もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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どうも、最近お布団の重力から抜けられない白だし茶漬けです。

さて、いよいよ本格的に北方連合編が始まりました!
北方連合と言えば、気になることがいくつかありますが、早く北方連合イベントが来てくれないかなと言うことですね〜!

次のコラボのSSSS.GRIDMANのコラボが出た時にはびっくりしましたが、それに負けず劣らず早く北方連合のイベントが来てくれないかなという楽しみも止まりません(笑)


ようこそ、絶氷の地へ

外は極寒の寒さと、白い大粒の吹雪が吹き荒れており、他の陣営の比べてもかなり過酷な環境だった。

 

「へくちゅ!……うぅ、厚着しても寒いなぁ……」

 

天城母さんからかなりの厚着を貰い、首にはマフラーを巻き、モコモコの羽毛の服を着ているというのにすんごく寒い。歯も上下に激しく動き、カチカチと音をたて、体も小刻みに震え続けた。

 

それでも船は極寒の海を渡り、北方連合へと進んでいく。

北方連合が支援要請の通信が来てからもう数週間程度が立っており、今でも安否が気になる所だ。

 

いや、というかこっちの安否が心配だ。やっぱりめちゃくちゃ寒いし体震えてるし果たして北方連合と合流するまで生きてられるのか?

 

船の上で防寒具を着ている饅頭達も流石に寒さ応えているのかガタガタと震えており、KAN-SEN達もこの寒さに耐えるように、ある物を利用していた。

 

「貴方達……いつまでそうしてるつもりかしら? 」

 

「赤城の尻尾はふわふわで暖かいのです。ずっとここにいるです 」

 

「ラフィーも……ここにいる 」

 

現在、最も暖かい場所であろう赤城姉さんの尻尾にはラフィーと綾波、そしてエディンバラがぬくぬくと全身をくるまっていた。

わぁ、すっごい暖かそう。俺も昔はあんな風に赤城姉さんの尻尾にくるまってたなぁ……

尻尾と言えば加賀姉さんも大きい尻尾が9尾あるから、勿論その餌食となっていた。

 

「やはり一航戦の方の尻尾は心地が良いですね。手入れはどうしてるんですか? 」

 

「神通……お前までこられると収集がつかないんだが…… 」

 

「気にしては負けです 」

 

「ふわぁ……柔らかくて暖かい〜ここは天国ですか〜!? 」

 

「はぁ……もう好きにしろ 」

 

ジャベリンと神通も加賀姉さんのしっぽにくるまっており、流石の加賀姉さんも、諦めたのか来るもの拒まずの体勢に入っていた。まぁこの寒さだ。無理は無い。

 

「ご主人様、お身体の方はよろしいのですか? 」

 

「ベルファスト、俺は……何とか大丈夫かな。それよりベルファストの方が心配だよ。いくら寒冷地用に装備や服を整えたと言っても、メイド服で大丈夫なの? 」

 

俺を気にかけてくれるベルファストだが、俺はそれ以上にベルファストの事が心配だ。ベルファストだけではなく、ここに来ているKAN-SEN達は皆特別に寒冷地用の装備をしており、いつもと服装が違う。

 

ベルファストもその1人であり、普段のメイド服とは違い、布地が増え、白を基調とした服とは対照的に黒を基調とした正統派のメイド服だった。

 

「ご心配なく。それよりも……オロチ様の方を心配されるべきだと 」

 

ベルファストはオロチさんの方向に顔を向けると、甲板の上で身動きを一切せずに倒れていたオロチさんがいた。

 

「お、オロチさんんんんんん!?!? 」

 

声をかけてもうんともすんとも言わず、まるで冬場に放り出された爬虫類の如く微動だにしなかった。……いや、蛇モチーフのオロチさんは実質爬虫類なのか……?いやいやいやそんな事言ってる場合じゃないよ。俺まで寒さで頭おかしくなってるのか不安になってしまう。とにかくオロチさんのそばまで駆け寄り、意識があるかどうかの確認をすませる。

 

「しっかりして下さいオロチさん! 」

 

「さ……寒い……やっぱり行かない方が良かったわこれ…… 」

 

「とにかく体を温めてください!えーと、体を温めるものは…… 」

 

今俺が用意できる物と言えば上着ぐらいだ。これを脱げば俺も寒くなるけどこの際自分の身を案じる暇はない。俺は急いで上着をオロチさんに包ませ、外よりは多少暖かいであろう船内へと移動させるためにオロチさんを横抱きする。

 

「とにかく、一緒に船内に行きましょう 」

 

「た、助かるわ…… 」

 

「このくらいいいですよ。皆も無理せずに船内に入っててね! 」

 

皆に注意喚起を促した後、凍えて震えているオロチさんの体をしっかりと抱きながら船内へと歩く。

ここだと1番暖かいのは……俺の部屋だろう。個室のおかげでそれほど部屋は広くないし、暖房を付ければ直ぐに暖かくなるはずだ。

 

船内の廊下を歩き続けて自室の扉へとたどり着き、手がオロチさんを抱く為に塞がっているので肘でドアノブを押し、最後は自分の体で扉を開く。

 

床には絨毯が敷かれ、その他にはベットと机ぐらいしかない簡易な部屋に入った後、まずはゆっくりとオロチさんをベットに寝かせ、すぐ様部屋にある暖房に火をつける。

 

「な……何とかマシになったわ……ありがとう優海……へ、へくちゅ! 」

 

「まだ寒そうですね。そうだ、確か荷物の中にアレがあったはず…… 」

 

荷物がパンパンに入っている一際大きなバックの外側につけられた明石特製の魔法瓶を手に取り、蓋を開けると、白い湯気が立ち上りった。湯気と共に魔法瓶からはほのかな味噌の香りが鼻につく。

 

魔法瓶の中に入っているのは、天城母さんが作ってくれた特製味噌汁だ。

 

「味噌汁……? 」

 

「はい、これ凄いんですよ。明石が作った物なんですけど、これに入ったスープとかの汁物は温かさを保ちながらも品質も保って長持ちするらしいんですよ。まぁ、流石にこれに具材を入れるとふやけてしまうから、後付けのワカメとか豆腐とか入れて……と 」

 

乾燥されたワカメと豆腐、長ネギが居られられた小袋を1つ切り出し、器となった魔法瓶の蓋に注ぐとあっという間に味噌汁の完成だ。

「さぁ、これ飲んで温まってください 」

 

「へぇ〜これが味噌汁ねぇ……食べるのは初めてだわ。じゃ、頂くわ 」

 

湯気で分かる熱々具合にオロチさんはゆっくりと味噌を口につけ、味噌汁を1口飲んだ。

 

「ん……!美味しいわねこれ!」

 

満足そうにオロチさんはもう一口、さらに一口と味噌汁を飲み続け、あっという間に味噌汁を食べ終えてしまった。体の震えも収まっており、丁度暖房も効いてきたのでもう大丈夫だろう。

 

「あ〜生き返った〜!もう1歩も外に出たくないわ…… 」

 

「それはそれで困りますよ。ところで、どうしてオロチさんはこの作戦に参加しようとしたんですか? 」

 

この作戦に参加しているKAN-SEN達は、オロチさん除くと12人だ。

 

第一艦隊に赤城姉さん、加賀姉さん、グラーフ・ツェッペリン、Z23、神通、ベルファスト

 

第二艦隊にヴィクトリアス、大鳳、フォーミダブル、ジャベリン、綾波、ラフィー

 

この12人だ。因みに陣営がほとんどまばらの混成編成になっているのはわざとだ。

 

マーレさん達が本格的に戦闘に介入した今、同じ陣営同士で組むことが無くなる事が多くなると考えた俺は、他陣営同士の連携を強める為に今はこの編成にしている。

 

勿論それは遠征部隊もそうしており、今の所は大きな問題になってはいない。

 

しかし、オロチさんだけは何故かこの作戦に行きたいと自分から志願したのだ。俺はその理由をまだ聞いてはいなかった為、今が丁度いいので聞いてみた。

 

「ん〜じゃあ逆に聞くけど、貴方はこの作戦の事をどう思ってる? 」

 

「え……?どうって言われても…… 」

 

別にそれほど疑問を思ってることは無い。北方連合から支援の要請が来たから、北方連合の支援が今回の目的だ。別にどこも可笑しい様子はないと思うけど……

 

「その様子だと、疑問も何も思ってなさそうね 」

 

「そうは言っても、どこも作戦に変な所なんて無いと思いますけど…… 」

 

「そう、じゃあはっきり言うわね。この作戦、貴方が必要な程重要な作戦じゃ無いって私は考えてるわ 」

 

「な……!一体どういう事ですか! 」

 

「なんか妙に怪しいのよね〜確かに北方にはセイレーンの基地があるにはあるけど、あそこって大した規模じゃ無いの。貴方ははっきり言って過剰戦力よ。これならバミューダ海域に行った方が遥かにマシよ 」

 

「……つまり、この作戦には何か裏があると? 」

 

「そうなるわね 」

 

この作戦を命令したのはアズールレーンの上層部だ。いや、そもそものきっかけは北方連合側から支援の要請を求めたから……裏があるとすれば北方?いや、北方連合もアズールレーンに加入してるから、どちらとも手を組んでいると考えた方が自然だ。

 

でも、目的は何だ?なんでわざわざ俺をこの作戦に参加させたんだ?謎は深まるばかりで、これ以上は進展しなさそうと考えた俺は、諦めるように息を吐いた。

 

「ま、とにかく気をつけてね。味噌汁美味しかったわよ 」

 

「あ、ちょっと待って…… 」

 

しかしオロチさんはそのまま部屋から出ていってしまった。あの人……引っ掻くだけひっかけ回して大きな爪痕を残したぞ……

 

オロチさんの話と俺の推測を合わせると、アズールレーン上層部は、俺が北方で何かをやらせたがっていると考えた方がいいと思うけど、今の上層部にそんな余裕があるとは思えない。

 

マーレさん達テネリタスによって全ての陣営の上層部の人間は惨殺され、残った人数で陣営の経済等に気を張らないとダメな状態だ。だからこそ全ての軍事権を俺に渡したし、表立っての命令なんてしなかった。

そんな状況の中で、何かしらの陰謀にはめようとするなら……かなり前からそれを計画したということになる。

 

(一体何を考えてるんだ……? )

 

くせ毛の毛先を弄りながら、上層部の考えを推理しようとしてる時、ドアからノック音が聞こえた。

 

「ご主人様、ベルファストでございます。まもなく北方連合に到着しますので、上陸の準備のお手伝いをとお伺いしました 」

 

「ん、分かった。すぐに行くよ 」

 

もうそんな時間なのか、ならこうしちゃいられない。直ぐに荷物をまとめ、すぐ様上陸準備へと移る。

だけど、どうしても俺の中の考えだけは、整理することが出来ずにいた。

 

 

 

 

 

_現時刻 北方連合

 

時期的には夏のはずなのに、年中極寒の冬のように冷たい陣営『北方連合』。陣営の中でもかなり偏狭な地であり、寒さで身も心も凍りそうな勢いだった。

近くの海域も氷山で溢れていき、ここまで来るのに相当苦労した。皆寒さに耐える為に寒冷地用装備や衣装に着替え、寒さ対策はバッチリのはずなのにそれでも寒さが服の繊維を貫通して肌に攻撃するのが辛かった。

 

さて、港には案内するKAN-SENが待っていると聞いたけど……どこだろうか?

 

「良く来てくれたな!同士指揮官よ!! 」

 

雪と氷の大地の向こう側から何やら高らかに声をあげる女性の声が聞こえた。声の向こうの先から堂々と胸を張りながら歩いていく人影が段々とそのシルエットを明らかにしていた。この寒い中なのに胸元を開き、雪のような白い服に長い銀髪、そして両目には赤い目を持ったKAN-SEN……何だがどこかツェッペリンに似てるような気がする……

 

「えぇと……案内のKAN-SENかな? 」

 

「そうだ。私は『ガングート』。もしくは『オクチャブリスカヤ・レヴォリューツィヤ』でも良いぞ?ま、重要なのは名前ではなく、実績の方だから好きな名前で良いぞ! 」

 

「じ、じゃあ……ガングートでいいかな?よろしく 」

 

「あぁ!よろしく頼むぞ! 」

 

ガングートはいきなり俺の両手を握っては力強く握手をした。

 

(やっぱり何だかツェッペリンに似てるなぁ……性格は真逆だけど )

 

こうして近くで見るとやはりガングートとツェッペリンはよく似ている。腰まで届く長い白い神に赤い瞳……顔立ちもどことなく似ていた。

 

「……ねぇ、ガングートとツェッペリンってもしかして姉妹艦とか……? 」

 

あまりに似ているから俺はついこんな質問をしてしまい、その質問を聞いたガングートはツェッペリンに目線を向けると、まるで鏡を見ているかのようにツェッペリンを見つめ、ツェッペリンもまたガングートを見つめていた。

 

「おぉ、一瞬私と疑ったが……私とあのKAN-SENとは全くもって関係は無いぞ。他人の空似という奴だな 」

 

「我からも同意見だ。この者からは世界を憎む憎悪も深淵も感じられん 」

 

「憎悪?深淵?卿は中々面白いことを言うな!どうだ今夜1杯付き合わないか? 」

 

「……遠慮する 」

 

「そう遠慮するな!出会った記念として特別な酒を飲もう!なんならワインもあるぞ! 」

 

凄い……!あのグラーフを圧倒している!ガングートはツェッペリンの肩を組み、執拗にグラーフを誘おうとするがグラーフはそれに答えずただ黙って俺をの方を助けろと言わんばかりに見ていた。

 

「が、ガングート!それよりまずはここの案内をして欲しい……かな?ちょっとここ寒いし…… 」

 

「おう、それはすまなかった。では同士指揮官よ。我らの北方連合の基地に案内しよう。車を用意したからそれに乗ると良い 」

 

「お、おい!いい加減離せ! 」

「卿は私と同じ車だ。さぁ、共に革命について語ろうでは無いか! 」

「何が革命だ!そんな物、行き着く終焉の前では無力だ!だから離せー!!」

グラーフの叫び声が段々とフェードアウトしていき、グラーフはガングートと同じ車に無理やり乗せられた。何だかああして見ると、強引な姉とそれを嫌がる妹見たいだな……

 

「というよりグラーフってあんな感じに叫ぶんだね。もうちょっと無口だと思ったけど 」

 

「グラーフは寮舎ではあんな感じですよ。凄くにこやかに人生をエンジョイしてるとか 」

 

「へぇ…… 」

 

何だか想像つかないなぁ……いつか素のグラーフも見たいところだけど、今は任務中。俺達も用意された車に乗るとしよう。

 

車まで近づくつと暖かい衣装を着ている饅頭が待っており、どうやらここでも饅頭は活躍してるそうだ。

言葉は分からずとも仕草等で何となく分かるので、そこまでコミュニケーションは苦ではなかった。

 

車の大きさは普通車よりも少し大きいほどで、後部座席は全部で8つ……それが2つあるので俺が助手席に乗ればちょうど良い感じになりそうだ。

 

「それじゃあ俺はこの車に乗るよ 」

 

「じゃあ私もその車に 」

 

「私もそれに乗ろう 」

 

「私も! 」

「指揮官様!この大鳳もお傍に! 」

 

「いや全員は無理だって!せめてあと5,6人ぐらいがせいぜいだよ! 」

 

何故か俺の乗る車にみんなはついて行きたがり、このままだと車はパンパンになる。流石にそれはまずいので何とか人数わけをしようとするが、全員引かずにいた。

 

「第1に、姉である私も加賀は優海と同じ車に乗るべきよ。家族なんだからそれぐらい当然よね? 」

 

「はぁ?貴方そろそろ弟離れした方が良いのではありませんか? 」

 

「あら、貴方見たいなピーピー喚く害鳥よりかはマシよ 」

 

「あらあら〜いつまでも指揮官様にまとわりつく害虫と一緒にしないでくれます〜? 」

 

早速2人が喧嘩を初め、雪を溶かすような燃えたぎる炎が2人の後ろに見えた気がした。このままではマズいと何とか止めに入ろうとしても、ヒートアップしている2人を止めるのも中々難しく、状況は変わらなかった。

 

間に割って入っても、やめろと言っても止まらない中、別の車の中から人が表れた。

その人は北方連合のKAN-SENなのか、ガングートと同じような白い服を着込み、水色の長い髪をなびかせていた。

 

「どうやらお困りのようだな 」

 

「おっとすまない。私は"ソビエツカヤ・ベラルーシア"。気楽にベラルーシアと呼んでくれ。見た所何やら取り込み中のようだが? 」

 

「あぁ……まぁ、ちょっといざこざというかなんと言うか…… 」

 

「悪いが少々時間が無い。手っ取り早くこれで決めたらどうだろうか? 」

 

そう言うとベラルーシアは服のポケットから1枚のコインを取りだした。

 

「2人にはこのコインの表か裏を決めてもらい、当てた方が指揮官と同じ車に乗れるというのはどうだ?丁度車は指揮官と一艦隊が乗れるような広さだ。表に乗れば私の車に、裏が出ればもうひとつの車に乗るという事だ。コイントスは公平性の為、指揮官がしてくれ 」

 

確かに、ここで喧嘩するよりかはマシだろう。丁度赤城姉さんと大鳳は別艦隊だし。

 

ベラルーシアは俺にコインを渡し、コインの裏表を見つめた。別に疑っている訳じゃ無いけど、このコインにはなんの仕掛けもない。実は薄い紙が貼ってあるとか、どちらも裏というわけでもなさそうだ。

一面には鳥のような物が彫られ、もう一面には開いている本の中心に月桂樹の葉が置かれているものだった。

 

「ねぇ、これどっちが裏でどっちが表? 」

 

「鳥が彫られているのが表で、本が彫られているのが裏だ。」

 

「よし、じゃあ表だったら第一艦隊、裏だったら第二艦隊と一緒に行くことにするよ。じゃあ……行くぞ! 」

 

俺は親指でコインを上空に弾き、宙で回転するコインを見届けた。コインは重力に引かれて落ちてくると、俺は右手の手の甲で受け止め、左手で落ちないようにコインごと手の甲を被せた。

 

そっと左手をどけると、手の甲には鳥の形に掘られたコインがあった。

 

「表だな。では、指揮官は第一艦隊と一緒に私の車に乗ろう 」

 

「そ、そんな〜! 」

 

「う〜指揮官と乗りたかったですけど仕方ないですよ大鳳さん 」

 

俺と同じ車に乗れない事に耐えきれないように膝を着いてショックを受けてる大鳳を、ジャベリンは優しく背中を撫でて慰めていた。まぁ、こればかりは運だから仕方ないと思うけど……

 

名残惜しいと言わんばかりに大鳳はチラチラとこちらを見ながらも車に乗って先に北方連合の基地へと行った。

 

俺と第一艦隊のKAN-SEN達もベラルーシアが乗っていた車に乗り、北方連合の基地へと移動する。

 

「では出発するぞ 」

 

ベラルーシアが運転席に乗り、アクセルをゆっくり踏んで車を走り出させた。

 

雪の中の街並みの中、俺はその街並みを車の窓越しで見つめていた。

道行く人達は寒さを凌ぐために暖かそうな厚着を着込み、街も雪で真っ白だ。どことなく鉄血の街並みに似てると思いながらも、雪で覆われた街は他のどの陣営でも見られない貴重な物だった。

 

雪は重桜でも見れるけど、場所や街並みが変わるだけで印象がガラリと変わっていた。重桜で降る雪は軽くて淡い雪だったけど、ここの雪は大きくて力強い印象だ。

 

「私達の陣営の街並みは気に入ったかな?指揮官 」

 

「うん、任務が終わったら観光したいぐらいだよ 」

 

「そう言って貰えると光栄だな。夜になるとオーロラが見れる事もある。是非指揮官には1度目にして欲しいな 」

 

オーロラ……確か北方連合にだけ発生する現象の事だ。真っ暗な夜空に浮かぶ色鮮やかな光のカーテンと言われており、北方の観光名所でもある。写真では見た事はあるけど、実際に目にした事は無いから是非とも見てみたい。

 

「へくちゅ!うぅ、日付的には今夏だよね?どうして北方はこうも寒いんだ? 」

 

「はは、確かにそうだな。しかし今の時期はまだマシな方だ。冬になるとこれの倍以上は寒くなるぞ? 」

 

「ひえぇ……この寒さでもツラいのにこれ以上寒くなるのは嫌だなぁ〜 」

 

話をしている間に街を過ぎて周りには雪しかない開けた道に出た。一面に白色の野原はさながら別世界のようだ。

 

「さて、話をしている間に見えてきたぞ。あれが私達の基地だ 」

 

白色の野原の向こうにそびえ立つ建物が一つだけあった。外装が一見なんの変哲もないが、一部氷のような物が突き刺さっているような物があった。

建物の外側に先端が向いているから、あまりの気温の低さに水滴がああなった訳では無さそうだ。

 

「ねぇ、あの氷みたいなのって何? 」

 

「あれはあの基地の装置みたいな物だ。あまり気にしないでくれ……と言っても気になるかな? 」

 

「それは勿論 」

 

言ってしまえばあれだけど、まるでセイレーンの装置みたいだなと第一印象に感じた。何か他とは違うものだと直感で感じ、何故だろう……()()()()()()()()()()()

「指揮官? 」

 

「え?あ、何かな? 」

 

「いや、心ここに在らずのようなだったから声をかけただけだ。大丈夫か?」

 

「優海?もし気分が悪くなったら直ぐに言うのよ? 」

 

「大丈夫だよ。全然大丈夫だから…… 」

 

頭が緩く締め付けられるような鈍い痛覚を感じながらも車は止まり、北方連合の基地前に到着した。

 

「さぁ着いたぞ同士の諸君!ここが私達北方連合の基地だ!案内するから私に着いてこい! 」

 

ガングートがツェッペリンを連れながら北方連合の基地を自慢げに紹介し、そのまま基地の中まで案内して行った。……もう好きにしてくれと言わんばかりに脱力しているツェッペリンを連れていきながら。

 

ガングートとベラルーシアの案内の下に北方連合の基地内へと入っていく。中も寒いと思ったが中々快適な温かさだった。

赤い絨毯が敷かれた廊下の中、少し大きな扉の前にソユーズは立ち、その扉を開けた。

 

「ここが会議室だ。今から同士たちはこれからあるKAN-SENとこれからの方針に着いて話し合いをして貰う。その前に……荷物はこっちで預かる。なに心配するな、各々の部屋に運ぶだけだ 」

 

「俺は良いけど、皆はどう? 」

 

「私は問題無いわ 」

 

「こちらも問題無い 」

 

KAN-SEN達も俺と同じ意見らしく、満場一致で会議室の空いている椅子へと座った。荷物は北方連合にいるせいか、かなりの厚着をしている饅頭達が一生懸命持って出ていった。

 

「では開けるぞ。ソユーズ、同士達を連れてきたぞ 」

 

ベラルーシアが会議室の扉を開けると、他の陣営と遜色ない会議室が表れた。

変わってるところがあるとすれば、壁には鹿の頭の剥製や熊の剥製、そして壁奥の真ん中には北方連合のマークが書かれた旗が掲げられているぐらいだろう。

 

「ようこそ、同士指揮官、そしてアズールレーンの皆様 」

 

雪のような白い長髪に、氷のような蒼い瞳を持ったKAN-SENが自分の名前を紹介しながら俺たちを歓迎するように握手を求めた。俺はその握手に応えて右手を出し、冷たい外の中仄かな人肌の温もりを感じながら握手を交わした。

 

「私はこの北方連合の代表を務めている『ソビエツキー・ソユーズ』と申します。以後よろしくお願いします 」

 

「うん、こちらこそよろしくね 」

 

「改めて、私達の支援要請を受けていただきありがとうございます 」

 

「当たり前だよ。ところで、セイレーンの基地が活発化したって聞いたけど…… 」

 

「はい、ここ最近かなりの頻度でその基地から量産型セイレーンが現れており、こちらの戦力では防戦一方です。そこで指揮官に頼り、ある事をして欲しいのです 」

 

「ある事? 」

 

「セイレーン基地に侵入し、無力化する事です 」

 

あまりの作戦内容にKAN-SEN達はざわめき始め、俺も少しばかり驚いた。

確かに、活発化したセイレーンの基地が近い北方連合は、この状況を打破する為には無力化しか方法は無いだろう。

 

このまま防戦一方だと間違いなく押し切られ、そこに住む人類にも被害が出る。何としてもそれは避けなければならない。

 

「無力化するって言っても……どうすればいいの? 」

 

「それについては手は打ってあります 」

 

ソユーズは机の上に大きな紙を広げた。内容から見るに、北方連合の海域を記した海面図だ。

 

「調査部隊によってセイレーン基地の入口自体は判明しています。指揮官は私達北方連合の部隊と共に基地内に侵入し、無力化もしくは内部から破壊してください 」

 

「よく入口なんか見つけられたね…… 」

 

「そもそもあの基地……というより要塞ですね。あれはセイレーンが襲来する前からあったものですから 」

 

「セイレーンが襲来する前……? 」

 

「それまではセイレーンも現れず、内部も少しばかりは調べられたのですが、残念ながら何も分かっていないに等しいです。あるとすれば、中は行き止まりになっていたと 聞いており、壁を破壊することは不可能だと 」

 

「じゃあ……内部から破壊するのは無理じゃない? 」

 

外からも内からも破壊するのは不可能だったら、俺の火力でも流石に無理だとは思うけどなぁ……

 

「ちょっと良いかしら 」

 

要塞をどうすればいいのか考えていた所、話の間に割り込むように赤城姉さんが手を挙げていた。

 

「どうされました? 」

 

「貴方……優海を前線に出す気で話を進めてるけど、私は優海を前線に出させる気は無いわよ 」

 

赤城姉さんは鋭い目付きでソユーズを睨んでいた。理由は間違いなく俺に対しての扱いに対してだろう。

 

北方連合は恐らく、上層部から俺の情報を聞いてなのか俺を前線に出させる気だが、赤城姉さん……いや、KAN-SEN達はそれをあまり良しとしなかった。

 

「優海は指揮官なの。指揮官が前線に出してちゃ意味が無いでしょう? 」

 

「なるほど……確かに同士指揮官は素晴らしい指揮能力をお持ちと聞いています。ですが、指揮官は元はセイレーンだと聞いています。セイレーンだった指揮官なら、あの要塞の内部にも行けると…… 」

 

「貴方……優海をまだセイレーンとして扱う気っ!? 」

 

「赤城姉さん大丈夫だよ。現に事実なんだ 」

 

俺を思って感情を昂らせた赤城姉さんをそっと宥め、俺はソユーズと目を合わせた。

 

「確かに俺は元セイレーンだ。それは変わらない。でも、多分期待通りにはならないと思う。もう俺にはセイレーンの力どころか記憶すら無いんだ。とてもあの要塞で力になれるとは思えない。俺よりも……オロチさんの方が適任かもしれない 」

 

セイレーンによって造られたオロチさんなら、最もセイレーンに精通していると言っても過言では無いだろう。

 

「私?まぁそうかも知れないけど私でも多分無理だと思うわよ? 」

 

「な……どうして? 」

 

「どうしてって……私、セイレーンに造られた兵器なのよ?いくらこんな風に(人間みたいに) なったからって、私がただの道具というカテゴリーは変わらないの。だって道具が独り歩きしちゃ怖いでしょ? 」

 

諦めてと言わんばかりに肩をすかして笑っていたオロチさんだが、どこか悲しげな表情を一瞬だけ浮かべていた。

 

「つまり……あの基地へ入れるのは元々が人型のみと? 」

 

「まぁそういうこと 」

 

「なるほど……でしたらやはり指揮官が行くのが望ましいですが…… 」

 

「……わかった。分かったよ。俺もその突入部隊に合流すればいいんだね? 」

 

「優海っ! 」

 

赤城姉さんは立ち上がり、目で俺の考えを否定していた。それは他のKAN-SEN達も同じだった。

戦わないで欲しいという切実な思いが目だけで感じ取られ、一種の罪悪感すらも感じられた。だけど俺の意見は変わらない。

 

「……あの要塞をどうにかしないと、遅かれ早かれ被害は拡大する。俺しか出来ないことならば、俺はやるよ 」

 

「でも…… 」

 

「大丈夫だって、無理はしない。絶対……信じてよ 」

 

俺だって無闇に皆を心配させたくないと思っている。緊張感を和らげようと内心ビビりながらガッツポーズしながらドヤ顔を浮かべた。

 

「はぁ……全く、だけど絶対無茶しちゃダメよ 」

 

「分かってるよ 」

 

「しかし、言葉だけでは心配だ。おい、私達もその突入部隊に入ることは出来ないのか? 」

 

加賀姉さんがそう言うと、ソユーズはそれは出来ないと言うように首を横に振った。

 

「残念ですが、それは出来ません。貴方方は残りの部隊と共に突入部隊の援護及び基地の防衛をさせていただきます 」

 

「そうか…… 」

 

「ですが心配ございません。必ず同士指揮官は私達北方連合が守ります。北方連合の名に誓って必ず……! 」

 

ソユーズからはこの絶氷の大地を溶かすような熱く硬い意志の炎が見えるように思え、他のKAN-SEN達もようやく納得してくれた。

 

「……では、会議は終わりとしましょう。時間も時間ですし、食事はいかがでしょうか 」

 

「ん、そうだね。何だが皆で食べる食事は久しぶりなような気がするな〜 」

 

「ご主人様が片手間で済ました後執務作業に勤しむからだと 」

 

「うぐっ…… 」

 

流石ベルファスト……俺のことをよく見ている……

 

「えぇ!?ダメですよ指揮官無理しちゃ! 」

 

「そうですよ!あ、でももし疲れていたら是非いつでも大鳳の胸の中で休んで下さい〜! 」

 

「ちょ!頭掴まないで! 」

 

そう言って大鳳は俺の頭を掴んで無理やり胸に飛び込ませようとしたが、それを許す赤城姉さんでは無かった。

 

「何やってるのかしら……?優海が嫌がってるでしょ 」

 

今大鳳に頭を掴まれて顔をあげられないけど、まるで般若のような形相で大鳳を睨んでいるに違いない。

この時ばかりはこの状況で助かったと内心ほっとする。

 

「あらあらあら?指揮官様は嫌がってなんか無いですよ〜?恥ずかしがっているだけですよ〜ね?指揮官様〜? 」

 

「とりあえず手を頭から離してくれると嬉しいな……! 」

 

「はぁ……赤城と大鳳は相変わらずなのです…… 」

 

「本当に、まるで磁石みたいな人達ですわね…… 」

 

同じ陣営である綾波と神通の呆れ声にも耳には届かず赤城姉さんと大鳳はそのまま睨み続けていた。

 

え?俺このままなの?歩きづらいんだけど。

しかし、2人は聞く耳持たずに結局食堂に着くまで言い争った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれが同士指揮官ですか 」

 

「どう思うソユーズ 」

 

「そうですね……利用は出来るとは思うけど 」

 

「そうか……だが、これはかなりの賭けだとは思うがな 」

 

「賭け事なら貴方の好きな事でしょうに 」

 

「ふふ、これがどのように転がるか見物だよ 」

もしもの話(R-18)を観測しますか?

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