違いなく重桜と同じようなタイプだ。

 

「……これならいけるか? 」

 

溢れんばかりの力が溢れ出し、この艤装の使い方が頭の中で閃光のように伝わり、使い方に関しては問題無い。行けるはずだ……!

 

「行くぞビスマルク! 」

 

「ぐっ……アアアアア!!! 」

 

理性で暴走を抑える事が出来ないのか、ビスマルクは言葉という言葉を発する事はもう無かった。

行動が全て本能のままに動く獣のように荒れ狂い、最早何処に撃っているのかさえ分からなかった。だが、そのせいで弾道予測もままならず、弾幕も相当厚い。

これでは後方で回復しているティルピッツ達に危害が生まれてしまう。何とかしてビスマルクの暴走を止めなければ……

 

「遠距離からの攻撃じゃ止められない……接近戦に持ち込むしか無い……! 」

 

遠距離からチクチク攻撃しても物量で必ず押し返されてしまう。俺が出せる手と言えば、接近戦によるビスマルクの砲撃を抑えることしか無かった。

俺は1本の刀を鞘から抜き、両手で柄を力強く握った。

流石に刀の二刀流なんて教わってないし、ここで無理に手数を増やす事に集中して慣れない事をしてもかえって危険だ。

 

「……試しにやってみるか 」

 

刀を上げ、腰に力を入れて全身に力を込めた。この一振に魂を込めるように精神を研ぎ澄まし、足を1本踏み込むと同時に刀を力強く下ろした。

 

「いっ……けぇぇぇぇ!! 」

 

刀から斬撃が生まれ、海を切り裂きながらビスマルク正面の弾幕を次々と切り裂き続けた。

ビスマルクは近づいてくる斬撃に反応し砲撃をやめて回避に徹した。

ビスマルクは左に体を傾け、斬撃を易々と躱したが、そのお掛けで砲撃を止めることは出来た。

 

「今だっ! 」

 

艤装の加速で一気にビスマルクの距離を詰めるが、ビスマルクもぼうっとしている訳では無かった。ビスマルクの艤装が抵抗するように俺に向けて銃口を向けると、間髪入れずにビームと砲弾を放った。

 

迫ってきたビームは刀で切り裂き、向かってきた砲弾は艤装から生まれた炎を纏った艦載機で迎撃を行った。

だが、まだ使い慣れてないムラが目立ったせいか、いくつか取りこぼした砲弾が残ってしまい、砲弾が俺の周りに着弾した。

 

(やっぱり……この艤装いつものと取り扱いが違う……! )

 

ミサイルと思って撃った弾がまさかの艦載機であり、艦載機は突貫するように砲弾にぶつかったり、操作も全然ダメだった。 武装が分かっていても、取り回しをちゃんとしないと意味が無いのに……!

 

だが、手数ではこちらの艤装の方が上だ。今はこの艤装で何とかするしかない。

 

「次は……これだ! 」

艤装から魚雷が海中へと進んでいき、凄まじい速度でビスマルクへと襲いかかる。ビスマルクはそれに察知し、直ぐに回避へと行動を移した。

 

「今だ! 」

 

ビスマルクが回避に徹したおかげで付け入る隙が生まれ、全速力でビスマルクへと近づく。

海をかき分け、ようやくビスマルクの目の前まで接近出来た俺は、姿勢を低くして簡単に迎撃されないようにした。

 

(艤装さえ狙えば……! )

 

ビスマルクを直接狙えば下手したら致命傷を与えてしまうと脳裏に過り、艤装のダメージで動きを止めようとした。

刀を振り上げ艤装に攻撃をかけたが、艤装は刀を受け止めるように俺の攻撃を装甲で受け止めた。

 

(なっ……!硬っ……!)

 

刀と装甲の間に金属同士の鈍い音と火花が飛び散り、何とかして切断しようと強引に叩き切ろうとしたが、やはり装甲の硬さが尋常では無かった。

ビスマルクの艤装後部が尻尾で薙ぎ払うかのように俺の側面に攻撃をかけようとし、目端で確認した俺は既の所で刀で受け止めた。

しかし刀で受け止めた攻撃は側面から攻撃を仕掛けてきたので、側面への攻撃に弱い刀に亀裂が走り、折れてしまった。

 

一旦距離をとり、折れた刀を投げ捨ててもう一本の刀を鞘から抜き、構えた。

 

(あの装甲……とんでもなく硬いな……どうすれば良いんだ……? )

 

レールガンならあるいは……と思ったが、そんな考えは直ぐに振り払った。確かにレールガンの貫通力ならあの装甲を撃ち抜けるが、姿が変わってもあれはビスマルクの艤装だ。レールガンでは致命傷になりかねない。

だから、これが最後のチャンスだ……!

 

(思い出せ……教わって来た事を…… )

 

 

_優海、刀を単に振り回すだけじゃダメだ。それでは刀の切れ味を活かせない。刃筋を立て、刀の切れ味を最大限に引き出せ。刃こぼれは恥だと思え分かったな?

 

 

_優海君?刀を振る時は一方向に集中して振るのよ?そして心を落ち着かせてここだ!ていうところの線を斬るの。まだ危ないから、お姉さんと一緒に練習しようね。

 

 

小さい頃高雄さんと愛宕さんから教わった事を思い出し、精神統一するように深呼吸する。

刀の柄を強く握り、ビスマルクでは無く俺が斬るべき艤装しか俺の目には映らなかった。

 

(どこだ……俺が斬るべき所は……線はどこだ? )

 

しかしそんな物は目を凝らしたら見るものでは無い。そんな物は武人が長年戦って直感で感じるものだ。俺は武人でも何でも無いし、長く戦ってきた強者でも何でもない。一朝一夕でそんな物見える訳でも感じられるわけなんかない。

 

それでもやるしかない。倒す為じゃ無く、止めるために。

 

(集中しろ……この一振に全てをかけろ…… )

 

目が熱くなるほどに集中し、心無しかビスマルクの動きが遅く見えたような気がした。飛んでくる砲弾もスローモーションに見え、簡単に攻撃を避けることが出来た。

 

「これなら……! 」

 

先程よりも楽に攻撃を回避でき、一瞬で刀の距離まで届く事が出来た。だが、ここからだ。このチャンスを逃せばもう次はない。研ぎ澄まされた神経の中で俺が目にしているのは切るべき対象……艤装だけだった。周りの視界が暗くなり、何も聞こえず艤装の他には何も見えなかった。

その甲斐あってなのか、一筋の線が見えた。微かに光る白い線がビスマルクの艤装に浮き彫りになっていた。

 

「そ……こ……だぁぁぁぁぁ!! 」

 

叫び声を散らして線が浮き彫りになっている所に沿って刀を振り下ろし、俺とビスマルクはその場で静かに静止した。何秒経ったのか、何分経ったのか分からない一瞬が過ぎ、遂に……ビスマルクの艤装の変わり果てた艤装の左上部を切り落とした。

 

「グっ……!っぁ……! 」

 

ビスマルクが痛みを堪えるように声を殺し、艤装のフィードバックのダメージでよろけてしまった。少しとはいえ、ビスマルクを傷つけてしまった俺は武器を下ろしてビスマルクの安否を確認した。

 

「大丈夫かビスマルク!? 」

 

しかし、それが仇になってしまった。まだビスマルクは正気に戻っておらず、ビスマルクは俺の首を絞めながら押し倒し、残っている全ての主砲を俺に向けていた。

 

「テキ……!タオス……! 」

 

(まずい……! )

 

何とかしてビスマルクの腕を離そうとしたが、圧倒的にな力の差でビスマルクの腕から脱げ出すことも出来ず、主砲のチャージは着々と進んでいた。

 

だがそれ以前に首を絞められて呼吸も出来ず、俺の意識は遠のき始めた。視界も狭まり、目の前が真っ暗になったその時だった。ビスマルクの背後から水柱が立ち、1人のKAN-SENが出てきた。

 

「アネキー!! 」

 

「……!? 」

 

背後に現れたのはU-556だった。どうやら俺とビスマルクが戦っている間に回復が済んだらしく、戦闘に復帰したようだ。U-556は魚雷を全てビスマルクに向けて放った。ビスマルクは魚雷に察知し、俺への攻撃を止めて回避に徹した。回避された魚雷はビスマルクでは無く海上に浮かぶ氷に直撃し、その隙に俺は立ち上がろうとしたが、呼吸がしづらく上手く立ち上がれなかった。

 

「指揮官!こっち! 」

 

上手く立ち上がらなかった俺の肩をティルピッツが持ち、何とか俺は体勢を整える時間が貰えた。

 

「ガバッ……ゴホッ……!すまないティルピッツ…… 」

 

「それよりも今は体勢を整えて。U-556も貴方の時間稼ぎのおかげで戦闘に復帰する程回復した。……ありがとう 」

 

ティルピッツと俺は氷の陰に隠れ、U-556も俺たちに合流した。

 

「おまたせしました指揮官! 」

 

「U-556!大丈夫なのか? 」

 

「はい、もう大丈夫です。それより、ビスマルクのアネキは…… 」

 

「艤装にダメージを与えただけだから大丈夫な筈。でも、やっぱり俺には聞く耳を持ってくれない 」

 

これでは説得すらままなならない。だからこそ、ビスマルクとの距離が近いこの2人は絶対に守らなければならない。

 

「よし、俺が盾になるから、その隙に2人はビスマルクの説得と援護を頼むよ 」

 

「それじゃあ貴方の負担が増すばかりよ。私も…… 」

 

「いや、大丈夫…… 」

 

大丈夫とは言った物の、立ち上がった途端に先程のダメージが今更効いたのか、少しくらついてしまった。

 

「ほら……やっぱりダメじゃない…… 」

 

「この程度……! 」

 

「私達、そんなに頼りないかしら 」

 

「っ…… 」

 

その言葉に俺は胸が突き刺さるような痛みが走った。図星をつかれたように俺は言葉を失い、逃げるようにティルピッツから視線を逸らした。

信用してないわけじゃない。使えないとも思っていない。ただ、俺がやらなきゃいけないと思った。俺が皆を守らないといけないと思っていた。だが、それは裏を返せば、KAN-SENの事を信用してないのと同意義だ。

それは、KAN-SEN達への冒涜に過ぎなかった。

 

「指揮官、安全な場所から戦場を眺める【残酷】さが分かるかしら?砲塔を艤装したのに、それが弾薬を撃つためにあるわけではない…皮肉だと思わないか? 」

 

「それは…… 」

 

「私は、もう眺めるだけなんてしたくない。少なくとも、今は絶対に。だから指揮官、共に戦わせてくれ 」

 

ティルピッツの口調が強くなり、ティルピッツの本気が身体中にひしひしと伝わってくる。それはティルピッツだけではなく、U-556もそうだった。

 

「私もアネキの騎士だもん!私だって黙って見るなんて出来ない! 」

 

「そっか……うん、ごめん。助けたいって思ってるのは俺だけじゃない。それどころか、2人の方が大きかったね 」

 

情けないなぁ……指揮官の癖してそんな事に気づかないなんて……

 

「よし!なら、俺たち皆でビスマルクを助けよう! 」

 

「「了解! 」」

 

意気込んだ所急に氷がビスマルクの攻撃のせいなのか氷は砕け散り、ビスマルクに見つかってしまった。

 

「ミツケ……た……! 」

 

俺たち3人はビスマルクの前に立ち、敵意を向けてくるビスマルクと対面した。ビスマルクの左側は使用不可と思わせるように火花が散っており、戦闘力は著しく低下しているだろう。そこさえつけ込めば勝機はある筈だ。

 

「3方向から攻撃するぞ。俺は右、ティルピッツは左、U-556は海中から頼む 」

 

ビスマルクの艤装が強力になったとは言え、ダメージを負った状態ならばスキは生まれるはずだ。特に、損傷した左側なら攻撃が薄いはずだ。U-556が潜水したと同時に俺とティルピッツは左右からビスマルクを挟撃を仕掛けた。

 

まず、俺とティルピッツが左右から距離を保ちつつ砲撃し、ビスマルクの動きを止める。ビスマルクは二方向の攻撃に対処しようとしたが、やはり片方の武装が損傷しているため充分な対処は出来なかった。回避しようにも、ビスマルクよりもあまりある大きさの艤装のせいで動きが鈍くなっており、回避は出来ずにいた。

 

しかしその代わり装甲の硬さは異常であり、ビスマルクにはダメージを与えるのかどうか疑う程だった。

しかし、本命はU-556の攻撃だ。

 

「今だっ!! 」

 

俺の合図と同時に海中に潜伏していたU-556はビスマルクの背後で姿を現し、ビスマルクに向けて魚雷を全弾放った。魚雷を察知したビスマルクだが、俺とティルピッツの攻撃で身動きは取れず、直撃は免れない。

 

魚雷は全てビスマルクの艤装に全弾直撃し、あまりの爆風でビスマルクの姿が見えなくなった。

 

(あの装甲なら魚雷を直撃しても大丈夫な筈だ…… )

 

異常とも言えるあの強固な装甲ならダメージこそ受けるが致命傷にはならないはずだと考えた俺はこの攻撃方法を選んだ。

爆煙が晴れてビスマルクの姿がかろうじて目視すると、何とかビスマルクは攻撃に耐えていた。艤装は傷つき、戦う余力は無いはずだ……

 

「姉さん…… 」

 

「アネキ! 」

 

ビスマルクの姿に心配した2人はビスマルクに駆け寄り、様子を見ようとした。2人とビスマルクの距離は縮まり、お互いの顔がよく見える距離までになっていた。

 

「姉さん!しっかり……! 」

 

「私たちの声が聞こえますか!? 」

 

2人の声が届いてないのか、ビスマルクはそのまま顔を俯かせながら立ち尽くしていた。2人がどれだけ声をかけようにもビスマルクは無反応であり、立ったまま気を失っているのかと思ったが、それは無い。

気を失っているなら艤装は消えるはずだが……そう思って艤装を凝視すると、何やら光るものを見つけた。光ってる場所は、ティルピッツで隠れて見えづらいが、ビスマルクの主砲部分だった。

 

「しまった……!2人とも離れてっっ!! 」

 

俺の予想が正しければあれは間違いなくビーム砲のチャージだ。俺はがむしゃらにビスマルクに近づいても間に合わない。2人もビームの存在を察知し、離脱を図ろろうとしたが間に合わない……!

 

「U-556! 」

 

「え?は、はい!? 」

 

「……何かあったら姉さんを頼む 」

 

すると突然、ティルピッツがU-556を俺の方向に跳ね除け、俺は反射的にU-556を抱き止め、その衝撃で進行を防がれてしまった。

 

「ティルピッツ!! 」

 

手を伸ばそうにもティルピッツには届かず、ビスマルクはチャージを終えたと同時にビームを放った。

ビームと海がぶつかり合い、急激な温度変化によって大爆発が発生し、近くにいたティルピッツ諸共巻き込んだ。

 

「ティルピッツ!? 」

 

彼女の名を叫んだ所でティルピッツを助けられるとは限らないが、叫ばずにはいられなかった。

爆煙が消え始め、ようやく2人の姿を確認すると、何とかティルピッツは何とか首の皮一枚繋がっている状態だった。艤装も服もボロボロで、最早1歩も動けずにいた。

 

カバーに入ろうと俺とU-556はティルピッツの元に駆け寄るが、ティルピッツ本人がそれを止めるように俺達に手を伸ばしていた。

 

「邪魔……しな……いで……! 」

 

「でも…… 」

 

「いや、ここはティルピッツに任せよう 」

 

助けに入るU-556を止め、俺はティルピッツの判断に任せる。しかしU-556は納得が出来ていないのか、俺の静止を跳ね除けようとしていた。

 

「このままじゃティルピッツさんが…… 」

 

「信じよう。今俺達が出来ることはそれだけだ 」

 

この場で俺達が出来ることは無い。誰も、家族の間には入れないのだから。

出来ることと言えば見守る事だけだ。固唾を飲み、ティルピッツはゆっくりと動くので精一杯の足を1歩ずつ着実に踏み出し、ビスマルクに近づいた。

 

「ッ……!? 」

 

ティルピッツの行動にビスマルクは理解不能と思いながらも主砲を構えた。しかし、直ぐには撃たずただただ構えているだけだった。

 

「どう……したの?鉄血の指導者が……敵を……撃たないの……かしら 」

 

ふらつきながら、掠れるような声でビスマルクを煽るように語りかけてきた。

 

「貴方は……いつだってそう……冷徹で、冷静で、正しくて、全部1人で背負い込む! 」

 

「………… 」

 

「全部1人でやろうとして、他人とは協力しようとはしない……おかげで、貴方の妹だと言うことを忘れていたわ……でも、だからこそ……頼って欲しかった! 」

 

「ティ……ル……ピッ……ツ……? 」

 

ティルピッツの心の叫びでビスマルクの様子が変わり、ビスマルクは砲塔を下げ、攻撃の意志を消した。

ティルピッツとビスマルクの距離が近くなり、お互いの瞳がよく見える距離まで近づいた。

 

「だからもういいの、姉さん。もう背負い込まなくていいの 」

 

ティルピッツは優しくビスマルクに抱きつき、ビスマルクの動きは完全に止まった。ビスマルクの目に光が灯り、暴走していた意識が徐々に戻ってきたようだった。

 

「でも、私がやらないと皆が…… 」

 

「なら、私達も抗ってみせる。こんな未来、鉄血ならどうということ無いはず。そうでしょ?姉さん 」

 

その言葉を聞いたビスマルクは我に返ったのか、異形化した艤装は元の艤装へと戻り、ビスマルクの背後に取り憑いていた黒い影が消えた。黒い影から解放され、ビスマルクも腕をティルピッツの背中に回し、優しく抱き返した。

 

「ティルピッツ……今までごめんなさい。もう、大丈夫よ 」

 

「姉さん……! 」

 

正気を取り戻し、説得に成功したティルピッツは姉さんと呼びながらビスマルクを抱き続けていた。その目には、軍帽で見えづらいが確かな涙を流していた。

 

「どうやら、終わったみたいだね 」

 

戦闘がようやく終わり、俺は炎を纏った艤装から元の艤装へと戻り、獣耳も尻尾も同時に消え、元の姿へと戻った。

いやぁ……それにしても艤装だけじゃなくて姿形も変わるとは……一体これは何だったんだ?後でオロチさんにでも聞いてみるか。

 

「アネキー!戻ったんですね!良かった……良かった! 」

 

正気に戻った事を確認したU-556も、まっしぐらにビスマルクの元に駆け寄り、そのままビスマルクへと飛び込んだ。いきなりにも関わらずビスマルクはU-556を受け止め、泣いているU-556の頭を撫でていた。

 

「貴方にも迷惑をかけたわね…… 」

 

「そんな!アネキが元に戻って何よりですよ!それに、私なんか全然頼りにならなくて…… 」

 

「そんなこと無い、貴方は私の為に良くやったわ。流石は私のナイトね 」

 

「は……はい! 」

 

私のナイトと言われて嬉しかったのか、U-556は甘えるようにビスマルクに抱きついた。やはり姿相応で随分と子供らしいな。

 

さて、後はここから現実へと戻るだけだ。長門の時だと長門を助けた後に光が現れてそこから出れるはずだけど……

周りを見渡し、どこかに光が無いかと探すと、丁度よくビスマルク達の後ろの方に光が現れた。

 

「お、見つけた。皆、あそこから帰れるよ 」

 

「ふぅ、ようやく終わったわね……早く戻りましょう 」

 

「そうね。指揮官、悪いけど肩を貸して。ちょっとダメージを受けたから…… 」

 

「ちょっとどころじゃ無いだろう 」

 

俺はティルピッツに肩を貸し、足並みを揃えて光へと歩いていった。

 

「指揮官 」

 

「ん?どうしたのティルピッツ? 」

 

急に小声でティルピッツに話しかけられ、俺はティルピッツに顔を向けた。声はビスマルク達には聞こえておらず、どうやら俺にだけ話したいらしい。

 

「……いや、また後で話……す。ちょっと話す余裕が……無く……て 」

 

「うん、ゆっくり休んでて 」

 

やはりダメージが大きすぎたのか、ティルピッツは意識を失い、寝てしまった。おそらく現実でも当分は目を覚まさないだろう。 ティルピッツを落とさないようにしっかりと肩を抱き、俺達は現実へと帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ……戻ったの……か? 」

 

朧気な意識を覚醒させ、体を起こすと海上では無くどこかの岩上で倒れていた。変と思いながらも体を起こしビスマルク達の容態を知る為に俺は周りを見渡した。

近くにビスマルク達が倒れ込んでおり、急いで無事が確認すると、脈は通っており、無事である事に安堵の息を漏らした。

 

「どうやらお目覚めのようだな 」

 

「っ、マーレさん!? 」

 

俺の目の前にマーレさんとミーアさんが立ちはだかり、俺はすぐ様戦闘態勢に移行しようとしたが、上手く立ち上がれず、艤装すらも出せなかった。やはりビスマルクとの戦闘のダメージはこちらに帰ってきても影響してるせいなのか……!

 

「落ち着け、俺達にもう戦闘する意思は無い。……そちらがやる気なら受けて立つがな 」

 

「……いや、戦闘する気が無いならそれでいいです 」

 

仮に俺に何とも無くても、相手はマーレさんとミーアさんの2人、勝てる訳が無い。

 

「懸命な判断だな。さて、じゃあ目当ての物を取るとするか…… 」

 

そう言ってマーレさんは俺の横を通り過ぎ、今も尚倒れているビスマルクを見下ろすと、何かを見つけたかのように膝を曲げ、ビスマルクの傍にあった物を拾った。

拾った物はメンタルキューブと同じような立方体のキューブであり、禍々しい黒いオーラを帯びていた。

 

「それって……オロチさんのキューブ……? 」

 

黒い色に、どことなく雰囲気が似ているキューブでそう感じたが、どこか違うような気がした。それに、オロチさんのキューブはテネリタス復活の為に殆ど使った筈であり、今更オロチさんのキューブをセイレーンが開発する理由は無い。

 

「いや、これはそれとは別の奴だ 」

 

「じゃあそれは一体……? 」

 

「……まぁ、お前達の協力もあっての収穫だ。話しておこう。……これは、KAN-SEN達の本質を叶えてくれる物だ 」

 

「本質……? 」

 

マーレさんの言ってる事が理解出来ず、戦闘によって疲れ果てた頭では最早考えをまとめることも出来ず、俺はマーレさんの言葉を考えることすらままならなかった。

 

「もう話をする事は無い。撤収しますよ、ミーアさん 」

 

一足先にマーレさんは鉄血海域から離脱し、続いてミーアさんも離脱しようとしたが、何故か俺の目を見ていた。

 

「ねぇ、ちょっとお願い事があるんだけど……良い……かな? 」

 

「お願い事……? 」

 

「私の息子……オセアンの事でね…… 」

 

息子……?あ、そうか。オセアンさんは9代目、ミーアさんは8代目の当主だから、血縁関係は親子なのか。

だが、ここでお願い事とはどういうことなのだろうか。罠という事もあるにはあると思うが、実の息子に対して陥れいる事はしないだろうし、何よりミーアさんの目からそんな事は微塵も感じられない。

 

「……分かりました。内容は? 」

 

ミーアさんの目を見て、俺は信じることにした。

 

「ありがとう。もし、オセアンに会えたらこういって欲しい。【星の川が浮かぶあの場所で待ってる】って。あの子が覚えていたらきっとわかると思うから…… 」

 

「それだけ……ですか? 」

 

「うん、それに……貴方にも1つ、忠告があるの 」

 

「忠告? 」

 

「貴方の力は、自分だけじゃなくて仲間にも苦しませる事になる。……その事を、忘れないで 」

 

そう言って、ミーアさんは軽く一礼してマーレさんの後をついて行くように離脱して行った。

 

「黒いメンタルキューブに……俺の力が仲間達を苦しませる……訳……わかんない……な 」

 

急激に意識が遠のき、体と瞼が重りをつけられたように重くなり、俺はその場で倒れ込んでしまった。

どことなく鉄血のKAN-SEN達の叫び声を聴きながら、俺はゆっくりと目を閉じていった。

 

もしもの話(R-18)を観測しますか?

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