とあるフリーの科学術式   作:ジャックフロスト

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遅くなりました。

スイマセン、これからは週一くらいを目標に頑張ります。


原作開始前・とある男の後片付け

 

 「おーおー、世間知らずのお嬢様が優雅に午後のティータイムってか?いいねぇ超能力者は低能力者の苦労も知らずによぉ」

 

 「大露《おおつゆ》ひがみはそこら辺にしておけよ、さっさとあのお嬢様二人の脳みそを道路にぶちまけて俺は帰って寝たいんだよ」

 

 

 

 「そう言うなよ系理《けいり》できればあのお嬢様使って身代金交渉とかしてみたいんだけどなぁ~」

 

 

 

 第七学区にある、とある七階建ての商業ビルの屋上に二人の男がくだらない会話をしていた。

 二人共背中にはギターケースを背負っており合成皮のジャケットをそれぞれ羽織っていた。大露と呼ばれた十五、六歳の少年は目が痛くなるほどの金髪に皮のジャケット、黒い色合いのスポーツ選手が使っていそうな伸縮性に富んだスポーツインナーそして色あせたジーンズを履いていた。

 

 

 

 その横に居た系理と呼ばれた少年は、屋上の淵に腹ばいになっていて望遠鏡でこの商業ビルがある通りの向かい側にあるオープンカフェで談笑している常盤台中学校の超能力者二人をレンズ越しに観察していた。

 

 

 

 学園都市は東京西部の土地を買い取り開発を進め作られた、現在では総人口が二百三十万人にもおよびその内約八割の人口を学生が占めている。そして学園都市ではもはや周知の事実ではあるが超能力者の開発を行っている、だからこそ学園都市は科学サイドの総本山などと魔術サイドから認知されているのだが全ての学生が全員能力者になれるとは限らない。いや、正確に言えば学園都市に入学し一定のカリキュラムをこなした学生の中で無能力者《レベル0》以上の力を持つ学生は学生の人口の内約二割程度。

 この結果が意味するところはとどつまり残りの六割の学生は無能力者という事実を指し示すことになる。

 

 

 

 この街での超能力というのは学生にとって重要な存在意義《アイデンティティ》の役割も担っている、学園都市は『外』と比べたならば数十年も技術的な進歩がある。その街で暮らしてみたい、その街で能力者になりたい、あわよくば超能力者になりたい。

 そんな淡い思いを抱いてこの街へやってくる人間も少なくない、そしてそんな街で無能力者なんていう無価値の値札を首に掛けられてしまったならば人はどうなるか意志の弱い人間はどうなるか?答えはいたって簡単だ。

 

 

 人という不完全な存在はどこまでも堕ちていける、そう闇というものは案外存外柔らかいものなのだ。どこまでも底なし沼にはまったかのようにどこまでもどこまでも堕ちていける者なのだ。 

 

 

 

 「よっしゃ、系理。俺は右の短髪系、元気っ子系お嬢様を撃つからお前は左をやれ」

 

 

 

 「分かった。さっさと彼女の脳みそを第七学区の道路にぶちまけることにしよう」

 

 

 

 二人の少年は背負っていたギターケースを開くと各々銃身だけで五十センチ程ありそうな狙撃銃を取り出すと手早く組み立てそれぞれの標的に狙いをつけた、鈍く黒光りする狙撃銃はセミオート式のロシア製狙撃銃を彼らが改造したもので弾丸にも特殊な物をしようしている。大露と呼ばれた金髪少年が狙撃銃に装填した弾丸は金属製ではなく合成ゴムを使用している俗に言うゴム弾と呼ばれるものだ、普通ゴム弾は暴徒鎮圧用に警察などが使用するもので金属製の銃弾よりも威力は劣ってしまうが彼が狙っているのは電撃系の能力においては学園都市の頂点に立つ人物だ。

 

 

 「(土壇場で弾丸のルート変えるとか、勘弁だぞ超能力者)」

 

 

 大露が心の中で極めて不謹慎な願い事をしている最中、系理も弾丸を装填した。二人はこれから人間を殺そうとしている、二人は依頼主から超能力者二人の死亡を依頼され、その意味も意義も理解し依頼主からの依頼を受理した。スキルアウト――――学園都市に蔓延る脱落者達。

 

 

 

 スキルアウトとは一種の不良組織のようなものだが、学園都市には数多くのスキルアウトが居る。そのほとんど多くが自分のレベルが上がらない能力に嫌気がさした人物かもしくはそもそも能力すら持つことが出来なかった者たちで構成されている、大露と系理もそんなスキルアウトの一員だ。

 

 二人は友人ではないが超能力者を殺すという目的が一致しただけの言うなれば一時だけの仕事仲間だ。そんな二人は落下防止用のフェンスを取り外し、屋上の淵で寝転がって狙撃銃を構えた、狙撃銃に取り付けたスコープレンズが超能力者の姿を捉えた。

 

 

 二人はスコープレンズの中央部分で狙いを定めると、今から命を奪うという罪悪感など微塵も感じずに狙撃銃の引き金に指を掛け―――――

 

 

 

 「うぉ~い、三流~そういうゴルゴがやりそうなことはゴルゴに任せておいてお前等三流は……死神に挨拶でもしときにゃ」

 

 直後、二つの銃弾が二人の脳を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『終わったか、夜霧?』

 

 「楽勝だな、つーか楽勝過ぎてあくびが出てくるぜ……つーかさぁ、確か俺はアレイスターに直接会って暗部堕ちしたわけじゃん。なのに、なんなんだよこの現実~面白そうな仕事はやらせてくれねぇーし、たま~に仕事させてくれるかと思ったらこーゆー雑魚の始末だろ?もっと面白いことやらせてくれよ。これじゃあマゾ修道女の元を飛び出してきた意味ねーじゃん」

 

『文に換算するなら、二行以上の説明ありがとう。さっさと撤収しろ、『後片付け』は下部組織の仕事だ』

 

 「う~い、了解」

 

 

 『仕事仲間』である土御門元春からの通話に軽い調子で対応しながら『仕事』を終えた夜霧アズマは、使用済みの拳銃二丁を解体していた。今から丁度一ヶ月前、学園都市へやって来た夜霧は有無を言わさず空港で身柄を確保された。夜霧は『魔術』サイドの人間だ、薄々こうなる結末を予想していただが同時に学園都市の上層部がすぐには自分を殺さないだろうとも予想していた。 

 結果、その予想は的中したが一つだけ予想外の展開があった。それは、学園統括理事長『アレイスター・クロウリー』に雇われたことだ。

 

 

 

 『回収地点に車両を回す、こちらも仕事が終わったところだ。合流しよう』

 

 

 「あいよ、了解。拳銃を処理してからそっちに向かうから、若干遅れる」

 

 

 『三分以内に来い。そうでないなら、自力で帰れ。そうなると次の仕事は単独だ、後処理も自分でやれ』

 

 

 

 おーおー、怖いね、夜霧は笑顔のまま電話の相手との会話を楽しんでいた。鎖骨と首で携帯電話を挟みながらポケットから取り出した小型のウイスキーボトルの蓋を開けると夜霧はその中身を解体した拳銃二丁へと振りかけた、隅々まで液体がいきわたっていることを確認するとウイスキーボトルを取り出した方とは逆のポケットからオイルライターを取り出して手早く着火すると拳銃の山にそれを投げつけた。

 

 ボッ!!爆発的な炎が発生し銃の部品を燃やし尽くしていく。きちんと着火したことを確認した夜霧は意気揚々と屋上から一階まで続く非常階段へと歩いていく、

 

 

 『おい、何か爆発音が聞こえたぞ。……何をしている?』

 

 電話越しに土御門の疑うような声が聞こえてくるが夜霧は大して慌てずに鎖骨と首で抑えていた携帯電話を片手で持つと、

 

 「うん?……ああ、『後処理』いつもって訳じゃないけどウイスキーボトルにシンナー入れてるんだよ。そんで拳銃使ったらシンナーをぶっかけて燃やす、やっぱり拳銃の処理方法の一番は焼却だろ」

 

 『後始末は下部組織の連中に任せればいい、そう言ったハズだが』

 

 「俺の仕事に銃は必須な訳よ、魔術サイドなアンタだから話すが俺の術式には銃が必要になるんだよ。つまり、銃から俺の個人情報≪術式≫が漏れる可能性はゼロにしておきたい。もし、下部組織の人間に処理を任せて術式が漏れ出したら―――俺はきっと自殺するな」

 

 

 そこまで話し終えると夜霧は古びた商業ビルの一階へとたどり着いていた。そう、魔術サイドの人間である夜霧は科学サイドの長であるアレイスターに雇われた。本当のプランならば学園都市に蔓延っている犯罪組織やスキルアウトに接触を図り徐々に行動範囲を広げていく計画だった、その為に学園都市内部に居る生徒の親族の戸籍を買い取り非常事態用に組み込んだ術式もあったのだが計画は水の泡になった。勿論、良い方でだ。

 

 そして、何とも気が利いたことに魔術サイドの夜霧に合わせてなのか監視役に同じく魔術サイドである(一応夜霧はそう思っている)人間がやって来た―――それが土御門元春だ。

 フリーランスで世界中を渡り歩いてきた夜霧の耳にも土御門のことは入ってきた、陰陽道のエキスパートであり特に風水に長けているそしてこれは学園都市に入ってきてから分かったことだが―――スパイのようだ。

 

 

 

 一時期、イギリス清教の年齢不詳婆≪ローラ・スチュアート≫の元で働いていた夜霧だから分かることだがこの男はスパイだ、それも多方面から依頼を受けて遂行する多角スパイ。フリーランスでは入れないような懐深い場所から情報を抜き取りそれを雇い主に流している、一歩間違えたら死の世界。そんな場所に立っている男だ。

 なぜ、土御門が夜霧の監視役を引き受けているかというと理由は三つある。

 

 まず、一つ目は土御門がアレイスターから仕事を依頼されているからだ。つまり比較的親しい位置に二人は立っている、言い方を変えるなら土御門は数少ないアレイスター直属の部下なのだ。

 二つ目は土御門が魔術サイドの人間だからだ、夜霧はついこの前学園都市に入ったばかりの新米だ。それゆえに学園都市の生活スタイルや基本的な行動……この場合は買い物などのやり方が分かっていないことが多い、だから魔術サイド出身の土御門が色々と世話を焼いたほうが覚えがいいだろうとアレイスターが判断したからだ。

 もちろん、覚えさせたのはそれだけではない。現在、学園都市が直面している様々な問題、表や裏を問わずそう言ったことも夜霧は土御門から教えられた。

 

 

 

 三つ目だが、アレイスターにとってはこれが一番重要だった……それは―――

 

 

 

 

 「遅かったな、あと三十秒遅れていたら出発するところだったぞ」

 

 

 

 「あ~、ゴメンゴメン。個人情報、抹消するのに遅くなった。……それで、次は何をするんだ?」

 

 

 

 

 「ああ、次の仕事は…………第六学区へ向かうぞ」

 

 

 

 「へ?第六学区って確かアミューズメントパークとかがある場所だろ、そんなところで何すんだよ」

 

 

 

 

 「とあるフリーの魔術師達が第六学区で大規模な作戦を起こそうとしているようだ、それを止めに行く」

 

  

 

 「……ふむ。場所は?」

 

 

 

 

 

 「第六学区―――ディストル・パークだ」

 

 

 

 

 ―――土御門が夜霧を殺せる実力を持っている、ということだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちなみにアズマは下に妹が居るのは分からない。
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