もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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閉ざされた都市

冷たく、寂しいこの氷の中、彼らはそこでただひたすら生きていた。閉鎖されたこの都市で、彼らは何を思い生きて生きるのだろうか。

 

明日を見失い、今この瞬間さえ生きられるかどうか怯え、いつも死へと誘う死神が何時でもその鎌で首を切り落とすように首に刃をずっと構えているようだった。

 

この死に怯える恐怖から逃げる為に命を自ら捨てる者もいた。だが、ある意味それは一種の救済だろう。

 

なぜなら、もうこの世界には希望なんてものはとうの昔に壊れたのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?俺、生きて……いてて……! 」

 

目を開き、体を起こそうとした瞬間に体の節々に痛みが走り、その痛みで意識が覚醒した。

 

どこだここ……確か俺は……そうだ、急に暴走した北方連合の攻撃を受けてからそれで……ダメだ、この後の事が思い出せない。というより、確かその瞬間に意識を失ってたような気がする。

 

「そうだ……皆は!? 」

 

周りを見渡すと、部屋は薄暗くて、何かの機械がある中で部屋の向こうには異様な存在感を放っている氷があった。そして、その氷の前には台座がポツンと怪しく立っていた。

周りに人の気配が無く、あるのは謎の機械だけだった。

 

痛みがひいていき、ようやく立ち上がれた俺はその怪しい台座に近づいた。台座には何かのくぼみがあり、いかにもここに何かを乗せてくださいと言わんばかりだ。

しかし、生憎俺はこのくぼみにはめ込めるものを持っていない。くぼみは立方体に凹んでおり、この部屋にはそれらしき物が無かった。

 

氷に台座……そしてくぼみ……該当する物をはめ込めば、まさかこの氷が開く仕組みなのか?ここがどこだかも分からない今、無闇に散策するのは危険だが、戻る方法すら分からない今は進むべきだ。

 

武器を出し、一番破壊力のある大剣に変形させると同時に俺は大剣を氷に振りかざした。鉄と氷がぶつかる甲高い音が響いたが、大剣は氷を割ることは無く、それどころか1つの傷も負わなかった。

 

硬い衝撃が剣から手に、そして全身に震えながら走ると何とも言い難い痛みが全身に走る。

 

「硬っ!これ本当に氷か……? 」

 

剣がダメなら銃だ。幸い俺の銃はビーム兵器なので凄まじい光熱量がある。これなら氷を溶かせる筈だと武器を二丁拳銃に変形し、一応最低出力で氷に弾を撃つ。

じゅわっと氷が一瞬で水になって蒸発する音が鳴り、氷は溶けたのは溶けたけど、それは表面の1部にしか過ぎなかった。

しかも、溶けた氷がまるで再生するよう元に戻っていき、氷の扉は何事も無かったかのように傷一つ無く復活した。

 

 

「無駄だ、その氷は絶対に外部からの攻撃を防ぐ扉だ。力押しは無意味だぞ 」

 

後ろから男の声が聞こえた。聞き慣れな声、いつも敵対するその声の主は間違いない、マーレさんだった。

 

「どうしてここに…… 」

 

「俺はここに用があって北方連合に来た。まさかお前まで来るとは思わなかったがな 」

 

「ここって……どこですか? 」

 

「ここはお前達セイレーンの基地、【王冠】と呼ばれている物の入り口だ 」

 

セイレーン基地?ここが……?確かに周りにある機械は鉄血でも見た事が無く、納得がいくにはいくけど……

妙に解せないのは俺とマーレさんがここに一緒にいる事だ。

 

マーレさんが一緒に行こうだなんて言わないだろうし、俺と行動する理由すら無いはずだ。

 

……そう言えば、北方連合のKAN-SEN達の攻撃を受ける直前、マーレさんの姿を見たような気がした。俺の見間違いじゃ無ければ、マーレさんは俺を助けてくれたに違いないけど、確証が無い。

事実を確認するために、俺はその本人に真意を説いた。

 

「……助けてくれたんですか 」

 

「戯言を聞く耳は持ち合わせていない 」

 

やっぱりあしらわれてしまった。やっぱり俺の勘違いなのかな……

マーレさんが台座の前にたつと、懐からあるものを取り出していた。黒く輝く立方体……黒いメンタルキューブだった。

マーレさんがそのブラックキューブを台座にはめ込むと、氷に白いラインが入り、ラインは小さな正方形を無数に描くように入ると、氷はゆっくりと崩れだし、先へと続く道へと開いた。

 

「開いた……! 」

 

「やはり、メンタルキューブをはめるための台座か 」

 

「そうだ、メンタルキューブって言えば……その黒いメンタルキューブは何ですか!? 」

 

あれは確かビスマルクから奪った物のはずだ。

あれのせいでビスマルクは暴走し、敵味方関係無く攻撃をし続けた危険な物だ。そんな危険な物をマーレさんは集め、なにかに利用しているのは間違いない。

 

「それは危険な物です!渡して下さい! 」

 

「危険な物かどうかは、後に分かる 」

 

そう言ってマーレさんは扉の向こうへ行ってしまい、俺はその後を追いかけた。

 

扉を抜けると、そこには俺が予想だにしなかった光景が広がっていた。

 

ここが基地とは信じられないくらい広い空間が広がり、まるでもう1つの世界に迷い込んだようだった。しかも、その景色の向こうには……都市があった。人類が住むような大規模な都市が、なんでセイレーンの基地になんか存在するんだ?

 

「しまった……マーレさんは!? 」

 

あまりの光景に驚いてしまい、マーレさんを見失ってしまった。手がかりも無く見失ってしまっては探す余地もない為、手詰まりの状態だ。唯一あるとすれば、あの都市にしか無いだろう。

 

そもそも、俺がここに来た理由はセイレーンに関する情報の収集だ。ここが本当にセイレーンの基地だとすれば、なにか機密情報があってもおかしくはない。

 

氷のうねり道を歩き、俺はあの浮かぶ都市に向かって歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_同時刻 王冠付近にて

 

「くっ……どうなっている!体が勝手に……! 」

 

天気は荒れ、吹雪が鳴り止まない中で、氷の中で育った獣が吹雪のように荒れていた。

その獣を従わせていたKAN-SEN達は、その獣に主導権を握られているのか、自身の体が勝手に動き、同じKAN-SENに攻撃していた。

 

「くぅ……!何よこれぇ! 」

 

「体があっちこっち勝手に行ったりして……苦しいです…… 」

 

主導権を握られているせいかKAN-SEN達は自身の許容範囲を超える動きを無理矢理させられ、苦しげな表情を全面的に出していた。このままではいずれ体が壊れ、生命活動にも影響が出る事だろう。

 

「マリンって言ったっけ?貴方の粒子でどうにかならないの!? 」

 

赤城は北方連合のKAN-SEN達に向けて牽制気味な攻撃をしつつマリンにそう言ったが、マリンもその余裕が無さそうだった。

 

「やってるけどダメっぽい!でも間違いなく出力は落ちてる筈だよ〜多分艤装が無理やりにでも暴れてるから、このままだとKAN-SEN本人が危ないかもね〜 」

 

「でしたら原因を作った者を倒すしかなさそうでございますね 」

 

ベルファストがその結論に辿り着き、主砲を元凶であるオミッターに砲弾を放ったが、オミッターにたどり着く前に北方連合のKAN-SENであるチャパエフの艤装がその砲弾を撃ち落としてしまった。

 

「この……言うことを聞きなさいっ……! 」

 

「ふははは!これは奥の手だったが……まさか使わせるとは思わなかった……褒めてやる! 」

 

「そりゃあどうも〜んーオミっちを倒そうにも北方連合ちゃん達がそれを守るようにしている……でもかと言って倒す訳には行かない……どうしようかな〜 」

 

「そ、そんな呑気に言ってる場合じゃ無いですよ! 」

 

「あはは!ジャベちゃん大丈夫だよ〜。私が何とかするから 」

焦りに焦ったジャベリンを落ち着かせるようにマリンはポンと頭を撫でると、マリンは艤装の一部を中心から離れるように展開し、まるで巨大な羽を広げてるようだった。

 

「皆〜!ちょっと今から凄く強くなっちゃうけど、驚かないでねー! 」

 

旗を海に突き刺し、艤装の羽から赤の粒子がこの海域全体に満遍なく広がり、まるで全体が赤色のカーテンに包まれたかのような美しい光景が広がった。

 

それだけじゃない、KAN-SEN達の艤装もうっすらと赤色に輝き、KAN-SEN達は体の奥深くから炎の灯火が燃え上がるのを感じ取っていた。

 

「さぁ皆!はっちゃけちゃおう! 」

 

旗の掲げ、陽気な英雄の号令を祝福するように一筋の太陽の光が彼女に降り注ぎ、彼女の大進軍が始まった。

彼女の号令と同時にKAN-SEN達は動き出し、その動きは通常の倍以上にもなった。

 

「な、なにこれ!?体が嘘みたいに軽い! 」

 

「体の奥底から……力がみなぎるのです 」

 

「そうそう!それが私の艤装の能力ってわけ!さぁさぁ、狙いはオミっちちゃん!ガンガン行っちゃって! 」

 

「それでは……遠慮なくやらせてもらうのです! 」

 

先陣を切ったのは綾波だった。稲妻の如くセイレーンの懐とに飛び込むと同時に剣を振り下ろし、セイレーンの外装をいとも容易く切り伏せた。

 

「これが……綾波の力? 」

 

自身のパワーアップに驚いた綾波は止まること無く次々と刀を振り、その姿は正に鬼神と言わしめるものだった。しかし、自身の能力を過信したのか、綾波は背後に近づく敵に気が付かなった。

 

「しまったのです……! 」

 

気づいた時にはもう遅く、人型のセイレーンの主砲が目の前にあり、ゼロ距離射撃が開始される寸前だった。

 

「綾波ちゃん! 」

 

それに気づいたジャベリンは自前の槍を思い切り投げ飛ばし、槍は空気を貫き、直線上のセイレーンを次々と貫いていく。貫いた槍は止まることを知らずに徐々に綾波を狙うセイレーンに近づき、やがて音を置き去りにしてそのセイレーンを貫いた。貫かれたセイレーンはそのまま槍と共に吹き飛ばされ、近くの量産型セイレーンの装甲と衝突して爆発した。

 

「綾波ちゃんー!大丈夫!?自分でもこんな力出せるのびっくりしちゃったけど…… 」

 

「綾波は大丈夫なのです。……それにしても、随分と大雑把な助け方なのです」

 

「あ、あれしか思いつかなくて……で、でも!武器はもう一本あるから大丈夫だよ! 」

 

武器のスペアをもう一本取り出したジャベリンは戦闘を再開させ、綾波も今度は失敗しないと心に誓い、再度敵の懐に飛び込んだ。

 

「ラフィーは、皆を止める 」

 

「ラフィー、私も手を貸すわ 」

 

ラフィーとZ23はセイレーンの相手にはせず、暴走した北方連合のKAN-SEN達の足止めを買って出た。

 

許容外の動きを強要された北方連合のKAN-SEN達の中には、ほぼ意識が朦朧としているものだっていた。

 

「このままじゃ不味いわね。何か良い方法は…… 」

 

何か止める手だては無いかとZ23は模索し、Z23の目に氷山が目に映った瞬間、Z23の脳内はある事を閃いた。

 

「ラフィー、ちょっと頼みたい事があるんだけど…… 」

 

Z23はラフィーの耳元で自分の作戦を耳打ちをした。

 

「……分かった 」

 

「ちょっと危険だけど……今の状態なら……可能な筈!

 

「大丈夫、私たちなら行ける 」

 

いつも通り気だるげな目をしたラフィーだが、心配ないように親指をグッと立てた。気だるげな目ながらもその瞳の奥には確かな意思があった。

 

ラフィーは加速の初速から一気に最高速度にまで達し、北方連合のKAN-SEN達の間を風のように通り抜けた。

北方連合のKAN-SEN……いや、艤装は兎を追う獅子のようにラフィーに狙いを定めた。

 

しかし、マリンの力のお陰なのかラフィーの速度は草原を掛ける風を越える兎のように早く、北方連合のKAN-SENはラフィーを追いかける事が出来なかった。

 

「二ーミ! 」

 

ラフィーの合図と同時に二ーミは主砲を氷山の天辺に向け、タイミングを見計らっていた。自身の体長より

 

「了解!計算上ではこれで必ず……! 」

 

二ーミが放たれた主砲が唸り、砲弾が海に浮かんでいた氷山を打ち砕くと、氷山はバランスを崩し自らの質量によって崩れ去った。崩れ落ちた先にはラフィー達がおり、このままラフィーが前進すれば氷がラフィーの上へと直撃してしまう。

 

しかしラフィーは止まらなかった。寧ろ更に速度を上げ、音を置き去りにするまでもあった。

 

「行ける……! 」

 

氷が海に落ちる瞬間、ラフィーは跳んだ。空中に落ちていく氷を足場にし、氷が落ちる前に飛び跳ね、また次の氷へと飛び移る。落下する氷よりも早く飛び跳ね、ラフィーは見事崩れ落ちる氷の大群から抜け出した。

 

そして、その大群に見事はまってしまった北方連合のKAN-SEN達は氷によって周りを閉じ込められてしまい、身動きが取れない状態となった。

 

これでは流石に北方連合と言えど直ぐにの脱出は不可能であり、艤装の攻撃による爆発でも溶けるのには時間がかかるだろう。

 

「よし!やった……!」

 

「グッジョブ。二ーミ 」

 

「ラフィー!貴方大丈夫なの?あんな動きして…… 」

 

「大丈夫……けど、動きすぎたからちょっと眠いかも 」

 

「ちょっと!動きは止めても半分だけだから、まだ寝ちゃダメよ!! 」

 

その通り、実際二ーミが行った作戦で足止めをしたのは約半数であり、残りの半数はなんの隔てもなく動ける状態だ。このまま無視する訳にもいかず、次また同じ作戦を取ろうにも読まれるだろうと踏んだ二ーミは次の作戦を考えていたが、それはある者によって止められた。

 

「その心配はありませんよ。私も残りの半分を足止めしましたので 」

 

「神通さん?足止めしたって…… 」

神通が1歩右に移動すると、その先には海の上にも関わらず燃えたぎる赤と青の炎の壁が、北方連合のKAN-SEN達を囲むようにしていた。

 

「あ、あれは……? 」

 

「赤城さんと加賀さんの力です。私は別に何もしていません 」

 

「私と加賀を馬車馬のようにこき使っておいてよく言うわね 」

 

「あら、これも軍師たるゆえです。そのおかげでもう半分を足止めしたのですから、お釣りが来るほどでは? 」

 

「まぁいいだろう。残りはあのセイレーンだけだが……私たちの援護は必要ないだろう 」

 

「調子に乗るなよKAN-SEN達!私の力を思いs」

 

「残念だけど、チェックメイトよ 」

 

反撃をかけるオミッターだが、その背後にはオロチが存在し、オロチはいくつもの砲口をオミッターに向けていた。既にチャージは完了しており、オミッターが上空に振り返るった瞬間、オロチは前門の主砲を放った。

 

迫り来るビームを回避するオミッターだったが、獲物を追いかけるように全てのビームが曲がり、オミッターを追い続けていく。

 

有り得ない光景にオミッターは戸惑いつつも低出力のビームで相殺しつつ後退したが、それはオロチの思惑通りの結果となった。自分が思い描いた事がそのまま上手くいった子供のようにオロチは不敵に笑うと、オミッターの逃げた先には機雷が仕掛けられており、オミッターはまんまとその水中機雷の水上に足を踏み入れ、爆発を起こした。

 

「がハッ……機雷なんて物いつの間に…… 」

 

「貴方はそのままじっとしてなさい! 」

 

前もって所定の位置に配置していたフォーミダブルとヴィクトリアス、そしてグラーフ・ツェッペリンの艦載機が一斉にオミッターを囲むように飛び交い、無数の爆撃を落とした。先程の機雷で体勢が整っていないオミッターに回避の手段は無く、止むを得ず防御の体勢を取るしか無かった。

 

「残念ねオミッター 」

 

「オロチぃ……!ただの道具の癖に……ィぃ!」

 

「あら、怖い顔。そんな貴方はたかが道具如きに翻弄されて負けるのよ」

 

オロチが人差し指を上から下へと動かしたと同時に艦載機の一斉射撃が行われ、オミッターは文字通りの蜂の巣にされ、爆撃の爆風をまともに巻き込まれてしまった。

 

「ま……だ……だぁ!」

 

オミッターは目を見開き、このままではすまないとオミッターは力の限り抵抗するように主砲をオロチに向けた。しかしオロチは顔を一切崩さず、寧ろ無様だと言わんばかりに足を組み、嘲笑っていた。

 

「チェックメイトと……そう言った筈です 」

 

オミッターの背後からベルファストが接近し、腕についている主砲をオミッターの背中に砲口を突き出すと同時にゼロ距離射撃を放った。射撃した直後にベルファストは撤退し、ベルファストはダメージを受けなかったが、オミッターにはかなりのダメージを与えた。

 

死角から重い一撃を受けたオミッターはついに負けを認めたのか膝を付き、艤装も殆ど機能しなくなるように内部の淡い青い光が薄れていった。

 

機能が停止したのか、北方連合のKAN-SEN達の動きが止まり、戦場は終結を迎えていた。

 

「まさか……ここまでやるなんてね……ちょっと油断した…… 」

 

「あら、まだ息があるのね……というより、貴方(スペア)を倒しても意味は無いわね。貴方本体では無いでしょ? 」

 

「まぁね〜でもお陰で中々楽しめたし、7代目テネリタスのデータもまぁまぁ取れたから結果オーライかな! 」

 

「ありゃ〜これは不味いかな〜 」

 

マリンはわざとらしい困りようを見た全員は、まだ余力を残していると悟った。マリンだけじゃない、テネリタス全員は恐らくまだ余力を残しており、セイレーン同様まだまだ底が知れない勢力なのは依然変わらなかった。

 

「あはは……これはもっともっと楽しくなりそうな予感がするよ……!人間同士の醜くて酷い戦いが始まるなんて、人類は進歩しないな〜! 」

 

「……そう言われると、確かにそうだよね〜 」

 

「英雄がそう言う?じゃ……私はここらで失礼するよ……またどこかで会おう!アイウィルビーバック!! 」

 

オミッターは海に沈み、最後に右手親指を立てながら深海へと進んで行った。

 

「……セイレーン反応ロスト。……沈黙しました 」

 

レーダーからセイレーン反応が消えたという事は、戦闘は終わったという事だ。ひとまずの安堵をKAN-SEN達は噛み締め、マリンは一仕事を終えたようにグッと腕を伸ばした。

 

「ん〜終わった〜!皆よく頑張ったねー! 」

 

「終わりと……思ってるのかしら? 」

 

「あらら〜やっちゃう系? 」

 

そう、セイレーンを退いてもまだ戦いは終わらない。KAN-SEN達はマリンを囲って逃げ場を無くすと、いつでも攻撃できるように戦闘態勢を解いてはいなかった。

 

「え〜!もう良いでしょ〜? 」

 

「良くないに決まっているでしょ。貴方達の目的を話してくれたら考えなくもないけど 」

 

「止めといた方が良いと思うけどな〜 」

 

マリンが艤装の展開を止め、辺りに舞っていた赤色の粒子が回収されたと同時にKAN-SEN達に異変が起きた。

 

「くっ……!? 」

 

突然KAN-SEN達が全身に痛みが走り、艤装が限界を迎えるように火花を散らしていた。

 

「な……何だこれは……!? 」

 

「それはね〜皆は私の粒子で強くなったのは良いけど、体と艤装がそれについて行けなかったんだよ。1種の火事場の馬鹿力って奴?でも命に別状は無いから安心してね 」

 

「貴方……これを見越して……協力したのかしら?だったら貴方結構良い性格してるわね 」

 

「それ絶対悪い意味だよね?酷くない?私は皆の為を思ってやったのに!激おこプンプン丸だよ! 」

 

可愛げに地団駄を踏んだマリンの行動は見るものによってはKAN-SEN達を煽るような行動でもあったが、マリン自身本心でそう感じていた。

 

「じゃ、後はマーレ君が帰ってくるのを待つだけだからのんびりとしていこうかな〜 」

 

「生憎だがそれは御遠慮願おうか 」

 

「ふぇ? 」

 

マリンに向かって氷の砲弾がKAN-SEN達の頭上を通り、油断していたマリンはその砲弾を回避したが、砲弾が海上に着弾した瞬間その地点から海が氷始め、マリンの足がその海諸共氷漬けになった。

 

アズールレーンのKAN-SEN達にあんな特殊弾を撃てる者はいない。かといって周りにはセイレーンなどいないとなれば答えは1つしかない。

 

雪のように白いコート、氷に眠った獣のような艤装をもう一度我が物にした北方連合のKAN-SEN達が、倒れたアズールレーンのKAN-SEN達の前に立ちはだかった。

 

「あらら〜まさかもう動けるようになるなんてね〜 」

 

「あまり私達を見くびらないで貰おうか 」

 

「見くびっては……ないけど……ね! 」

 

氷漬けにされた右足を足の力だけでひっぺがしたマリンはもう一度粒子を出そうとしたが、突然現れた妖精のような形をした何かに妨害されてしまう。

妖精は氷柱のような弾を連射し、マリンは旗を回転させて全弾防ぐ。

「まだまだ!タシュケントの力見せてあげる! 」

 

タシュケントは更に妖精……いや、正確には妖精型の自立兵装をもう一機生み出し、投げつけるようにマリンに向けた。猛スピードの妖精型自立兵装はマリンの体勢を崩し、大きな隙を生み出した。

 

その動きを止めた僅かの隙を逃す北方連合のKAN-SENでは無かった。全員ありったけの火力を一点に集中し、砲身が焼き切れようとも打ち続ける勢いでマリンに攻撃を行った。

 

「やっば……! 」

 

動き出しても遅い。マリンは周りから見れば姿が見れない程の全方位からの砲撃を受け、街一つは軽く消し飛ぶ程の爆発に巻き込まれた。

 

「命中だ。ふぅ……だが、やはり病み上がりだとキツイな…… 」

 

ロシアがそう呟くと同時に膝をつき、同時に他の者も一斉に倒れ込んだ。やはり先程の暴走の被害が残っており、先程の攻撃は死にものぐるいの攻撃だったのだろう。最早誰も立ち上がる事が出来ず、今仮に敵が一人でもいれば間違いなく全滅するだろう。

 

「はぁ……はぁ……もしこれで生きてたら化け物よ化け物…… 」

 

「流石に……それはな……無事じゃない事に賭けてもいい 」

 

メルクーリヤとベラルーシアが冗談混じりで笑いながらそう言うと、皆爆炎の中を見つめた。その事実はあって欲しく無いと心から願っていたが……それは現実となった。

 

爆炎の中から何か蒼色の光がチラついて見えるのを確認したベラルーシアは事実を飲み込めず、目を開いた。

 

「バカな…… 」

 

「あ〜危なかった!流石に私もヒヤヒヤしたよ〜 」

 

爆炎の向こうからゆっくりとスキップを踏みながら現れたのは……マリンだった。あれ程の攻撃を受けたはずなのに体や服には傷一つ着いておらず、無傷そのものの状態だった。

 

KAN-SEN達は死力を尽くした攻撃をしたのにも関わらず相手は無傷という結果に打ちのめされるように絶望した。

 

「あれ?なんか皆元気ないね?まぁ仕方ないよね、皆満身創痍、私でも全滅させるぐらい動けないんだからしんどいよね〜 」

 

「くっ…… 」

 

万事休す、最早打つ手はないKAN-SEN達に残された道は……倒される事だけだった。だが、マリンはKAN-SEN達に攻撃すること無く、ただ基地の前にのんびりと座って待っていた。

 

「……?どういうつもりだ! 」

 

「どうもこうも私はただ待つだけだよ〜。そ・れ・に、KAN-SEN達は倒さないってマーレ君に念を押されてるし 」

 

「マーレが……? 」

 

その言葉を聞いたオロチは確信した。マーレはKAN-SEN達には危害を加えようとも、命までは奪わない事を。しかし、それを知ってマーレの目的を知るには、まだ判断材料が足りなかった。

 

「んっ……ん〜!さて、マーレ君は今何をしてるのかな〜 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_現時刻 王冠内部にて

 

酷くもの寂しい氷のようなうねり道を歩き続け、分かった事がひとつある。さっき氷の扉をの方で見たあの都市はホログラムであり、実際にここにある都市は酷く荒廃していた。

 

都市と言うよりは、何かの施設のようにも思えた。周りには電子ロックが壊れた扉と、無惨に瓦礫と化していた謎の機械、そして謎の立方体の建造物だ。立方体の建造物には扉が着いており、開くと中には空間があった。

 

恐る恐る中に入ると、薄暗い部屋の中には生活スペースと思わしきテーブルと椅子、ソファーにテレビまであった。

 

まるで一般家庭のリビングそのものだ。どうしてセイレーンの基地にこんなものがあるんだ……?

監禁や捕虜にしていた?にしては生活基準が高すぎる。

部屋の広さも充分にあり、形跡からして閉じ込められたと言うより住んでいたと言った方が正しい。

 

「何か手がかりは無いかな…… 」

 

元々人が住んでいたのなら、きっと何かこの状況を示す物がある筈だ。しかし、部屋はかなり悲惨な状態だ。そこら辺の壁はボロボロで家具類の原型が留めていない。瓦礫だって転がっていた。大変そうだなと心に思いながら奥へと入ると、ふとある物を目にした。壊れた机の上に、画面がひび割れたタブレット型の端末が置いてあった。僅かな希望を期待しながらタブレットを手に取ると、手に取った瞬間タブレットは光出した。

 

「良かった……まだ生きてる! 」

 

しかし所々点滅していつこのタブレットの寿命が切れるか分からない。急いで端末を操作し、何か変わったところが無いかと調べると、タブレットに【重要連絡】と書かれたフォルダーがあった。

 

フォルダーをタップすると、長文がズラリと並んだ。黒い文字では無く、大事な所は太字や赤文字にしたり、何かを説明している図もあった。

 

大まかには今月の農作物の取得量や水の確保と言った資源関連、そして軍備増強の件などがあったが、一番目を引いたのがこれだ。

 

「アンチエックス開発の報告書……?」

 

アンチエックスって何だ?だが、この端末ではこのことが【最重要機密情報】と赤文字のフォルダーがあった。

試しに開こうにもロックがかかっており、パスワードが必要だった。

 

「くそっ…… 」

パスワードを入力しようにもその手がかりが無い。当たりを見渡すも部屋は瓦礫の山だ。恐らく手がかりやメモも潰れているだろう。

だが、その心配は無かった。タブレットの寿命が尽きたのか、画面が突然暗闇に戻ってしまった。

 

俺は焦ってもう一度起動しようとタブレットを振ったり叩いたり電源ボタンを連打するがうんともすんとも言わなかった。

 

「うぅ〜なんか分かりそうだったけどな…… 」

 

もう少しの所で手が届かなった悲しみに落胆し、俺はタブレットを机に置いてこの部屋を後にした。状況は振り出しに戻り、どうしようかと悩んでいると、コツコツと足音が耳に届いた。大分近い、俺はその場の建造物に隠れ、その足音の主を見ようとするが、考えてみれば俺の他に人がいるなんてあの人しかいない。足音が近づき、壁の向こう側から白い裸足が表れた。

 

(裸足……!?マーレさんじゃない!? )

 

裸足から白いスカート……いや、何か触手の様な物も一緒に表れた。徐々に全体像が明らかになり、壁の向こうにはまるで巨大なクラゲの形をした艤装を背負った小さな女の子がこの街を歩いていた。髪も、肌も、着ている服も白く、見た感じ明らかにセイレーンだが、それとは違う一線を越えた何かを感じた。

 

ここで接敵するのは良くない。急いでこの場から離れようとしたが、その焦りのせいで瓦礫の山の石を蹴ってしまい、この静寂の空間に小石の蹴る音が響いてしまった。

 

(しまった…… )

 

瞬間、壁際の向こう側から一本の触手が壁を貫き、俺の目の前を横切った。心臓が掴まれた様な恐怖感を抱いた俺は直ぐにその鋭利な触手から離れた。

 

突き抜けた触手が持ち主の所に戻ると、貫かれた建物が崩壊し、その瓦礫の先には俺が見たクラゲを背負った少女がいた。

 

その少女と目が合ってしまい、すぐ様俺は艤装の主砲を少女に向けた。しかし、少女はうろたえることも無ければ構えることもせず、そのままじっとこちらを見ているだけだった。

 

こっちの出方を伺っている様子も無い。かといって見た事ない相手には先手を取りづらい……

 

静寂が続く息苦しい中、彼女が動いた。ゆっくりと1歩ずつ進んでいるとは対称に俺は1歩ずつ後ろに退いた。

 

「……ずっと、貴方を見てきた 」

 

「え……? 」

 

無機質な声で少女はそう言いながらまた一歩こちらに近づく。その間に攻撃は一切する事も無く、こっちが主砲を構えているのにも関わらず無防備で歩き、今この距離で間違いなく彼女は沈む。

 

その筈なのに、撃っても無意味だと直感で感じている自分がいた。彼女もそうだ、まるで自分が今ここで沈む訳が無いと確信しているように真っ直ぐ、全てを見通しているかのような透き通った目がはっきりと見える距離までいつの間にか近づいていた。

 

「貴方と彼は可能性となった。私達の予想を超え、新たな現象へと導いた 」

 

「さっきから何を言ってるんだ……? 」

 

「貴方に問う。貴方は……どんな世界を望む?どんな風に、世界を導く? 」

 

彼女は1m程の距離感で立ち止まり、俺の問いを待っていた。敵意も無く、ただ純粋に自分の問いの答えを待っていた彼女を見ると、戦う意思が薄れ、俺は主砲を下ろし、彼女の問に答える為の解を考えた。

 

どんな世界を望むか……そんな事も考えた事も無い。

俺はただひたすら人生を目いっぱい生きてるだけで、普通の人間と変わらない日々を送っていた。

少し変わってる所と言えば、こうして戦ったり、基地で執務に追われたり、それだけを除けば、母さんや姉さん達、そしてKAN-SEN達皆と笑って過ごしている。

それ以上は望んでもいないし、考えてもいない。だからこそ、俺の答えは決まっていた。

 

「……俺は、皆と一緒に笑える世界が良いかなぁ 」

 

「じゃあ、貴方はその世界に皆を導くの? 」

 

「導くんじゃない。一緒に歩くんだ。1歩ずつ、前へ前へと皆で歩く。俺はそれを願っているよ 」

 

 

 

「そうですか……でしたら、ご主人様を歩ませる訳には行きませんね 」

 

「……!?誰だ! 」

 

彼女の声じゃない、どこか別の場所から違う女の声が聞こえ、咄嗟に戦闘態勢にまた移行した。周りを警戒し、咄嗟の攻撃に備えようにも攻撃は中々来ない。

その変わり、水面を歩く音が段々と大きくなっていた。

右方向の瓦礫の向こう側から人影がぼんやりと表れ、徐々にその姿を表した。

 

「…………え?何で……? 」

 

その正体は今ここにいる事自体可笑しい人物だった。

絹のような白い色の短髪に、目は蒼く鋭い目、そして極めつけは黒を基調としたメイド服を来たKAN-SENが俺の前に表れた。雰囲気が全然違い、顔立ちも少し変わってはいるが、メイドとして優雅に振る舞うように綺麗な姿勢の立ち振る舞いは間違いなく……アイツだった。

 

「ベル……ファスト? 」

 

半ば確信的かつ半ば疑心暗鬼で目の前のKAN-SENの名前を呼んだ。そして、彼女は小さく微笑み、ドレスの両端を指でつまんで少し上げ、カーテシーと呼ばれる挨拶を行った。

 

「はい、貴方だけのベルファストでございます 」

 

やはり、目の前の彼女はベルファストだった。でも……どこか違う。立ち振る舞いは間違いなくベルファストだが、雰囲気が最早別人の類だ。

近寄り難く、何か怖いものを感じる。そして何より……目が死んでいる。

 

いつものベルファストの煌めくような目は無く、まるで絶望を打ち付けられ、希望を探しているような目立った。

 

「ご主人様……やはり、変わっていられないのですね 」

 

「なぁ……本当にベルファストなのか?その服とかどうしたんだ?ここにいるってことは、もう外の皆は大丈夫なよか? 」

 

「ふふ、今はそんな事どうでもいいです。今はご主人様に大変大事なお話があります 」

 

「どうでも良いって……それはどういう事だ! 」

 

ベルファストは笑顔だったが、その笑顔に押しつぶされそうな圧が襲いかかった。ベルファストは艤装を展開し、その主砲を俺に向けていた。

 

主砲も細部が所々変わっており、色も鉄のように黒くなっていた。

 

「ご主人様……貴方の歩みをここで止めます 」

 

俺に対しての微笑みが消え、殺気を全面的に出した戦士へと変貌した。

 

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