アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件 作:紅乃 晴@小説アカ
大変励みになっております。ちなみにパルパル議長はとても楽しまれているようです。
フォースが共にあらんことを
どうも、ジェダイ・ナイトのログ・ドゥーランです。
ところで皆知ってるかな?クローンの攻撃でアリーナから脱出したジェダイたちが乗っていたのって、低空強襲トランスポートって言うんだって。
イカしたデザインだよね!まさに強襲艇みたいな形をしていて、剥き出しの兵員たちのため申し訳程度に付いてる電車の吊り革みたいな手摺り! そして辺りは通商連合率いるドロイド軍からの対空砲の嵐!
ディズニーランドでアトラクションとかであるなら是非とも乗ってみたいライド間違い無いね!HAHAHA!!
隣で飛んでいた別のトランスポートが爆★殺されたところで、いい加減に現実逃避はやめようと思う。
ジオノーシスの戦いはまさに混戦であった。
アリーナで合流したジャンゴのクローン兵たちの見事な連携と敵の虚を突いたトランスポートでの脱出はまさに神がかった作戦…と言えるわけないだろ!!
せめて護衛機くらい付けてください死んでしまいます。とは言っても、ジオノーシスの敵本拠地からの救出作戦だ。無理は言えないのは分かっている。
しかし、しかしだ。
さっきからチリチリと肌を焼くドロイドからの対空砲が怖い!怖すぎる!!十年間、フォースと会話をし続けたがために失われた人間性が取り戻されていく感覚だわ!やだ、ここってダクソの世界?ジェダイよ、今こそ人間性を取り戻せって?無理です。
隣で爆散し、チリとなっていくクローントルーパーを見て長らく失っていた…いや、初めて味わう戦争への恐怖に、俺は直面していたのかもしれない。
今になって思う。俺はまだまだ修行が足りなかった。いや、修行でどうにかなるのかも怪しいものだ。同じトランスポートに乗るアナキンやオビ=ワンは冷静そのものであり、剥き出しの兵員輸送ユニットの真横で対空砲が凄まじい衝撃で爆発しても身動ぎ一つしない。きっと彼らと自分は根本的な精神構造が異なるのだろう。今になって彼らの強さを思い知るジェダイ・ナイトです。
意地と根性で平静を装っているが、眼下に見える光景は映像で見るよりも遥かに戦争だった。
眼下にはおびただしい数のトルーパーとドロイドが戦いを繰り広げている。アリーナで自分たちを襲ってきたドロイドが可愛く見えるような光景だ。
並んで飛んでいたマスターウィンドゥたちのトランスポートは、クローントルーパーの集結地点へと着陸し、各マスタークラスのジェダイがトルーパーの小隊を引き連れて戦場へと駆け出していくのが見える。
俗に言う、クローン戦争の幕開けだった。
アナキンたちが乗るこのトランスポートは、逃げ出したドゥークー伯爵の姿を追って果てしなく続くジオノーシスの砂漠を低空で飛んでいる。
砂嵐がやってきていた。
見えなくなっていく戦場では、赤と青のブラスターの閃光が激しく交差しているのが見えた。長く続くクローン戦争が、今、目の前で始まろうとしている。
俺は今になって後悔を覚えた。もっとマシに動くことはできなかったのか。もっと言えば早々にドゥークーを仕留めていれば、こうはならなかったのじゃないか。パルパティーンを決死覚悟で暗殺するべきではなかったのか…。
多くの、多すぎる命が弄ばれ、失われていくクローン戦争。それをどうにか止めたいと思う自分がいて、どうにもならないと諦めているジェダイの自分がいる。
〝ほら、どうにもならなかっただろう?〟
心の奥底にいる真っ黒な自分が語りかけてくる。無駄な努力だと。たとえパルパティーンやドゥークーを倒せていたとしても、結果的に共和国とジェダイが滅ぶ未来は〝変えられない〟。
暗黒面を倒した先にある未来は何か?また千年にもわたる仮初の平和か?それとも…ジェダイ同士の殺し合いか。
フォースの揺らめきの中で見たヴィジョンが、俺を激しく揺さぶる。手探りで進めてきた全てが無駄だったと叩きつけられるような無力感。嵐の向こうで繰り広げられる壮絶な戦いが、それをより強く俺に突き刺していく。
俺は…俺は…。
何も変えられなかったのか…。
「気をしっかり持て、クライアント!」
そう言って、無意識にフォースの感覚を研ぎ澄ましていた俺の肩を叩いたのは、成り行きで乗り込んだジャンゴだった。
「アンタには俺との契約を果たしてもらう。こんなところで立ち止まるのは、俺やボバが許さない」
ジャンゴの言葉で、俺の中で湧き上がっていた黒い何かはスッと身を引いた。そうだ。俺はあのアリーナで死ぬはずだった彼の運命を変えた。〝運命を変えた〟のだ。これはほんの僅かな揺らめきなのかもしれない。
けれど、俺は確実に、この世界の在り方を変えたのだ。
「ああ、大丈夫だ。ジャンゴ。約束は果たす」
「そうか、なら俺は満足さ」
短い言葉を交わして、ジャンゴは中腰になって砂嵐に隠れているドロイドたちに注意を払った。
そうだとも、こんなところで…まだ始まったばかりの場所で躓いている場合ではない。まだ変えられる未来があるはずだ。
多くの血を流さない未来が。
アナキンや、パドメを…この世界で本当の友になった彼らを幸せにできる未来への道があるはずだ。
ドンっとトランスポートが揺れる。視界の横で、手摺りから手を離したパドメの身が宙へ浮いた。
「パドメ!!」
アナキンの声が聞こえる。気がつくと俺は、虚空に振るわれた彼女の手を掴んでいた。
「ドゥーラン!!」
気付いたオビ=ワンが俺に手を出すが間に合わない。俺はパドメを空中で抱き抱えると、手を伸ばすアナキン目掛けて彼女を押し出した。
〝死んでも彼女を守れ、アナキン〟
そう言って俺の体はトランスポートから放り出され、砂漠の嵐の中へと消えていく。
「ロォオオグ!!!」
誰かの声が遠くから聞こえた。