ガンダムGgeneration -REAL-   作:閃光の軍曹

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世界は乱れゆく
それは嵐の中の雪のように

少年は出会う
現れる異変
新しい仲間
新しい敵
そして少年は、敗北を知る


第1章~世界の乱れ~

赤髪の少年は廊下を走っていた。

RoW本部中央会議室へ続く廊下を急ぐ彼は最重要任務を受けるために走っている。

本来彼は上級部隊「閃光の聖夜」部隊に第二副隊長として所属していた。

一般に大規模合戦での先駆部隊であったが今回は個人への召集だった。

これまで彼個人に召集がかかったことがないので、その内容が気になっていた。

大規模作戦の事前会議か機関内規律改変か、もしくは何か不吉なことがおきているのか。

彼は普段は陽気だがこういった状況では頭がよく動く。

その能力は類稀なる天才と呼べるほどのものだった。

 

数分ほど走っただろうか、ようやく中央会議室にたどり着いた。

「すみません、遅れました!」

RoWは軍事組織ではないため、礼儀等の規律は割りと緩い。

会議室には見慣れない顔もあった。

さらに、大部隊指令クラスの高位の人間の顔もあり、反射的に自己紹介をした。

「せ、『閃光の聖夜』上級部隊所属アーミー・ソーズマン副隊長でありますっ!!」

迫力のある顔ぶれに圧倒され、少し緊張気味になってしまった。

「待っていたよアーミー君。私は今回の作戦担当責任者および部隊戦艦艦長のフォビン・カメルだ。よろしく。」

「よろしくお願いしますっ」

彼、アーミーは頭を下げながら横目でその他のメンバーを確認した。

銀短髪の美青年、黒いオールバックの男、緑の髪の少女、お嬢様タイプの女…恐らくこの辺りが自分と同じ位であろうと推測した。

(わたくし)の名前はシャリオ・キューナですわ。私の足を引っ張るような真似だけはしないように。」

お嬢様タイプの女はさほど自身があるのか、今まで見たことのないほどのドヤ顔で自己紹介した。

「僕はレイヴ・エルト。搭乗機体はザンスパイン。よろしく。」

淡々と名乗った銀短髪の青年は、その整った顔立ちが冷たさを加速させていた。

「アタシはネルトナ・ピート!よろしくね!」

レイヴを押しのけて顔を出した緑髪の少女は、見た目的にはアーミーより年下だろうか。

「俺は今作戦の部隊長を務めるゼル・ベルトナートだ、よろしくな。」

3人の後ろにいても十分顔が見えるほど背の高いオールバックの男にはこの中では一番優しそうな印象を持った。

アーミーはその4人の名前を聞いて驚いた。

どれも多大な戦果を挙げた実力者として知れ渡っていた名前ばかりだったからだ。

そしてそれがアーミーの中に疑問を生じさせた。

高位の人間が列席する会議、招集された少数の実力者……

「今回の作戦の趣旨は…?」

恐る恐る、と言っても持ち前の陽気さ全開で尋ねた。

一瞬「しまった」と思ったが規律違反ではないので気にしない事にした。

「まぁ簡単に言うと、ただのワールド調査だ。」

フォビン艦長が軽く答えた。

(そんなわけない)

(ただの調査にこんな実力者を集めるわけがない)

自分が実力者であるということを否定しないのもアーミーの特徴だろう。

昔から彼への誹謗・中傷は圧倒的な正論で跳ね返し、お世辞は拒まず受け入れる。

時にはそのお世辞に尾ひれをつけて自分を持ち上げる。

それでもどこか憎めないのがアーミー・ソーズマンという男だった。

「正直に話したらどうだ。ただの調査なんてありえないだろう。」

レイヴが礼儀を取っ払った口調でアーミーを含めた5人が気になっていたことを率直に問うた。

「ちょ、ちょっとレイヴ君、慎みなさい!」

シャリオがあわてて指摘するが、レイヴは聞く耳を持たないといった様子だった。

「確かに、このメンバーでただの調査というのも気になるな。」

ゼル隊長もレイヴの意見に同意‐アーミーも同意はしていたが‐して真剣な目でフォビン艦長やその他の高位の人間に向き合った。

フォビン艦長もその態度に驚いたらしく、困った顔をしたが、すぐに笑って答えた。

「いやぁ~、君たちに対して隠しきろうなんてやっぱり無理だよね。」

フォビン艦長は参ったといった様子で頭をかいた。

「では、本題に入ろうか!」

一瞬で顔が険しくなり、目の前のディスプレイ付きテーブルを思い切り叩いた。

(本題っつーか、真意だろ?)

アーミーは声には出さなかったが、フォビン艦長の発言にツっこんだ。

フォビン艦長の様子の変化に伴ってか、場の空気が一気に緊張した。

5人は改めてフォビン艦長とその他の高位の人間に向き合った。

「実はここ最近、数箇所のワールドで異常が感知された。RoW情報解析部が懸命の捜査を行ったが未だ原因は不明、現場調査が必要と判断した。」

アーミーは納得した。

この世界において、各ワールドの本質はデータの集合体であり、RoW本部から各ネットワークに接続すればそのワールドの99.9999%は把握することができる。

さらに、RoW情報解析部はかなり優秀で、実際に部隊が出撃することはほとんど無かった。

そんな情報解析部でも解析不可能となると、現状はかなり悪いという事になる。

(なるほど…どんな敵がいるかわかんねぇから俺たちを集めたのか)

「現状はかなり悪い。この先にどんな危険が待っているか分からない。」

「それで僕たちを招集したということか。」

レイヴは冷たい目や淡々とした口調に反してよく喋る。

「どこかで見たゲームみたいな状況ですわね。」

「俺たちじゃなきゃできない仕事、というわけか。」

「最善を尽くすわ!」

アーミーは呆れた、と同時に安心した。

(こいつら、案外気楽じゃねぇか)

もちろん、アーミーほどではない。

「よし、燃えてきたぜ!」

「早速動こうか。」

ゼル隊長が場をまとめ、状況を整理した。

「フォビン艦長、対象ワールドは?」

C.E.(コズミック・イラ)-71だ。」

RoWでは一般的に、ワールドに名前は付けず、その年代をそのまま呼称としている。

「聞いたな! 全員、出撃準備だ!!」

「「「「 了解!! 」」」」

 

 

 

今回の調査対象の『C.E.-71』は、機動戦士ガンダムSEEDの世界だ。

地球連合とザフトとの間での戦争の真っ只中である。

「キャリーベース転送シークエンスに入ります!!」

管制官の掛け声と同時に、オレンジ色の小型戦艦『キャリーベース』が転送路上に移動してきた。

積載機体は、

GGF-001  フェニックスガンダム

OZ-14MS ガンダムアクエリアス

ZMT-S37S ザンスパイン

GB-9700  ガンダムベルフェゴール

PMX-004 タイタニア

この5機である。

パイロットはそれぞれ、ゼル・ベルトナート、アーミー・ソーズマン、レイヴ・エルト、ネルトナ・ピート、シャリオ・キューナである。

各自の愛機は、イメージ通りの者もいれば意外な者もいる。

そしてどれも個性が強い機体である。

RoWはもっと大型で強力な戦艦を無数に所有しているが、今回の作戦はあくまで調査なので大型艦を出撃させるわけにはいかないという理由から簡易戦艦のキャリーベースで出撃することになった。

「システムグリーン! 調査部隊『ハルーツ』、目的地『C.E.-71』!…転送!!」

フォビン艦長が手元のレバーを押し込むと、戦艦全体は青白い光に包まれ、一瞬、重力が消えた。

「お、おぇ…」

アーミーは激しい吐き気に襲われた。

「あれぇ?アーミーって乗り物に弱かったの?」

発進待機中のネルトナが通信機で話しかけてきた。

どうやら回線を開いていたようだ。

「う、うる…せぇ…!」

数秒して人工重力コントロールシステムが順応して0.98Gに保たれた。

しかし数分後にはもう無重力の宇宙に飛び出す予定だ。

「重力をいちいちコントロールすんの面倒なんだよ」

酔いが覚めてきたアーミーが愚痴る。

本部から連絡転送回線を通り目的地に到着するまで、環境が変わる度に重力や空気などを調節する。

確かに面倒だが、現在の状況では、いつ何が起きるか分からない状況では仕方ないであろう。

ましてや、小型の簡易戦艦であるキャリーベースではその作業に若干の時間がかかるため、早急に行動に移さねばならない。

「目的地到着、及び転送完了まで、あと20秒です!!」

通信士が各機体に告げる。

「始まりますのね…!」

「敵影確認後、俺とネルトナ、レイヴが前に出る。シャリオは戦艦に付いて援護。アーミーは管制と参謀を頼む!」

「了解した」

「暴れるよ~!!」

「よっしゃ!燃えてきたぜ!!」

各機体の発進準備が完了した。

本来、目的地到着前に発進準備を完了させるのは危険行為であり、何があるか分からない現状況では自殺行為とも言えた。

しかし、早急に対応する必要がある場合、出撃の遅れは生死を分ける。

「信じさせてもらうよ……」

フォビン艦長がそう呟いて、覚悟を決めた。

覚悟もなく戦場に出るということは、死を意味する。

しかも、データ世界で死亡すると、存在そのものがノイズと認識されて消去される可能性が高い。

 

 

 

青白い閃光と共に、オレンジの戦艦「キャリーベース」が宇宙空間に現れた。

「おいおい、マジかよ…」

戦艦から傍受した索敵反応をみたアーミーは呆れた。

彼らは戦場のド真ん中に転送された。

後方には白い大型戦艦「アークエンジェル」とMS1機と小型戦闘機1機、前方にはMS部隊が展開していた。

「これじゃあ小型戦艦にした意味が無いな」

レイヴが言うことはいつも的確であるが、ストレートな分、刺がある。

「どうしますか艦長!」

ゼル隊長がフォビン艦長に判断を求める。

こういった現場での行動力はゼル隊長が長けているだろう。

「私たちの目標はあくまで()()だ。」

「でもこの状況からどうやって抜け出すのよ!」

ネルトナの言う事もごもっともである。

後退も前進もできない状況では、どう動いても狙い撃ちされる可能性がある。

考えている時間も無い。

その時だった。

「MSの識別終了!!」

「報告! 前方MS部隊の中にストライクフリーダムガンダム6機を確認!!」

通信士の報告に5人の顔つきが変わった。

「どうかんがえても異変ですわね。」

「ストライクフリーダムはこの時代ではまだ開発されていない。しかも6機いるとなると…」

「ヤツ等を殲滅すればいいんだな!!」

「しかし、そうするとザフトと交戦することになるぞ。」

「仕方あるまい…アークエンジェルにつなげろ。」

「艦長!!この時代を狂わせる危険性がありますのよ!!」

「アタシはそうするしかないと思うけど。」

議論してはいるが、選択肢は限られている。

通信士がアークエンジェルに通信を入れた。

「こちらRoWのキャリーベース、艦長のフォビン・カメル。アークエンジェル、応答願う。」

通信を入れてからすぐにアークエンジェルから応答があった。

「こちら地球連合のアークエンジェル、マリュー・ラミアス。貴官らの目的を聞きたい。」

映像はなく、音声のみの通信だった。

「それは最重要機密につき、他言することはできない。」

「質問を変えるわ。貴官らは敵か見方か、どちらですか?」

その質問が正しいだろう。

戦場で重要なのは、目的ではなく()()()か、である。

目的は異なっても、共通した敵を持てば、戦場では見方になる。

AC(アフターコロニー)195年、つまりは新機動戦記ガンダムWの時代のガンダムパイロットである5人の少年たちは、目的は全く違っていたが、同じOZという敵と対するために共に戦った。

フォビン艦長は即答した。

「どちらでもない。しかし、我々の敵は前方のMS部隊に紛れ込んでいる。」

「それはつまり…」

「我々は貴官らと共同してザフトを撃退するつもりである。」

RoWの敵は6機のストライクフリーダムガンダム。

アークエンジェルの敵は13機のジンと奪取されたイージスガンダム、計14機。

一方、RoWの戦力は、キャリーベースとMSが5機。

アークエンジェルはストライクガンダムとメビウス・ゼロの計2機。

戦力比は、キャリーベースとアークエンジェルをMS5機分と仮定して、17:20。

勝てない戦いではない。

「了解しました、こちらも僅かながら戦力を展開します。」

「連携は難しいと思うが、よろしく頼む。」

通信が終了し、アークエンジェルからMS1機と小型戦闘機1機が出撃したのが確認できた。

「我々も展開するぞ!」

「通信長いっつの!!」

アーミーがわくわくした様子で「発進」の一言を待っていた。

フォビン艦長がマイクを掴んで叩きつけるように言った。

「全機発進!!!」

すでにカタパルトでスタンバイしていた機体が飛び出していく。

「ゼル・ベルトナート、フェニックスガンダム、行きます!!」

赤を基調とした身体に不死鳥を思わせる赤い羽根を広げたフェニックスガンダムが無数の光点の中へ飛び込んでいった。

「シャリオ・キューナ、タイタニア、行きますわ!!」

全身が白い巨体が飛び出す。

「レイヴ・エルト、ザンスパイン、出撃する…!」

紫と赤いカラーリングが不気味さを強調させるMSが赤い軌跡を描いて飛んでいく。

「ネルトナ・ピート、ガンダムベルフェゴール、いっきまぁすっ!!」

巨大なクローを携えたMSが突貫する。

「アーミー・ソーズマン、ガンダムアクエリアス、行くぜ!!!!」

大出力のスラスターが青白い火を噴いて、宇宙空間へ一気に飛び出した。

 

 

 

赤い大型スラスターを背負ったガンダムがある1機だけを目標にしてMS部隊の中を突っ切っていた。

エールストライクガンダム。

地球連合が極秘開発していた「G」の中の1機である。

奪取された残りの4機の内1機は、目の前にいた。

「アスラン!」

エールストライクのパイロット、「キラ・ヤマト」が目標の機体と対峙した。

その機体、イージスガンダムのパイロットであり、かつての親友の名を呼ぶと、赤い身体をこちらに向けてきた。

「キラ…!? 君なのかい!?」

戦場で再開した親友は複雑な思いを抱えながら会話する。

「キラ、どうして君がそんなものに乗っているんだ!?」

「君こそ、どうしてザフトになんか……!?なんで戦争をしたりするんだ!?戦争なんて嫌だって君だって言ってたじゃないか!その君がどうして!!」

「状況も分からないナチュラル共がこんな物を作るから!」

戦闘のそぶりを見せない2機のガンダムを見ていたシャリオが会話に割り入ってきた。

「無駄ですわよ、キラ君。」

本来RoWがワールドの住人に介入するのはご法度であるのだが、そんなことに気を使ってももう遅いと判断した。

「君は確か…RoWの。」

「君の仲間かい?」

「僕の仲間じゃない、ザフトの敵だ!」

「あぁ、めんどくさいですわね…」

キラはアスランを敵とも、RoWを見方とも認めてもいないらしい。

「俺の敵は…ナチュラル共とそれに味方するヤツだ!!」

イージスがビームサーベルを抜いてエールストライクに斬りかかった。

キラは戸惑いながらもエールストライクのビームサーベルで受け止めた。

「アスラン、何で!!」

「とぅ!!!!」

イージスの右足がエールストライクの左わき腹に直撃した。

アスランはかなり実践慣れしていた。

「手を貸してあげますわ。」

タイタニアの肩から無数の()()が射出された。

「軽くお相手して差し上げなさい、ファンネル!!」

イージスと周辺のジンを多方向からビームが襲った。

イージスはエールストライクを跳ね除けて回避をしたが、ジンは大破、軽くても胴体が辛うじて確認できるほどの損傷を受けた。

「な…何を……」

ただ呆然とその様子を見ていたキラは、後ろから迫るジンに気がつかなかった。

「周りを見ろ、ド素人。」

ザンスパインがビームライフルを放ち、ジンのスラスターを破壊した。

レイヴはそのあと何も言わず飛び去っていった。

「ド素人……」

キラはレイヴに言われた言葉を繰り返した。

「しょうがないじゃないか…僕は、戦争したくてこんな物に乗ってるわけじゃないんだから……」

戦闘は激化していった。

 

 

アークエンジェルの通信士がレーダーを見て叫んだ。

「巨大熱源反応! ザフトの援軍、ナスカ級です!!」

「やっぱり来たわね…」

戦闘が激化するMS部隊の奥に、大型の戦艦「ヴェサリウス」が現れた。

ヴェサリウスから発進した機体は、ジン2機、ジンハイニューバ6機、それと、カスタムされたシグーが1機、計9機。

「ここまで追詰めたからには、そろそろ仕留めさせてもらうよ。」

カスタムされたシグーを駆るのは、目元を仮面で隠した男、「ラウ・ル・クルーゼ」だった。

ジンとは違い、明るい緑を基調としたジンハイニューバが戦闘に介入した。

「クソッ!!援軍かっ!」

同時に4機のジンを相手にしながら目標であるストライクフリーダムを探すゼル隊長は、接近してくるジンハイニューバを見るなり一旦後退した。

「俺は行かせてもらう。」

レイヴが新手もお構いなしといった様子で戦場を駆け回る。

「みんな!!朗報だぜ!!」

各々が個々の戦闘に集中しているところに、アーミーから通信が入った。

その声はこんな時でも陽気である。

「さっさと用件だけ言って消えて!集中できないじゃない!」

ネルトナがストライククローでジンを破壊しながら言った。

「なんと! ストライクフリーダムの正確な位置が分かったぜ!!今から各機体に送信する!!」

通信が切られ、それとほぼ同時に座標データが送られてきた。

「目標を目視で確認した。これより殲滅する。」

レイヴが発した言葉に反し、気分は「ちょっと自販機でジュース買ってくるわ」のような軽いものだった。

ザンスパインが弾幕をもろともせずにストライクフリーダムに突っ込んだ。

目標の6機は陣形を成しているようには見えなかった。

「隙だらけだ…!」

ザンスパインの光の翼を大きく羽ばたかせて1機に斬りかかった。

しかし、ストライクフリーダムは瞬時に反応し、紙一重でかわした。

「何!?」

ザンスパインの体勢を立て直そうとして振り向くと、ストライクフリーダム2機がライフルの銃口をこちらに向けていた。

(やられる………!!)

ザンスパインはビームの直撃を受けた。

オプションで装甲を強化しているため、大きな損傷はなかったが、この攻撃を受け続ければいずれはやられる。

「レイヴ君!援護するわ!!」

ベルフェゴールがストライククローを展開してザンスパインを襲うストライクフリーダムを牽制しようとした。

しかし、別のストライクフリーダム3機が立ちふさがり、ロングライフルによる波状攻撃を仕掛けてきた。

「なんなのよコイツら…!」

それから逃れようとすると、今度はドラグーンが行く手を阻む。

「このままじゃ持たないって……」

「この俺が…負けるのか…!?」

2人は諦めかけた。

が、この無駄の無い連携を攻略する方法を閃いた者が1人だけいた。

「レイヴ! ネルトナ! 下がれ!!」

アーミーがアクエリアスを加速させながら2人に後退を指示した。

「クッ……仕方ない…」

「何をやろうとしてるかは知らないけど、とりあえずは従っといてあげる…ッ!」

ザンスパインとベルフェゴールがストライクフリーダムの群れから離脱し、入れ替わるようにアクエリアスが突っ込んだ。

だがアーミーは武器を全く構えずにストライクフリーダム6機の中心で静止した。

「バカ!!死ぬ気か!!」

レイヴが珍しく声を荒げる。

当然であろう、この強敵の実力を直接体験した者が、否、そうでなくとも、アーミーの行動を理解できるはずがなかった。

「蜂の巣にされるわよ!!」

ネルトナが急いで操縦桿を操作し、機体を反転させた。

「近寄るな!!!」

アーミーは短く怒鳴った。

「だ、だが…!」

「お前らはまだ相棒の本気を知らない。」

ストライクフリーダム全機がアクエリアスを囲んでドラグーンを展開した。

アーミーは両サイドにコンソールパネルを出現させ、コードを入力した。

ストライクフリーダムが持てる全ての射撃武装を構えた。

「ハイマットだ!! 逃げろ!!!」

アーミーは冷静だった。

それだけでなく、余裕の表情を見せていた。

「うるせェんだよ…」

通信を一方的に切断した。

ストライクフリーダムが標準をあわせた。

レイヴやネルトナとの戦闘で、正確な射撃で2人に苦戦を強いた。

アーミーは顔を上げた。

「凍えな!!!!」

そう叫んだ瞬間だった。

ストライクフリーダムのカメラアイが不規則に点滅し始めた。

ドラグーンが次々と機能を停止していく。

そして数秒後、ストライクフリーダム6機は、完全に沈黙した。

「な…何が…起きたんだ……!?」

レイヴが目を疑う。

「あんなに苦戦したのに、それを一瞬で…」

「沈黙を司る青……」

シャリオがアクエリアスの周りでストライクフリーダムが沈黙していく様子を見て、恐怖にも似た感情を混乱する思考の中で精一杯の言葉にした。

「アーミー、何をした。」

レイヴが再び回線をつなげる。

「アンチMD(モビルドール)ウィルスだ。」

アンチMDウィルス。

MDの指揮系統に支障をきたすウィルスである。

アンチMDウィルスがで沈黙したということは、RoWが目標としていた6機は…

「MD…だったのね…」

「あぁ。コンマ2桁まで狂いのない連携、正確な射撃、完璧な動き…お前ら2人の戦いを見てピンときたんだ。」

MDの戦いは人間のそれとほとんど見分けがつかない。

再びAC195年の話になるが、この時代のガンダムパイロットでさえ、戦ってみなければ分からないほどである。

それを見ていただけで判断したこの観察眼はもはや神業といえる。

「ま、ほとんど勘だけどな!」

勘だったらしい。

「あ、アンタ勘であんな無茶な行動をしたっていうの!?」

アーミーの発言を聞いた者全てが呆れた。

自動戦闘MSは、ガンダムの世界では複数存在する。

しかし、アンチMDウィルスはMDに対してのみ有効である。

「命知らず…だな。」

「まぁ、カトル風に言うと、『宇宙の心が教えてくれたんだ』!!」

こんな緊迫した戦場で冗談をかました。

ムードメーカーとして彼の右に出る者はいないだろう。

「とにかく、目標を無傷で回収できるんだ。アーミー、よくやったぞ。」

ゼル隊長が笑いをこらえながら場をまとめた。

 

 

それから十数分して、ザフトの部隊は撤退した。

「終わった…のか……?」

キラは目の前で展開された戦闘をただ見ていた。

「こちらゼル・ベルトナート。作戦終了、これより帰艦する。」

キャリーベースに向かうフェニックスに続いて、残りの4機も帰艦を始めた。

しかし、戦場は刻一刻と変化するものである。

「前方に新たな熱源反応!!」

「な、何!? 識別は!?」

フォビン艦長がモニターに流れる情報を片っ端から読んでいく。

「識別でました!! ジオンのファメルです!!」

通信士の報告に、帰艦したばかりのパイロットたちは顔を見合わせた。

「また出なきゃなりませんの?」

「どう考えたって異変だろう。ここはC.E.だ。」

格納されたばかりのMSをカタパルトへ移動させる。

「めんどくせ…次から次へと……」

アーミーは帰って休みたい気分だった。

それもそうであろう。

発言や表情は終始陽気だが、(さき)の戦闘ではかなりの集中力を見せ付けた。

「ジオンがMS部隊を展開!!」

「急がなきゃだね!」

ネルトナがコックピットに飛び乗る。

他の4人も次々と愛機に乗り込む。

「な、なんだこれ…!?」

通信士がレーダーを見て驚愕する。

「どうした?」

フォビン艦長がレーダーを覗き込む。

「中央の隊長機と思われる機体の速度が…」

レーダー上を1つの光点が信じられない速さで移動していた。

「高速機の、通常の3倍の速度で接近してきます!!!」

この速さで思いあたる名前は1人しかいない。

「シャア・アズナブルか…!!」

シャア・アズナブル。

『赤い彗星』の異名を持つ彼は、その名の通り、卓越した操縦技術で目にも留まらぬ速さの戦闘を展開する。

「全機発進まで待っていられない!! 各自出撃後、射程内に入り次第攻撃開始!! 状況に合わせて相互援護だ!!」

「「「「了解!!」」」」

 

 

 

シャアの駆る真っ赤な高機動型ザクⅡは、既にキラの駆るエールストライクと交戦していた。

シャア出撃後、45秒のことである。

「は、速い!!」

キラは突然の襲撃に、回避するのが精一杯だった。

「これが噂に聞く地球連合軍が開発したGか…よもや中立コロニーで開発していたとはな…」

シャアはこのワールドの事情を掴んでいるようだ。

否、それどころか、まるで元々このワールドに存在していたかのような口ぶりだ。

「連合は協定を破った。高い代償を払わせてやる。」

シャア専用ザクⅡはエールストライクに向き直った。

シャアは前を見据えて、一気に踏み込んだ。

「さぁ、見せてもらおうか、連合軍のMSの性能とやらを!」

ヒートホークがエールストライクを襲う。

その後、やや遅れてその他のザクⅡ6機、リック・ドム4機が迫ってきた。

「もう来てる…さすがは赤い彗星ね!」

ネルトナがシャアザクに突貫する。

「キラ君下って!!そいつはアタシが相手するわ!」

「あ、ありがとうございます!」

ベルフェゴールの特徴である、巨大なクローでヒートホークを弾き飛ばす。

「他にもGがいたのか!?」

シャアは間合いをとり、バズーカを構えた。

ネルトナはその一瞬の隙を見逃さなかった。

「えぇいっ!!」

ストライククローでバズーカを砕いた。

「ば、バカな!!?」

両肩のクローでシャアザクの動きを封じる。

「一気に決めるちゃうよ!!」

ネルトナが小型のコンソールパネルにコードを入力していく。

すると、コックピット内の計器類やモニターが赤く発光し始めた。

そして、メインモニターの中央に文章が表示された。

―敵ノ殲滅ヲ最優先トスル―

ベルフェゴールのリミッターが解除された。

「…様子が変わった…!」

シャアはその僅かな変化を感じ取った。

一瞬の沈黙のあと、ベルフェゴールが動き出した。

左のクローでシャアザクを弾き飛ばし、続けざまに右手のクローからビームを連射する。

通常のザクⅡ、通常のパイロットならば、これで大破する。

しかしシャアは、その操縦技術とニュータイプの勘でダメージポイントを外していった。

それでもベルフェゴールの攻撃は終わらない。

クローに連装された大出力ビームサーベルを振り上げ、X字に斬りおろす。

そしてそこから、至近距離でソニックスマッシュ砲を放った。

この一連の怒涛の攻撃をまともに食らったシャアザクは、既に戦闘継続不能に陥っていた。

損傷各部が放電し、コックピット内も放電が飛び交っている。

「えぇい、ば、化物かッ!!」

シャアザクはその後、閃光と爆風と共に消えた。

「こちらネルトナ! シャア専用ザクⅡを撃破しました!」

「よし、俺たちも一気に決めるぞ!!」

ゼル隊長がジオンのMS部隊の正面に立ちふさがった。

「レイヴ!シャリオ!俺と3人で敵機全機を仕留めるぞ!!」

ゼル隊長はこれ以上の長期戦は危険と判断した。

前の戦闘でエネルギーの大半を使い、まともな補給もないまま戦闘を開始したため、どの機体もエネルギー残量が少なかった。

特にアクエリアスとベルフェゴールのエネルギーは絶望的だった。

アクエリアスは、ジェネレーター出力の大半をシステム稼動に費やしているため、武器に回せるエネルギーが無く、活動可能時間が短い。

これもビーム兵器を持たない要因の1つである。

また、ベルフェゴールはリミッター解除時にそのエネルギーのほとんどを使い果たした。

「何か考えがあるのか。」

「オールレンジだ!」

レイヴの問いに自身ありげに答える。

「なるほど。理解できましたわ。」

フェニックスの両サイドにザンスパインとタイタニアが並んだ。

「合図したら同時に展開しろ!」

「了解した。」

「わかりましたわ!」

ザクⅡとリック・ドムが迫ってくる。

3人は目を閉じて敵の位置を感じ取った。

「行くぞ!! 3…2…1…!!」

3人は同時に目を開き、集中力を一気に開放した。

「いってらっしゃい、ファンネル!!」

「ティンクルビット…!」

「行け!!フェザーファンネル!!」

各々のオールレンジ兵器が飛んでいく。

そして、ザクⅡやリック・ドムを無数のビームの嵐が飲み込む。

3人の狙いは正確だった。

配置の無駄もなく、美しいと形容できるほどの攻撃だった。

MS部隊、及びファメルがいっぺんに大破した。

真っ暗な宇宙を爆発が包み込む。

 

 

 

「今度こそ…終わりだよな…」

アクエリアスとベルフェゴールは先に帰艦し、補給、及び修理を受けていた。

他の3機の帰艦し、戦場はやっと落ち着いてきた。

アークエンジェルとも別れ、今は本部帰還の準備に入っている。

しかし現実はまだ、彼らを苦しめる。

 

 

 

RoWのキャリーベースの遥か後方で3機のMSが一連の戦闘を傍観していた。

戦艦の索敵範囲外であるため、存在を気づかれることはなかったのだが、RoWが確認した()()とは雰囲気が異なっていた。

「ほぉ…RoWの実力は本物のようだな……」

狭くて薄暗いMSのコックピットで低い声が発せられた。

「まぁそこまで大規模な部隊じゃなかったから当然でしょ。あの程度、私たち3人でも余裕よ。」

大人びた女性の声。

「我々はヤツらの実力の見積もりを誤っていたな。もう少し苦戦すると思っていた。」

「そんだけ本気ってことよ。他のワールドでも別動部隊が動いてるっぽいしね。」

「………気づかれてはいまいな。」

「大丈夫よ。私たちが先制されることはまずないわ。」

2人の会話の中に未だ入ってこようとしない3人目は、目を瞑っていた。

「ねぇ、起きてる?」

「………」

「お~い?」

「……….」

「フルード! 私をからかうつもり!!」

「セイス、少し黙っていろ。」

ようやく3人目が口を開いた。

2人とは対照的にまだ少年の面影がある。

「は、はぁ…?」

長い鶯色の髪を揺らして肩を落した。

「仕掛ける気か、フルード…」

男が問いかける。

レーダー等の明かりでその顔が少し照らせれた。

目元を黒い仮面が隠し、黒いフードを深くかぶっている。

「障害は取り除く。」

「そうか…」

「ちょっとヘネラル!! RoWは後々利用しなきゃなんないのよ!」

「消耗戦のつもりだろう。さすがにRoWの全力とぶつかるのは辛いからな。」

黒い仮面のヘネラルと鶯髪のセイスが会話している間に、フルードは飛び去っていった。

 

 

 

そのころキャリーベースでは、MSの補給・修理と同時に転送準備が行われていた。

通常なら十数分あれば転送は完了するのだが、今回は異常を積んでいるの影響か、作業は難航していた。

クルーの優秀さもあり、あと少しで完了というとこまで来ていた時だった。

突然、艦全体を大きな揺れが襲った。

すさまじい威力だった。

同じダメージをあと2~3回受けたら沈んでしまうほどだ。

「まだいるのかッ!」

ゼル隊長がフェニックスに乗り込もうと急いでいるのを、レイヴが追い越してザンスパインが出撃した。

「相手がどんなかも分からないのに、危険だわ!」

「アイツなら大丈夫だろ。俺たちの中でMS操縦の腕はトップだろうしな。」

アーミーの判断力が言うのだ、ネルトナも納得した。

「そうだけど……」

しかし、ネルトナは嫌な予感がして仕方なかった。

この艦の誰もがアーミーと同じ考えだった。

が、ネルトナの予感は的中することとなる。

 

「レーダー反応なし…目視で探すしかないか。」

レイヴはキャリーベースの後ろに回った。

やはりそこに敵はいた。

ザンスパインに背中を向けている。

全身紫の塗装に、ところどころ貴族的な模様が入っている。

身体に比べ腕は巨大で、ベルフェゴールに似たクローが付いている。

「袖付きのローゼン・ズールか。」

第一次ネオ・ジオン抗争に投入された試作機ハンマ・ハンマをベースに開発され、コックピット周辺にシナンジュ用の予備パーツのサイコフレームを配したサイコミュ搭載機である。

主なパイロットは、フル・フロンタル親衛隊のアンジェロ・ザウパーである。

しかし、このローゼン・ズールを駆るのはアンジェロではなかった。

「この艦からはなれろ。」

ザンスパインのビームライフルを構える。

「ザンスパインか…」

次の瞬間、メインモニターがブラックアウトした。

「な…!?」

サブモニターに機体各部の損傷報告が映し出される。

それは、頭、左脚、右腕、右脚、左脚、と、故意に急所を外していると思われるものだった。

「この程度か…期待した俺がバカだったな。」

ザンスパインを襲ったのは、腕部に内臓された3連装メガ粒子砲だった。

簡易サイコミュ兵器であるインコムとして腕部を射出し、背面射撃したのである。

目標を見ることなく正確に敵に命中させる、しかも急所を外している。

これは見ていながらでも至難の技である。

レイヴが出撃してすぐに出撃したゼル隊長駆るフェニックスも敵を確認した。

「まさか…レイヴが…!?」

目を疑った。

自身より長けた腕前の男が、出撃の僅かなタイムラグで無残に惨敗しているのだ。

絶望的だった。

「フェニックスガンダム…楽しめるか…否…」

フェニックスを確認するや否や、恐るべきスピードで間合いを詰めた。

射出していない方の腕を突き出し、その巨大なクローで機体胸部を突き刺す。

それはジャブローでシャアが見せたシャア専用ズゴックのそれを思わせた。

クローはフェニックスを貫いたが、これも急所を外していた。

内部構造を完璧に把握している。

「コイツ…何者だッ…!?」

その場にタイタニアが到着した。

状況は既に把握している。

「サイコジャマー。」

ローゼン・ズールの背部コンテナから花びら状のビットが6基射出された。

それがタイタニアを、八面体のサイコフィールドを形成し、閉じ込めた。

「ファンネル封じですわね…ッ」

タイタニアの強みであるファンネルが封じられた。

と、そこに通信が入った。

ローゼン・ズールからである。

「タイタニアとは、珍しいのに乗っているな。貴様、名前は。」

(わたくし)の名前はシャリオ・キューナ。貴方は?」

フルードはその名前に心当たりがあるらしい。

「キューナ…なるほど、変わり者にも納得できるな。」

シャリオの質問に答える気はないらしい。

「私の質問にッ……!?」

シャリオが言い終わる前に両腕両足、頭部が破壊された。

「弟に似て雑魚だな。」

通信は切れている。

ネルトナは恐怖していた。

負けると分かっていた。

ネルトナは予感や空気の変化を敏感に感じ取る。

手が震える。

全く動けなかった。

「恐怖か…正しい感情だ。」

フルードはベルフェゴールを一瞥してキャリーベースに両腕を向けた。

「さぁぁせるかァアァアァァ!!!」

青い軌跡がベルフェゴールの横を駆け抜ける。

スピードを落さずそのまま突進した。

「ぐッ…!」

フルードが反射的に反撃した。

クローで殴るがアクエリアスが左腕で受け止める。

「何…コイツ、やるな。」

アクエリアスがローゼン・ズールを押し返し、右肩のドーパーガンを構える。

アーミーはローゼン・ズールのメインカメラを狙って、トリガーを引いた。

フルードはものすごい反応速度でそれを回避し、両腕のインコムを射出しつつ接近してきた。

インコムをアクエリアスの背後に回りこませ、シールドを構えながら突進した。

アクエリアスはそれを真っ向から受け止めた。

が、インコム内臓3連装メガ粒子砲が背部を掠める。

一旦間合いを取り、体勢を立て直す。

本格的な射撃戦になるとローゼン・ズールが武装の豊富さで圧倒する。

接近戦に持ち込めば、勝機はある。

ローゼン・ズールの格闘武装はアームのクローのみ。

アクエリアスもまた、シールドに連装されたヒートロッドのみである。

互いの読み合いが続いた。

そして、先に動いたのはアーミーだった。

左手のヒートロッドを勢いよく突き出し、ローゼン・ズールの胸部に突き刺す。

それを一気に引き寄せたかと思うと、慣性が残ったまま円運動し、その勢いで装甲を切り裂きながらヒートロッドを引き抜く。

フルード相手に十分なダメージだった。

フルードは感激していた。

「コイツ…強い!!」

狂喜していた。

「ようやく見つけた、俺を本気にさせてくれるヤツを!!!」

レイヴとアーミーでは、レイヴの方が操縦技術は(まさ)っている。

しかし、パイロットとしての戦略眼や反射神経、予測困難な戦闘スタイルはアーミーの方が僅かに長けていた。

その僅かな差が、フルードを本気にさせた。

 

その後、何度かの攻防が続いた。

「お前は何者だ!」

アーミーがヒートロッドを奮いながら通信を入れた。

「貴様らと同じ、外部からの介入者だ。」

「何!?」

「貴様らが世界の規律…『RULE of the WORLD』だとしたら、俺たちは世界の影、『SHADOW of the WORLD』だ!」

「世界の影だと!?…目的は何だ!」

「ここで喋らずともいずれ知る事になるだろうから教えてやる。」

クローがアクエリアスの右肩を強く殴打する。

「貴様を含めた俺たち介入者は、現実(リアル)から介入している。」

ローゼン・ズールがアクエリアスの腹を殴る。

「……ッ!!」

衝撃で吹き飛びそうになる意識を引き止める。

「俺たちはその逆をやる。」

「何だと!?ここにある武力を持ち出す気か!」

アクエリアスがローゼン・ズールを蹴り飛ばす。

「それが人類の希望となる!」

アーミーはその意味を図りかねた。

「何故だ!現実(リアル)はようやく、平和への道を歩み出したのに!!」

21世紀後半、世界は一時的な平穏を手に入れた。

しかし、人類が宇宙開発を推し進め、人類が宇宙で生活するようになってから、世界は数々の戦争を繰り返してきた。

いわゆる黒歴史である。

戦争をしては、一時的な平和を謳歌する。

そういう時代だった。

「平和?笑わせるな。」

フルードの声は冷たく、鋭かった。

「世界平和なんて、一部の富裕層のヤツらが自分勝手に謳歌している戯言だ!!」

黒歴史最後の戦いの後、現代に至るまで、戦争行為は一切行われていない。

地球は平和安定期に入ったと言われていた。

しかし現実問題として、貧富の差による難民の数は決して少なくはなかった。

フルードが言っている通りである。

「お前のようなヤツがいるから、戯言が戯言のままなんだ!!」

ヒートロッドが空を切る。

「では何故、貴様は力を持っている!」

「G-generationの均衡を保ち、各ワールドを律するためだ!」

「俺たちはそれと同じことを現実(リアル)を対象に行使しようとしている。貴様らと同じ事をな!」

「そんな事をしたら、このG-generationが造られた意義がない!存在する意味も!」

ローゼン・ズールが突進する。

「この世界、G-generationは、地球が戦いの歴史を繰り返そうとしたとき、人々に戦争の卑劣さや悲しさ、辛さを思い出させるために造られたんだ!」

「今がその時だ!」

「違う!まだ可能性が残っている!!」

「フッ…貴様には……!」

一瞬の隙を突いてローゼン・ズールがアクエリアスを殴り飛ばした。

「分かるまい!!」

ローゼン・ズールのその巨大なクローでアクエリアスの頭部を鷲掴みした。

「しまった!」

モニターに映し出された3連メガ粒子砲の銃口がエネルギー充填に伴い、緑色に発光し始めた。

光は徐々に強くなっていく。

「………」

90%充填完了したところで、フルードは充填を中止し、ローゼン・ズールをアクエリアスから離れさせた。

アーミー反撃しようとしなかった。

「何故撃たない。」

「お前は俺を本気にさせてくれた。その礼だ。」

屈辱だった。

アーミーは負けたのだ。

にもかかわらず、トドメを刺されずに生かされた。

フルードから映像通信が入った。

繋げるとメインモニターに肩まで伸びた銀髪に色白の肌、深紅の瞳をした少年が映し出された。

声とのギャップに少し驚いたが、表情には出さなかった。

「貴様、名前は?」

シャリオに名前を聞いたときとは違い、僅かだが感情がこもっていた。

「アーミー・ソーズマン…」

「フッ…戦いのために生まれたような名前だな。」

ローゼン・ズールが正面をこちらに向けたまま離れていく。

「俺の名はフルード・アルマだ。覚えておけ、お前は俺のライバルだ。」

フルードは通信を切り、宇宙の闇に消えていった。

アーミーは叫びたかった。

しかしアーミーは俯いたまま震えていた。

叫びたくなかった。

泣いている姿を見せたくなかったから。

 




どこかで見たような設定もありますが、そこはスルーしていただくとありがたいですw

2/16 一部機体名に誤りがあったと指摘していただいたので修正しました
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