もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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あけましておめでとうございます!
なんやかんやでこの小説も3年ですか……
随分と長い事ですね〜

もう少しで100話にさしかかる中、皆さんのご愛読には感謝しかありません。

引き続き、このもしもの世界を楽しんでください!


真実

彼女であって彼女じゃない。こんな分からない言葉を思うのは初めてだ。

 

髪も、鼻も、口も、手も、足も、声も俺が知っている人の筈なのに、俺を見るその目だけは別人そのものだった。俺を倒すように手に持っている主砲を向け、本気で俺をどうにかしようとする殺気だった目はナイフのような鋭さだった。

 

「本当にベルファストなのか……? 」

 

しかし彼女は何も言わなかった。ただひたすら俺を見るだけで、言葉も交わそうともしない。張り詰めた空気の中、1歩前にでてよく見ようとすると、ベルファストは俺に攻撃した。投げられたナイフのように鋭い砲撃が俺の頬を掠め、頬から熱い血が流れる。

 

攻撃されたと思う暇も無く、ベルファストはまた更に攻撃を行った。有り得ないほどの速さと速射でまるで複数の敵に攻撃されているようだ。回避をしようにまた別の場所に砲弾がかすり、実質の逃げ場は完全に消されている。

 

防御しようと剣を前に構えるものの、直ぐに背後を取られて艤装に直撃を受けてしまう。ダメージのフィードバックからして幸いダメージこそ大きくは無いが、このまま艤装に直撃を受けると本気でやられてしまう……!

 

だが、もしあれが本当にベルファストだとしたら……?理由がどうあれ、ベルファストを攻撃する訳には行かない。だが、このままじゃやられる……

 

「くっそぉ! 」

 

主砲をベルファストでは無く真下の海に向けて撃ち、零距離での着弾で周りに大規模な爆炎を生み出した。零距離で砲撃で勿論俺のダメージは絶大だ。

爆炎で皮膚が火傷しそうだし、服も少し焼け焦げ、爆発の衝撃で体全体が軋むように痛い。

 

だが、威力のおかげでベルファストと何とか距離を置くことが出来、更に衝撃波で周りの現像物も半壊から全壊状態になり、そのまま瓦礫と貸して崩れ落ち、落下で砂埃の煙幕が蔓延した。

 

これならベルファストを撒ける筈だと移動したが、俺の考えはものの数秒で崩れ去った。移動した先には既にベルファストが立っており、煙幕の中でも限らず俺の姿を捉えるように主砲を向けていた。

 

負けじと俺も狙いを定めたが、ベルファストは瞬時に場所を変えた。煙幕のせいでベルファストの姿が完全に見えず、俺はベルファストの攻撃を回避も防御もする事が出来ず、ベルファストの攻撃を受け続けてしまう。

 

「ど、どうして俺の位置がこんなに正確に把握出来るんだ……!? 」

 

あっちも煙幕で俺の姿が見えないはずなのにも関わらず、ベルファストの方からはまるで俺の事がはっきりと見えているようだった。

 

もう一度零距離砲弾でベルファストとの距離を離す……?いや、体が悲鳴をあげてる今それをやるとただの自殺行為になりかねない。だが、かといってこのままではベルファストの攻撃でやられてしまう。

 

ベルファストが俺の位置を正確に把握している以上、闇雲に攻撃しても恐らくは回避されてしまう。どうする……どう凌ぐ……?

 

その時、俺の耳元で砲撃音が聞こえ、俺は咄嗟に音がした方向とは違う方角に足を運ぶ。煙の向こうから現れた砲弾が俺の横を通り過ぎ、そのまま煙の向こうへと消えてしまった。

 

「…正確な位置を把握してるって言うなら…… 」

 

煙の中で微かな光を見出した俺は、武器を刀に変形させ、目を閉じ、耳をすまして聴覚に意識を集中した。艤装の駆動音や水の上を走る音が耳を通り、3時の方向に砲撃音が鳴った。その方角に体を向け、徐々に大きくなる砲弾の音を頼りに距離感を掴み、間合いに入ったその刹那、俺は刀を振り下ろした。

目を閉じたせいで感覚が鋭利になり、鉄と鉄が擦れ合う音ともに何かを切った手応えが刀から伝わってきた。振り下ろしたその数秒後、俺の後ろで爆発が置き、煙が吹き飛んだ。

 

上手くいったと安堵しながら目を開くと、煙が晴れ、ベルファストの姿を確認した。

 

「……流石ご主人様ですね 」

 

「……やっぱりベルファストなんだな。お前だったら正確な位置で撃ってくるだろうって思ってたから…… 」

 

戦闘もメイドとしての責務も完璧なベルファストを信じたからこそ、俺はこんな行動をした。

 

ベルファストなら俺の位置を正確に捉えて行ってくる。だから、音がする直線上には必ず弾が飛んでくると予想するのは容易だった。

 

「教えてくれ、一体どうしたんだベルファスト?どうして俺に銃を向ける!? 」

 

心からの疑問をぶつけると、ベルファストは何も言わず、顔を下げた。

 

「答えてくれ! 」

 

「残念ながらお答えする事は出来ません 」

 

帰ってきた答えは鋭い砲弾だった。殺気は感じられず、的確に俺の足や艤装を狙っている事からどうやら俺を殺すつもりは無いらしい。

 

「そう言えばこの感じ……どこかで 」

 

戦い方に何故か心当たりがあった。手足や艤装を集中的に狙い、黒い砲撃にあの艤装……

そうだ、思い出した。あの時、俺の深層世界にいたあのKAN-SEN……エンタープライズと似たKAN-SENと全く同じ雰囲気だった。

 

「……そっちにもエンタープライズはいるのか? 」

 

「……! 」

 

この瞬間、ベルファストは動きを止めた。様子からして、俺の言葉は事実なのだろう。という事は……あのベルファストは何かしらの組織に入ってるという事になる。

 

「目的は何なんだ?どうして俺を襲う!教えてくれベルファスト! 」

 

「目的は先程仰った通り、ご主人様の歩みを止めることです 」

 

ベルファストは煙幕を散布し、また俺の視界を奪ってきた。ベルファスト相手なら流石に二度も同じ作戦が通用する相手とは思えない。だが、かと言って逃げられると言えばそれは不可能……

 

「迎撃するしかないよな…… 」

 

とにかく耐える。それが俺が与えられた1つの答えだった。いずれ来る攻撃に身構え、音を頼りにベルファストの動向を探る。

 

艤装で水の上を走る音が右から左、左から右へと移動し、それが何度も繰り返した。徐々に煙幕が晴れていく中、背後から微かな砲撃音が聞こえ、俺は後ろに振り返りすかさず刀を横一閃に振り、迫る砲弾を真っ二つに斬る。しかしその後、また背後から何か急激に接近してくる音が聞こえた。水を切るように進んでいくような音……魚雷か!?

すぐさま反転して攻撃の挙動を見て回避しようとしたが、俺の予想は大いに外れた。俺に近づいて来たのは魚雷では無く、ベルファストだった。

 

まだそれほど近くは無く、迎撃出来る距離でもある。艤装の砲塔をベルファストに向けてるにも関わらず、ベルファストは一直線に向かってくる。この距離なら当たる。撃てば必ず当たる。だが……俺は躊躇い、撃てなかった。

 

「やはり、ご主人様は撃てませんでしたね。……だからこそ、貴方を止めるのです 」

 

ベルファストの突撃に俺はまともにくらい、そのままベルファストに両肩を掴まれながら水上へと押し倒される。こんなに近ければ手法も撃てず、引き離そうにもベルファストの力に押し負けてしまい、身動きが取れない。

 

「動けない……!どこからそんな力があるんだ……! 」

 

出力ではこっちの方が上のはずなのに、何故か動けない。必死に抵抗して肩を動かそうにも、まるでその場で固定されたかのようにビクともしなかった。

 

「無駄ですよ。ご主人様では私に勝てません。さぁ、もう諦めてください 」

 

「誰がっ……諦めるものか! 」

 

何とか抜け出そうと奮闘し、抵抗すればする程ベルファストの押さえつける力が強くなりつつあった。

 

「……どうしてですか。なんで諦めてくれないんですか……どうしてですかっ!! 」

 

いつも冷静なベルファストが突然感情を爆発させたかのように叫び、俺の首を両手で絞めてきた。息が出来ず、思わずベルファストの手首を両手で掴んで離そうにも、ベルファストの腕は動かず、締める力を強めた。

 

「なんで!どうして!貴方はそこまで戦うのですか!?誰も望んでなんかいないのに!どうしてっ!! どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして……どうしてっ!!」

 

聞いたことないベルファストの声と、悲しみと怒りが入り交じった瞳には涙がこぼれていた。予想だにしなかった表情に驚きを隠せないが、それより絞められている苦しさの方が勝っていた。空気の気道も確保出来ず、頭痛もして意識も朦朧として来た。口を開けても息が出来ず、死神が徐々に近づくのが感じられた。

 

「痛いですよね、苦しいですよね?でも大丈夫です。ご主人様の命を奪おうとは思っていません。だから安心してお眠り下さい…… 」

 

「ガッ……ゴハッ…… 」

 

視界が暗くなりつつ、力も入らない。徐々に薄れゆく意識の中で、ベルファストは願いが叶ったかのように、歪んだ笑みを浮かべた。

 

(もう……だ……メだ…… )

ベルファストの手首を掴む力が抜けると同時に、ベルファストが何かを察知する様に急に俺の首から手を離し、俺から離れた。瞬間、俺の頭上にビームが通り過ぎ、光熱の熱さで少しの意識を取り戻した。

 

(誰だ……? )

 

「何か物音がしたと思ったら、まさかの奴に出会えたな

 

ビームが飛んできた方向に顔を向けると、異形の形をした艤装を左右それぞれ装備をしていた人、マーレさんがいた。

マーレさんはベルファストに向けてビームを連射し、ベルファストは距離を詰めながらビームを避け続けた。

 

ビームの間を縫うように回避したベルファストは攻撃も怠らず、要所要所でマーレさんに向けて攻撃を行った。ベルファストが放った砲弾はまるでビームが砲弾を避けるように真っ直ぐマーレさんに向かっていき、その砲弾をマーレさんはいとも容易く交わしたが、それこそがベルファストの狙いだった。

 

「ちっ……!」

 

攻撃を避けたマーレさんだったが、その後いきなりマーレさんの足元が爆発した。何をしたのか正確には分からないが、機雷でも爆撃でも無ければ、おそらくはベルファストが予め撃っていた魚雷だろう。

 

狙っても中々出来ないことを、あのベルファストはすんなりとやってのける動きは別格だ。

しかも驚くべきところは、単騎であのマーレさんと対等に戦えているという所だ。

 

あの動き……いつものベルファストの数倍の速さだ……俺の知っているベルファスト以上……いや、俺の知っているKAN-SENよりも性能が確実にある。

 

「……なるほどな。お前、()()()()()から来た 」

 

「答える義理はありません。」

 

マーレさんの質問にベルファストは答えず、そのまま攻撃を続けた。それにしても、マーレさんの質問は何だ?聞き間違いじゃなければ「どこの世界」って言ってたな……まるで、ベルファストがこの世界の者じゃないような言い草だ。

 

気道も確保し、2人の戦いに介入はしない。最早俺に戦う余力は残されていない。今の俺に出来ることは……2人の戦いを見届けることだけだった。

 

状況は一見五分五分だが、僅かにマーレさんが押している。マーレさんは自身の得意距離である近接戦に持ち込み、ベルファストに剣を突き立てる。ベルファストは手の甲冑で剣を受け止めるが、手数の多さでマーレさんが上回っており、すかさずマーレさんは両方の艤装のビームを展開し、確実に当てるために出力を拡散させた。

ビームが扇状に広がり、まるでシャワーのようにベルファストに浴びせると、ベルファストはビームに耐えきれず体制が崩れ、マーレさんは思い切りベルファストの腹を蹴り飛ばした。

 

蹴り飛ばされたベルファストは氷の壁に激闘してめり込んでしまい、ぶつけられた氷は衝撃でヒビが入った。

 

「ベルファストっ!!! 」

 

ベルファストが無事かどうか確認しようにも思い通り体が動かず、俺はただ遠目でベルファストが無事なことを祈った。

 

「くっ……流石マーレ様……これ程とは…… 」

 

掠れながらもベルファストの声が聞こえると、壁から離れ、よろけながらマーレさんの前に立ち尽くした。

もはや、立ってることさえやっとの事だろう。服も艤装もボロボロだった。

 

「……まだやるか 」

 

「いいえ……今回はここまでのようです。ですが……ご主人様を必ず救って見せます。この命に変えても貴方を絶対……必ず……! 」

 

ベルファストは遠くの俺を見つめ、そのまま霧と共に消えてしまった。結局、あれは本当にベルファストだったのだろうか……。いや、ベルファストだと言うのは間違いはない。だけど、まるで絶望を知ってきた様なあの顔立ちは、とても俺の知っているベルファストでは無い。

 

「一体……なんなんだよ……どうなってるんだ? 」

 

「知りたいか? 」

 

マーレさんが俺の前に立ち、石ころを見るような目で俺を見下していた。マーレさんの艤装も俺をここで倒すように牙を剥き出しにし、いかにもこれからトドメを刺そうと言わんばなりだ。だが、マーレさんは武器をしまい、俺に背中を見せた。

 

「この先の道を真っ直ぐ行け。お前の知りたい事や知るべき事がそこにある 」

 

「どういう事ですか……? 」

 

「行けばわかる 」

 

そう言ってマーレさんは俺を置いてどこかに行ってしまった。俺の知りたいことや知るべき事……?

一体、この基地には何があるんだ?いや、考えている暇は無い。早く持ち帰って外にいる皆と合流しないと行けない。

 

体の節々に激痛が走る中、壁に持たれ、足を引きずるように歩いていく……

そう言えば……あの子はどこに行ったんだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

_同時刻 王冠内部にて

 

この基地の地下深くの階段を降りた先に、まるで門のように大きな扉があった。機能停止しているせいで扉は動かず、ただ佇んでいた。

 

まぁ、関係ない。艤装の火力で扉を吹き飛ばし、長年放置されたせいなのか砂埃がそこら中に舞った。

扉の先にはガラスの破片が転がり、何かの研究をしていたのか、円柱型の壊れたガラス管と何らかの機械。そして極めつけに部屋中には腐敗臭がしていた。

 

腐敗臭の原因は……ここに転がっている死体の数だろう。腕が曲がっている者、腕が4本の者もいれば、腕がまるで刀みたいに変形されている者だっていた。

死体は子供から10代後半辺りしかおらず、成人済み……つまり大人らしき死体がなかった。

 

見る限りここは研究室であり、恐らくどこかに責任者の部屋があるはずだ。あるとすれば、奥にあるいかにも大事な人の扉ですよ言わんばかりの巨大な扉の向こうだろう。

 

ガラスの破片を砕き、死体を避けながら扉に向かうと、扉は俺を招くように左右に開いた。少し不気味だなと感じたが、手間が省けて助かる。

扉を潜り、部屋に入ると薄暗いか先程の研究室よりかは被害が少ない。

 

「さて、ブラックキューブはここにある筈だが…… 」

 

ここに来た目的であるブラックキューブを探す為にここに来たが、ここに来る前でには見つからず、残りはここだけだ。

 

まずはこの部屋の主の物であっただろう机を調べると、机の上には大量の資料と1つのノートPCに、タブレットがあった。手始めに大量の資料の中から1枚の資料に目を通した。そこには【メンタルキューブによる人体実験】の経緯や結果がまとめられていた。

 

「我々は新たな対抗策としてメンタルキューブを人類に適応させる実験を開始した……しかし、キューブによる膨大な情報量に耐えきれず、次々と廃人化となっていた……。更には体にも異様な変質が見られ、今後はそれらの変質を活かすような路線も…… 」

 

資料とタブレットのデータを見比べると、ここには非人道的な実験が多く繰り返されていた記録が残されており、とても人間がやることとは思えなかった。

 

……いや、切羽詰まった人間は何をするか分からない。ここまでやるのも、道理と言えば道理だろうか。人体実験の道具にされた人間は全て身寄りの無い子供が殆どであり、その理由はまだ発達途中の成長の方がよりメンタルキューブと適合されやすいと記されてある。

 

「……はっ、やりたい放題だな 」

 

紙の資料を叩きつけるように机を戻し、俺はブラックキューブの捜索を開始した。一通り見たがこの部屋にはブラックキューブらしき物が存在しない。ここには無いかと思われたが、ふと俺はある本棚に目が入り、その本棚に違和感を覚えた。

 

本棚に収まっていたであろう本は殆どが地面に落ちているが、それ以外はまるで固定されているかのように本棚にはまっていた。横に倒れているならまだしも、本が棚から落ちる程の衝撃があったのにも関わらず数個の本が垂直に立っているのはおかしい。

 

試しに本を引っ張りだそうとすると、本はがっちりと固定されていて取り出せなかった。逆に本を押し込むと、カチリと何かのスイッチが入ったかのような音がした。その瞬間本棚が右に動き、その本棚の裏にはまた地下への階段へと続く道が隠されていた。

 

なんともベタな仕掛けだが、ここまでするという事はこの先には何かがあるのだろう。ここにもブラックキューブは無く、俺は暗い地下の階段を歩く。

 

太陽の光さえも届かないこの深海の基地のそのまた地下は最早暗黒だ。ライトが無ければ何も見えず、自分が今どこを歩いているのかさえわからなくなりそうだ。

 

どこまでも続くような地下の螺旋階段を歩き続けると、ようやく底が見え始め、底に足をつける。

足が地面についた瞬間、この地下の明かりが付けられ、暗闇の世界が白い壁に覆われた無機質な世界へと変わった。周りを見ても白い壁であり、何の変哲もない壁だ。

そして、その白い壁の部屋の向こうには、黒い箱型に光るもの……俺が探していたブラックキューブがあった。

 

ブラックキューブは厳重に保管されていたようだが、その警備は死んで剥き出しになっていた。ブラックキューブにある所まで歩き、ようやく出会えたキューブに手を触れようとすると、背後から声をかけられた。

 

「貴方は……何をしようとする? 」

 

無機質かつ繊細な少女の声が耳に入る。

 

感情というものを知らないようなその声は忘れるはずが無い。後ろに振り返ると、白いワンピースのような服に色素の薄い白い肌に白い髪をした少女だが……こいつがセイレーンの親玉、【オブザーバー零】だ。

 

「お前が他の場所に来るとはな。何の用だ 」

 

「私はただ行き着く先の終末を観測するだけ。だけど、何故かこの世界の終着点はどんな演算を持ってしても観測出来ない…… 」

 

「それは褒めてるのか? 」

 

「賞賛という意味なら少し違う。私は貴方達の行く終点に興味がある 」

 

「……悪いが俺が行く先は終点じゃない 」

 

終点とはその先が無い終わりの道だ。だが、俺の目的は終点では無く、むしろその逆だ。

 

「俺が辿り着くのは始まりであり終点が永遠に訪れない世界だ 」

 

俺はブラックキューブを手に取ったその時だった。突然警報が鳴り、白い部屋が一気に赤く染まった。どうやら、キューブ自体の警備システムの一部生きていたそうで、キューブが台座から取られた瞬間発動するシステムに引っかかったようだ。

 

『Warning!Warning!キューブ防衛の為【ノーチラス】を起動 』

 

地上へと繋ぐ階段への通路は塞がれ、俺の反対方向の壁が一部開くと中から小さな子供が現れた。

頭にはバイザーの様な物が付けられ、体には機械の装甲……そして極めつけは後ろに着いている艤装だ。

 

既存の船では無い、セイレーンとおなじ海洋類をモチーフとした艤装だが、その外見があまりにも異様だ。まるで数多くの生物が混じったように不格好なフォルムだ。

 

珊瑚のような無数の触手の先には鋭い牙が生えており、孔雀のような羽には所々に目見たいな物がある。

これを作った奴の気が知れないほど異様で、歪で、この世から存在が疎まれる程だった。

 

「おい、アレは一体…… 」

 

アレが何なのかは想像つくが、事情を知っているであろう零に訪ねようとしたが、零の姿が見当たらなかった。どうやら消えたらしい。無駄に神出鬼没な奴で腹が立つ。

 

「は……い……ジョ……はいジ……ょ 」

 

どうやら本人には意識が僅かばかりあるらしく、同じ言葉を繰り返しながら艤装の砲塔を全てこちらに向けた。

 

「……楽にしてやる 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_同時刻 王冠内部

 

「ここで……いいのか……? 」

 

やっとの思いでマーレさんが言っていた場所であろう所に着くと、いかにもここの偉い人が出入りしていたであろう巨大な扉があった。

 

しかし、扉にはドアノブらしきものがあらずどう開けばいいか分からず、とりあえず扉に触れる。

 

すると扉が紋様を描くように触れた場所から線が伸び、扉は左右に分かれてゆっくりと開かれた。

随分と大掛かりな開き方に戸惑いながらも、ゆっくりと俺は部屋の中に足を踏み入れる。

 

足を踏み入れた瞬間に部屋の明かりがつくと、部屋の全貌を確認する。奥の壁の一面にはモニターが張り付かれており、その前には何かの装置みたいな物もおいてある。

 

広さはそれ程広くは無く、他の部屋よりも大分綺麗な状態のままだった。

 

「まるで司令室のようだな…… 」

 

恐らくこの近くの海域を移すだろうモニターと、通信機らしきものがあり、そのどちらもが機能していない。

ここで唯一手がかりを得られるのは、机の上にある紙の束だろう。

 

「この辺の設備は良いのに、紙なのはどうなのかな…… 」

 

そう思いながら数多くある資料の1つを手に取る。資料と言うよりかは海図だろうか。所々に×印や矢印、更には何かの配置なのか〇も書かれている。

 

「これ……作戦図か?〇が部隊で×が敵……いや、進行方向が真逆だから……これは防衛位置か? 」

 

これらを照らし合わせると、この作戦図は防衛作戦の物で間違い無いだろう。しかし、一体どこを守っているのだろうか。図を見た限りでは相当切羽詰まった状況なのが察せられるけど……

 

……ダメだ、これ1枚じゃ判断できない。他にある資料を手に取ると、そこには【最終防衛線作戦内容】と書かれた物があった。

俺はそれをめくり、書かれた文字を読む。

 

 

これは人類にとっての希望である。各戦闘員は命を捨ててもこの場所を死守するべし。

 

我々は何としても希望を過去に渡さなければならない。この未来を変えるためには、過去を変えなければならない。

 

「過去……? 」

 

まるでこれが未来に書かれたもののようだ。謎が深まるばかりで頭が少し痛い。

ここから先は作戦内容の詳細が書かれていた。指揮官の俺から見ると、これを考えた指揮官は相当優秀だ。

 

戦力を余すことなく使い、部隊の最大限の力を発揮出来る配置や編成をしている。中には意外な編成をしているものもあり、それに応じての戦略も記録されている。

 

下手な兵法本よりも参考になるこの戦術だが、この戦術は明らかにおかしい点がある。

「……これ、明らかに全滅する前提で配置されてないか? 」

 

普通、防衛戦というのは、戦力の劣勢を補うことを可能とする作戦の事だ。その為、必ず敵の戦略を削る必要があり、撤退させることが何より重要だ。だが、この戦法は明らかにそれがない。寧ろ、敵の進行を遅らせる事を重点に置いており、これでは防衛戦の意味が無い。

 

まるで……負けると知っている作戦かのようだ。

 

だからこの基地の内部はこれ程荒れているのだろうか。いやそれにしては中途半端だ。ここに来る途中、防衛システムが何度か作動し、セイレーンが数体飛び出して来た始末なのだから。

 

「……海図からして、守っていたのはこの基地だ。だけど、負ける前提のこの配置は意味はほとんど無い。……ううん……わからん 」

 

手放すように次の資料を手に取ると、今度は【アンチエックス開発記録】と書かれていた。

 

アンチエックスと言うと、ここに来るまでにあった単語だ。重要機密でパスワードがかかっていて見れなかったけど、これなら見れる筈だ。紙を捲ってアンチエックスについての謎に迫った。

 

「……え? 」

 

紙を捲り、捲れば捲る程信じ難い情報が俺の目に映った。

 

﹁研究報告﹂

メンタルキューブから生み出されたアンチエックスは見事製造に成功。後にこれらを過去に送り、エックスに対抗する術を見つけ出す。その為には時空跳躍機構の開発に取り掛かり、作戦を遂行する。

 

 

﹁メンタルキューブ適合結果﹂

被検体154〜358にキューブを適合させた結果、予測値には至らなかった。精神暴走や身体への限界が達し、戦力には至らない結果となった。

しかし、キューブ自体に記憶の媒体を取り込む性質を活かす事で、キューブ自身から兵器を生み出すことは論理上可能。

 

﹁コードネームKAN-SEN﹂

 

正式名称:Kinetic Artifactual Navy - Self-regulative En-lore Nodeは見事成功。キューブに艦の記憶を取り込ませる事で人型の兵器が生み出された。身体能力は変わらないが、艤装によってその能力は倍加すると判明した。

 

実戦投入した結果、エックスとの戦闘に大きく貢献した。……が、破壊には程遠い。

 

今後はアンチエックスとの協力体勢をとる事で、エックスに対抗する手筈を整える。

 

﹁最終防衛作戦﹂

 

やはりエックスには勝てない。人類は間もなく滅ぶだろう。勝つ為には過去に行き、エックスを破壊。あるいは対抗する術を見つけるしかない。これは終わりではない。始まりなのだ。

 

 

「何だこれ…… 」

 

アンチエックスと言う項目には、セイレーンであるオブザーバーとピュリファイアー、テスターの姿があった。

しかも、そいつらとKAN-SEN達が手を組んでいた……?

 

しかも……これが書かれた日付が今から約10年後となっている。次元跳躍とか過去に行くとか書いているのを見るに、セイレーンは未来から来たとしか考えられない。

 

いや、もしかしたら……この基地も未来から来たのかもしれない。そうすればあの防衛戦の配置も納得が行く。

 

あの防衛戦がこの基地をこの時代に行かせるための時間稼ぎだとすれはわ、あの負ける前提の配置も納得出来る。全ては【エックス】と言うのを倒すために……

 

「そもそもエックスって何だ? 」

 

アンチエックス……つまりはセイレーンの真の目的はエックスを倒すためというのは分かったが、俺はそもそもそのエックスという実態が分からない。

 

未来の人類を滅ぼす程の存在……想像がつかない。エックスに関する資料を探そうとすると、突然地面が揺れた。揺れはかなり大きく立つことも出来ず、俺は机にしがみついた。

 

すると天井から何か小さな破片が頭の上にぶつかり、上を見ると微かだが天井が崩壊しかけていた。

早く逃げなければ俺は下敷きにされてしまうが、揺れが大きくて逃げる事すら出来ない。手立ては無いかとか探そうとしたその時、天井が崩れ、頭上には瓦礫とかした天井が空から降ってきた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!! 」

 

そして、俺は天井の崩落に巻き込まれた。

もしもの話(R-18)を観測しますか?

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