アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件   作:紅乃 晴@小説アカ

14 / 98
クワイ=ガンの身長が190センチ超えってマジ?

 

アナキン・スカイウォーカーは不機嫌だった。

 

ポッドレースで優勝を飾り、文句なしの一等星になった。

 

出会ったジェダイから自分はジェダイになる素質があると伝えられ、共に行かないかと問われて天にも上がりそうな幸福感で満たされた。

 

母と別れる辛さはあるが、必ずジェダイとなって母のような奴隷を解放することを誓って、この星を旅立つことを決意した。

 

晴れ渡るほど気持ちは澄んでいたというのに、アナキンの感情は酷く荒んでいくようだった。

 

母との別れの時。

 

シミと楽しげに話すもう一人のジェダイ。

 

自分とは4歳しか違わないはずなのに、そのジェダイは自分をジェダイへと誘ってくれたクワイ=ガンと同じような落ち着きを持っているように思えた。

 

名はログ・ドゥーラン。ジェダイナイト。

 

実力としては、クワイ=ガンも認めるほどらしいが、アナキンはそれも気に食わなかった。

 

なにより、母が自分には見せなかった笑みを浮かべてドゥーランと話しているのが一番腹立たしかった。いつの間にか母が首から提げていた見慣れない物も、ドゥーランから贈られたお守りと言う。

 

きっと母の優しさに付け込む悪いやつに違いない!!

 

まだ9歳で甘えたがりなアナキンにとって、ドゥーランという男は母に近寄る悪い存在としか思えなかった。

 

母との挨拶を済ませた後に、振り返って見えた光景に嫌気がさしたようにアナキンは早歩きでその場を離れるように歩き出した。

 

母とドゥーランが話をしている光景を見ていたくなかったのだ。クワイ=ガンや、そんなアナキンの心情を知らないドゥーランに心配されながら、アナキンはふて腐れた様子で、修理を終えたナブーのシャトルに向かう道中を行く。

 

故に気がつかなかった。

 

シャトルを目前としたところで、背後から高速で迫る黒装束の男の姿に――。

 

 

 

 

 

 

「マスター!アナキンと共に船へ!」

 

くそったれ!!

 

思わず叫びたくなる衝動を抑え込みながら、俺は腰から抜いたライトセーバーを起動し、アナキンに気を取られていたクワイ=ガンに迫る真っ赤な凶刃を受け止めた。

 

スピーダーから器用に降りて、同時に斬撃を放ってきた黒装束の男。深くフードをかぶっているため、顔はよく見えなかったが、その禍々しい赤い光刃が彼の正体を証明していた。

 

咄嗟にクワイ=ガンも剣戟に加わろうとするが、俺はフォースで彼の向かってくる思いを留める。確かにクワイ=ガンは強いが、相手にするのは怒りと憎しみによる暗黒面の力を発揮した若者だ。ここで彼が防ぎ切れる保証はない。

 

クワイ=ガンは何かを悟ったように頷くと、困惑するアナキンを連れてナブーのシャトルへ走った。

 

「邪魔をするか…」

 

フードの奥から地獄の底のような声が響く。

 

えっ、喋るの?ここで?

 

エピソード1では驚くほど寡黙で、クローン戦争時ではこれまた驚くほどよく喋る彼を、俺は知っている。故に、ここで声をかけられたのが意外だった。

 

ウィンドゥから叩き込まれた守りの型を遵守しながら、赤い光刃を何度も受けてはそらし、跳ね返す。

 

それに苛立ったのか、相対する敵はフードの奥で黄色い眼差しをギラギラと煌めかせる。距離を取ってライトセーバーを構えるが、その気迫は原作のイメージとは全く異なっており、恐怖や痛みすら感じるほど禍々しかった。

 

「貴様が何者で、何が目的かは…この際どうでもいいが、ここを通すわけにはいかないな」

 

「身の程を知るがいい、若きジェダイよ…貴様のような小さなガキが俺に勝てるはずがない」

 

「身長のことを言うなよ〝殺すぞ〟」

 

ただでさえ成長期に伸びなかった身長を貶されて、俺は守りに徹しようとしていた意識を即座に切り替える。

 

フードの奥でニヤリと笑みを浮かべていた相手が、真顔になるのがわかったが既に手遅れだ。

 

 

 

テメェは俺を怒らせた!!

 

 

 

型を守りから攻めのヴァーパッドに切り替え、タトゥイーンの砂漠をフォースの力と共に蹴る。

 

一瞬で懐に入ったことに驚愕したのか、相手はライトセーバーを振るうが遅すぎる。一閃を躱してショルダータックルで相手の動きを崩して、ライトセーバーを突きの姿勢に構える。

 

「ま、まて…」

 

「死んで詫びろこのクソ野郎!!」

 

その一閃がフードの奥にいる相手の顔をエグろうとした瞬間、近くにクワイ=ガンが指揮して飛んできたナブーのシャトルがやってきた。シャトルの風圧で狙いが逸れ、敵のフードの一部を赤く切り裂いたことで正気を取り戻した俺は、オビ=ワンが手を伸ばすシャトルのタラップに向かって飛び上がる。

 

眼下を見れば、赤い皮膚と角を持った男――ダース・モールが呆然と俺を見上げているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

油断していたつもりはなかった。

 

飛び立っていくナブーの船を見つめながら、ダース・モールは伸びていた赤い刃を収めると同時に、額に流れた汗を感じ取っていた。

 

ついに始まるジェダイへの復讐。

 

それに先んじた急襲であったが、狙っていたマスタークラスではなく、同行していた年端もいかないジェダイに足止めされ、モール卿は苛立っていたのだ。

 

見た目に似合わない堅牢な守りで更に怒りが燃え上がり、モール卿はついに言葉を発してしまったのだ。

 

さっさと貴様を殺して、俺はマスタークラスを殺す。それによって、俺は真にシスの暗黒卿になれるのだ。

 

そう信じて、相手にならないであろうと思っていた敵へ言葉を投げた途端、守りの型をしていた敵が一気に殺気だって構えを変えたのだ。

 

それはまるで、人のものとは思えない感覚。巨大な肉食生物を前にしたような威圧感すら感じる殺気。平和と調停の象徴たるジェダイからは想像もつかない力強いフォースを感じ取って、モール卿はしばし呆然としてしまった。

 

勝負は一瞬だった。

 

苦し紛れに繰り出した攻撃は容易くいなされ、次に目にしたのは眼前に構えられたライトセーバーの切っ先であった。

 

あのタイミングで船が来なければ、きっと自分は頭部をズタズタに貫かれて、この辺境の地で死を迎えていただろう。

 

脱げたフードに手をやると、辛うじて躱せた一閃が切り裂いた傷がある。モール卿は、その傷にしばらく触れてからフードをかぶった。

 

面白い。

 

次は油断はしない。

 

勝てると言う自信を根底からへし折られたが、自身の気持ちに火をくべるには充分な衝撃であった。

 

慢心はしない。

 

次は必ず殺す。

 

モール卿は凄みに満ちた顔で笑みを作りながら、砂に埋もれたスピーダーを起こして、自らの船へと帰還するのだった。

 

 

 

 

 

 





ログ「この身長がサザエさんのタラちゃんみたいだってぇ!?」

モール卿「言ってない!!言ってない!!」

ログ「ぶるぁあああああ!!」

パルパティーン「えっ……何あいつ……知らん……こわ……」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。