もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜 作:白だし茶漬け
さて、今回は陣営というか海域のバミューダ海域編です。この章では優海では無く、ジンを主軸にしたストーリーとなっておりますので、ここではジンの事を大きく掘り下げていきます!
そして、今回はジンに関係あるキャラが出ますので、あとがきにて簡単なプロフィールを書いておりますのでそちらも是非!
旅の前の支度
そう言えば今は夏か。
帰ってきた蒸し暑い執務室の机の上でそう思っていた。
今の夏は相当暑く、もしここに冷房が無かったらこの執務室は地獄と化していただろう。窓を貫通する太陽の日差しが後ろから直で来ているから背中がもう暑くて暑くてたまらない。
北方連合の地がめちゃくちゃ寒かったから今が夏という事をすっかり忘れ、季節にふさわしい暑さにやられている俺は温暖の激しさで体がついて行けてなくて絶賛バテて甲板にだら〜っと仰向けになっていた。
「ご主人様、無理せず船内居た方が良いのでは? 」
現在の秘書官であるベルファストからそう言われたが、そういう訳には行かない。北方連合から帰ってきて休んだ方が良いって皆に言われたから一日だら〜っと過ごしたから、さすがにそれは指揮官としての示しがつかない。
「うーん、でもここで怠けたら何だかずっと怠けそう何だよなぁ」
「しかし温暖差で体の調子が悪くなっています。無理せずお休み下さい 」
「そうは言ってもね〜 」
「だったら俺の報告書でも読み聞かせしようか?だらけながら仕事できるぜ 」
「あぁジンさん。じゃあそこに……ってジンさん!?戻ってたんですか!? 」
「よっ、ついさっきだけどな 」
「良かった……無事だったんですね! 」
「たりめぇだ 」
相変わらず気楽な態度で執務室の椅子を我が家にある椅子のように座り、ジンさん自身が行ってきた任務の報告書をベルファストに渡し、ベルファストはその報告書を渡してくれた。
報告書はこれまでなく綺麗に纏められており、作った人が如何に優秀か分かる代物だ。これをやったのは……多分ジンさんじゃなくてリアさんだ。
言っちゃ悪いけど、ジンさんじゃこんな風に丁寧に報告書を纏めるわけが無い。
「んじゃあ俺は戻るわ。ふぁ〜眠っ…… 」
「はい、お疲れ様です。ゆっくり休んでくださいね 」
ジンさんが欠伸をしながら執務室から出ていき、俺は渡された報告書を目を通した。
「あ、そうだ優海。朴念仁って何だ? 」
部屋から出たと思ったらジンさんが突然変な事を言ってきた。この人ノーモーションで次の行動に出るから本当に驚くんだよなぁ……
「朴念仁ですか?ええと、無口で愛想のない人の事や分からず屋の人のことを指しますけど……どうしましたか?」
「そっか、あんがとな! 」
何故かそれを聞くだけで今度こそ執務室から離れていき、ジンさんの突拍子もない行動には驚くばかりだ。
「それにしても良かった……あのバミューダ海域から帰ってきてくれて 」
「あそこにはエンタープライズ様の他に腕利きの人がいましたからね 」
それもそうか、報告書を見る限りジンさんについて行ったKAN-SENはエンタープライズの他に、クリーブランド等のバトルスターを取ったKAN-SENも多く、ユニオンの中でもトップクラスの実力を持ったKAN-SENばかりだ。
これ以上安心出来る護衛はそうそういない。
「さてと、どれどれ…………これって! 」
報告書を目にすると、そこには驚くべき事実が書かれていた。
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「あぁ……だっる。後方支援してる奴にやらせる任務じゃねえだろあれ…… 」
こんなクソ任務を押し付けたどこの誰かに文句を垂れながら、俺は基地にある浜辺に歩いていた。
夏の暑さで砂が鉄板のように熱くなっていて上からも下からもクソみてぇな熱さが俺を襲っていた。今ならこの暑さでタバコに火がつきそうだ。試しにポケットから1本タバコを取り出して自然発火を目論んだが、やっぱダメだった。
「貴方、何してるの……?そんなのでタバコに火がつくわけないじゃない 」
「あっ?うっせぇな物は試しだろ?昔の人は何でもかんでも試してたんだよ 」
後ろから昔からの付き合いのリアがいつも通りのツッコミをしてきた。
「貴方、この前の任務で疲れたでしょ?早く安静してなさいよ 」
「お前だって俺が抜けてる間に休んでねぇだろ。お前こそ休んで……」
「貴方、憧れのテネリタスと戦った癖によくそんな口言えるわね」
「だからだよ。あんな目に合って休んでる暇あるかよ 」
熱い砂浜に腰を落とし、冷たい波に足を入れてあの霧の中で起きた出来事を俺は思い出していた。
時は遡り数日前、俺は入ったら抜け出せないと言われているバミューダ海域の調査に行くことになった。
ちなみにバミューダ海域って言うのは、ユニオンにある3つの諸島の内側にある海域の事を指しており、その海域は他の海域に比べてやけに霧が濃く、入ってから無事帰った物はいないとされている魔の海域だ。
噂ではセイレーンの基地があるとか、死んでいった人達の魂がバミューダ海域に連れていかれて成仏出来ていないとか、誰が言ったのか分かんねぇ噂話が絶えない。
そんな中、上層部の奴らが何故かいきなりその海域にセイレーンを確認したから調査して来いとかいう後方支援の奴らにやらせるべきじゃないクソみたいな任務を俺にだしやがった。
「たくよ……何で俺が行かなきゃならねぇんだよ 」
「心配しないでくれ、代理指揮官。私が貴方の事を守ってみせる 」
「あーその代理指揮官っての止めてくれ。普通に名前で読んでくれよ、ユニオンの英雄さん 」
「ならば私もエンタープライズと呼んでくれ。それにこれは規則なんだ。赤城や重桜の親しい者は指揮官の事を名前で呼んでいるが、本来指揮官の名前は最重要機密であり、一般の人は指揮官の名前おろか姿は知らない。それは後方支援の司令官でもある貴方もそうなのだから、貴方の事についてもこう呼ぶしか無いんだ」
「はいはい、分かった分かった 」
今回の任務で連れてしたエンタープライズが恥ずかしそうな顔を浮かべ、俺は儲けた様な気分になった。
ユニオンの英雄の照れ顔なんてそう見れるものじゃねぇし、写真とかに保存して適当な所に売りつければマニアとかに高く売れる。
ま、そんな事しねぇけどな!
エンタープライズの他にこの任務に連れていってるのは、ホーネット、ヨークタウン、バンカー・ヒル、エセックス、イトレピット、シャングリラ、ヘレナ、ヴェスタルの9人だ。
空母中心なのは理由がある。バミューダ海域は何故か船や飛行機等の事故が多発している海域。何か仕掛けがあると踏んだ俺は、索敵範囲中心に俺が優海に頼んでユニオンの空母を貰い、プラスしてヘレナの索敵能力を借りてこの編成にした。
「ヘレナー!索敵はどうだー!? 」
「あと数分でバミューダ海域ですがまだ何も反応がありません。もう少し範囲を広げてみますか? 」
「んにゃ、今のままで良い。あんがとな 」
「しかしバミューダ海域にセイレーンの目撃情報か……噂では、バミューダ海域にセイレーンが根付いているらしいが……どう思う? 」
「そんな根も葉もない噂にいちいち信じられるかよ。俺は目にしたもんしか信じねぇたちだ 」
まぁでも可能性はあるにはある。バミューダ海域にセイレーンの本拠地かあれば、不審な事故の説明がつく。
もしこの予想が当たれば、俺は敵の拠点に堂々と乗り込むアホになるという事だけどな。
「だぁぁ……やな任務だわぁー帰りてぇー 」
「ちょっとだらしないですよ!代わりでも指揮官なのですからちゃんとして下さい! 」
向こうからエセックスがやって来てわリア見たいに説教してきた。KAN-SENに怒られて良い気分にはならないから思わず耳を塞いだが、エセックスは関係なくガミガミと小言を説教を垂れた。
「何ですがその態度は!折角エンタープライズ先輩といるんですから、もっと節度を持った態度を…… 」
「はいはいそこまでだよエセックス。もっと気楽に行こうよ〜 」
エセックスの後ろからホーネットがエセックスの両肩を抱き、力を抜けと言わんばかりに肩のマッサージをしていた。憧れのエンタープライズの姉妹艦だからなのか、エセックスはそれ以上何も言わないどころか、緊張をしていた。
「わ、分かりました……ですが、あまりにもだらしなかったら注意しますからね! 」
「あいよ 」
「それにしても、聞いた話によるとジンって結構優秀何でしょ?なんか意外だな〜 」
「だろ?惚れても良いんだぜ 」
「え〜!遠慮しとく〜貴方にはリアがいるでしょ? 」
「はぁ?何でアイツが出てくるんだよ 」
「え、それマジで言ってる……? 」
ホーネットやエンタープライズが若干引いたような表情していた。俺は何かしたのかと聞いたがホーネットは何も言わず、誰かに同情するような顔をうかべていた。
「ジンってさ、指揮官と同じぐらいの朴念仁だよね 」
「同感だ 」
「はぁ?なんだそれ 」
何言いたいのかさっぱり分かんねぇ……それに朴念仁って何だ?言葉の響き的に重桜の言葉っぽいな。帰ったら優海に聞いてみるか。
さて、いよいよバミューダ海域……だが、ここいらで一旦近くの島に停留して準備を整えよう。
ユニオンの海域とは言っても不可解な場所が多い海域だ。俺でも慎重さは欠かさない。
ちょうどここの近くにはドックと補給物資があるから、丁度良い。船の進路を近くの島に変え、俺たちは近くの島を訪れた。
ドックの管理人に停泊許可を貰い、KAN-SEN達の船の補給を頼んだ。
島はユニオンの本島よりも小規模だが街並みは変わらず、ビルや公共機関等の施設が充実していた。
人もかなり住んでいる様子で活気もある。良いところだ。
「うし、じゃあ自由行動すっか。補給が終わるまでどっか適当な所で遊んできても良いぞ〜 」
「え、マジ!?じゃあ姉ちゃん!買い物しよう!買い物! 」
「いや、私は別に…… 」
「私もちょっと……」
「良いから行こ! 」
ホーネットはエンタープライズの右腕とヨークタウンの左腕を掴んで半ば強引に街へと連れていき、他のKAN-SEN達も同じように街に乗り出した。さて、俺はというと補給物資の確認と物資の調達だ。
こればかりは真面目にやらねぇとな。
「では、こちらが物資となります。追加の分等はありますか? 」
「そうだな……もう少し燃料を増やしてくれ。あと、食料も追加でくれ 」
「分かりました。では積み込みが完了したらまた報告します 」
「おう、頼むぜ 」
「はっ! 」
アズールレーンの後方支援隊のトップという立場でちょっと無茶させたが、バミューダ海域とかいうめちゃくちゃ怖い所に行くからこれぐらい良いよな?
さて、こっちはこっちで暇だから、実質部活見たいな奴らの仕事を見物しながらタバコを1杯吸う。
汗水垂らす人と饅頭を見ながらすうタバコはいつもとは違う味がした。いや決して見下している訳じゃねぇし、むしろこんな風に一生懸命に働いていて人間は偉いな〜って思っているだけだ。
向こうには船の修理をしている奴がこの修理方法が1番良いとか、この修理方法なら進水機能が上がるとか言って口喧嘩して周りを巻き込んでいたが、周りの奴らもそれに合わせて新しい修理や補修方法を提案していた。
「へぇ、ここの奴ら結構骨があるな。待遇とか考えてみるか 」
タバコの煙を吐いてまた吸うという動作を繰り返していると、直ぐに1本目のタバコが短くなり、味が薄くなった。薄くなったタバコを胸ポケットのケースにしまい、すかさず2本目に日をつけようとした時、後ろからここの奴らの話し声が聞こえた。
「さっき、KAN-SEN見たぜ。あいつら街に行って買い物しているらしいぜ 」
「マジかよ、戦う為の存在だからもう少し真面目に戦って欲しいよな〜 」
「というかやっぱ良い意味で体つきが人間じゃ無いよな〜1度でいいからやってみてー! 」
何故かタバコを吸う気すら失せ、一気にこの場の空気が不味くなった。
もし今ここでタバコを吸っても、さっきみたいな美味いタバコの煙は吸えないと踏んだ俺は、少し早歩きでこのドックの外を出た。
(……今の話、優海が聞いたらどう思うだろうな )
人類がKAN-SEN達に対する認識は、簡単に言えば【人の形をした兵器】だ。
人類は昔、海の9割をセイレーンに奪われたその日からセイレーンに恐怖した。だが、その時KAN-SEN達の手によって徐々に制海権を取り戻していき、人類はKAN-SEN達に感謝こそはしたが、あくまでそれが当たり前だという認識だ。
何故なら、その為に生まれたのだから。
だから勝つのは当然だ。人類を守る為に人類の為の盾と剣になれと人々はそう思っている。
だから、人はこれからもKAN-SEN達を人としては扱うが、人としては思う事は少ないだろう。そして、最後の奴みたいにKAN-SEN達を性的な目で見る奴も少なくは無い。まぁ、俺もちょっとはそんな目で見た事あるからとやかくは言えない立場だけどな。
現にこういうKAN-SENに関係している仕事をしている奴の大半は、僅かばかりのワンチャンを狙っている奴もいるし、指揮官になる奴の少数はそういう奴がいた。
こんな事実優海が聞いたらどうなるのかと考えただけで空気が不味くなってしまう。不快に感じた俺はさっさとこのドッグから離れたい程だ。
直ぐにでもこの機械のと鉄の錆び付いたこのクソッタレのドックから離れようとしたら、後ろに振り返った瞬間ここの奴らにぶつかってしまった。
「あぁ悪い、大丈夫か? 」
「い、いえいえ大丈夫ですよ!そちらの方こそお怪我はありませんか!? 」
恐らくここの奴らだろう女性が大量の書類をその辺にぶちまけ、女はせっせと書類を取り上げていたを
「手伝おうか? 」
「い、いえいえ!後方支援の司令官のお手を煩わせる訳にはいけません!それに貴方は……カービス家の一人息子なんですから…… 」
「……関係ねぇよ、俺らここを使わせて貰ってる身だ。それに俺は家とは縁を切ったしな 」
俺は散らばった紙を取り、女はそれを止めようとしたが俺は有無を言わさず書類を纏め、女に渡した。
「ほらよ、これで全部だ 」
「あ、ありがとうございます……あの、差し出がましいですが意外ですね。カービスの人は結構性格が厳しいと聞いていますが…… 」
「そりゃアイツだけだ。というかこんな所にまでアイツのクソみてぇな性格知れ渡ってるのかよ、やべぇな〜 」
どんだけ悪名高いんだ……と思ったが、そもそもカービスの性自体がユニオンで名の知れているから当然ちゃ当然か。
「あの、差し出がましいのですがお父様とは出会われたんですか? 」
「はっ? 」
「あぁ!ごめんなさい!実は貴方のお父様がこの島にいるので、もしかしたら会っているのかと…… 」
アイツがあの島に……?この諸島にアイツ自身が何かするようなものも無いはずだ。
新事業の開拓の為の視察……いや、そもそもここはバミューダ海域の近くだ、少々危険な所でヤツが出向く事はほぼ無いはずだ。
でもこの女が嘘をついている様子は無い。誰かの見間違いか、もしくはリスクを承知でここに来ているのどっちかだ。ま、どっちにしろ俺はアイツと縁は切った。今更会う理由は無い。
「……アイツとは会わねぇよ。んじゃ、気ぃつけろよ 」
アイツの事と、さっきの事と相まって少し気分を悪くしちまった。気分転換にこの辺にある適当な店で何か腹に溜めておくか。
そうと決まったらいざ探索だ。ドックの入り口を抜けた先には色々な店が出迎えており、選り取りみどりの良い島だ。道を歩くと店内からこれまた美味そうな匂いがそこら中から溢れてきて腹の虫がなり止むことを知らずにいる。
しばらくするとその辺の適当な壁に貼られているポスターについ目が止まった。ポスターの表紙にはどデカくハンバーガーが串刺しされている絵が描かれており、下に商品名である『シュラスコバーガー』と書かれていた。
シュラスコって確か、南の方にある肉をブロック状で丸々串刺しにし、炭火でじっくり焼く料理だよな。
そんで完成した肉をそのまま断面が見えるようにして切って食うというユニオンに負けず劣らずのダイナミックな料理だ。
「ほぇ〜美味そうだな……うし!ここで食うか! 」
俺の腹はこいつを食べると決め、意気揚々とバーガーショップに入り、カウンターにいる気前の良い店員が声をかけた。
「いらっしゃい、ここで食べるかい? 」
「おう、ポスターにあったシュラスコバーガーとコーラな 」
「あいよ、んじゃ料金はこれだ 」
レジに表示された金額丁度の金を店員に渡し、折角だから外の席で食べると伝えると後から別の奴がバーガーとコーラを持ってきてくれるらしいから一足先に外の席に座り、タバコに1本火をつけた。
ただ呆然とここから見える海と駆け抜ける風を感じながらタバコの煙を吸い、白い煙を吐き出すこの時間が何とも言えない。タバコで頭がスッキリもするし、海を見ていると何か心もスッキリするからこの瞬間が人生の中で1番好きと言っても過言じゃない。
タバコの吸いすぎでリアからタバコを取られて強制的に禁煙させられた事もあるが、今ではアイツがいないからタバコは吸い放題だ。まるで気分は親には内緒でお菓子食べまくるガキそのもの……って、何だこの例え。
例えるならもうちょいマシな例えがあr……
「ねぇお父さん!僕あのバーガー食べたいー! 」
「お、じゃあ父さんもあれ食べるかー! 」
店の入り口で親子らしき3人が笑顔で店内に入るのを目に入り、無意識に俺は脳裏に自分の親と重ねてしまった。アイツにも俺に優しくしてくれた時もあるにはあった。だけど、お袋が逝っちまってから変わった。突然にだ。
思い出すだけで吐き気がしそうな程の厳しい生き地獄が脳裏に過ぎり、吸っていたタバコの煙が喉に詰まってしまい思わずむせてしまった。
「ゲボっ!ごっはっ!あぁ……くそっ!やな事思い出したぜ…… 」
短くなったタバコをテーブルにある灰皿にタバコを押し付けて火を消し、もう一本タバコを吸おうと箱をポケットを取り出そうとしたが……タバコの箱の中にはもうタバコは無かった。
まぁでも吸う気は失せたし、料理も丁度いいタイミングで来てくれた。
運ばれたシュラスコバーガーは10cm程の串にハンバーガーが串刺しにされ、バンズの間にはシュラスコで使われたであろう肉がローストビーフの様に薄く斬られ、それが何重にも重なり、その肉の間にみずみずしいレタスやトマトが挟み込まれていた。
「おぉー!美味そう! 」
早速バーガーにかぶりつき、かぶりついた瞬間シュラスコの肉の旨みと肉汁が口ん中に暴れて止まらない。これめちゃくちゃうめぇ……!
肉の焼き加減もバンズの焼き加減も最高で、この分厚い肉にコーラが合う。やっぱこういうジャンキーなのが1番良いんだよなぁ。
「お母さん!これ美味しいね! 」
二口目を食べようとした時、さっき見た子供の声とその両親に目が言ってしまい、つい食べる手を止めてしまった。
目の先には子供が美味しそうにバーガーを頬張る姿を見て楽しそうな母親と父親の姿が映り、また俺は自分の脳裏に俺がガキの頃の思い出が蘇った。
あんな風に家族と一緒に食べる事なんて殆どなかった。お袋は病気でアイツは家族よりも仕事を優先しており、家族で食卓を囲むなんて両手で数える程しか無い。最後に一緒に食べたのはいつだ?10年前?もしくは15年前?それすらも思い出せない程俺とアイツの溝は深く、埋まりようが無いものとなっていた。
だから俺は無意識にあの家族が羨ましい。自分勝手だが少し妬ましくも思う。俺だってあんな風に……
「だぁぁダメだ。アイツがこの島にいるって聞いてから何か調子悪ぃな…… 」
思わず机に突っ伏せて湿った気持ちからどうにか抜け出そうと店内を見渡して何か気が紛れるものが無いか探したが、そんな都合のいいもんが転がってる訳が無い。こういう時にタバコがあると良かったけどタイミング悪く切らしてるからその手段も使えない。あぁ、目の前にある吸ったタバコが恋しい。
そんな中、端目に映った店内の様子が少しおかしい。おかしいと言うより、変な客が1人居た。黒い服に黒い帽子にサングラス、そしてこんなクソ暑いのにマスクを付けていてしかも行動の一つ一つが何かを気にしているみたいに周りをキョロキョロしている。
すると黒服の男が何かを見つけたのか、真っ先に俺が見た子供の方に近づき、そのまま強引に子供の腕を掴んで持ち上げると、また店内に戻って子供のコメカミに銃を突きつけていた。
「おい!この子供の命が惜しかったら金を寄越せ! 」
「なっ……! 」
「ご、強盗だ!早く警察を…… 」
近くにいる男がそう言うと、黒服の奴は叫んだ男に向けて躊躇なく発砲し、飛ばされた弾丸は男の腹部を貫通した。
撃たれた男は痛みでその場から転がりながら悶絶しており、慌てて俺はその男に駆け寄った。
「おい!大丈夫か!? 」
「痛い……痛いいい! 」
「落ち着け!待ってろ、今応急処置を…… 」
「おいそこのお前!勝手に動くな! 」
今度は俺に向けて強盗は銃を撃ち、既の所で弾丸を交わし、右頬をかすりながらも弾丸は木で作られた地面に当たった。
「おい!早くこいつ手当しないと失血して死ぬぞ!そうなるとお前、取り返しのつかない事になるぞ……!」
「うるせぇ!どうせ皆セイレーンに殺されるんだ!だったらもうどうなったって……! 」
こいつのような人間は少なからず存在する。セイレーンの存在は今でも脅威であり、それに脅えて自ら命を絶つ奴もいれば、こんな風に錯乱する奴もいる。
こういう奴は躊躇いも無く何かをしでかすから厄介だ。こうしている間にも撃たれた奴の血は止まらず、本気で失血する可能性がある。
ちょうど俺の腰には護身用の銃がある。これでアイツが持っている銃を撃ち抜いて無力化すれば制圧は可能だ。だが、今の俺の位置だと射線上に人質に取られた子供がいるせいでまともに動けない。
「おらっ!早く金を詰めろ! 」
店員はさっきの発砲にビビりまくりながら袋にレジの金を入れていた。ここまでして子供を手放す気が無いことから、恐らく子供まで誘拐するつもりだ。ここで何とかしたい気ではある。
子供も強盗から離れられない事から本能で誘拐されると察しているのか、じたばたと泣きながら暴れていた。
強盗は子供に怒鳴り散らしたがそれは全くの逆効果になっており、子供は更に泣き出してしまう。ここまでして子供に何もしないという事は、人質としての価値を失ってしまう事を恐れているからだらう。周りに人だらけで、俺の反抗的な目で奴は俺を警戒している。ここで人質という盾を失えば勝ち目は無いという、強盗の割には冷静な判断をしているのが更にムカつく。
一か八か、奴が気を抜いている瞬間を狙って肩とか狙って無力化を狙おうと腰にある銃を抜こうとしたその時、ドアを蹴破って店に入る金髪ツインテールの女が強盗に一直線に向かっていた。
「アイツは……ホーネットか! 」
「な、何だお前!? 」
強盗はすかさずホーネットに向けて銃口を向けたが、KAN-SENの前ではその動きがあまりにも遅すぎた。
ホーネットは向けられた銃を右足の蹴りで銃を男の手から離し、そのまま右足の回し蹴りで強盗の頭にクリーンヒットした。
蹴られた衝撃で強盗は子供を離し、それを見たホーネットは子供を抱えた。
「全く、強盗なんてカッコ悪いことするね〜 」
「ナイスだホーネット 」
「おお、代理指揮官!ここに居たんだ 」
「とりあえずその子離してやれ。あっちの子なんだ 」
「あぁ、ごめんね。怖かったよね 」
ホーネットの胸の中で泣いていた子供は真っ先に親の元まで走り、母親はその子供を迎え入れるように大きく手を広げ、子供は母親の胸の中に飛び込み、それを父親が包むようにして抱いていた。
「ママー!怖かったよー!! 」
「あぁ……良かった!本当にっ! ありがとうございます! 」
家族全員泣きながら大切な人を離さないように力強く抱き、周囲の客や店員も強盗を鎮圧出来た事を安心したのか、ホーネットに感謝の念の拍手を送る人だっていた。
父親がホーネットに向けてお礼を言うと、ホーネットは照れながらもその感謝の言葉を快く受け取った。
「助かったぜホーネット 」
「いや〜買い物終わりで発砲音が聞こえたから来てみたらまさか強盗とはね、代理指揮官は怪我ない? 」
「俺は平気だが、1人撃たれた奴がいる。ヴェスタルはいるか?近くにいたら呼んで欲しいのと、病院と警察の通報を頼む 」
幸い撃たれた奴の傷は浅く、今ヴェスタルの治療と病院での治療を受ければ問題なく完治出来るはずだ。呼吸も安定しており、今応急処置で止血したから余裕を持って待てる筈だ。
「りょーかい!じゃあヴェスタル呼ぶからちょっと待ってね…… 」
ホーネットは上着のコートから携帯端末を取り出し、ヴェスタルに連絡した。俺は一応、ホーネットの蹴りで伸びてる強盗の銃を取りあげて無力化を図ろうとしたその瞬間、強盗が蹴られた銃とは別の銃を服の内側から取り出し、さっきの腹いせなのかホーネットに向けて銃口を向けた。
ホーネットは背後の殺気に気づいてすぐ様後ろに振り返ったが、男の指に引き金がもうかかっていてとても避けきける距離では無い。
誰も悲鳴があげる事が出来ない程一瞬の出来事で強盗以外は動けずにいた。
「このっ……アマァァァァ!! 」
「やばっ……! 」
KAN-SENならあの程度の銃弾は当たっても致命傷にはならないどころか、かすり傷が付くぐらいだろう。でも、だからって何もしない理由にはならない。
今なら強盗と俺の間に何も無く、射線が通っている。これで心置き無く腰につけている銃をぶっぱなせるって訳だ。
強盗が引き金を引くよりも早く俺は腰につけている黒のリボルバータイプの銃を構え、流れる様に引き金を引いて弾丸を放った。
弾丸はそのままの勢いで強盗の銃のバレル部分を撃ち抜き、その反動で強盗の銃は手から離れた。
この時間僅か一秒未満。あまりの速さに強盗はおろか俺の近くにいた奴らも俺が何をしたのか分からないだろう。せいぜいいきなり銃が手から出た手品見たいな認識が関の山だ。
強盗は何をされたのか分からず、近くにある銃を取ろうとせずただ呆然としていた。
まぁ取ったとしてもまた俺がその銃を撃ち抜くだけだが。
「す、凄いね……代理指揮官 」
「早撃ちには自信があってね。それよりも連絡し終わったらそいつの無力化をしてくれ 」
「いや、どうやらその必要は無いみたいだよ 」
するとナイスタイミングなのか、それとも遅すぎなのか分からないが、丁度パトカーのサイレンが近づいていき、店の目の前に4台のパトカーが到着し、すぐ様警官が店に入ってきた。
「警察だ!強盗は大人しくしろ! 」
すると警察は俺の方に銃を構えていた。
「はっ?俺?何で? 」
俺どちらかと言うとホーネットを強盗から守った身なんですけど?もしくは俺が強盗に見えるっていうのか?そんなに怪しいのかと自分の身の回りをよく見ると、俺の手には応急処置の為についた血とリボルバーの銃が握られており、対する強盗は呆れるように呆然としていた。
「あ、この銃か。……って、強盗はあっちだ馬鹿野郎!! 」
何とか周りの人やホーネットの言い分、そして極めつけはアズールレーン後方支援隊の司令官の身分を明かすバッチを警察に見せて何とか誤解は解き、強盗は手錠を掛けられた。
そして入れ替わるようにヴェスタルがこの店に到着し、俺は撃たれた男の治療を頼んだ。
「傷は浅いですね。弾丸も貫通しているので止血と、病院に運ばれる際の衝撃で傷が開かないようにしておきますね 」
さすがは工作艦で優海の治療も受け持ったと言うべきか、凄まじい手つきで男に包帯が巻かれ、巻くだけじゃなくてちゃんと男に向けて励ましの言葉も送っている。ヴェスタルの優しさと技量が目に見えて分かる光景だった。
「はい、これで応急処置は終わりです。後は救急車が来てくれれば良いのですが…… 」
「多分まだだろうな……だけど心配は無いだろ 」
ヴェスタルのおかげで呼吸も安定しているし、応急処置にしてはかなりの治療を施している。余裕を持って病院まで運べるはずだ。
「さーてと、後は救急車が来れば一件落着……ん? 」
一難が終えて伸びをした時、端目に映った人物を俺は見逃さなかった。いや、見逃す訳が無い。
俺がこの世で1番嫌いで、今1番会いたくない奴であると同時に、何故ここにいるのか1番疑問に思っている奴でもある。そんな矛盾した気持ちが渦巻く中、俺は無我夢中で店を囲う低い塀を飛び越えて店から出た。
「え!?ちょっと代理指揮官どこ行くの!? 」
「少し用が出来た 」
ホーネットにそう返事を返し、俺は真っ直ぐ奴がいたビルの隙間道の路地裏に走っていった。
息するのも忘れるぐらい無我夢中で走り、多くのビルが太陽の日差しが遮る暗い路地裏の中でようやくヤツの姿を捉えた。
「べリタス!! 」
自分の名前を呼ばれてアイツは立ち止まってこちらに振り返った。
忘れもしないあの冷酷で光が点ってない赤い眼に、黒髪に被ったような赤い髪がまるで血を被った様にも思えた。べリタスは振り返った後何も言わず、冷たい眼差しで俺を見る事しかせず、それ以上の事は何もしなかった。
「ユニオン本土に居るはずのお前がなんでここにいる? ここで一体何をするつもりだ! 」
「話はそれだけか? 」
「何……? 」
「それだけの事を話す為に俺の貴重な時間を取らせるな、さっさと失せろ 」
こいつ……!仮にも自分の子供だぞ……まるで興味の無い他人とでも話すように突き放した言動であり、あっちは話す気が無い様子だ。やっぱり変わってない。アイツは何も変わってなかった。
「……あぁ、そうかよ。邪魔して悪かったな 」
数十年ぶりの会話はこれだけで終わってしまい、次はいつ会うか分からない。というか、ここに会えたのが奇跡だからもしかしたらもう二度と会えないかもしれない。だけど後悔は無い。むしろイラつきながらも清々した。
心置き無く路地裏から抜け出すと、アイツがいきなりを声を出した。
「……髪、染めたのか 」
「あぁ? 」
いきなり訳の分からない事を言い、俺は自分の髪を思わず弄り、近くにあったガラス窓で自分の髪色を見えた。
俺の髪は茶髪で前髪の一部がアイツと同じような赤髪となっている。この髪色はアイツが言った通り染めた物であり、この茶髪はお袋と同じ髪色でもある。俺の本当の髪色は……アイツと同じ銀色だ。
アイツと同じ髪色が気に入らず、俺の大嫌いな奴の息子というのが嫌でも目に見えてしまうから俺は髪を染めたが……何で今更そんな事言うんだアイツは……
「だからなんだよ 」
「……気になっただけだ 」
「あぁ?何でお前が…… 」
後ろに振り返ると、そこにもうべリタスはいなかった。
「ちっ……なんだよアイツ。分かんねぇな…… 」
すると携帯から着信音が鳴り響き、少し乱雑に携帯を取り出して携帯を操作し、携帯を耳に当てた。
「もしもし 」
『あ、後方支援隊の司令官さんですか?補給物資の積み込みが終わったので連絡させて頂きました。いつでも出港出来ますよ 』
「あぁ、ありがとう。すぐそっちに戻る 」
電話を切ってKAN-SEN達に補給が終わったと連絡した後、薄暗い路地裏から表通りへと抜け出した。
「……そういえばあいつが結局ここで何をしてるのか分かんなかったな 」
だがさっきの会話でそんな事どうでもよくなってしまった。
ここから出れば魔の海域、バミューダ海域の調査だ。気持ちを切り替える為に両頬を叩き、ドックへと戻っていく。俺が気づかないほど心の隅に、少しの不安を抱きながら……
べリタス・カービス
ジンの父親であり、ユニオンでも有数な資産家としても有名な人物。その名はユニオン全域でも響き、全ての陣営の耳にも入っている。
普段から冷酷な性格から【帝王】などと呼ばれて恐れられていることか、目的の為ならどんな手段でも用いると噂されているが、真偽の方は不明。
幼い頃のジンを徹底的に教育したが、本人曰く拷問にも近いやりすぎた教育でジンは家から出ていき、自分の妻の死にも無関心だった為、ジンとは縁を切られている。
もしもの話(R-18)を観測しますか?
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