もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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こんにちは。最近筆が遅くなってしまってる白だし茶漬けです。

さて、今回で幕間の章は終わりです。次からはまた本編の再開です。

諸事情があってまだ筆が遅くなってしまいますがどうかご愛読の方よろしくお願いいたします。m(_ _)m




サンドイッチとお昼寝

懐かしい母港の土地に足をつき、翼を伸ばす鳥のようにぐっと腕を伸ばす。長い船旅を終えた開放感もあってか伸び伸びとした気分になれた。

 

しかし、それとは対照的にここまで連れてきてくれたビスマルクが申し訳なさそうな顔をしていた。

傍から見れば普段と変わらない無表情だけど、長く一緒にいたから少し表情の変化が読めるようになった。

 

「お疲れ様指揮官、母校への帰還が少し長引いてごめんなさい 」

 

「ううん、色んなことがあったし仕方ないよ。えーと、荷物をっと…… 」

 

「お荷物でしたらこちらにお任せ下さい。ご主人様 」

 

聞き慣れた声に振り向くと、やはりベルファストを初めとしたロイヤルメイド隊が迎えに来ていた。

 

「おかえりなさいませ、ご主人様 」

 

「うん、ただいまベルファスト 」

 

「……また無理をされましたね? 」

 

「えっ!?い、いやそんな無理なんてしてないよ 」

 

「オロチ様から事情をお聞きしました。言い逃れは出来ませんよ? 」

 

あ〜そうか、そういえばオロチさんから渡された石でオロチさんと連絡をとったのだから、勿論基地にいる皆にも情報が出回っていてもおかしくはない。

 

やれやれと呟きながらポケットにある黒い石を無意識に触った。

 

「とりあえず、鉄血で起きた事を上層部に報告する為の報告書を作るよ。悪いけど、荷物は俺の部屋に…… 」

 

「その必要は無いですよ 」

 

コツコツと大きくなりつつある足音と貫禄ある渋い声、間違いないあの人だ。

 

白い軍服に、顔の左半分が包帯で巻かれているがその顔に見間違いなど有り得なかった。

 

「オセアンさん……! 」

 

「おかえり、優海君 」

 

昔から変わらない笑顔で俺を出迎え、無事だった喜びで足が勝手にオセアンさんに向かって動いていた。

 

「良かった!無事だったんですね!上層部が襲撃されたから大丈夫かなって…… 」

 

「はは、まぁ……無様にやられてしまいましたがね。それより、マーレと……お母様に 」

 

「……はい 」

 

オセアンさんはどこか感情が入り交じった顔をしていた。息子と母親がどうであれこの世にいる事の嬉しさと、それが俺たち人類に対して敵対しているという寂しさが感じ取れる顔だった。

 

そんな顔をまじまじと見ていたのに気づいたオセアンさんは直ぐに心配無いと言うように笑った。

 

「詳しい事はとりあえず一休みしてからにしましょう。明日、執務室で報告して下さい 」

 

「分かりました。あ、ちょっと待ってください!ええとどこだっけな…… 」

 

ここから離れるオセアンさんを呼び止め、持ち帰った荷物の中から鉄血で買ったお土産をひとつである紅茶の箱と、菓子箱を取り出した。

 

「これお土産です!鉄血の紅茶も凄く美味して、良かったらと思って…… 」

 

「おぉ、これはありがたい。この菓子は……チョコレートかな? 」

 

「はい、お酒が入ってるらしいのでどうかなって 」

 

「ほぅ……鉄血のお酒は特別美味と有名ですからね。有難く頂くよ 」

 

どうやらお土産は気に入ってくれたみたいだった。オセアンさんは満足そうな笑みでこの場から離れ、俺はそれを見送った。これで少しは気分を晴らせたのかな……

 

「よし、時間も出来たし……俺は少し母さんやみんなに会ってくるよ 」

 

「でしたら、ユニオン寮に行くと良いでしょう。天城様も皆さんもそちらにいらっしゃいます 」

 

「え、ユニオン寮?それはまたなんで……? 」

 

「それは……秘密です 」

 

意味深な表情と共に人差し指を唇に当ててるベルファストはどこか俺の反応を楽しみに思っているように見えた。何だか変な胸騒ぎがしながらも、俺はユニオン寮へと足を運んだ。

 

 

 

 

道中でも沢山のKAN-SEN達の出迎えがあった。ユニオンだけではなく、ロイヤルや重桜のKAN-SENもちらほら出会い、この基地も随分と色んなKAN-SENが住んでいるという事が再認識が出来た。

 

特に重桜とアズールレーンのKAN-SEN達の交流を見ると中々に気分が良い。今まで敵対していのが嘘みたいに。

そう、例えばあの広場で睦月型の駆逐艦達がアーク・ロイヤルと一緒に遊んでる所なんて……

 

「はァ……はぁ……!さぁ、駆逐艦の妹達よ!大丈夫だ、何も怖くない!私はただ君たちに美味しい飴をあげようとしてるだけだ! 」

 

「いやぁぁ!食べないで下さい〜! 」

 

「こ、こんな時こそピーコの出番だ〜! 」

 

「……うわぁ 」

 

なんか見てはいけない物を見てしまったかもしれない。アーク・ロイヤルに悪意とかは無いだろうが、顔がやばい。なんか鼻血もたれて気のせいだろうかよだれもたれているような気がする。

これではあの睦月達も流石に警戒するだろう。というかしている。

 

「流石に止めるか。おーい!アーク・ロイヤ…… 」

 

止めようとしたその時、いきなりアークロイヤルの後頭部に何かしらの青白い光が衝突し、凄まじまい衝撃と共にアークロイヤルは気絶した。

 

当然目の前にいた睦月達も驚き、その場にいた俺も唖然した。

 

「へ?あ、アークロイヤル!?大丈夫!? 」

 

急いで倒れているアークロイヤルまで走り、脈などの確認した。

 

「い……妹達は私が……ぐふっ 」

 

あぁ良かった大丈夫だ。逆に平常運転で安心した。

しかし一体誰がアークロイヤルを……

 

「全く……懲りない人ですねこの人は…… 」

 

木陰の向こうから深めの青い髪にツインテールを持ち、上着をマントのように着込んでいるエセックスが出てきた。

どうやら、彼女がアークロイヤルを気絶させたのだろう。

 

「エセックス! 」

 

「こんにちは指揮官 」

 

「あ!しゅきかんだ! 」

 

俺を見つけた睦月は真っ直ぐ俺の胸に飛び込んできた。勢いは強いけど、流石の体型差で俺は踏ん張り、飛び込んできた睦月を抱きとめた。

 

「あ……こら!指揮官は帰還して疲れているので…… 」

 

「いや、大丈夫だよ。ただいま皆 」

 

抱きとめた睦月の頭を撫で、それに釣られるように他の皆も俺の周りに寄ってきた。もしもこの光景をアークロイヤルが見たら血涙を出していたことだろう。

今気絶してるから大丈夫だけど。

 

「ねぇねぇ〜しゅきかん〜戻ったのなら一緒にあそぼーよ〜! 」

 

「そうしたいけど……今はちょっとユニオン寮に用があるんだよ。ごめんね? 」

 

「え〜 」

 

「あはは……そうだ、もし良かったらこれあげるよ手を出して 」

 

睦月は素直に両手を俺に差し出すよ、俺は服のポケットから鉄血で買ったチョコレートを睦月の上にいっぱい置いた。

本当は空いた時間で小腹が空いたら食べようと思ったけど、この際だから睦月達に全部あげよう。幸い人数分あり、喧嘩する事は無いはずだ。

 

「なーにこれ? 」

 

「チョコレートだよ。とっても甘いから良かったら食べてみて 」

 

睦月はチョコレートを1つ取り、袋を取り出して1つ食べると、目をキラキラさせた。

 

「おいしい〜!これ全部いいの!? 」

 

「うん。皆と仲良く食べてね 」

 

「ありがとうしきかん! 」

 

そう言って睦月達は笑顔で手を振りながらどこかに遊びに出掛けた。そういえば……俺が重桜に帰った時にもあの子たちに団子をあげていたっけ。

何だか孫にお菓子をあげるおじいちゃんになった気分だ。

 

「さて、後はのびてるアークロイヤルをどうにかするだけだけど…… 」

 

「それに関してはこちらで請け負いますよ。いつものことですし 」

 

「いつものって…… 」

 

「何かとこの人の駆逐艦絡みが随分と酷いんですよ。戦闘ではかなり役に立つのにどうして駆逐艦になるとどうしてこんな事に…… 」

 

呆れて物が言えないようにエセックスは溜息を吐き、すぐ様携帯端末を操作した。

 

しばらくすると警察帽を被った饅頭が登場し、すぐ様容疑者であるアークロイヤルを抱えて何処かに行ってしまった。明らかな手際の良さからして随分とやらかしてるんだな……アークロイヤル。

 

「よし、これで一応は解決ですね。そういえば指揮官はどうしてこちらにいらっしゃるのですか?この先にはユニオン寮しかありませんが…… 」

 

「実はそのユニオン寮に用があるんだ。何しろベルファストがぜひ来てみてって言うから…… 」

 

「ユニオン寮にですか?そういえば……最近ユニオン寮に天城が来ますね 」

 

「母さんが? 」

 

「はい、ここ最近頻繁にです。しかも、何やらエンタープライズ先輩と何かをしているらしいのですが…… 」

 

母さんとエンタープライズか……なかなか珍しい組み合わせだな。でも母さんがユニオン寮にまだいるのならそれはそれで帰りの報告が楽になる。

「分かった。じゃあ俺はもう行くよ 」

 

「はい、それでは私はアーク・ロイヤルを禁錮室へと連行しますので 」

 

(それでも駆逐艦に対しての態度は変わらないんだろうなぁ…… )

 

アーク・ロイヤルにある意味尊敬の敬意を心の中でし、俺は改めてユニオン寮へと足を運ぶ。

 

しかし……母さんとエンタープライズが何をやっているか気になる。あの二人に接点なんて殆ど無いし、共通の趣味や好みも無いはずだ。だからこそ気になるし、その好奇心のせいか足の進みが無意識に早くなった。

 

 

ようやくユニオン寮に着き、扉を開ける。中は前の基地にあった所とそうそう変わっておらず、中が少し広くなった程度だ。

 

「さて、どこにいるのかな…… 」

 

母さんとエンタープライズが一緒にユニオン寮だが、肝心のどの部屋にいるのかは分からない。考えられる部屋はいくつかあるが、最もいる可能性が高いのは公共スペースだろうか。

 

あそこには確かかなり広い部屋があり、そこで談笑するKAN-SENも少なくは無い。その考えを頼りに公共スペースに移動すると、2人のKAN-SEN、ホーネットとヨークタウンがソファーに座ってゆったりとコーヒーを飲んでくつろいでいた。

 

「あ、指揮官!帰ってたの!? 」

 

「おかえりなさい、指揮官様。怪我とかはありませんか? 」

 

「うん、2人共ただいま 」

 

「疲れてるでしょ?私の隣空いてるから座ってって! 」

 

ホーネットが横に移動するとソファーに人1人分の空間が空き、俺は甘んじてその空いた席に座った。

 

「指揮官、飲み物はいりませんか? 」

 

「あ、大丈夫だよヨークタウン。 」

 

「それにしても指揮官がユニオン寮に来るの珍しいね。何か用なの? 」

 

「あぁ、実はここに母さんがいるって聞いたんだ。何か知らない? 」

 

「天城さんとエンタープライズ……あぁ、そう言えばここ最近見かけますね 」

 

「本当か? 」

 

「はい、何やら調理室の方へと足を運んでいる見たいですが…… 」

 

調理室?という事は……料理をしているということになるな。多分、母さんがエンタープライズに何かしらの料理を教えてそうな感じだとは思うけど、エンタープライズが料理をする理由が分からない。普段料理なんてするタイプじゃないと思ってるけど……

 

「しかしエンプラ姉が料理とはね〜。普段の生活は結構ずぼらなのに、出来るのかな〜? 」

 

「天城さんがいるからそこは大丈夫だとは思うわ。でも、確かに珍しいわね。ふふ、一体誰の為に作るのかしら 」

 

ヨークタウンとホーネットは笑いながら何故か俺の方を見ていた。

 

「……?俺、心当たりないんだけど…… 」

 

「……え?それ本当に言ってる? 」

 

「うん 」

 

「そういえば……指揮官様も中々朴念仁でしたね…… 」

 

「な、何?何の話? 」

 

いきなり人の事を朴念仁とか言って……2人は誰か心当たりとかでもあるのだろうか。俺には全く検討つかなかった。

 

「ま、エンプラ姉はまだ天城と一緒だろうから、それまでに少し話でもしようよ!それに近々、凄い事が行われるらしいよ! 」

 

「え、凄いことって何……? 」

 

「はい、【合同大演習】の事ですね 」

 

「合同大演習……? 」

 

「はい、ユニオン、ロイヤル、鉄血、重桜……この4大陣営が再び集結した今、新たな交流を図るために上層部が企画した大型演習です 」

 

「俺がいない間にそんな事が考えられてたのか…… 」

 

「勿論後で指揮官様にも詳しい内容をまとめた通達が来るはずです。今回は一足先に私から伝えました 」

 

合同大演習……4大陣営同士の大型演習か。そうなると場所も期間も大規模な事になるのは間違いない。

それに、規模にもよるがこれは恐らく人類の耳にも届くだろう。その反応によっては中止をさぜるおえないが、今アズールレーンとレッドアクシズという対立関係の溝を無くすには持ってこいの筈だ。

 

「わかった、教えてくれてありがとう 」

 

「ふふん、それにしても大規模演習かぁ〜!MVPとか取れたら賞品とかあるのかな!? 」

 

「もうホーネットったら気が早いんだから 」

 

「賞品か……2人は何だったら嬉しい? 」

 

恐らく俺は指揮官という立場故に、主催側になるだろう。なんなら気が早いが皆が喜ぶ賞品を用意すべきだろう。

 

「私は……うーん……何も思い浮かびませんね 」

 

少し苦笑いしたヨークタウンは、机の上にあるホットコーヒーを1口飲んだ。

 

「私はね〜指揮官との1日デートかな〜! 」

 

「え……えぇ……!? 」

 

「ぶふっ!? 」

 

ホーネットが言ったことに俺とヨークタウンは驚き、ヨークタウンは驚きのあまり口に入れていたコーヒーを喉に詰まらせたのか咳を出し続けた。

 

「わわ!ヨーク姉大丈夫!? 」

 

「だ、大丈夫よホーネット……そ、それよりも本当にその賞品が良いのかしら? 」

 

「え?うん。何なら指揮官とのデート券って結構基地内で出回ってるよ? 」

 

「待って何それ聞いてない 」

 

「それよりさ指揮官 」

 

「え、スルーするの? 」

 

俺とのデート券がそれよりで済まされてしまった。え、何?俺なんか賞品とかされる系なのこれ?なんか怖いんだけど。

しかしホーネットはそんな俺の事を気にしないように話を進めた。

 

「後ろ後ろ 」

 

「後ろ? 」

 

ホーネットが俺の後ろにいる人物をからかっているように笑いながら指を指していた。

コツコツと2人分の足音が徐々に近づいていき、俺は後ろに振り返った。

 

「おかえりなさい、優海。迎えに行けなくてごめんなさい 」

 

「母さん!やっぱりここにいたんだ 」

 

「はい。それと……私の後ろに隠れてる人もいますよ 」

 

母さんは1歩右にズレると、母さんの背後に隠れていたKAN-SENが姿を現した。長い銀髪を持ったユニオンの英雄が、恥ずかしがってしゃがみこんでいた。

 

「……何やってるの?エンタープライズ 」

 

「し、指揮官!これはだな……! 」

 

しゃがみこむエンタープライズのよく見ると、何やらバスケットのようなものを持っていた。エンタープライズはそのバスケットを隠そうと自身の体の後ろに隠していたが、頭隠して尻隠さずという言葉通り、少しだけバスケットの角が見えていた。

 

「優海、エンタープライズさんが是非貴方と昼食のサンドイッチを一緒に食べたいと言っていましたよ 」

 

「あ、天城!そんな急に! それに私はそんな事1度も……」

 

「え、別に俺は良いけど 」

 

俺の言葉にエンタープライズは目を丸くして体をフリーズしたように動かなかった。

手をエンタープライズの顔の前に振っても反応せず、唖然としたままだった。時間が経つとようやくフリーズが溶けたのか、何を恥ずかしがっているのか顔を隠していた。

 

「ほ、本当に良いのか?指揮官は帰ってきたばかりで疲れているし、無理はしなくても良いんだぞ? 」

 

「別に無理してないよ。それに約束でもあるしね 」

 

「お、覚えいてくれたのか? 」

 

「当たり前だよ 」

 

約束というのはまた一緒にサンドイッチを食べるということだ。

またというのは、1年前になるのかな。エンタープライズがまだ本心を打ち解けず、俺との関係も良くはなかった頃。縁があってホーネットやジャベリン達とサンドイッチを食べたことがある。

 

あの時はエンタープライズとの距離感も分からず、私にはこんな物必要ないと言って殆どの物を口に入れなかった。それが今では自分から誘うようになったとは。感慨深いものである。

 

「それで……場所はどこ?食堂は多分混んでるし…… 」

 

「な、なら良いところがあるんだ。きっと指揮官も気に入ってくれるはずだ 」

 

「ん、じゃあそこにしよう。案内よろしくね 」

 

「任せてくれ。それじゃあ一緒に行こう 」

 

「あ、待ってエンプラ姉! 」

 

突然ホーネットがエンタープライズを呼び止めると、何やらニヤケながらエンタープライズの耳元で何かを言っていた。

 

(……あれ、この距離なら俺の耳なら聞こえると思ったけど……聞こえないや )

 

なんだか俺の耳が発達してたりしてなかったり少しおかしい。……やっぱり俺の力の影響なのか?

いや、今はそれを考えるのをやめよう。折角エンタープライズが誘ってくれたんだ。今だけは忘れよう。

 

「ほ、本当にそれだけで良いのか? 」

 

「うんうん、絶対喜ぶから! 」

 

「ん……とにかく、私は指揮官と出かける。行こう、指揮官 」

 

「分かった。じゃあ行ってきます。母さん 」

 

「ふふ、はい。行ってらっしゃい優海 」

 

皆への挨拶も忘れず、俺は昼の日差しを受けながらエンタープライズと基地内を共に走っていった。

 

「やれやれ、エンプラ姉も奥手だねぇ〜 」

 

「でも、あの子のあんな顔は初めて見たわ。これも指揮官のおかげかしら 」

 

 

 

 

 

 

 

エンタープライズに手首を捕まれ続け、森や茂みを抜け、少し開けた所まで来た。基地外の海域が一望できる丘の上は、どこかで見た事ある所だった。

 

「ここって…… 」

 

間違いない。前の基地にあったあの丘だ。俺が前の基地で初めて訪れた場所であり、俺とエンタープライズとある意味思い出がある場所だ。

 

「どうだ?前の基地と似ているんだ。芝の柔らかさ、海風の冷たさと暖かい日差しは正しくあの場所のようだろ 」

 

「うん、懐かしいなぁ〜! 」

 

「折角だから1番前の所で食べよう。落ちないように気をつけてくれ。最も私がそうさせないがな 」

 

「あはは、その時は頼むよ 」

 

そんな冗談を言い合い、俺とエンタープライズは崖の近くの良い眺めの場所に座った。シートが無くてもいいぐらいの柔らかい草は、さしずめ自然のベットのようだった。

 

「さて、食事にしよう。口に合うかどうか分からないが…… 」

 

頬を赤く染めながらエンタープライズはバスケットの籠の蓋を開けた。バスケットの中身は綺麗に並べられたサンドイッチが姿を現した。

 

「わぁ……美味しそう!いただきます! 」

 

最初に卵が挟み込まれたサンドイッチを手に取り、大きく口を開けてサンドイッチを1口食べる。

噛んだ瞬間、どこか懐かしい風味が口の中に広がり、俺は美味しさよりも驚きを大きく感じた。

 

「これもしかして……醤油を使ってる? 」

 

「よく分かったな。天城から指揮官好みの味付けをしたが……どうだ? 」

 

「凄く美味しいよ!ありがとうエンタープライズ! 」

 

重桜風の味付けと更に俺好みの味付けがされており、しかもサンドイッチのサイズも二口ぐらいで食べられるサイズなので食べやすい配慮している。

サイズに関してはベルファストのアイデアだろうか、いくらでも食べられそうだ。

 

鮭と菜の花が挟んでいるものもあり、それにはからしマヨが塗られてあり、辛いものは苦手だけどこれはこれで辛さが活きて食欲が増してきた。

 

「む、指揮官待ってくれ。口元にソースが付いているぞ 」

 

「え?どこ? 」

 

口元を拭こうと一旦食べる手を止めたが、すぐ様エンタープライズが俺の口元に手を伸ばし、口元に付いていたソースを拭った。

一瞬だけエンタープライズの顔が目と鼻の先まで近づき、胸が飛び上がるような気分になり、エンタープライズは指に付いたソースを舐めた。

 

「指揮官もまだまだ子供だな 」

 

そう言ってエンタープライズはまるで子供を諭すような顔をした。その笑顔が少しばかりのプライドに火がつき、俺の顔はムッと少し歪ませた。

 

「むっ、馬鹿にしてる? 」

 

「してないさ。ただ少し幼いなと思ってるだけだ 」

 

「やっぱ馬鹿にしてるじゃん…… 」

 

やけ食い気味に手に持っているサンドイッチを一口で頬張り、喉に詰まらせることなく飲み込んだ。

 

「いや、それが指揮官なんだなと思っただけだ。1年前とは随分と印象が違うからな 」

 

「まぁ、マーレ・テネリタスとして生きてきてからね。あの人にならないと、生きていけなかったから 」

 

「しかし、実際のマーレは貴方が演じたのとは随分と違っていた 」

 

「うん……だけど、もしもマーレさんが普通に生きていたら、あんな風になっていたかもしれないってオセアンンが言っていたからね。俺もそう思うし、そうなって欲しかったって思ってもいたよ 」

 

昔のマーレさんを知っているわけでは無いけど、オセアンさんやネージュさんの言う限り、かなり性格が急変しているらしい。

 

「私からすれば信じられないな……マーレの目は、海をも凍らせる程冷たく、残獄な目だった…… 」

 

「……一体何があったんだろう 」

 

「マーレと言えば、指揮官は鉄血で戦ったと聞いている。怪我とかは大丈夫なのか? 」

 

「いや、怪我とかは大丈夫。むしろ戦ったと言うよりは、ビスマルクを助ける為に協力したし…… 」

 

「協力だと……?指揮官と……マーレが……か? 」

 

エンタープライズが驚くのも無理はない。俺だって今でも信じられない。

協力を提案したのはマーレさんの方で、セイレーンの介入以降こちらに攻撃する事はなかった。

 

「しかもマーレさん、俺達を守ろうとする立ち回りをしていたよ」

 

マーレさんは鉄血陣営を守ろうとしている立ち回りだったのを覚えている。セイレーン艦隊の避けられる攻撃をわざわざ受け止めるし、被害も最小限に抑える戦い方だった。

 

「どういう事だ……?マーレは私達を敵視しているのでは無いのか? 」

 

「……いや、多分敵視しているのはセイレーンの方だけだと思う 」

 

「だが、それだとテネリタスが上層部のほとんどを殺害した理由は何だ? 」

 

「ん〜……そこなんだよなぁ 」

 

未だに、テネリタスが上層部を襲った理由さえも不明なままだ。死亡した上層部の人間のリストを見た覚えでは、死亡した人物たちの共通点は特に見当たらず、無差別に殺害した線が濃厚だ。だが、それだとただ闇雲に混乱を招いただけだ。

 

上層部を全滅させることも、ましては陣営を攻めることもテネリタスはしていない。

 

「んんん!分からないなぁ! 」

 

諦めて芝生の上に寝転がり、風に流されて浮かんでいる白い雲を無心で見つめた。

 

「分からないことを嘆いても仕方ない。とにかく今はゆっくり休んでくれ 」

 

「ちょっとはそうしようかな……ん〜柔らかい芝生はいいけど、やっぱり枕は欲しいかなぁ…… 」

 

柔らかいとは言えやはり草は草。少し尖った所が頭にチクチク入ってちょっと痛い。

 

「枕か……指揮官、ちょっと頭を貸してくれ 」

 

「え?急になに? 」

 

急にエンタープライズが俺の頭を持つと、すぐ様俺の頭を膝にのせた。

丁度よく俺の頭は顕になっている太ももに乗せられた。

人肌の温かさと柔らかさが頭から感じられる。

 

「どう……だろうか。固くはないだろうか? 」

 

「いや……大丈夫。というか……なんで膝枕? 」

 

「ほ、ホーネットがこうすると指揮官が喜ぶと…… 」

 

なるほど……さっきホーネットが耳打ちしたのはこれか。エンタープライズは少し照れているのか顔を赤くしていた。

 

「そ、そんなに見ないでくれ。こんな事するのは貴方が初めてだから……少し……恥ずかしい…… 」

 

「じゃあやめればいいのに…… 」

 

「それは……ダメだ。こういう事は滅多にないからな……もう少しだけこうさせてくれ 」

そう言って離さないようにエンタープライズは俺の体を少し押さえつけた。別に逃げようとは思ってないからこんな事しなくていいと思うんだけどなぁ……

 

「ふぁ……んん、なんか眠くなってきた…… 」

 

心地良い場所と爽やかな風に陽気、柔らかな膝に食後と言うこともあってなのか急に瞼が重くなりつつ、小さなあくびも何度が出してしまった。

 

「長旅で疲れてしまってたんだな。大丈夫、ゆっくり休んでくれ 」

 

「いや……悪いよ……それは…… 」

 

「別に良いんだ。私は貴方と一緒にいる時間があるだけで……それだけで十分だ 」

 

頭を撫でられ、ついに俺は眠気に負けて目を閉じてしまった。海風と日向に包まれながら、俺は呑気に寝息を立てて眠った。

 

「おやすみ指揮官。良い夢を見てくれ……私が守ってみせるから…… 」

 

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