アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件   作:紅乃 晴@小説アカ

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ファントムメナス
フォースとの戯れがジェダイの娯楽ってマジ?


やべぇ、やっちまった。

 

通商連合のハンガーに飛び降りた俺は、自分の失態に悪態を吐きたくなったが、寸でのところで堪えた。まだだ、まだ狼狽える時ではない。ジェダイは狼狽しないのだ。

 

暇があればフォースを感じるためにホイホイ瞑想をしてしまうため、マスタークワイ=ガンから「君はここで船の守りを頼む」と伝えられた時は、ヒャッホウ!これは僥倖だ!!と、瞑想に入ってしまったのが仇となった。

 

フォースの揺らめきを感じて、船が爆☆殺される前に、ライトセーバーでブチ壊した壁から逃げ出すことに成功した。

 

ひぇ危ねぇ。

 

そう言えば、この交渉が「ファントムメナス」の序盤であったことをすっかり忘れていた。危うくレーザーの閃光と共に、フォースと一体になってクワイ=ガンが来るのを待つ身となる所だった。

 

この世界に飛ばされてからというもの、勢いとノリと気合でフォースを習得し、何かが狂ったのかマスターウィンドゥの弟子となった為、死に物狂いでライトセーバーの各種型や、師が開発した型であるヴァーパッドの習得に打ち込んでいた。

 

そのため全く以って原作のことに考えを割く余裕がなく、瞑想と訓練と瞑想と訓練とライトセーバーを振り回してはフォースと戯れてウィンドゥにしごかれると言う地獄の日々を過ごしてきたのだ。もうこの世界に来てから何年経っているのかすらも分からなくなっている。

 

というかジェダイって禁欲スギィ!!娯楽の娯の字もないほど、楽しみがない!!瞑想に走っていたのはフォースと戯れるのが一種の娯楽と感じるようになっていたのかもしれない。はっはっはっ、さてはイカれてやがるな?そりゃあ、離反者やジェダイを辞める奴も出てくる訳だ。

 

久々にジェダイの試練以外で死にかけたことで、死んでいた感性が蘇ってきたような気がする。顔をあげれば、さきほどまで自分が乗っていた船が轟々と燃え盛っていた。

 

キャプテンと副長は残念なことになったが、憂いている暇はない。とにかく今はこの危機的状況をフォースの力で脱して、マスタークワイ=ガンや、オビ=ワンと合流するのが先決……。

 

《オイ、誰ダ貴様。侵入者カ?》

 

ふと、後ろを見るとドロイドの軍勢が。黄色の塗装を施されたリーダー格が、ブラスターをこちらに向けて力が抜けそうな音声の言葉を投げてくる。

 

オビ=ワンが言ってた嫌な予感はこれかよ(全ギレ)

 

交渉ができないドロイドの軍勢にため息を吐きながら、俺は腰に携えていたライトセーバーをフォースの力で手に手繰り寄せて、青い光を迸らせた。

 

《ジェダイダ!!》

 

青い閃光が振りかざされる先頭に立っていたリーダー型のドロイドにとって、それが最後のセリフとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

毒ガスで満たされた部屋から飛び出したクワイ=ガンとオビ=ワンは、交渉が一方的に決裂した通商連合の船の中を、フォースと一体となって駆け抜けていく。

 

おそらく乗ってきた船は撃破されただろう。通された部屋の中で感じたフォースの揺らめきから、それは二人とも理解できていた。共に派遣されたジェダイナイトであるドゥーランの消息も不明となったが、今は司令室を押さえることが重要だった。

 

ここは通商連合の旗艦。相手が強硬手段に出た以上、封鎖されたナブーが通商連合に制圧されるのも時間の問題だ。

 

ならば、手早く敵の首領を押さえるのがジェダイの特使としての役目だとクワイ=ガンは判断したのだ。

 

硬く閉ざされたブラストドアにライトセーバーを突き立て、扉を溶かしてゆく。フォースの力によって熱さは感じなかったが、この分厚さは骨が折れるぞ…。

 

「マスター!新手です!」

 

弟子であるオビ=ワンの言葉で、クワイ=ガンは打ち込んでいた作業を一旦やめてライトセーバーを構える。通路の奥から転がってきたのは、厄介な相手だった。

 

「デストロイヤードロイドだ!」

 

球体から変形してタレットのような形となったドロイドは、防衛のためのシールドを展開……する前に、オビ=ワンたちから見て通路の反対側から投擲されたライトセーバーによって胴と下半身が両断される。

 

「無事だったか、ドゥーラン」

 

残骸と化したデストロイヤードロイドの真上を宙返りを打って飛び込んできたのは、オビ=ワンより年下でありながら、ジェダイナイトとなったログ・ドゥーランだった。

 

傷ひとつないジェダイのローブを翻しながら、呼吸すら乱さずにログはクワイ=ガンとオビ=ワンへ一礼する。

 

「敵は船を…すいません。守りを任されたというのに」

 

仕方がないと、クワイ=ガンは気落ちするログの肩を叩く。

 

クワイ=ガンから見て、彼は実直なジェダイであった。そこはマスターウィンドゥとよく似ている。だが、決定的に違うのは、彼は未来を見るのではなく、明日や自身のすぐ先を見据えて生きているジェダイということだった。

 

未来を危惧するばかりではなく、今を見据える大切さを思うクワイ=ガンにとって、彼の存在は大きく、凝り固まったジェダイに新たな息吹を感じさせるモノだった。

 

反対に、オビ=ワンはログのことが得意ではなかった。

 

さきほどのライトセーバーの投擲も、ジェダイの型には存在しないものだ。自身の写し身であるライトセーバーを乱雑に扱う行いや、重要なことやすぐに動けることを判断し行動する力を、オビ=ワンはまだ理解していない。

 

「さて、また新手が来るぞ」

 

そう言ってクワイ=ガンは通路の奥へ意識を向ける。さっきは二体だったドロイドが、倍以上の数になってこちらにきているのがわかった。

 

「マスターの言った通りですね。交渉は長引きそうにありません」

 

そう笑みを浮かべていうオビ=ワンに、クワイ=ガンは小さく笑うと、二人を連れて走り出した。

 

こうなった以上、ナブーへの侵攻は止められない。とにかく今は、なんとかしてこの船から脱出することが重要だ。

 

そう思ってクワイ=ガンが輸送船へ繋がるダクトを調べていると、ハンガーへログが堂々と入っていく。慌ててオビ=ワンとライトセーバーを構えて後に続くと、そこには切り裂かれたドロイドの残骸の跡が散らばっていた。

 

「さ、輸送船のドックはこっちですよ」

 

何食わぬ顔でそういうログに、クワイ=ガンとオビ=ワンは顔を見合わせてから、ライトセーバーを仕舞ってログの後へ続くのだった。

 

 

 

 


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