アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件 作:紅乃 晴@小説アカ
「ヴァーパッドの使用を禁ずる」
コルサントに到着し、アナキンの審議が行われた後、マスターウィンドゥに呼び出された俺は、心血懸けて教え込まれた型の使用禁止令を言いつけられた。
解せぬ…とは言わない。
タトゥイーンでモールと戦った時、自分は底知れない何かに触れた気がした。150後半の身長に触れられて怒りを覚えたのは確かであったが、相手が暗黒卿であると知っていた故の事だったかもしれない。
フォースの暗黒面。
今まで繰り返してきた瞑想や、フォースの試練の中で度々垣間見てきたドス黒い怒りと憎しみを原動力にした負の側面。
マスターウィンドゥが伝授してくれたヴァーパッドは、暗黒面の淵に立って力を得る型とも言えた。ジェダイにはない攻めに特化した型は、時として暗黒面の扉を開く戸口ともなると、マスターウィンドゥは自室でそう言った。
「ログ。君の力は確かに凄まじい。だが、同時に危うさを感じる。しばらくはヴァーパッドの使用をせずに、基本の型とフォースの導きに身を委ねるのだ」
「はい、マスター」
「では、君には引き続きナブーの件を任せる。フォースが共にあらんことを」
マスターウィンドゥに一礼して、俺は彼の部屋を出る。ヴァーパッドは確かに強力であり、今の自分には扱いきれない型なのだろう。
しかし、ナブーの件に関わる以上、シスの暗黒卿と戦うことになるのは避けられない。俺の役目はアナキンやパドメを護衛することではなく、マスタークワイ=ガンや、オビ=ワンをサポートすることだ。
その中で、再びモール卿と戦うことになった時、果たして自分は暗黒面の力にあらがい、ジェダイとして立ち向かうことができるのだろうか。
「ドゥーラン」
通路を歩いていた俺を、誰かが呼び止める。振り返った先にいたのは、ジェダイマスターであるキット・フィストーだった。
頭髪のない頭部から後方に伸びた幾本もの触角と、瞳のない特徴的な大きな黒色の眼が俺を捉えている。まだ評議会入りをしていない彼は、戦士らしい出で立ちで俺に語りかけてきた。
「随分と落ち込んでいるようだな。何かあったのか?」
ジェダイの規範に則った理性的で誠実な人物である彼は、フォースの感覚から俺の悩みを感じ取ったのだろうか。にこやかな笑みを浮かべて語りかけてきてくれたマスターキットに、俺はウィンドゥから伝えられたヴァーパッド禁止令と、ナブーで待つ戦いに不安を抱いていることを正直に話した。
ジェダイって割と心のうちに溜め込む人が多いので、こう言った胸の内を吐き出せる相手は貴重だ。パダワン時代に型のひとつであるシャイ=チョーをマスターキットに教わってから、彼にはよく相談事を持ちかけるようになっていたので、彼も俺の悩みを真摯に聴いてくれた。
「君は自分のことをあまり信じていない」
話を終えて、マスターキットが放った言葉に、俺の心は跳ね上がった。
この世界に飛ばされてからというもの、確かに俺は自分自身を信じていない。
怖いのだ。ジェダイとなってから自分が変わっていく感覚が怖い。禁欲的なジェダイであろうとすればするほど、その不安は大きく俺の中で音を掻き立てていく。
故にライトセーバーの訓練に打ち込み、フォースとの絆を深めようと訓練に没頭していたのかもしれない。
「君の抱える思いは正しいだろう。だが、それが暗黒面に通ずる弱さにもなり得る」
「しかし、ジェダイではそれが試練だと教わっています」
「確かに試練ではあるが、試練とはただクリアするものでも乗り越えるだけのものでもない。その恐怖と共に歩み、自身の糧とするのが戦士として必要なこともある」
たとえば戦いで感じる恐怖。
たとえば敗北に怯える恐怖。
暗黒面に繋がる道でもあるそれを滅するのではなく、それを理解したうえで飲み込むことも大事だと、マスターキットは言った。彼が敵地でも笑みを絶やさないのは、その心得があるからこそだとも。
「君は君の信じる道を行くことだ。フォースは君を導いてくれるはずだ」
そう言って彼は俺の肩を優しくさすってくれる。
自分を信じること。
ログ・ドゥーランとして生きるのではなく、ありのままの自分を見つめて、そしてジェダイとしての行く道を見定めること。
俺は立ち上がり、マスターキットに礼を述べてから瞑想室を出た。
成すべきこと。
俺がジェダイとなったからこそ、できることを見つめる。
目を閉じてフォースの感覚を研ぎ澄ました。
揺らめきはない。
フォースは常に答えてくれる。
ありのままの自分を映し出す鏡として。
俺は目を開けて通路を歩み出した。
向き合おう。
自分自身の心と在り方に。
扉を抜けると、身支度を整えたアミダラ女王とマスタークワイ=ガンたちがいた。
俺も共に行こう。
自分の道を見極めるために。
戦いの時は刻一刻と、近づいていた。