もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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アカネが出ない!六花が超くる!
やはり遊戯王で六花テーマ中心に描いてるからか!?

どうも、白だし茶漬けです。

最近は寒くなりましたね〜いつもこの時期は猫がストーブを占領して家庭のヒエラルキーが見え隠れする時期でもあります。

皆さんも風邪を引かずにしっかりと体を暖めてくださいね!



粒子舞う天使

太陽が見え隠れする曇り空の中、KAN-SEN達は所定の位置についていた。寒さが身に染みる中、俺はセイレーンの基地である【王冠】への突入に集中していた。

 

指揮官なのに基地に突入するのは中々おかしいが、元々がセイレーンである俺なら基地の内部に潜入が出来て情報もKAN-SEN達に届けられるはずだ。セイレーンの情報を収集出来れば、セイレーンとの戦いに関しても優勢に出れる。

 

北方にあるセイレーン基地はそれ程の規模ではないと言うが、それでも情報は欲しい。何としてでも内部に潜入しないと……

 

『優海、少し良い? 』

 

「赤城姉さん?どうしたの? 」

 

いきなり赤城姉さんから通信が来た。しかも、個別で使えるチャンネルでの通信だ。わざわざこの回線を使うと言うことは、俺に対して何か言いたいということかな。

 

『……絶対無理はしないで。無理をしようとしたら私は貴方の足を撃ってでも止めるから……! 』

 

「いやいや怖いよ 」

 

声の圧からして本気で姉さんは俺の足を打つつもりだ。後がどうなろうと、俺を前線に出させないならそれで良いと考えているのだろう。

確かに、こんな事普通の通信じゃ言える訳無いもんな……。冗談交じりで笑いながら通信を返したけど、姉さんは何も言わなかった。静寂で緊張や少しの恐怖が生まれ、俺は気持ちを切り替えるように深呼吸し、冷たい息を吐いた。

 

「……姉さん、大丈夫だよ。……本当に、絶対に…… 」

 

『……そう、分かったわ 』

 

そう言って赤城姉さんは通信を切った。

 

「ふぅ…… 」

 

「何やら取り込んでいるようだな、同士指揮官 」

「ロシア……うん、まぁちょっとね 」

 

同士指揮官と言った白髪で赤目の彼女はソビエツカヤ・ロシア。最初に出会ったベラルーシアの姉妹艦であり、凛々しくも落ち着いた雰囲気のKAN-SENだ。突入部隊の旗艦を務めており、頼もしいKAN-SENだ。

 

「さて、そろそろこっちも最終準備に取り掛かろう。艤装の整備は大丈夫? 」

 

「その事何だが同士指揮官…… 」

 

「ん? 」

 

急にロシアが少し申し訳なさそうな顔を浮かべながら頬をかいており、何か言いたげにロシアは右手からいくつものネジを俺にみせた。

 

「……何故か整備したらネジが余ってしまったんだ 」

 

「別のKAN-SENの部品じゃないの? 」

 

「いや、規格的にこれは私のだ 」

 

その言葉を聞いた瞬間、俺の頭の中には【?】マークが無数に飛び交った宇宙が広がり、数秒間思考が停止した。

 

……ん?整備したらネジが余ることなんてあるのかな。

組み立てを間違って使えなくなったなら分かるけど。

……あ、これはあれだ。

 

「それ整備間違ってるだけだぁぁ!! 」

 

止まりかけた思考の中から答えを見つけ出し、答えを突き出されたロシアは頬を目がまるで渦のようにさせながら頬を赤く染め、自身の不埒に戸惑っていた。

 

「な、何!?私はちゃんと整備した筈だが…… 」

 

「いや多分間違ってると思うよ…… 」

 

「そ、そうだ同志指揮官!これは資源が増えたと思えば良いのでは無いか? 」

 

「ならない! 」

 

「そ、そうか……ならないか…… 」

 

しょんぼりしたロシアはまた整備をしようとした。どうにも心配になった俺も手伝いはしたいが、生憎北方連合の艤装整備は経験も無ければ知識もほとんど無い。どうするべきか……

 

「あ〜あ、ロシアったらまーた整備をミスってる!しょうが無いから私が手伝ってあ〜げる! 」

 

背丈が小さいKAN-SENが、ロシアの近くに寄り、艤装の整備を手伝うと言ってきた。確か……パーチャミ・メルクーリヤだっけ。

 

「ん〜?なーにジロジロ見てるの指揮官〜?もしかして私のこの大きな胸を見ていたりして〜?もう、エッチ〜! 」

 

「え??いやいや、見てないよ! 」

 

いきなりメルクーリヤがそう言い放ち、俺は慌てて否定した。本当に見てないし、見ようともしていない。確かに、背丈が小さ割に結構大きいかなって思ったりはしたけど、ジロジロは見てない。

 

メルクーリヤはそんな焦る俺をニヤニヤしながらロシアの艤装の整備を手伝ったが、そのニヤけた顔は徐々に代わり、目を細めて作業する手が所々止まっていた。

 

「ん……?えーと、これどこからしら……ちょっと見えづらい…… 」

 

艤装に顔を近づいたり離れたりと、自分の目でピンと見える位置を調整してるその姿はどこかで見覚えがあった。……そうだ、三笠さんが同じような行動をしていたはずだ。

資料とか文字が多い物を見る時に三笠さんは眼鏡を使ってるけど、メガネを忘れた時は目を細めて文字がピンと見える位置を顔を近付けたりしていた。今のメルクーリヤは、まさにそれだった。

 

現にメルクーリヤのカンレキ自体は古く、この中では一番の年上だ。見た目とのギャップがかなり大きく、聞かされた時には驚きしか無かった。

 

「メルクーリヤさん……やはり私一人で……」

 

「だ、大丈夫よ!えーと……こっちかしら…… 」

 

目を細めながら恐る恐る部品を組み込んでいくメルクーリヤの姿は嫌でも心配してしまう。

 

(……そういえば、北方連合の艤装ってまるで鉄血の艤装見たいだな…… )

 

ロシアの艤装を見ていて思った第一印象がそれだった。まるで一種の生物のような形相をした艤装は、鉄血のそれと大きく酷似していた。

 

北方連合って確か、アズールレーンに所属しているのにも関わらず、なんで鉄血のような技術が使えるのだろうか……。もしそうだとしたら……それは一体何処から流れたんだ?1番に考えられるのはビスマルクと繋がっているとは考えられるけど、それは考えにくい。

 

理由は簡単、ビスマルク側に何かしらのメリットが無いからだ。セイレーンの基地が近くにあるこの北方連合では、セイレーン技術に見合う様な物は用意は出来ないし、ビスマルクもその技術を横流しするような事はしないだろう。

 

残りで考えられる事と言えば……鉄血と同じくセイレーンから直接技術を提供された……とか。

でもそう考えると不自然な点がいくつもある。

 

そもそもなんで北方連合に技術を提供するかさえ分からないし、それをするメリットなんてほとんど無いはずだ。そんな事をすれば、自分たちの大事な基地が堕とされる事にも繋がるし、戦いにおいてのアドバンテージも無くなってしまう。じゃあやっぱり、北方連合が独自の解析をして生み出された物なのかな……

 

「あら?そんな難しい顔をしてどうしたの?指揮官 」

 

後ろから急に肩を抱かれながら耳元で囁かれ、俺は思わず身を捩って両手から振りほどき、そのKAN-SENから距離をとった。

 

水色の髪に、艤装をまるで獣を繋ぎ止めるように鎖で一部を縛っているKAN-SENは確か、【チャパエフ】だ。

 

「あぁびっくりした…… 」

 

「結構難しい顔をしているからついね。そんな難しい顔してどうしたのかしら? 」

 

「あぁ、なんか北方連合の艤装って鉄血の艤装みたいだなって 」

 

「あぁ…… 」

 

自分たちの艤装の特殊感を自覚してなのか、チャパエフは自身の艤装を見渡した。……一瞬チャパエフが曇った顔をしたような気がしたけど、気のせいなのかな。

 

「まぁ、そこは企業秘密ね。いくら指揮官でもこれ以上は教えられないわ 」

 

 

「そっか…… 」

 

「それよりも、私は指揮官の艤装が気になるけどね 」

 

「俺の? 」

 

「そう、貴方の艤装は他とは何か違う。一線を超えるようにも思えるわね。個人的にもとても気になる所ね 」

 

「まぁ……俺も良く分からないけどね 」

 

俺の艤装……マーレさんが言うには【ズムウォルト】と言うらしい。人類が将来この船を創る……とは言われたけど、いまいちピンと来ない。

 

言葉通りに意味を受け取ると、この船は未来に造られる物だと言うことになるけど……そこが分からない。もしそうだとしたら、セイレーンは未来から来たという事になる。……そんなことって、有り得るのか?

だけど今は判断材料が足りない。遅かれ早かれ、セイレーンの基地である【王冠】に突入すれば、もしかしたら全て分かるだろう。

 

「それに、確か指揮官は元々セイレーンなのでしょ?その辺についても、私達以上に気になる所でもあるし、警戒はしているわ 」

 

「あら、タリン。随分と素直に言うのね 」

 

タリンと呼ばれた少し青みがかった銀髪と、赤いメッシュをしていたKAN-SENは、俺に対してかなり真っ直ぐな意見を突き刺した。

 

「当たり前、セイレーンは私たちが倒すべき敵よ。そんな奴が指揮官なんて、理解に苦しむ程よ 」

 

「……だよね 」

 

普段のKAN-SEN達からは信頼されてるけど、流石に昨日今日出会った北方連合のKAN-SEN達の不信感はどうしても拭えないらしい。逆の立場だったら俺でも多少の警戒はするし、怖い思いもする。だから、その不信感は行動で説得するしかない。

 

「だから、俺が君たちを守る。そのくらいの力ならある筈だから 」

 

「……信じられる訳無いでしょ。私の身は私で守るから 」

 

「あら、何だがいつもより素っ気ないわね。ごめんなさい指揮官、ちょっとタリンに言ってくるわ 」

 

「いや、気にしてないよ。……事実だしね 」

 

チャパエフは一礼した後、タリンを追いかけた

 

『指揮官、こちらZ23です。目視でセイレーンを確認しましたので、これから作戦を決行します 』

 

『こちからも確認出来ましたご主人様 』

 

「分かった。……みんな、所定の位置に 」

 

第一、第二艦隊から敵の目視を確認した通信を受け取ると、俺達も出撃準備に取り掛かった。加速で最高速で基地に突入するために、北方連合のドッグには、突撃艦隊のカタパルトがあり、それぞれそれに足を乗せた。

 

『コンディション発令。コンディション発令。KAN-SEN達はカタパルトにスタンバイし、出撃準備を完了すべし 』

 

出撃アナウンスが鳴ったと同時に遠方のハッチが開き、その先には吹雪に見舞われた海が姿を表した。

カタパルトの反動に負けないように姿勢を低くした。

 

『スタンバイ完了。カウントダウン開始、3……2……1…… 』

 

「突撃艦隊、出るよ! 」

 

カウントダウンが終わったと同時に俺が号令をかけ、それを合図に俺を乗せたカタパルトは勢いよく前に進んだ。初速の慣性で体が引っ張られそうになるも何とかこらえ、わずが数秒でドッグから海上に移動でき、他のKAN-SENも俺の後についていく。

 

初速で最高速度に突入したままのペースで海上を駆け、王冠の前には無数の量産型セイレーンの船や、量産型人型のセイレーンもいた。

 

「作戦通り正面突破で最短距離で突入する!前方に火力を集中させろ! 」

 

「「了解! 」」

 

KAN-SEN達が主砲を構えた瞬間前方に放ち、それに合わせて俺は艤装のミサイルを発射させる。白い糸を帯びたミサイルは上空で弧を描きながらセイレーン艦隊の上空から真下に落ち、艦隊の中心で大きな爆発を起こした。

爆風で人型のセイレーンも巻き込まれ、中央付近に道が開けた。

 

このまま行っても左右の部隊に挟撃されるが、そこは抜かりない。その為に予め2艦隊が左右に展開しており、逆にこちら側から挟撃を仕掛ける手筈だ。

先程の爆発が合図となったのか、左右から2艦隊の砲撃が開始された。

 

飛び交う艦載機は上空から爆撃し、穿つ砲弾はセイレーン達を攻撃した。

 

「中々順調じゃない〜!なーんか相手がザコで話にならない〜! 」

 

「へ〜?じゃあ、こいつはどうかなっ!! 」

 

突然前方から声が聞こえると、その刹那にセイレーンの基地から突然巨大なビームがこちら側に接近してきた。

 

「っ!皆散開して!!」

 

俺の声に皆は反応し、進行を止めて側面へと動き、何とか大出力のビームを交わした。ピュリファイヤー?いや声が違うから別のセイレーンだ。しかもあんな大出力のビームを打てるという事は、間違いなく量産型では無い。その答えを示すかのように、上空から巨大なシルエットを背負ったセイレーンが、俺達の前に立ちはだかった。

 

「……オミッター? 」

 

俺は()()()()()()()()()()()()()()。自分がなんで彼女の名前を知っているのは、俺の中にあるセイレーンの因子が反応したのだろう。

 

「はーはっはっ!我が雷を避けるとは中々やるな!だがこれはほんの小手調べ……さぁ!絶望の序曲の始まりだ! 」

 

やけにテンションの高いオミッターは全能感溢れる態度だったが、俺達はどんな反応をすれば良いか分からず呆然としていた。

 

「……ふっ、決まった……!やっぱりインパクトの登場は大事だから考えてて良かった……って、うん?コネクターじゃん!久しぶりだね〜! 」

 

「今の俺にとっては初対面だけどね…… 」

 

「はぁ?じゃあこういう時どうするんだっけなぁ……えーとメモメモ…… 」

 

オミッターは服のポケットから小さな紙切れを1枚取り出し、まるでわざと聞こえるように読み上げた。

 

「えーと、『因子が僅かでも残ってたら連れ戻す、残ってなかったら……処分する』ね。ん〜因子残ってるかな〜どうだろうな〜 」

 

「連れ戻す……?どういう事だ! 」

 

「オブっちの考えだから知る訳無いだろ!という事でコネクター、あんたを連れ戻すよ! 」

 

俺を倒そうとオミッターの艤装から大出力のビームが放たれ、有無を言わさず俺は回避を強要された。

やってる事と言ってる事が矛盾しすぎてる……!

 

「同士指揮官!どうするんだ! 」

 

「とにかくあのセイレーンをどうにかしないと基地に入れない。左右のセイレーンは第一、第二艦隊に任せて俺達はあのセイレーンを無力化しよう 」

 

入口を塞ぐようにオミッターが立ちはだかってあるから、オミッターをどうにかしない限り基地には突入出来ない。

 

しかも、オミッターの高出力ビームが固定砲台のような役割を果たしているから近づきたくても近づけない。

あの高出力なら、連射こそ出来ない筈だ。そこを上手く突けば道筋はある。あとは攻撃の隙間の間隔さえ掴めば……

 

「おおっと忘れてた〜!こいつも貰っていけ! 」

 

オミッターが突然巨大な艤装を光らせると、光の光波が輪のように広がらせた。光波が海域全体に広がった後に消えると、特に何も異常は起きなようにも思えたが……KAN-SEN達は違った。

 

「ぐっ……何だ……これは…… 」

 

「なんか……思うように動けない…… 」

 

「な、どうした皆! 」

 

KAN-SEN達の動きが鈍い。皆その場から1歩も動けておらず、まともに動けるのは俺だけだった。

 

「あ〜?やっぱりコネクターには効かねぇか、EMPは 」

 

「EMP!?」

 

EMPって確か電磁攻撃の事だ。さっきの光波の正体は特殊電磁で、それを受けたKAN-SEN達はその影響で艤装の能力が上手く使えなくなっているのか……

 

俺は元々セイレーンで、その因子が僅かながら残っているのか平気だけど、KAN-SEN達はきついはずだ。

 

「そうだ……姉さん達は大丈夫なのか!? 」

 

通信を開こうにも、セイレーンが出現した時点でここは鏡面海域になっており、通信が使い物にならなくなっている。耳に聞こえてくるのはノイズ音ばかりであり、姉さん達にも他のKAN-SEN達にも通信は届かなかった。

 

「くそっ……! 」

 

「絶対絶命だなぁ!コネクター! 」

 

いつの間にか人型のセイレーンに包囲されており、状況は最悪だった。皆はまともに動けず、恐らく防御すら厳しい状態だ。そんな中で、俺一人で戦いながら皆を守る事は不可能に近かった。

 

「ど……同士指揮官……私達の事は良い……早くセイレーンの基地に行くんだ…… 」

 

「ロシア……?何言ってるんだ!そんな事出来るわけ無いだろ! 」

 

「バカね……アンタまともに動けるんだからそれしか無いでしょ! 」

 

「タリン…… 」

 

もう立つ事も厳しいのか、タリンは膝をついてしまい、それでも力強い目で俺を見た。

 

「この作戦の目的はアンタをセイレーンの基地まで送って基地内部を調べる事なの!その為なら盾でもなんでもやってやるわよ!だから行きなさい! 」

 

「……行ける訳無いだろ 」

 

「はぁ……? 」

 

「行ける訳……無いって言ってるんだよっ!! 」

 

「何でよ! 」

 

「守りたいからだ!!」

 

俺は海が震える程大きくそう言った。その迫力にタリアだけじゃなく他のKAN-SEN達も黙り込んでしまい、俺は白熱で息を大きく荒らげた。

 

「……それじゃダメか?誰かを守りたい事はそんなにダメな事なのか? 」

 

「指揮官…… 」

 

「目の前で助けられる命があるなら、俺はそれを守りたい。だから行かない、俺は……君達を守ってみせる 」

 

「へぇ〜感動的だな〜でも無意味だ!お前一人でこの数を倒せても、KAN-SEN達は守る事は出来ないだろう! 」

 

確かに難しいかもしれない。でもやるしかない。それだけの力はある筈だ……!

 

オミッターがセイレーンに総攻撃をかける合図をするように右手を上げたその時、空から雪が降ってきた。

 

「あ……?何これ 」

 

「雪?……いや違う、これは何だ? 」

 

触れた瞬間消えてしまい、触れた感覚も無いこれは……粒子?粒子が振ってきた空を見上げると、セイレーン基地の天辺に誰か人影が2つあった。

 

氷の一角には旗を持った人影が、粒子の集まりを翼のように広げ、もう一人は禍々しい艤装を背負いながら冷たい眼差しで海を見下ろしていた。

 

「……マーレ……さん? 」

 

「相変わらず偽善的だな、優海 」

 

「なっ…… 」

 

相変わらずなのはどっちだ。冷たい言葉に冷たい眼差し……まるでこの氷浮かぶ海のような感じだ。

それに、マーレさんの隣にいる人は誰だ?多分あの人がこの粒子を降らせており、テネリタスの人間だとは思うけど……

 

「おいおいおい……いい感じ何だから邪魔しないでよマーレェェ! 」

 

オミッターが主砲をマーレさんに向けて放とうとするが、オミッターの様子がおかしい。動きたくても動けないようにぎこちなくなっており、俺を囲んでいたセイレーンも何か様子が変だった。

 

「な……何これ……?EM……P……じゃない……体が……重い……! 」

 

「ふっふ〜ん!EMPとはちょっと違う私の粒子は一味もふた味も違うよ〜? 」

 

粒子を降らせている物が声を出し、声からして女性だ。戦場の場には似合わない程陽気な声は、まるで戦いに来た訳では無いものだった。

 

雲が晴れて太陽が姿を表すと同時にその女性の姿が表れた。腰まで届いている輝く金髪に、様々な色のメッシュをしており、まるでギャルのような印象だ。とてもテネリタスの英雄のような雰囲気では無い。

 

「ねぇねぇマーレっち〜私これやるの結構疲れるからもう止めて良い〜? 」

 

「……まぁ、充分に散布した筈なので構いませんよ 」

 

「やった〜!あぁ〜疲れた〜!」

 

粒子の散布が終わりと彼女の艤装が変形し、羽のように広がっていた部分が仕舞われた。

 

それと同時にマーレさんは艤装から艦載機を発艦させ、両翼にいたセイレーンの艦隊に攻撃した。マーレさんの黒い艦載機は黒い機銃を浴びせ、その後命を投げ捨てるように船に突撃させた。艦載機は突撃の衝撃で爆発し、辺りは一瞬で火の海と化した。

 

明らかに威力がこの前とは違いすぎる……マーレさん自身が更に強くなったのか、あるいはこの粒子の影響なのか分からないけど、相手にして勝てる見込みが無いのは確かだ。そんな相手が上空から降り立ち、俺たちの前に立ちはだかった。

 

「よっとっと……あぁ〜寒かったからこれで少しは暖かくなる〜! 」

 

「結構厚着してるような感じですけどね 」

 

「えへへ〜どう?これ私がデザインしたんだよ〜?雪うさぎをイメージしたこのモコモコの白い帽子に、毛皮コート、そしてなんと言ってもこの首のモコモコ!いや〜我ながらいいデザイン!マーレっちもそんな暗いコートよりも絶対こんな明るい色の奴が似合うって〜! 」

 

「俺は別にこれで良いですよ…… 」

 

な、何だあの人……一応今戦っているって言うのに呑気に服のデザインとか言い出したぞ?そのせいで緊張感が一気に崩れて、次の手とかどうすれば良いか分からなくなってきた……

 

「アンタ……何者だ……名を名乗れ! 」

 

オミッターが苦し紛れに彼女にそう言うと、わざとらしく片足を上げてオミッターの方に体を回転させ、顔を合わせた。

 

「ん〜?私?私は7代目テネリタス当主の【マリン・テネリタス】。気楽にマリちゃんとか、マリリンとか気楽に呼んでいいからね〜! 」

 

「こ、この人が7代目……!? 」

 

鉄血であったミーアさんが確か8代目だから……そのミーアさんの母親ということになる。

落ち着いた性格のミーアさんに対してマリンさんはかなり軽薄……というかノリが軽すぎる。正直、この人が当主というのは信じられないくらいだ。

 

「あ!貴方が指揮官の優海君ね!おぉー確かにマーレっちと似てるね!よろしくね〜! 」

 

マリンさんは気楽にウィンクをしながら挨拶を交わしたが、俺はその性格の気楽さに呆気に取られて生返事気味に返してしまった。

 

戦う気があるのか疑うような態度に困惑し、武器を下ろそうとしたがその行動が命取りになると分かったのはこの後だった。

 

「へ〜じゃあマリリンで良いか……なぁ! 」

 

隙をつくようにオミッターは大出力のビームをマリンさんに放った。ダメだ、あの距離では避けられない。

防御しか手段は無いが、あんな大出力ビームを防いだとしてもかなりのダメージを受けるはずだ。

マリンさんは微動だにせずに手に持っていた旗を振りかざすと、マリンさんの周りに蒼色の粒子が生まれた。

 

粒子がオミッターの放ったビームを包む様に飛び交うと、ビームが徐々に減衰し、ビームはマリンさんにたどり着く前に消滅した。

 

その光景を見たオミッターはの飄々した顔は一変し、目を見開き、起きた出来事を疑った。

 

「は……?な……何で…… 」

 

「言ったよね〜私の粒子は一味も二味も違うって 」

 

妖しげに目を細め、クスリと小さく笑っていたが、俺はゾッと圧を感じた。

気楽で友好的な態度を取っていて忘れそうになっていたが、あの人は正真正銘の英雄の家系、テネリタスの姓を継いだ7代目なんだ。お気楽そうとかそういう言葉はさっきの光景で吹き飛んだ。

 

「ところで……優海君はこの粒子の影響を受けてないんだね。やっぱりその艤装が特別なのかな? 」

 

「あ……そう言えば 」

 

確かに、セイレーンにも影響が出ているこの粒子下でも、俺だけが何故か無事だ。体に違和感も不調も無ければ艤装にだってなんの変化も無かった。

 

それを気になったマリンさんは軽やかな足取りで俺に近寄り、先程の圧を見せつけられてせいで俺は警戒して1歩ずつ後退した。

 

「え〜そんなに警戒しないでよー私はただ貴方達と仲良くしたいだけだから! 」

 

そう笑顔で近づいていき、お互いの目がハッキリと見える位置に来た時、俺とマリンさんの間に一筋の紅い炎が横切った。炎は横切ると上空へと軌道を変え、1つの艦載機に変化した。艦載機はそのままマリンさんに向かって攻撃を仕掛けようとしたが、その場にいたマーレさんが咄嗟に反応して撃ち落とした。

 

「優海!離れなさい! 」

 

「赤城姉さん!? 」

 

通信も出来ない状態でなんでここにいるんだ!?でも助かった……と安堵してるのもつかの間、鬼気溢れる赤城姉さんはそのまま真っ直ぐマリンさんの所に近づき、そのまま噛み付く勢いだった。

 

「なんか怖い子が来てるけど!? 」

 

「貴方……優海に何してるのかしら! 」

 

赤城姉さんだって粒子下の影響を受けている筈なのに、それを思わせないような動きをしているけど、顔が強ばっていて無理をしていると叫んでいるようだ。

 

「ちょちょちょっと!貴方私の粒子下にいるわよね!?何でそんなに動けるの!? 」

 

「私……だけじゃ無いわ……よ! 」

 

「え? 」

 

マリンさんが背後に悪寒を感じたのか咄嗟に後ろに振り返ると、瞳に青い炎を灯した白い獣がその首を噛みちぎろうとする勢いで右手に持った青い式神は蒼炎を纏って振り提げた。まるで炎の刃となった式神の攻撃にマリンさんは咄嗟に反応し、手に持っている旗を振り回して反撃した。

 

「ちっ……!くそ、体が…… 」

 

「加賀姉さん! 」

 

「え!?ちょっとなになに?まだ動ける人いるの? 」

 

「まだまだいるわよ? 」

 

マリンさんが声の存在に気づき上空に顔をあげると、八つの首のような艤装が目に映り、その一つ一つに紫色の光が集まりつつあった。

 

「これが限界……だけどね! 」

 

八つ首の艤装から発射されたビームが更に枝分かれして拡散し、まるでビームが檻のようにマリンさんの逃げ場を無くし、マリンさんはそのまま立ち尽くした。

 

「ありゃ〜でもこのくらいなら余裕かな〜 」

 

「ほう、ではこの序曲に賛美を加えよう 」

 

「へ? 」

 

オロチさんとは別方向に嵐のような砲弾がマリンさんに向かい、少し顔を強ばらせたマリンさんは蒼い粒子を集め、自身を中心にドーム状に形成すると、粒子とビームがぶつかり合ってバリアのような役目を果たしていた。

粒子がビームを逸らし、本来の力が出てないのもあってかマリンさんには一片の熱も届かずに全弾防がれてしまい、オロチさんは攻撃を止めた瞬間力を使い果たしたかのように海に崩れ落ちた。

 

「指揮官ー!大丈夫ですか!? 」

「ジャベリン!みんな! 」

 

第一、第二艦隊のKAN-SEN達もここに集結し、しかし皆はもうボロボロであり、やはり無理してここに来たのだろう。

 

「あ〜キツイ!やっぱり厄介ね……テネリタスってのは 」

 

赤城姉さんも加賀姉さんもやはり無理をしていたのか、行動不能を諭すように膝をついた。

 

「皆凄いね〜!私の粒子下でも動けるなんて流石KAN-SENかな?パチパチパチ〜!! 」

 

まるで赤ん坊が初めて立って歩いた瞬間に立ち合い、その子供を褒めるように大袈裟に拍手をした。

本人からすれば本気で褒めてるつもりだけど、姉さん達からすれば煽られてると思っているに違いない。

 

姉さん達の顔は、今屈辱にまみれながら耐え抜くように歯を食いしばり、マリンさんを睨んでいた。

 

「もう〜そんなに睨まないでよ。お礼にこの辺のセイレーンを倒すのに協力するから!ね?良いでしょ優海君? 」

 

「なっ…… 」

 

「ちょ……! 」

 

まさかのテネリタス側から協力の申し出に驚き、戸惑いつつあった。だけど、それはマーレさんも同じ事だった。

 

「マリンさん……貴方何勝手な事を…… 」

 

「え〜良いじゃん良いじゃん〜!その代わりマーレ君を基地に行かせるから!ね?ね? 」

 

「……もしかしてそれが狙いですか 」

 

「ありゃ、バレちゃった 」

 

わざとらしく舌を小さく出し、隠す気の無い態度でハッキリした。この人、最初からこの展開を狙っていたんだ。

 

粒子下での戦場掌握も、この取引の持ち方も、全部計算してこの取引をこの場で持ち出した。性格の割にかなり計算高い人だ……やっぱり侮れない。

 

「それでどうする〜?このままだとKAN-SEN達は苦しくて立てないし〜優海君一人で戦う事になるよ?そんなの……嫌だよね〜? 」

 

マリンさんはチラリと姉さん達の方を見た。

 

確かに……この状況下でKAN-SEN達がこのままだとKAN-SEN達の被害は計り知れない。セイレーンもマリンさんの粒子下の影響に受けていると言っても、この物量で覆すのは難しい。

となれば、俺が出す答えはひとつしか無かった。

 

「……分かりました 」

 

「……いいのか、同士指揮官…… 」

 

「このままじゃ状況は悪化する一方だ。これしかない 」

 

「あは、そうだよね〜じゃ、マーレ君は先行ってていーよ〜 」

 

計画通りに上手くいったマリンさんは、一瞬だけ今までやってきた笑顔とは違う妖しく笑い、マーレさんを見送る笑顔に変わった。

 

「……中々悪い人だ 」

 

そう言ってマーレさんは基地に突入を仕掛けたが、これ以上好きにはさせまいとオミッターが何かしようとしていた。

 

「ここまでコケにされて……黙ってやられる訳には行かない……なぁ!! 」

 

「死に損ないが…… 」

 

トドメを刺そうと右腕のビームガンの照準を定めた瞬間、異変が起きた。

 

「っ……!ああああ!! 」

 

突然北方連合のKAN-SEN達が悲鳴を上げ、頭痛がするのか頭を抑え、痛みを堪えるように悶絶していた。

 

「な……何だこれは……っぁ……! 」

 

「頭が……痛いっ!! 」

 

「どうしたんだ皆! 」

 

近くにいたロシアに手を差し伸べようとした瞬間、ロシアの艤装が吠え、化け物のような口を開き、その中から蒼色の光が大きくなりつつあった。

 

「なっ……! 」

 

「避けろ!同士指揮官! 」

 

ロシアが右手で俺を突き放し、それと同時に艤装からビームが発射された。俺の脇スレスレにビームが横切り、ビームの熱さと共に俺の服の一部が焼け焦げた。

 

「っ…… 」

 

「優海っ! 」

 

「指揮官! 」

 

先程の一撃でよろけ、その隙をつくように北方連合のKAN-SEN……いや、艤装達が俺を狙うように照準を定めていた。ダメだ、回避する余裕が無い……!

 

「……ちっ 」

 

「避けてぇぇ!! 」

 

誰かがそんな事を叫んでいたが、その叫びは届くことも無く艤装はビームを俺に1点に集中し、俺はこの冷たい氷海の冷たさを忘れるような蒼い高熱の光に飲まれた。

もしもの話(R-18)を観測しますか?

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