アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件   作:紅乃 晴@小説アカ

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ジェダイは人の心がわからない

 

グンガンの協力のもと、ナブー首都へ到着したオビ=ワンは、師であるクワイ=ガンや、共に同行するログと共にアミダラ女王を救出。

 

格納庫のドロイドを蹴散らし、王族専用シャトルで何とかナブーの包囲網を突破することができた。

 

しかし、包囲等を突破する際にシャトルのハイパードライブが故障。コルサントへ辿り着くためには船の修理が必要となってしまった。

 

アウターリムにある惑星タトゥイーン。

 

修理部品を探すために降り立った船の中で、オビ=ワンは、クワイ=ガンと共に行かなかった事と、自分の代わりにログの同行を認めてしまった事を激しく後悔していた。

 

辺境の星であるタトゥイーンで、まともな手段でハイパードライブの修理品を手に入れることは難しいと予感していたが…よもや危険極まりないポッドレースの賭け…それも年端もいかない子供に自分たちの命運を賭けることになるとは。

 

賭け品としてナブーの船を賭けたと事後報告してきたクワイ=ガンの言葉を聞いた時は、思わず卒倒しそうになった。何故、そんな無謀な行為をしたのか…そもそも、ログが止めていればこんな事には―――いや、彼なら嬉々として師の提案に乗るだろう。

 

そんな場面を容易く想像できるため、オビ=ワンは思わず頭を抱えてしまった。

 

そもそも、ログとクワイ=ガンの組み合わせが不味い。オビ=ワンは顔を手で覆いながらそう思った。

 

マスターウィンドゥの弟子であるログ・ドゥーラン。近年最年少のジェダイナイトであり、品行方正とマスター陣営からは高い評価を受けているが、パダワン時代から彼を知っているオビ=ワンにとって、ログという男はあまりにも「特殊」だったのだ。

 

フォースへの感覚は自分より上だとはわかっているが、考え方や行動が直線的なのだ。ライトセーバーの稽古などでも、その感覚は如実に現れている。

 

型でも守りを重視するオビ=ワンと、攻めと虚像を織り成し相手のリズムを崩して一気に削り取るログのライトセーバーの型は、相性は最悪だった。そこにマスターウィンドゥが伝えたヴァーパッドが加わり、攻めの勢いは目に見えて手強くなっている。

 

そんな彼がジェダイの掟を息を吐くように破るマスターと手を組んだらどうなるか…結果は自分たちの命運を子供に託すという事になったが。

 

砂嵐が止まないタトゥイーンの景色を眺めながら、オビ=ワンは荒れた気分を落ち着けようとフォースを感じ取る。憎らしいほどにフォースはひどく穏やかで、揺らめいているのは自分だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

アナキン・スカイウォーカーってこの時点でやばいわ。

 

アナキンの母であるシミ・スカイウォーカーが用意してくれた豆のスープを飲みながら、クワイ=ガンと仲良さげに会話をするアナキンを見つめる。心は冷静。思考は沈着。しかしながらアナキンが無意識に纒うフォースの感覚が、自分の中にある何かを激しく刺激するのだ。

 

彼と会話をするマスタークワイ=ガンも同じ感覚を持っているのだろうか―――いや確実に感じ取っているはずだ。でないと、アナキンのポッドレースに命運をかけるという手段を取るはずがない。

 

マスタークワイ=ガンは愚か者ではなく、自分が出会ったマスターの中でも突出した賢者だ。彼もアナキンの揺らめきを感じ取っているなら、この決断は正しい方へ導いてくれるだろう。

 

俺のテーブルにあるカエルもどきの丸焼きを横取りしようとしたジャージャーの舌を掴み上げて睨むと、彼は居心地悪そうに舌を引っ込める。残念ながら、俺はマスタークワイ=ガンより寛大ではない。

 

「食事の方、ありがとうございます。スカイウォーカーさん」

 

クワイ=ガンがアナキンの血液採取をしている頃、食器を片付けるアナキンの母に、俺は一礼して礼を述べた。

 

「構いません。困った時はお互い様ですから」

 

そう言って微笑むシミ。彼女らの生活も裕福では無いだろうに。それでも健気に余所者である自分たちを持てなしてくれる彼女に、俺は長らく麻痺していた人としての心を刺激してもらえたような気がした。

 

ジェダイとは、禁欲的な存在だ。

 

家族との絆や愛に縛られず、フォースの導きの下、バランスをもたらす〝器〟で在らなければならない。故にジェダイになる素質を持つものは、幼い頃から親や兄弟から離され、一人の個として訓練に身を投じ、欲を滅していく。

 

確かにそれは尊く、素晴らしい存在なのかもしれない。完全なる器として存在できるならば…。

 

しかし、人や、生き物が生きていく上で、生命体というものはそこまで高貴な存在にはなれはしないのだ。

 

先ほどまで飲んでいた豆のスープ。

 

人は何かを食さねば生きていかれない。そこには倫理や価値観、宗教的な概念も混在する複雑怪奇なものだ。

 

何かを食べることだけでもしがらみがあるというのに、そんな不安定な存在が器になりきるなど、土台無理な話なのだ。限りなく近づくことはできるだろう。だが、その結果に待つのは繁栄と破滅のサイクルでしか無い。

 

光と闇。

 

世界というものは、そんな二分できるほど明瞭なものではない。故にバランスを保つ必要があるのだ。

 

その大切さを、俺はこの旅の中で取り戻しつつあるように思えた。微笑みをくれたシミへ、俺はジェダイローブから一つの〝お守り〟を取り出して彼女へ渡した。

 

「ジェダイに伝わるフォースの加護を受けたお守りです。〝かならず〟いつも身につけていてください。フォースが貴女や家族を守ってくれます」

 

もちろん、嘘だ。そんな便利なものを、ジェダイは持ち合わせていない。

 

ナブーのシャトルの中で、ジェダイのホロスコープの予備品をバラして作り上げた代物だが、効果は万全だ。こちら側に同じ部品から作った装置へ、フォースを流し込めば起動する仕組みとなっており、所持者の状況や場所を正確に読み取ることができるのだ。

 

アナキンにとって、生涯無二の家族。

 

そして彼の心に大きな傷をもたらす事件が来る。

 

最初は、そんな未来を危惧して用意していたものが、この心豊かな女性の温かさに触れた今では、心から彼女の無事を守りたいという一人の人間がいたのだ。

 

「…ジェダイは無欲で心がないと聞いていたけれど、あなた達は変わっているのね?」

 

一瞬、何かを勘ぐるような目をしたシミはそう言ってお守りを首に提げてくれた。彼女の言葉に、俺は取り戻した自分の笑みを浮かべて答える。

 

「ええ、俺は変わり者のジェダイ、ログ・ドゥーランですから」

 

そう答えたら、シミはおかしそうに笑っているのだった。

 

 

 


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