……すみませんでした!!!
色々あったのですが、結論としては修復不可だなと。割とぐっちゃぐちゃ過ぎてどうにもならないなと。
諸々考えた末に描き直すことにしました。申し訳ございません!<(_ _)>
色々と拙く恐縮ですが、楽しんでいただけるように改めて頑張りたいと思いますので、ご感想やご評価などいただけますと幸いですノシ
青い空
逆巻く白波
そして、
「ヴォロロロロロロロロロロロロロロロ!!!!」
撒き散らされる黄色い吐瀉物。
「おえぇぇぇっ!?!?」
「クッサ!?!?」
「誰だゲロしやがったの!?」
「うぷっ、俺も吐きそうだ……」
(まさか、サルバがここまで船に弱かったなんてねえ……)
爽やかなはずの景色を地獄絵図へと塗り替えた張本人は青い顔をして、まるで灼熱のブレス吹くサラマンダーの様に胃の内容物を逆流させていた。その鼻に染みる様な饐えた臭いにどうしたものかと首を捻りながら、僕は薄いサルバの背中を撫で摩った。普段は元冒険者らしく戦闘中の激しい身のこなしもお手の物で、急峻なダンジョンの登攀や荒れた田舎道の運転なんかも特に苦にしてなかったから、完全にゆだんしていた。
「ア゛ル゛ダ~」
「はいはい。ほら、これで口を濯いで」
「お゛う゛……ア゛ル゛ダ」
「なに?」
「……た゛す゛か゛る゛」
低級のダンジョンを徘徊するゾンビの様に呻くサルバに水筒を差し出すと、軽口を叩く余裕も無いのか素直に受け取ったサルバは直ぐに水を含んでクプクプと数度頬を膨らませたのだった。
「ンベッ……」
「あ、魚……」
少し濁った水を海面に吐き出すと、ギラギラと鱗を輝かせた魚影が一斉に群がってくるのが見えた。つまり、サルバの吐瀉物を食べた魚が食卓に上る可能性があると……
(しばらく、魚は控えよ)
「あ゛〜〜〜〜くそっ!!!」
僕が小さな決心をしていると、胃袋が軽くなったおかげか幾分顔色の良くなったサルバが船の甲板にドカッと胡坐をかいて雄叫びを上げたのだった。その荒っぽい所作と高波に煽られて大きなおっぱいがダプンッ!と躍動すると、後ろの方から「うはぁ……」という溜息と生唾を呑む音が聞こえてきたのだった。
「大丈夫?」
「だったら、こんな盛大にゲロってねーっつの」
「それもそうだね」
ムスッと唇を尖らせるサルバに頷きながら“共有”を発動する。
「お……」
すると、その顔色が見る間に良くなる。同時に、僕の胸全体が内外から押し潰される様な不快感に襲われるけど、まあ、仕方ないよね。
「アルタ?」
「少し預かっとくね。流石に島に着くまでこのままじゃ辛いだろうし」
「おう……アルタ」
「んー?」
「サンキュ」
「どういたしまして」
申し訳なさそうにしながらも少しホッとした様に眉尻を落としたサルバに軽く肩を竦めて、不快感を紛らわすためにぼんやりと青い空を見上げた。
「なんだ、だらしねぇなあ!! 化物みてえなのはその右目だけか!?」
酒に焼けた濁声が船上に響いたのはその瞬間のことだった。
「あ゛あ゛っ!?」
「……」
一瞬で殺気立ったサルバと共に声のした方を向くと、この漁船に乗せてもらっていた他の一団の中から一人の男の人がニタニタと品の悪い笑みを浮かべて、サルバの身体に舐め回す様な視線を向けていたのだった。
「んだテメー!!」
「なに、B級冒険者様からのちょっとしたアドバイスさお嬢さん。この長い船旅、もっと
「タイム・イズ・マネーって言うだろ?」と妙に気取った様な科白を吐く男の人。正直、ダンジョンコートのボタンが弾け飛びそうな肥満体型で言われても、あんまり様になっている気はしないけど、まあ当人がそれでも良いか。もっとも、その間もずっとサルバのおっぱいに視線が固定されているあたり、“有意義に”の意味は推して知るべしだろう。
「失せろデブ。俺の手元が狂わねーうちにな!!」
当然、サルバの方もそれに気付いていて、不快気にそう吐き捨てる。けど、その怒気に気付いていないのか、或いは真面目に受け止めていないのか、肥満の冒険者は「おー、かっこいいじゃねーか」とどこか舐めた様に適当に両手を挙げるだけだった。
「けど、その勇気は使いどころを考えるべきだぜ?」
「あ゛あ゛!?」
「言っただろ? タイム・イズ・マネー。お荷物を捨てるなら早い方が良いって事さ。化物なら猶更な♪」
そして、相変わらず妙に気取った口調で続けられる猫撫で声。或いは、これが彼一流のナンパの手法なのかもしれないけど、
(完全に逆効果だよねえ……)
ブチッ!!!!!
果たしてその音は空耳だったのか、或いは“共有”が聞かせた深層心理だったのか。
「てめえええええええええええええええええ!!!!」
その瞬間、胎の底から沸き上がった怒号と数発の銃声が水平線中を駆け抜けたのだった。
「ぎゃあああああああああああああああああ!?!?」
一拍遅れて吹き出すどす黒い鮮血と野太い悲鳴。同時にドタンバタンと甲板をトドの様にのたうち回った肥満体型の冒険者の頭部からは吹っ飛ばされた両耳の肉片がポチャリと軽い音を立てて海の藻屑と成り果てたのだった。
「フーッ……! フーッ……!!」
「「「「「……」」」」」
左右の手に握った拳銃から硝煙を立ち昇らせて血走った双眸に殺気を迸らせるサルバに肝を潰されたのか、彼の仲間と思われる冒険者の人達は無言のまま僅かに後退りをした。その間も最初の冒険者の人は「おでっ!おでの耳が!?」と悲鳴を上げて身悶え続けてるんだけど、別に致命傷でもないんだからさっさと縫うなり焼くなりすればいいのにと思わなくもない。
「で、でべぇっ!!!」
「あ」
と、そんなことを考えていたら、その冒険者の人が身を捩って腰の物を引き抜いてきた。
(ボウガンか……)
その鈍く光る鋭利な矢が番えられた十字の銃は多少嵩張る代わりに、鼻の利かないモンスターを一方的に殺傷できるという利点を持つ一品だ。
「てい」
「ぎゃあああああああああああああああああ!?!?」
逆説的に言えば、こんな目立つところで抜いてもあんまり意味が無いって事でもあるんだけど。
肥満体の冒険者が引き金を引くより前に間合いへと跳び込んで弓弦ごと右手首を片刃剣で刺し貫くと、プツンッという音と共に弦が切れて番えた矢が甲板に転がる。
「ぎっ、あっ、ぐっ!?」
そのまま押し込んで舷墻へと叩き付けると、さっき飛び散った血の臭いに誘われたのか無数の鮫が船の下を追泳しているのが見えた。ふむ……
「どうしよっか?」
「ヒッ!?」
首を横に倒すと、頭に昇っていた血液が減ってきたのか、目の前の冒険者の人はでっぷりとした顔を蒼ざめさせた。確かに、このまま突き落としちゃってもいいはいいんだけど……
「ほー、やるじゃねーか」
考えを纏めるより先に、今度は妙に野趣に満ちた酒焼け気味の錆声が割って入ってきた。
「?」
見れば、この冒険者の人がいた一団の中から、頭全体を短く刈り込んだおじさんが不敵な笑みを浮かべて、僕達を品定めする様に鋭い視線を向けてきていたのだった。
「良い腕してんな、にーちゃんにじょーちゃん」
「あ゛ぁ゛ん!?」
いきなり“じょーちゃん”呼ばわりされて、再びマグマの様に沸騰したサルバがその眉間に銃口を向けるけど、「おー、こえーこえー」と余裕で受け流している。一見するとこっちの太った冒険者の人みたいにサルバを舐めているだけにも思えるけど、飄々とした態度の最中にも隙らしい隙が見当たらなかった。
(ふーん……)
何となく、この人の実力を察すると、サルバの方もそれに気付いたらしく、撃鉄を起こした拳銃をそのままに油断なく青色の双眸を細めたのだった。
「おいおい、やめとこーぜ? こんなところでやり合ったらお互いただじゃ済まねーし、最悪どっちもあの世逝きだ。流石にこの程度のことで命賭けんのは割りに合わねーだろ?」
「そーゆーもっともらしい台詞はてめーのツレをきっちり躾けてから言いやがれ!」
「はっ、ちげーねー」
咆哮するサルバに、けれど目の前の冒険者の人は黄色い歯を見せながら頷く。
「とはいえ、現状流れてんのはこの馬鹿の血だけだ。今はそれで勘弁してくれや」
そう言って軽く頭を下げると、短髪の冒険者の人は仲間達に肥満の冒険者を顎でしゃくる。それを合図に、立ち上がった冒険者の人達が太った冒険者の人を引っ張る。すると片刃剣を刺していた右手からジュプッと粘性の水音が上がって、目の前の冒険者の人が苦悶の声を上げる。けれど、それを気にすることもなく仲間らしき冒険者の人達が引き摺って行くと、後には長い血痕だけが残されたのだった。
「チッ……」
「最後まで隙が無かったね」
その後ろ姿を見送りながら片刃剣を鞘に戻してサルバに声を掛けると、拳銃をホルスターに納めたサルバも「だな」と頷いたのだった。
「それにしても凄いね、サルバ」
「あん?」
「これで五回目じゃん。ロハグを出てからナンパされるの」
「なんも嬉しくねーよ!」
「美人て大変だね」
「怖気が走るわ!!」
「そういえば、船でナンパって言うとちょっと縁起が「ダジャレじゃねーか!」はっはっは」
トウトウ村の件で生来の劣等感の元だった
ちなみに、それまで右眼にあった奇眼が僕の所に来たせいか、僕の顔に関してサルバの沸点が妙に低くなった気がしないでもない。
「ん?」
と、そんなことを考えていると、それまで磯の香り一色だったはずの潮風の中に、仄かな悪臭が混ざった気がした。
「……」
念のため、もう一度臭いを嗅いでみるけど、やっぱりその悪臭は姿を消さない。視界に広がるのは切れ目の無い青色の水平線だけだけど、僕の嗅覚は確かに“それ”の存在を捉えていた。
「? どうしたアルタ?」
「近いなと思ってね」
「やっぱりダンジョンなのか?」
「もしくはそれに近い何かかな」
「そうか……」
少しだけ声のトーンを落としてサルバに頷くと、サルバも小さく顎を引いた。
「人工ダンジョンね……」
「本当にあると思うか?」
「んー……」
眉を顰めるサルバに僕も少し首を捻る。脳裏を過るのはこれまでの常識とダンジョンの原理、そして先のトウトウ村での出来事……
「あってもおかしくはない……かな?」
「そうか……」
現状、ダンジョンはまだ僕達帝国人が知らないことばかりだからね。
頷いたサルバと一緒に船の舳先に目を向けると、先の揉めごと中もだんまりを決め込んでいた船主さんが舵輪を切り、先端が磁石の様に悪臭の先を指示したのだった。
◆
(甲虫?)
それがジャクー島を目にした僕達の、いや恐らくだけどさっきの冒険者の人達を含めた全乗客の感想だったと思う。
初め、水平線上に走った小さな亀裂の様だったそれは船が前進するにつれて徐々に大きくなり、ついにはその奇妙な全貌を露わにしたのだった。
まず目を引くのが島の八割方を占める扁平な巨大ドームで、その互い違いに入った継目から、全て人の手で造られたコンクリートの類であることが見て取れる。
次にその巨大ドームの前に立ち並んだ家々は恐らく島の人達の居住区で、これが先のドームと連なることで最初の感想に繋がっていた。
最後に
(で、やっぱり
そして、僕にとって何よりの特徴がまだ停泊もしていない船上にまで漂ってくる
(島に居る間、ずっとこの臭いの中かあ……)
この一点が、正直僕にとっては割と切実だった。
(たまに“預けて”いい?)
(しゃーねーなー)
(ありがと)
苦笑気味に頷いたサルバに“共有”でお礼を言っていると、徐々に減速した船の上から太いロープが埠頭へと投げ渡される。それを受け止めたのは島民と思われる数人の男の人達で、船が横付けされるのに合わせてゆっくりと濡れた荒縄を手繰っていた。
「よしっ!」
船が完全に停止し埠頭との間に小さな桟橋が架けられたのを合図に、僕達乗客は順に船を降りる。そして全員が下船したところで、出迎えてくれた島の人達の中でも特に年嵩のおじいさんが「ようこそ、ガイアエラ初の人工ダンジョンを生み出した島、ジャクーへ!!」と声高らかに謳ったのだった。近くでは声の大きさに驚いたカモメが一斉に飛び立ったけれど、お爺さんの周りにいる島の人達は特に気にしていないのか、皆一様にニコニコと白い歯を見せてきている。
(んー……)
(どうかしたのか?)
(笑顔って元々は獣が牙を剥く行為だったっけと思ってね)
(ほーん)
僕の言葉を聞いて、しげしげと埠頭に立つ島の人達の顔を眺めるサルバ。その間に、島民の一人が招待状を見せる様にと指示してくる。
「これを」
「!」
その指示に従って招待状を手渡すと、なぜか一瞬目を見開いたおじいさんが僕の顔をまじまじと見上げてきた。
「何か?」
「あ、いいえ……」
「……」
僕が首を傾げると少し慌てた様に首を横に振り、招待状を戻した封筒を差し出してくる。
「“ラビュリントス”のお披露目の前に一旦皆様を宿へと案内させていただきますので、どうぞこちらの者に付いて行ってください」
最後の一人が招待状を受け取ると、おじいさんが一歩前に出た島の人を指差す。その島の人が一礼をして歩き出したのを追い駆けて、僕達も住宅区へと足を踏み入れるのだった。
◆
「お二方の受け入れはこちらとなります」
そう言って案内されたのは、住宅区の中でも奥まった場所に建つ少し大きめの一軒家だった。
「“ラビュリントス”の披露はこの家の裏にあります入り口前の広場で行います。こちらの準備が整いましたら島の者が呼びにまいりますので、それまでどうぞお寛ぎください」
「分かりました」
一礼をして去っていく島の人の背中を見送ってから、僕とサルバは顔を見合わせる。
「じゃ、入ろっか」
「おう」
貴族の邸宅程とは言わないけど、大陸にある一般家庭と比べて大分質の良い扉を押し開くと、丁寧に手入れされた調度品が散りばめられた一室が姿を見せた。
「な、なんですかその悍ましい顔は……まさか、モンスターではないでしょうね?」
「あ゛あ゛!?!?!?」
そして向けられる妙にねっとりとした口調の甲高い悲鳴にサルバが一瞬で殺気立った。声のした方を見れば、上質な純白の絹衣装と金色に輝く豪奢な装飾品に身を包む不健康に脂ぎった赤ら顔の男の人が嫌悪感も顕わに僕の事を見ていた。
「その右目、到底人間のものではありえない……しかもその眼光、奴隷市で売られている死んだ魚の目をした奴隷でももう少し生気のある目をしている……!!」
「はあ……」
「てめっ!?」
「それに比べて、そちらのお嬢さんは実に結構な顔つきですな」
「んなっ!?」
続け様に発せられる粘っこい侮蔑の言葉に、殺気立ったサルバが腰元のリボルバーを引き抜く。けれど、その銃口が火を噴くよりも先に、糸の様に細い脂身男の目元から滲んだ好色な視線を向けられて、サルバは生理的嫌悪感を掻き立てられたのか鳥肌を立ててブルッと身震いをした。
(ホント、前髪を切ってから増えたよね。こういうの)
(言うなよ!?)
先の船上での事を思い出しながら“共有”すると、軽く絶望した様に自分の体を掻き抱くサルバ。
「カポスト様~♥」
けれど、そんな陰湿で粘着質な視線は、ふわりと上空から降ってきた鈴の鳴る様な声によって終わりを迎えたのだった。
「お部屋の支度が整いました。どうぞこちらへ♥」
「おお、そうですかそうですか!!」
続く言葉にニンマリと気色の悪い喜色を浮かべてよたよたと階段を登っていく脂身の男の人。その向かう先を追い駆けると、袖を通した白いタオル地のバスローブの合わせ目をギュッと握る、丁寧に整えられた金糸を思わせる長髪の子供が瞑目して微笑を浮かべたまま、手摺から身を乗り出していたのだった。
やがて二階に登った脂身が二重顎とロザリオを揺らしながら、金髪の子供を抱き寄せてムチュリと透き通る様な頬に唇を這わせる。
「ああ、それと先に言っておきますが」
と、そのまま部屋の中に消えるのかと思ったところで、脂身は不意に何かを思い出した様に足を止めた。
「もし、私のコレクションに加わりたいようでしたら、いつでもどうぞ。部屋の鍵は開けておきますから」
そう言ってニタリと笑った脂身の人。その腕の中では金髪の子供がなぜか嬉しそうに「もう……カポスト様ったら♥」と呟いて、ポッと白い頬を染める。
「っ! ふざ「では、私はこれで」
嫌悪感か、それとも激情にか硬直していたサルバが一拍遅れで激昂しようとしたものの、その怒号が響き渡るよりも先に部屋の扉がバタンと閉められ、後には僕達だけが取り残されたのだった。
「~~~~~~っ!!!!」
「言いたいだけ言って居なくなったね」
「マジでな!!」
キレ時を逃したまま取り残されて地団太を踏んだサルバの肩を叩くと、サルバは腹立たしそうにリボルバーから手を離した。
「んふっ! ぬふっ!! ううむ!!!」
「あっ♥ あぁん♥ やぁっ♥」
「「……」」
それと同時に家全体がギシッギシッと軋み出し、先の二人が消えたドアの奥から生々しい呻き声とソプラノの喘ぎ声が聞こえてくる。それが意味することに、サルバは少なからずショックを受けた様に両目を見開いていた。ふむ……
「まあ、可愛らしい子だったもんね。男だったけど」
「おう……おう?」
「あれ、違った? 流石にあっちの脂身の方にショックを受けてるとは思ってなかったんだけど」
「いや、そりゃそーなんだが、じゃなくて男???」
「うん、男」
「それって、あの金髪のガキの事だよな?」
「そうだよ。もしかして、気付いてなかった?」
「全然……つか、マジか?」
「マジだよ」
だって、脂身の人とは別の精液の臭いがしてたし。
「だから、てっきりそっちの方に目覚めちゃったのかと思ってたんだけど」
「言うに事欠くにも程があるぞこの野郎!!!」
ブチ切れたサルバがさっき引きそびれた分も込みで引き金を引いてきた。僕はそれをしゃがんで回避した。
「でも、ちょっと嬉しかったんじゃない?」
「何がだよ!?」
「だってほら、自分の下の世話を男の子にやらせている人が、その男の事比較してサルバを誘ってきたわけでしょ?」
「いくら男カウントされてても、そーいうのは望んでねーよ!!」
「はっはっは」
ゾワッと怖気が走った様に顔を青くしたサルバは自分の体を搔き抱きながらブルッと身震いをしたのだった。まあ、美童だから声を掛けたんじゃなくて、美貌だから声を掛けてきた可能性はあるけれど、サルバからしたらどちらでもあんまり変わらないだろう。
「……ん?」
と、そんなことを考えていると、家に並べられた調度品の匂いと割れた窓ガラスから吹き込んでくるダンジョンの臭いの中に、そのどちらとも違う仄かに甘い香りが混ざり込んできた。香りの方に目を向けてみれば、柱の陰に隠れる様にしながらも、おずおずとこっちを伺ってくる女の子の姿があった。
「何か?」
「ぴゃっ!?」
「?」
近付いて声を掛けてみると、なぜか涙目で逃げられた。んー?
「普通にビビったんだろ。俺の眼の時点で大概アウトだけど、それ以上にそのガラス玉みてーな眼が迫ってきたら普通にこえーし」
「はっはっは。この野郎」
僕は片刃剣を振り抜いた。
サルバは跳んで回避した。
「取り敢えず、捕獲してみよっか」
「いや、言い方」
「どう言い繕おうがやることは同じでしょ」
「そりゃそーなんだけどよ」
「という訳でサルバ、威嚇射撃」
「最早言い繕うとか以前の話じゃねーか!?」
「はっはっは」
絶叫しつつも素直に引き金を引くサルバ。その弾丸は逃げる女の子を追い越し、二歩程前の床をパンッと爆ぜさせる。
「ひっ!?」
「捕まえた」
その破裂音に足を止めたところで距離を詰めて、女の子の襟首を掴み上げる。
「い、いやぁ……」
「取り敢えず、家の人はいる?」
「お、お爺ちゃんがいるけど、今は披露会の準備があるって……」
「つまり留守か。じゃあ、人が来たらどこかに案内しろとかは言われてる?」
「う、上の部屋……」
そう言って女の子が指差したのは、さっきの二人が消えていった部屋の隣にあるドアだった。
「そ。ありがと」
「ひゃい……」
お礼を言って女の子を下すと、その場にペタンと座り込んでしまう。お尻、冷たくない?
「その疑問をお前が持つのか……」
「? 何か変だった?」
「そもそも、九割方お前のせいだろ」
「んー?」
「やっぱ、今日も正常に異常だな」
「???」
なんか、よく分からない納得をされた。……まあ、いっか。
「取り敢えず部屋に行こ」
「おう」
頷いたサルバと階段を登り、相変わらず喘ぎ声と軋み音の五月蠅い隣室の前を通り過ぎて、女の子に教えてもらった部屋のドアを開ける。中には陽光の射し込む窓と
「「……」」
サルバの方を見てみると、丁度絶望した様な顔でこっちを見上げてきていた。ふむ、
「僕は床で寝るからサルバ使っていいよ」
「んなこと出来るか」
そう提案すると、なぜか少し怒った様な口調で拒否された。そしてそのまま、口を尖らせながらボフッと大きめのベッドに腰を下ろすサルバ。んー?
「僕は気にしないけど?」
「俺が気にするっつの」
そう言って、ここに座れとばかりにサルバはボフボフと自分の隣を叩く。まあ、サルバが良いなら別にいいけど。
サルバの横に座って、背負っていた荷物を床に降ろす。中には普段閉鎖で使っている道具の代わりに着替えや携帯食なんかが詰め込んである。
「よし」
船上でのことも考えて、念のため片刃剣と短剣だけチェックをする。
「サルバの方はどう?」
「こっちもオッケーだぜ」
シャリリリリッと弾倉を回して軽く銃身を検めたサルバがニッと白い歯を見せてきた。ん、ならばよし。
「すみませーん!!」
「あ、来たみたいだね」
そのタイミングで折良くドアの外から男の人の声が聞こえてきた。多分、さっきの人が言っていた案内役の人だろう。
「少し待ってくださーい」
ドア越しに返事をした瞬間、隣の部屋の軋み音のテンポがギシギシギシッ!と一気に加速する。
「じゃ、後はサルバが着替えて」
「出発だな」
頷きながら、リュックサックからいつもの縫製下着を引っ張り出すと、スポポポーンと一瞬で真っ裸になるサルバ。外から射し込む日差しに白い巨大なおっぱいがダプンッと弾んで一気にベッドとドアの間の空間を塗潰す。
「んじゃ、頼むわ」
「はいはい」
伸縮性のある生地に頭を通して準備を済ませたサルバを前から抱き締める様にして大きな胸を押し潰す。ムチムチと弾力があるせいで中々の力仕事だけど、最近慣れてきた気がしないでもない。
「っし、完了!」
僕が胸を締めたところで、股下を通した生地をお尻の後ろの留め金に掛けるサルバ。着用前と比べて明らかに二回り近くスリムになった身体を再びダンジョンコートに収めてニッと笑ったのだった。
「じゃ、行こっか」
「おう」
頷いたサルバを伴って部屋のドアを開けると、丁度
25/12/15:内容修正いたしました。
26/02/11:内容修正いたしました。