もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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幕間の物語第2幕の2話目はミレバスの事中心に書いていきます!

評価バーがひとつ増え、赤評価継続中でした!ありがとうございます!


私にとっての英雄は

アズールレーン後方支援隊、それは前線で戦うKAN-SEN達の物資の調達や資源の確保等、その名の通り後方で支援する人達の事だ。構成員は人類は勿論、ひよこの形をした生物饅頭もいる。

 

そして、それをまとめている司令官が……ジン・カービス、そしてそれを補佐するのが私リア・ミレバス……なんだけれども……

 

「……どうして私がアズールレーンの指揮官である優海の執務を手伝っているのかしらね 」

 

「ご主人様はただいま鉄血に行っておられますから……手を煩わせてしまい申し訳ございません 」

 

「良いのよ、私が言い出したのだから 」

 

そう、この基地の指揮官……というよりアズールレーンの指揮官である優海は今鉄血に出張……と言っていいのかしら。とにかく今は不在中。その為不在に生まれる執務を私とベルファストで何とかしているのだけども……これがかなり多い。今どきの書類は積み木のように椅子の高さよりも積み重なっており、物資等まとめられたデータも多い。

 

これを1人でやっている優海をある意味私は尊敬している。

 

「……あ、ここ数値間違っているわね。これじゃあ倉庫に入りきらない。あとここも間違っているわね……しかもこれ、後方支援隊のミスじゃない。全く……しっかりして欲しいわね 」

 

自分の直近の部下では無いのだけれど、疲れもあるせいか少し愚痴らしく喋ってしまった。これはマズイと一旦作業の手を止めてこめかみを押して少し休憩する。

近くにあったコーヒーを1口飲み、苦味の後味を堪能した後作業に入る。

 

「リア様、少しご休憩された方がよろしいかと 」

 

「気にしないで、もう少しで終わるから…… 」

 

「そう言って何度も続けておられますが 」

 

ベルファストが私の手を取り、無理やり作業の手を止めさせた。振り払うにもKAN-SENの前では私は赤子当然だからどうしようもない。

 

「それに本来の執務はとっくに終了されておりますね?恐らく……ご主人様に負担をかけぬよう数日先の執務をやっているのでしょう 」

 

「……いいえ、まだ終わっ」

 

「僭越ながら今日の執務内容は把握しております。嘘は良くないですよ? 」

 

不敵な笑みのベルファストを前に私は為す術なく折れてしまい、ベルファストの手が離れても私は手を動かさなかった。優海はこんな人を近くに置いているのね、中々大変そう……

 

「分かったわよ……ベルファスト 」

 

参ったと言わんばかりに両手を上げ、ベルファストは満足そうな笑みを浮かべた。

 

「これじゃあ優海が適わない訳ね。同情するわ 」

 

「褒め言葉として受け取っておきます 」

 

「ふぅ……それに貴方も貴方ね。貴方メイド長でしょ?貴方も本来の業務があるでしょうに 」

 

私の記憶が正しければベルファストはロイヤルメイド隊のメイド長だった筈……この新たな基地にはアズールレーンでは無く、重桜や鉄血の寮もあるから管理も清掃も大変な筈……それなのにこのベルファストは優海の執務までサポートしている。こう言ってはなんだけど化け物ね……

 

「ふふ、ご主人様を全力で御奉仕するのがメイドですから 」

 

「そう……それなら良いんだけどね 」

 

「リア様もジン様に御奉仕されてるとお聞きしますが? 」

 

「んぐっ!? 」

 

ベルファストのあまりの言葉に私はコーヒーを吹き出してしまいそうになり、慌てて口に含んだコーヒーを何とか飲み干した。コーヒーの苦味は驚きと入れ替わるように消え去っていた。

 

「ななな……貴方何を言い出すの!?私がジンにその……奉仕……なんて!あ、あ……有り得ないわよ!! 」

 

「……あぁ、言葉を訂正致します。ジン様のサポートをしっかりとなされておられる。という意味でございます 」

 

ベルファストは深々とお辞儀して謝罪してるけど、絶対私の姿を見て内心笑っている筈だわ……なんか気に入らないわね……あと頭を下げて体勢が少し屈んでいる状態だからベルファストの顕になっている胸の上部と谷間が嫌ほど目に映った。

何よ……私だって……あるにはある……筈よ。

 

「あの……リア様、如何されましたか? 」

 

「何でも無いわよ!それより、もういいわよ。どうせそんな事だろうと思ったわよ 」

 

「それにしては随分と取り乱してましたが…… 」

 

「あ、あれはその……と、とにかく私はもう戻るわ。もうやる事ないし 」

 

事実私は自分の執務を終えたから優海の執務をやっていた。そしてそれが終わった今もうこの執務室にいる意味が無くなった為部屋から出ようとドアノブを触れようとした。

しかし私がドアノブに触れる前にドアノブが動き、扉は開かれた。開かれたドアの先には、長い銀髪を靡かせたエンタープライズがいた。

 

「ん、すまない。当たってしまったか? 」

 

「いいえ、それよりもユニオンの英雄がどうしたのかしら 」

 

「いや、ベルファストに用があってだな…… 」

 

「ベルファストに?貴方が? 」

 

意外ね……あのエンタープライズがわざわざベルファストに頼み事だなんて……

 

「かしこまりました。では早速キッチンへと…… 」

 

「あの!メイド長はいますか!? 」

 

突然執務室に飛び出す勢いで入り込んだのはメイド服を来たKAN-SENだった。少し茶色みがかかった下ろしているツインテール……確か……グラスゴーだったかしら?

 

「グラスゴー?どうされました? 」

 

(良かった、当たってた )

 

「えーと……実は明石さんとリフォルさんがちょっとまたやらかしてしまって……その後処理をの人手が足りなくて……」

 

(何やってるのリフォルは……)

 

「そうですか……しかし私はエンタープライズ様との約束が…… 」

 

少し困ったベルファストは何故か私とエンタープライズと交互に見合い、なにか思いついたように私達を見た。

 

「リア様、お料理の方の腕は如何な程で? 」

 

「え?まぁ……人並みには出来るわよ 」

 

「リア様、申し訳ありませんが私は別件へと行きますゆえ、エンタープライズ様との約束をお願いします 」

 

「ちょ、ちょっとそんな事急に言われても! 」

 

「それではお願いします 」

 

ベルファストはそそくさとグラスゴーの後についていき、私とエンタープライズはまるで嵐が通り過ぎた後を体験したような置いてきぼりさを感じた。

 

「意外と大雑把な所があるのね……ベルファストは 」

 

「というより……大胆な所もあるからな。しかしどうするべきか…… 」

 

「そういえば、貴方確かベルファストと約束していたわね。なんの約束をしていたの?良ければ力になるけど 」

 

「い、いや……何でも無いんだ 」

 

エンタープライズは何かを隠そうと顔を背けてしまい、何故か頬を少し赤らめていた。何かを恥ずかしがっているのは見て分かった。この場から離れようとエンタープライズは執務室から出ようとしたが、それと同時に1枚のメモ用紙が落ちた。

そのメモ用紙を拾うと、綺麗で几帳面にびっしりと書かれていた文字が書かれていた。

 

「えーと……『具材は平らなものから並べる』、『ソースはメインの食材の上とパンの側面に塗る』、『切る前に味をなじませる為に重しを少し乗せて待つ』これって……サンドイッチのレシピかしら 」

 

「なっ……!か、返してくれ! 」

 

エンタープライズは目にも止まらぬ速さでメモを取り返し、頬を赤らめた顔は一瞬で真っ赤に染まり、随分と恥ずかしがっていた。

 

「……エンタープライズ、もしかして料理を始めたのかしら? 」

 

「あ……あぁ……まぁ、うん……そう……だ 」

 

「何でそんなに恥ずかしがっているのかしら……? 」

 

「それは……その……わ、私みたいな物が料理なんて……その、笑われると思ったから…… 」

 

意外と中学生みたいな思考ね……なんだか英雄の可愛らしい一面を見れた何だか得をしたような感じね。

 

……そういえば、ベルファストはキッチンと私の料理の腕を尋ねていた。察するにエンタープライズはベルファストに料理を教わっていたのでしょうね。

 

料理の腕がトップクラスのベルファストに教えを乞うのは分かるけど……エンタープライズが料理を始めた理由は分からない。少しダメもとで聞いてみようかしら……?

 

「笑わないわよ。ただ……理由は何なのかしら? 」

 

「そ、それはだな…… 」

 

乙女のように目を泳がせており、頑なにエンタープライズは料理を始めた理由を口には出さないけど、その反応でほとんど言っているようなものなのよね……

 

「……優海かしら? 」

 

半ば確信的に答えをエンタープライズに投げつけると、当の本人は静かに頷いた。屈辱的な気持ちと羞恥心が入り交じっているかのようにエンタープライズは軍帽を両手で深々と被り、そのまま地面に倒れた。

 

「何もそこまで恥ずかしがる事無いでしょ……ほら、早くキッチンに行くわよ。というより……どこのキッチンかしら 」

 

ここの基地にはキッチンと言っても複数ある。各陣営に用意された寮に1つ、そして主に指揮官が使う司令基地に一つだ。

 

「あぁ……ユニオンのキッチンを使う。ついてきてくれ 」

 

まだ羞恥のダメージが残っているのか、エンタープライズはフラフラとキッチンへと移動した。……本当に大丈夫かしら…?

 

 

 

_現時刻 ユニオン寮 キッチンにて

 

「手は洗った? 」

 

「あぁ、バッチリだ 」

 

キッチンに移動したらまずは手洗いは基本だ。食材に菌とか入ったら食べた人の体調が危うくなる。それはKAN-SENにも例外ではない。KAN-SENだって病気になったりするもの、しっかりと衛生管理はしないとね。

 

灰色エプロンを着た料理の邪魔になる長い髪を結っているポニーテール姿のエンタープライズはしっかりと手洗いしたぞと言わんばかりに両手を広げ、私に見せつけた。

 

「汚れはなし、爪の長さも大丈夫そうね。じゃあ作る料理はサンドイッチでいいのかしら? 」

 

「あぁ、指揮官との約束だからな 」

 

「じゃ、冷蔵庫から食材をとるわよ 」

 

私とエンタープライズはサンドイッチに使う食材を取りだした。まずはパン、レタス、ベーコン、トマトに、卵……具材は一応こんな所ね。

 

そして次はソース、今回作るサンドイッチなら……

 

「これを使って見ようかしら…… 」

 

「それは……ショウユという奴か? 」

 

「そ、重桜の万能調味料の【醤油】よ 」

 

サンドイッチに醤油は滅多に使わないけど、優海は重桜出身だ。どうせ優海に食べさせるなら優海好みの味付けにするべきね。

 

「さ、早速作業に取り掛かるわよ 」

 

「了解した 」

 

 

 

 

_数分後……

 

「卵を茹でてる間に他の下処理をするわよ、レタスを手でちぎって一旦ボウルに入れて。その後ベーコンを焼くわよ?良いわね? 」

 

「手で……か?包丁では無くか? 」

 

「レタスを包丁で切ると内部の組織が壊れて変色を起こしたり味が馴染みにくくなるの。だからこうして葉をちぎるようにした方が良いのよ 」

 

「な……なるほど。奥が深いんだな…… 」

 

「そうよ、1つ勉強になったわね。それじゃあここからは貴方がやってみて 」

 

エンタープライズにレタスを渡し、慣れない手つきでレタスをちぎっている彼女を見守った。

ぎこちは無いけど、着々と手順は踏んでいる。

 

「そうそう、もうその辺で良いわよ。じゃあ次はベーコンよ。油跳ねには気をつけてね 」

 

フライパンに油をひき、全体に馴染ませた所でフライパンを温める、フライパンから油のジューとした音が鳴り、いざベーコンの投入だ。置いた瞬間にフライパンがベーコンを焼く音を鳴らし、こんがりと焼いていく。

 

「やはり手つきが良いな…… 」

 

「まぁ、昔から弟と妹の世話をしてるからね。これくらいは当然よ 」

 

「弟達がいたのか 」

 

「そうね、言ってなかったもの。親が共働きしてるから、私が世話をやるしか無かったの。料理は勿論、掃除や洗濯、更には弟達の勉強の世話までしたから大変だったわ 」

 

弟と妹とは7歳ぐらい歳が離れていた為、やはり手を焼いた。喧嘩はするわ部屋は散らかすやらでこれが母親の気持ちなのかと嫌ほど体験した。

私が高校生になってからは随分と落ち着いたけど、料理ぐらいはしていた。おかげで今はこの通りね。

 

「苦労していたんだな…… 」

 

「別にそんな事思ってないわよ。そういうのが私の性に合っているから。まぁ……苦労していた事と言えば……アイツの事ばかりよ 」

 

「アイツ……ジンの事か? 」

 

「そ、とんでもない猪突猛進おぼっちゃまのジンよ 」

 

「おぼっちゃま……? 」

 

「薄々は気づいてるでしょ?彼、あの【カービス】家の一人息子よ 」

 

一際大きな油はねが、まるでエンタープライズの驚きを表しているかのように跳ね上がり、エンタープライズの皮膚を襲った。

 

「あっつ……! 」

 

「ほら気をつけなさい。……よし、ベーコンはこれくらいで良いわね。ちょうど卵も茹で終えた所だし、殻をむくわよ 」

 

鍋にある卵をお玉ですくい、ゆで卵をまずは冷水で冷やしていく。

冷水にさらすことによって沸騰したお湯の熱を持っている卵は急激な温度変化によって殻をむきやすくするとエンタープライズに説明した。

 

「はい、じゃあエンタープライズも手伝って 」

 

「あ、あぁ…… 」

 

2人がかりでゆで卵の殻をむいていき、黙々と作業は始まった。私の方はまだ良いけど、エンタープライズの方は少しボロボロむいている。慣れてない事もあると思うけど、やっぱりジンの事が気になるのかしら……

 

「……ジンの事、まだ驚いているの? 」

 

「まぁ……な。てっきりカービスというのは同姓かと思ったからな…… 」

 

「当然ね、ジン……その姓が大嫌いだから…… 」

 

「どういう事だ……? 」

 

「ジンは……お父さんからかなりの仕打ちをされてきたらしいの。帝王学を身につかせ、与えられた課目をこなさないと罰を与えられたって聞いたけど…… 」

 

私は知る限りのジンの過去をエンタープライズに話した。話して行くうちにエンタープライズの顔つきが怪しくなり、信じられないと言った表情だった。

 

「にわかには信じ難いな…… 」

 

「事実よ。でも、ジンは絶対に他の人にはそんな所は見せなかった。本当に昔から強情なんだから…… 」

 

「そういえば……貴方とジンは幼なじみだったな。という事は貴方もそれなりの地位の人なのか……? 」

 

「ふふ、私はただの一般家庭の人間よ。ジンと出会ったのは本当に奇跡みたいなものよ 」

 

ちょうど奇跡的に綺麗に卵の殻を上下にふたつ割ることに成功し、丁度いいからエンタープライズに私とジンの馴れ初めを話した。

 

 

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今から大体20年前ぐらいしかしら。本当にジンとは急に出会ったの。何ともない普通の日が続き、親が共働きの影響の中かどこか退屈で寂しい人生は、突然その普通がガラスのように壊れた。

 

家に帰っても誰もいない寂しさを少しでも拭いたくて、私は当時公園の外で本を読んでいた。他の人が叫ぶ声、風の吹く音、鳥の鳴き声が、静寂な家よりもマシだったからだ。

友達と遊べば良いじゃないかと言われると思うけど、私ってこの頃から結構キツめの性格だったからあまり良い人には思われていなかった。

悪い人では無いけど固くて誘いづらい人、皆から見た私はそんなのだった。

 

今日も静かに本を読んでいる時、木の上から何かをカサカサと葉っぱが揺れ、何か上から落ちてきた。

 

_よっ!

 

_……え、え……と、貴方どこから出て来たの?

 

_木登りしたらドジって落ちた!

 

公園のベンチに座っていたら急に目の前から男の子が降りてきた。男の子は地面にぶつかりながらも平気な顔をしており、怪我とかなさそうだった。本当にこの頃から体の構造が化け物並だったのよね……

 

_怪我とか大丈夫なの……?

 

_ん?全然

 

どんな体してるのこの子……?

 

_というかさっきからなんの本読んでんだ?さっきからずっと読んでるよなそれ

 

_な……勝手に見ないでよ!

 

_あ……おい!ちょっと待て!

 

木の上から勝手に見られた事に怒り、私は本をカバンにしまい、そのまま家に帰ろった。この時、私はカバンからある物を落とした時に気づかなかった。

 

 

_あれ……無い……無い!家の鍵が無い!

 

カバンの中身を全て出して良く探してもやっぱり見つからなく、私は血の気が引くような冷たさと焦りを感じた。勿論家の鍵は閉まっており、親は今日は遅くなると言っていた。

近所もまだ仕事中だし、今の時期は冷え込むから体が少し震えた。

会社の場所は分かるけど歩いて行ける距離では無いからどうしようもない。

 

_やっぱり……あの公園で落としたかな……

 

私はもう一度公園に戻り、家の鍵を探した。もう辺りはすっかり暗くなり、探し物は困難を極めそうだけど……あれが無いと家に入れない為死ぬ気で探すと覚悟を決めたと同時に公園に戻ると、またあの男の子がいた。

 

_あ、戻ってきた。お前が探してるのこれだろ?

 

彼は私が落とした鍵を手に持っている何が何だか分からなかった。

 

_え……どうして?

 

_いや、お前のカバンから落としたの見て拾ったんだけどお前が帰ってしまってどうしようかなって思ってここで待ってたんだよ。そんでお前が来たから返すよ

 

彼は何気ない顔で鍵を返してくれた。冷たい鉄の冷たさに、冷たい手だった。こんな冷える中彼はずっと私がここに戻るのを待っていたのだ。

 

_交番とかに届けなかったの?

 

_俺ここら辺分かんねぇんだよ。だからお前が来るのを待った

 

この時のジンの表情は曇っていたわ。それもそのはずね、あまり家から出させて貰えず、この頃はひとりで勝手に屋敷に出ていたのだから。

それを知らなかった当時の私にはその事なんて気づきもしなかった。

 

_じゃあ俺は帰るわ!じゃあな!

 

_あ、ちょっと!

 

まるで風のように早々とジンは走って家まで帰って行ってしまった。でもこれでお別れでは無かった。

次の日も私はあの公園のベンチに座って本を読んでいた。そして、ジンもいたわ。

 

_よ!また会ったな!

 

ジンは青空のような曇りひとつない笑顔で私の隣に座った。この時はまだ名前が知らなくて、なんの素性も分からなかった。

 

_なぁなぁ、なんの本読んでんだ?昨日と同じ本だろ?

 

_……料理の本

 

_料理?お前まだ小さいのに料理するのか

 

_小さいって……貴方も同じような者じゃない。私、親がどっちも働いているから、自分の世話は自分でしたいの。……仕事で疲れているから、迷惑はかけたくないの

 

_へぇ……優しいんだな!

 

_え……?

 

てっきり真面目とか言われるのかと思ったけど、ジンだけは違った。あまりの意外な言葉に私は目を丸くさせ、訳が分からないと首を傾げた。

 

_優しい……?私が?

 

_え?そうじゃないのか?だって料理出来れば自分の家族にだって振る舞えるじゃねぇか。仕事帰りにご飯が出来てるっていい事じゃねえか。俺だったらすっげぇ嬉しいぜ!

 

_……あはは、何それ。そんな事言われたの初めてよ

 

私の思考とはとんだ的外れな事を言い出した彼の言葉で不意に笑ってしまい、あまりの笑いに涙が止まらなかった。

 

_そこまで笑うか?

 

_いいえ、何だか可笑しくって……ふふ

 

_んだよ〜って、もうこんな時間か……俺はもう帰るわ。また明日も来いよ〜!

 

_いつそんな約束したのよ〜!

 

_いまさっき!じゃあな!えーと……

 

_リアよ!

 

_俺はジン!じゃあなリア!

 

ジンは大きく手を振って夕日へと消えていくように帰っていた。それからも毎日決まって公園でジンと会っていたわ。いつの間にか一緒に遊ぶようになって、休みの日も前の日に時間を決めて会っていた。

1週間、2週間と季節は本格的な冬へと変わっていた時、転機が起きた。

 

_なぁ、雪合戦とかしようぜ!

 

_今雪降ってないけど

_明日だって!明日は雪が降るってテレビで言ってたから一緒に雪合戦しようぜ。俺はやった事ないんだよな〜

 

_嫌よ。

 

_即答!?

 

_だって貴方と私じゃ私が勝てる訳無いじゃない。そんな負けが決まるような事やりたくないわよ。

 

ジンの身体能力は本当に化け物並だった。猿のように木登りは早いし、そこら辺の同い年の子供よりも足が早い。まるで重力を無視したようなパルクールもできるしとんでもない子供よ。同じ子供から見てもね。

 

_雪だるま勝負……だったら良いわよ。どっちが良い雪だるまを作れるか勝負するの

 

_はぁ?何かみみっちいなぁ……

 

_何?もしかして負けるのが怖いのかしら?

 

_んなわけねぇだろ!絶対俺が勝つ!

 

私の煽りにまんまと乗り、明日の勝負は雪だるま勝負となった。勝負の内容について話し合い、いつしか辺りも暗くなり始めた。

 

_うぉぉ寒い……!ちょっと早いけど俺帰るわ……

 

_そうね……明日はしっかりと着込んで行かないと……!

 

_じゃ、明日、約束な!

 

_うん、また明日、約束よ

 

明日の楽しみが待ちきれないように私とジンは笑顔でそれぞれ顔を見合せ、そのまま家に帰った。

こんな風に楽しみを胸に踊らせて帰ることなんて無かったから新鮮な気持ちだった。

 

家に帰ってもその楽しみの興奮を冷めることは知らず、私の中で熱を持っていた。

 

_……そうだ!

 

私は家に帰ると真っ先にキッチンに直行し、冷蔵庫にあった野菜とコンソメスープの素を取り出した。明日は雪で冷え込み、運動もするからお腹も空くはずと考えた私は、簡単なスープを持っていこうと考えたのだ。

 

それに……ジンが私の料理を食べてくれるって思うと……胸の鼓動が高なった。

 

_楽しみだなぁ……

 

でも、その機体は氷のように壊れた。

 

朝日が登った雪が降る午後、私は約束の時間、約束の公園で彼を待った。今日は休みだから雪が降ってはしゃいでる子供が賑わう中、私の心は焦っていた。

ジンは何で来ないの?何かあったの?と不安な考えが頭を巡らせた。

 

1時間、2時間、何時間もずっとベンチで待ってもジンは来なかった。大粒の雪はまるで私が流している涙のように降り、私はスープの入った魔法瓶を強く抱いて寒さを凌いでいた。

体は暖かいスープと服で暖かいのに、心は氷のように冷たかった。流す涙は頬を伝わり、魔法瓶に伝って私の膝に落ちていった。

_……嘘つき

 

この日を境に、私とジンはもうこの場所では再会しなかった。

 

 

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「まぁ、こんな感じね 」

 

「……ジンは何故来なかったんだ? 」

 

「ジンは……お父さんの教えで家に閉じ込められていたの。帝王学やら自分の地位を継がせるために……教育したって…… 」

 

「それは知っていたのか……? 」

 

「知るわけ無いじゃない。私はあの時ジンがどんな立場の人か知らなかったしね。当時の私は裏切られた気分で勝手にジンを悪者にしたわ…… 」

 

事情を知らなかったとは言え、私はジンと再開するまでに彼を悪者扱いをした。あれから二度と会わず、謝りもしない彼を私は幻滅していた。ホント、過去の自分を叱りたい気分だわ……

 

話している間にも大分具材の出来上がりは仕上がった。残りは切るだけなので、後は醤油を使ったソースを作るだけね。

「ベーコン焼きすぎよ、早くしないと焦げるわよ? 」

 

「あ……しまった……! 」

 

私の話に集中していたエンタープライズは焼いているベーコンを慌てて取りだし、予め出しておいたキッチンペーパーの上に敷いて余分な油を吸い取った。

 

「じゃあ次はソースよ、荒く潰したゆで卵に醤油を少し加えて……後は混ぜてパンに挟むだけ。あとはベーコンレタストマトだけね……マスタードソースとかで良いかしら…… 」

 

「いや、指揮官はあまり辛いものは好まないはずだ。マスタードは避けた方がいいかもしれない 」

 

「よく知ってるわね……優海から聞いたのかしら? 」

 

「いや、指揮官がカレーを頼む時甘口にして欲しいと見たから恐らくそう思っただけだ 」

 

「へぇ……随分と子供舌なのね。じゃあオーロラソース、で良いわね 」

 

冷蔵庫からケチャップとマヨネーズを取りだし、均一の量を小皿に入れてかき混ぜる。赤白いソースになった所で味見し、酸味が程よいいい仕上がりになった。

 

「じゃあ後はこれを塗ってベーコン、レタス、トマトの順に挟んで。その後重しを乗せて少し待つわよ 」

 

「ベーコン、レタス、トマトと……これでいいか? 」

 

エンタープライズはメモの通りにソースを塗り、私の言う通りの順番に具材を挟んだ。バランスも良く崩れてもいない。十分な出来栄えね。

 

「後はまな板等でサンドイッチの上に乗せて……数十分待つ。その間に後片付けね。ナイフとかは私がやるから、エンタープライズは皿をお願い 」

 

「任せてくれ 」

 

ナイフで手を切らないように慎重に刃を洗い、乾燥機であろう機械にナイフと皿を閉まった。

使い終わった道具を全て入れてスイッチを押し、後はサンドイッチが具材に馴染むまで待つだけとなった。

 

「この時間を使って、続きを話してはくれないか? 」

 

「続きって? 」

 

「さっきの話だ。貴方とジンはまたこうして再開しあったきっかけは何だったんだ? 」

 

「あぁ……それね、ジンと再開したのはあれから10年後よ 」

 

エプロンの紐を解き、私はジンとの再会を話した。

 

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あれから10年経ち、私は変わり映えのしない生活を送っていた。唯一変わったことと言えば弟と妹が出来た事だ。

弟達の世話は結構大変な所もあれば、それなりの充実感があった。そんな通学路の帰り道、転機が起きた。

 

_ねぇねぇ、そこの可愛い子良いかな?

 

ナンパだろうか?フードで顔を隠していて気味が悪い男性が誘っていた。見なかった事にして私は無視し、早く家に帰ろうとした。

 

_おいおい無視は酷いなぁ

 

無視を貫こうにも男は私との距離を近づかせ、無視出来ない状況になった。

 

_警察呼びますよ

 

私は脅しでは無いと携帯を取りだし、直ぐにでも呼び出せるようにした。しかし男は強引に私の両腕を掴み、叫ばせないように口を塞いでそのまま路地裏に連れ去った。

 

抵抗しようにも体格差もあって私は抵抗らしい抵抗出来ず、なすがままにされてしまう。

 

_(誰か……!助けて……!)

 

_助けなんか来ねぇよ……!どうせこの世界はセイレーンによって終わるんだ!だったら……あはははは!!

 

いきなり情緒不安定になった男性に恐怖し、男は服のポケットから何かを落とした。

小さい小袋の中には、白い粉や小さな丸い薬があった。間違いない、ドラッグだ。この男……どうやらクスリの副作用で思考に異常が出ているらしい。こうなってしまっては話は通じるわけが無い早く逃げないと行けないのに動けない。

 

ダメもとで塞がれている口を動かし、男の手のひらに思い切り噛み付いた。

 

_いった!

 

男は痛みで仰け反ったけど、私の腕は離さなかった。だけど口は開けたので息を吸って大声をあげた。

 

_誰か助けて!!

 

_うるせぇ!

 

男はまた私の口を塞ぎ、今度は噛みつかれないように気をつけていた。ドラッグやってる癖に何でこんな事に頭使ってるのかしら……!

 

_抵抗すんなよ!どうせセイレーンで終わるんだったら好き放題やってやる!

 

男の目が血走り、男は私を押し倒して服のボタンに手をかけようとしていた。

 

_(助けて……誰か……! )

 

心の中で必死に助けを求めたが誰も来なかった。不意にあの寒い冬の中で待っても待っても来なかった日の事を思い出してしまった。

 

_(助けて……ジン……!)

 

最後の願いを込めるように目を閉じ、私は最後の助けを待った。半ば諦め、何も感じないように心を無にした。

 

_ぐぇはっ!!

 

その時、急に触れられた体の感触が無くなり、男の悲鳴が聞こえた。何が起こったのかと恐る恐る目を開けると、信じられない人物がいた。

 

明るい茶髪にメッシュのような赤髪……それは見間違えないようのない人物だった。

 

_……ジン?

 

男は名前を当てられて驚くように私を見た。振り向いたその顔は間違いなく昔出会ったのはジンそのものだった。

 

_リア……か?お前何でこんな所にいるんだ?

 

_え……あ……えっと……

 

目の前の衝撃的な事実を私は飲み込めず、言葉を出せずにいた。体も動けず、ただの地面に座ってジンを見上げる事しか出来なかった。

 

_あぁいってぇ……いてぇよ……このクソガキぃ!

 

男は吹き飛ばされて激情し、ポケットからナイフを取り出した。もはや容赦なくジンに突っ込み、ジンを刺そうとしていた。

 

_ジン逃げて!

 

_大丈夫だ。心配すんなよ

 

ナイフで襲われそうになっているのにも関わらず、ジンは私を安心させる為なのか笑っていた。その笑顔がまるでスローモーションのように長く見続け、やがてジンは険しい目付きで男を睨んだ。

 

_死ねやぁ!

 

男は躊躇なくジンの腹部にナイフを刺そうとしたけど、ジンは1歩右に動いただけでナイフを避け、そのまま男の右手首を掴み、そのまま男の進行方向に腕を引っ張り、思い切り男の腹に膝蹴りをかました。

 

進行方向と逆方向の力の向きの膝蹴りを受けた男はそのまま悶絶してナイフを落とした。男はそのまま意識までも落としてしまい動かなくなってしまった。

 

_ふぅ、後は警察がやってくれるだろ。さて、通報通報と……

 

ジンは携帯を取り出して警察に連絡し、場所とクスリをやっている人がいると伝えて通話を切った。

 

_……大丈夫か?立てるか?

 

あまりの出来事に私は声も出せず、体も震えて反応もまともに出来なかった。ただ、差し伸べられたジンの手は掴むことは出来た。ジンは私を立たせ、怪我が無いか一通り診てくれた。

 

_……じゃ、俺はこれで……

 

_待って……!

 

私は掴んだジンの手を離さず、逃げるジンの目を見つめた。

 

_少し……話しましょう

 

その言葉を聞いたジンは少し驚いたようにも見え、どこか申し訳なさそうな顔をしていた。

多分、あの時の約束の事を思い出しているのだろう。でも、ここで話さないと多分二度と会えないような気がする……だからこの手は離さない。

 

_お願い……!

 

遠くからパトカーのサイレンがこちらに近づき、もう時間は無かった。選択を迫られたジンは私の手を振り払うこと無く、口を開けた。

 

_……この近くにカフェがある。そこに行って話そう

 

ジンは面倒事を避けるようにこの場から私を連れて逃げ、そのカフェの所に移動した。

 

 

 

_ほら、俺が奢るから何か好きな奴選んでいいぞ

 

_いや私が助けられたから私が奢るわよ

 

_いや俺の方が金持ってるから!

 

_そういう問題じゃ無いでしょ!

 

_お客様……大変申し訳ございませんが、周りのお客様のご迷惑になるのでお静かにお願いします……

 

いつの間にか言い合いになってしまい、私とジンは店員とお客に謝って静かに席に座り直した。

こんな風に言い合いになったのは何年ぶりだろう……少し嬉しくも思い、そのせいで気まずさが増してしまった。

 

_……なぁ、どうしてここにいるんだ?お前の家ここからかなり遠いだろ

 

_親の都合で引っ越したのよ。そっちこそ何で……

 

_俺も引っ越した。

 

_それはまたどうして……

 

_……アイツから離れる為だ

 

_アイツって……?

 

_お前には関係ねぇよ……

 

関係無いって……確かにジンの身内に関しては関係は無いけど、そこまでま言う必要あるのかしら……それよりも、貴方何でそんなに悲しそうな目をしてるのよ……

 

私は何も言えず、その言葉を飲み込んだ。

 

そのまま静寂が続き、出された水の氷が溶け始めた頃にようやくジンが決心を着いたように話した。

 

_あの時の事はすまん……

 

ジンは頭を深く下げ、10年越しの謝罪をした。

 

_……別に気にしてなんか無い。ただ、どうして来なかったのか理由を教えて

 

_それはっ……

 

理由を話すことにジンは何故か戸惑っていた。言いたくないかのように顔をそむけ、私の目を見ずにいた。ここまで来て理由を話さないなんて許さない。絶対に……

 

_私、あの日ずっと待ってたのよ?寒い中ずっとずっと……でも貴方は来なかった。貴方の事だからきっと大事な理由があって来なかったのは分かっている。だからお願い……貴方が来なかった理由を聞かせて

 

_俺は……

 

_教えないと、私は貴方を許さない

 

人は感情が高ぶりすぎると涙を流すらしい。私もその1人だ、怒りとか悲しみとかそんな感情ではない何かが私の中で込み上げ、涙を流させた。

その涙を見たジンは逃げ場を失ったかのように観念し、私にハンカチを渡した。

 

_……わかった、話すから。その前にその涙を拭けよ

 

_こういう時だけっ……気が利くんだから……

 

私は涙を拭い、ジンの話を聞いた。

ここからね、私がジンの事情を知ったのは……

 

私との約束の日を境にジンは父親から行き過ぎた教育を受けてきた。屋敷からは出られず、ありとあらゆる知識や学を詰め込められたと言う。逃げても逃げられない生き地獄に耐えきれず、母親も死んだ事からジンは完全に父親との縁を断ち切り、この街まで来たらしい。

 

そして、私はジンが何者なのか知った。

 

_……カービス……?って、あのカービス?

 

_そうだ、ジン・カービス、それが俺の名前だ……

 

カービスって言えば、ユニオンの名の知れた起業家よ……?その資金力はユニオンも動かせると言われる超大手の起業家……

 

ジンがその一人息子と知った時は本当に宇宙を見たような感じだったわ……

 

_嘘でしょ……?

 

_マジだ。試しにこれ見ろよ

 

ジンは財布に黒いカードを取り出してテーブルに置いて見せた。ちょっと待って、これ私の見間違いじゃ無ければ……

 

_ブラックカード……?

 

_うん

 

_いや貴方学生でしょ……?なんで持ってるの?

 

_知らん。いきなり俺名義で銀行から渡されたんだよ。多分……じいちゃんら辺だろうな。高校生だから持っとけ!モテるぞ?て感じなノリで

 

そんな軽いノリでブラックカードって作れるの?というか大丈夫なの?やはり侮れないカービス家……

 

_本当にカービス家の人なのね……

 

_というか俺は縁を切ったから苗字が同じ人レベルだよ。俺は夢の為に生きるわ

 

_夢……?

 

_アズールレーンの指揮官になる

 

_なっ、指揮官!?貴方が……!?

 

_あぁ。指揮官になって俺はアイツとは違う道を行く。誰かを踏みにじるんじゃない、誰かと隣で歩ける道を目指す

 

アイツとは父親の事だろう。激しい怒りを持っていた。それは自分にした仕打ちではなく、母親に対する事や父親のやり方に対してだろう。

切り捨てる者を切り捨てる父親に対して、ジンは決して見捨てない思想を持っていた。

 

10年でジンは見違えるように変わっていた。性格こそは変わってはいないけど……心の有り様は変わっていた。そして、無意識に父親に対する憎悪が滲み出ていた。

 

父親を話していたジンはとても怖かった。まるでジンでは無い誰かと話しているようにも思え、あれがジンの本性なのかと疑ってしまった。

 

ジンは……ずっと1人だったんだ。裕福な家庭に生まれても、ジンは支えとなる人はいなかった。ずっと孤独で、それを自分でも分からなくなるように隠すように明るく振舞っていたんだと、話を通じて分かった。

 

ジン、貴方の隣を支えるのは……誰?いや、誰かなんかじゃない。

 

_……ジン

 

_何だ?

 

私はテーブルに身を乗り出し、ジンの顔を掴んで私の目を見させた。

 

_な、何だよ急に!

 

_私も指揮官になるわ。貴方みたいな大雑把な人には荷が重いから

 

_は……はぁ!?なんだそれ!

 

ジンは怒って私の腕を掴んで触れられた手を離し、元の性格に戻りつつあった。

 

_はっ!お前には秘書官補佐がお似合いだ!俺が指揮官になったあかつきにはお前をそこに就かせてやるよ!

 

_えぇ。望むところよ

 

あの時の懐かしい言い合いに私たちは笑い合い、こうして私とジンはなんだかんだで一緒にいた。ハイスクールも一緒で、卒業後もアズールレーン指揮官選別学校に入り、切磋琢磨した。

 

私なんかが指揮官になれる訳なんて無い。それは自分が1番よく分かってる。だけど、せめて……ジンの隣で支える事はしたいと思った。

幼なじみとして……そして、私を2度も助けてくれた者として、今度は私が支える。

 

 

 

 

__

___

____

 

 

「さぁ、そろそろ馴染んできたわね。じゃあエンタープライズ、思い切り切って 」

 

「よし……! 」

 

エンタープライズは挟まれたパンを半分切り、慎重に具材が見えるように広げると、とても美味しそうなサンドイッチがついに完成した。

重しを乗せたおかげで具材もしっかりくっついており、これで食べづらく無くなったはず。

 

「や……やった……貴方のおかげで上手く出来た!ありがとう! 」

 

「ゆ、ユニオンの英雄にお礼なんて……恐れ多いわね 」

 

エンタープライズの眩しい笑顔は、まるで初めて料理を自分1人で完成させた昔の私を見ているようだった。

何だか懐かしい気分だなぁ……

 

「おぉ〜なんかいい匂いするな〜誰かいるのかー? 」

 

「お邪魔しますよ 」

 

「ん、ジンと天城か?珍しい組み合わせだな 」

 

「さっきまで話してたんだよ。そんで、優海が帰ってくる間にあいつが喜びそうな物を取りに来たんだよ 」

 

「優海が喜びそうな物……? 」

 

ジンがそういうと何だか嫌な予感がするわね……というより絶対ろくな事では無いわね……

 

「ねぇ、それって貴方の趣味なんて事は」

 

「おお!サンドイッチじゃねぇか!な、食っていいか? 」

 

「ちょっとまだ話は終わって…… 」

 

「いただきまーす! 」

 

「無視!?しかも良いって言ってなんかないわy」

 

しかし私の言葉をジンは無視して私とエンタープライズが作った卵サンドを食べてしまった。

 

「……ん?美味いけどなんか変わった味付けだな 」

 

「当然よ。なんなら、卵に醤油を使ってるからね 」

 

「卵に醤油!?意外と合うんだな……俺卵にはケチャップしか付けねぇから新鮮だわぁ…… 」

 

「まぁ、醤油ですか?もしかして……優海の為に? 」

 

天城はエンタープライズに笑いかけ、エンタープライズは図星をつかれたかのように少し天城から離れてしまった。エンタープライズはこくりと頷き、天城は失礼してジンと同じサンドイッチを1口食べた。

 

「ふむ……なるほど、これは優海好みの味ですね。醤油を使うのでしたら……ツナを使うのはどうでしょう? 」

 

「ツナ?あれマヨネーズと合わせるのが最強だと思うけど 」

 

「醤油を侮ってはいけませんよ?私がご用意しましょう エンタープライズさん、申し訳ありませんがツナ缶と……玉ねぎとからしになるようなものとバターをお願いします。一緒に作っていきましょう 」

 

「あ、あぁ!よろしく頼む 」

 

天城とエンタープライズはまたキッチンの奥へと移動し、エンタープライズは天城の教えをしっかりと聞き、実践した。

 

「あの様子だと、私はお役御免ね 」

 

「ふぉふふぁれ〜 」

 

「食べ終わってから喋りなさい 」

 

ジンは噛むスピードを早め、僅か3秒程で口に含んだサンドイッチを飲み込んだ。

 

「お疲れ、それにしてもお前の作った物はなんでも美味いな 」

 

「なっ……何言ってるの!? 」

 

「何って……事実を言ってるだけじゃねえか。」

 

あぁ……もう!何でそういう事簡単に言えるのよ……

ダメ、顔が熱くなってきた……

 

「どうした?お前顔赤いけど大丈夫か? 」

 

「何でも無いわよ! 」

 

私は火照った顔を覚ますように両手で頬に触れ、そのままジンから離れるように逃げていった。

 

「お、おい!……何で逃げるんだよアイツ…… 」

 

 

いつもアイツはそうだ。いきなり出てきていきなり引っ掻き回して……胸が掴まれる程の苦しさを与える。

その苦しさは嫌なものではなく、寧ろ……

 

「あぁ〜!もう!いつアイツの事が好きになったのかしら私…… 」

 

熱くなった顔を外の風でこの火照りを冷まそうとした。だけど胸の奥のこの暑さは決して消えないだろう。

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