アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件   作:紅乃 晴@小説アカ

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目が覚めたらセーバーを振り回すパダワンだった件

 

ログ・ドゥーラン。

 

それが、スターウォーズの世界に飛ばされた自分の名前だった。過去の記憶を取り戻したのか、はたまた名も知らぬジェダイ見習いに憑依したのかは定かではないが、ひとつだけ確かなことがある。

 

俺、ライトセーバーを持って、フォースを感じている!!

 

その感動だけが全てを上回った。自分がこの世界に飛ばされた意味も、理由も、訳も知らないままだったが、老齢のジェダイからライトセーバーの型と、伝統的な目隠しをして低出力のビームを弾く訓練の日々に自分でも驚くほど、のめり込んでいく。

 

ジェダイという古代から続く銀河最強の禁欲集団の中で、途中で記憶と性格が激変したというのに、ログ・ドゥーランは、ジェダイとしての才覚を発現することになった。

 

ジェダイ寺院の中、同年代のパダワンの中で最も真摯にフォースと向き合い、ライトセーバーを振るい、知と技を探究し、ライトサイドの道を行く彼の姿は、停滞気味だったジェダイ・オーダーの中でも新たな息吹として注目を集めていった。

 

そんなある日のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

狂ったようにフォースを感じるため瞑想部屋に篭って出ては、ライトセーバーを存分に振り回し、たまにジェダイに連れられて鬼畜と言えるミッションをこなして、ライトセーバーを振り回して、賊を排除する手伝いやコルサントの見回りをして、ライトセーバーを振り回して、部屋に帰って紅茶と醤油のような茶色いジャムをかけたパンを食らってベッドに沈む日々を送っていた。

 

そんな自分が、ある日突然ジェダイ・オーダーの顔ぶれの前に呼び出された。

 

マスターヨーダや、マスタークワイ=ガン、マスタープロ・クーンなどなどなど…錚々たる顔ぶれがフィクションではなく現実に自分の前にいる。

 

この世界にきたばかりの頃なら、感動のあまり泣き叫んで、パルパティーンがシスの暗黒卿です!!って叫んで気絶する自信があったが、今の自分は腐ってもジェダイとしての訓練を受けてきた身だ。

 

感覚的にマスタークラスのフォースを感じ取ってしまい、感動よりも重くのしかかるプレッシャーや息苦しさを感じてしまうほどで、別の意味で緊張の極地にたどり着こうとしていた。着込んできたパダワンの正装に、変な汗がどんどん広がって行く。

 

 

「君を私の弟子としよう、ログ」

 

 

一体何をされるのだろうかとビクビクしていたログに、目の前にいた褐色の肌の男性、メイス・ウィンドゥが単刀直入にそう言葉をかけた。

 

マスターウィンドゥがそう告げた瞬間、コルサントの幻想的な近未来景色が暗幕に覆われる。呆然とするログの周りで、席から立ち上がったマスターたちがライトセーバーを起動させた。

 

それはナイトへの昇格儀式だと、終わってからマスターウィンドゥから告げられた。

 

グランド・マスターが取り仕切って行われる儀式で、11人のジェダイ・マスターたちが暗いホールの中央部で、各自のライトセイバーを起動し、それらを床に傾ける。

 

そして、ナイト昇格の儀式を主催するグランド・マスターであるマスターヨーダが式文を朗読し始めた。

 

 

『我らはみな、ジェダイだ。フォースは我らを通じて語りかける。フォースは我らの行動を通じ、自らの存在と真実を宣言する。この日、我らはフォースの宣言を知るために…ここに集う』

 

 

三つ編み──パダワン・ブレードを切断された。割と気に入っていたのにと内心思いながら、年老いた見た目をするヨーダが向けた視線と、その重圧的な空気に息を呑む。

 

 

『前へ出よ、パダワン』

 

 

英才的なパダワンの修行で培われた挙動で、ログは踏み出してマスターの前へ立った。

 

 

『評議会の権限、そしてフォースの意思により、そなたは共和国のジェダイ・ナイトとなった』

 

 

フォースが語りかけてくる。

 

少し前に試練だと言われて、自作したライトセーバーを手に持てと多くのジェダイマスターが語りかけてきているような気がした。

 

 

『ライトセーバーを持て、ジェダイ・ナイト・ドゥーラン。フォースが共にあらんことを』

 

 

ログはライトセーバーを起動し、評議会のメンバーへ敬礼し、儀式が終了したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の才能は恐ろしいモノだった。

 

マスターウィンドゥは、弟子として最年少のナイトへと昇格したログ・ドゥーランの実力に称賛を送り、そして同時に彼の在り方を危惧していた。

 

ヨーダと二人きりになった部屋の中で、師として伝えるべきことに、ウィンドゥは初めて迷いを覚えていた。

 

彼は多くのことを学ぶ。そしてそれを余すことなく吸収して行くのだ。ウィンドゥが培ってきたジェダイとしての知識、フォースへの新たな接触、そしてライトセーバーの技術。

 

ジェダイ・オーダーにおける最高の剣士の1人であるウィンドゥから授かる技術を日を増すごとに研鑽し、鍛錬し、機械のように正確無比に繰り返す彼の動き。

 

ライトセーバー戦における近代的な7番目のフォーム、ヴァーパッドを考案したウィンドゥですら、その芸術的とも言える剣戟に魅了されるほどだった。

 

そして、同時に危うさを感じるのも事実だ。彼のフォースは直線的すぎる。好奇心と探究心を求めるがままに突き進む弟子の在り方は、ひとつ道を踏み外せば、ダークサイド…暗黒面に繋がる危険性を持っている。

 

彼は多くのことを学び、マスターたちからも信頼され始めている存在だ。

 

故に、ウィンドゥは弟子へ試練を与えることにした。

 

ミッド・リムとアウター・リムのほぼ境界上に位置する惑星ナブー。

 

牧歌的情緒に溢れた美しい惑星であるそこへ、近年通商連合が制定された法を無視した包囲網を張り巡らせたのだ。

 

平和的交渉を求めるナブーのアミダラ女王の意向に添い、特使としてジェダイマスターであるクワイ=ガン・ジンと、その弟子であるオビ=ワン・ケノービが送り込まれることが議会で決定された。

 

通商連合のヌート・ガンレイ総督はこの訪問に歓迎の意を示すものの、ウィンドゥにはどうにも嫌な感覚が付きまとっている。

 

オビ=ワンよりも遥かに若年ではあるが、実力は申し分ない。彼らに自分の弟子を同行させることを、ウィンドゥは壮麗な声でマスターヨーダに伝えるのだった。

 

 

 

 

 


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