アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件 作:紅乃 晴@小説アカ
アナキン・スカイウォーカーは誠実な人物だった。
クローン戦争初期。
パドメ・アミダラと許されない関係となった彼を支えたのは、兄のように信頼する師でも、相棒ともいえるドロイドでもなく、同じジェダイである盟友、ログ・ドゥーランだった。
あの結婚の後、秘密ではあるがパドメ経由で母や母と家族になったラーズ家とも交流が始まり、今でも良好な関係を保てている。コルサントへ帰還した際も、「そういう時間が大切だぞ」と、都合が合えばジェダイの任務をログが肩代わりし、アナキンは限られたパドメとの時間で愛を育んでいった。
クローン戦争の最中でも、彼は唯一無二の戦友であり、いつしかアナキンにとっての親友となった。
アナキンが危機の時は必ずログが助けに現れ、逆の時はアナキンがログを助けにやってくる。多くの仲間やジェダイたちと共に戦場を駆け抜け、多くの出会いと別れを噛み締めて、今の場所に立っていると言えた。
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アナキンはドゥークーを圧倒した。
暗黒面の力を頼らずに、理性と自制心、そして親友と研鑽したセーバーテクニックを駆使して、自分より遥かに知識と技量に差があるはずの伯爵を凌駕したのだ。
ドゥークーも、そしてそれを見ていたパルパティーンも、アナキン自身の成長に驚きを隠せずにいた。
本来ならば、クローン戦争初期のジオノーシスで、アナキンの腕を落とす手筈だったが、それは狂わされ、アナキンは五体満足の状態でクローン戦争を駆け抜け、議長や伯爵の思惑を凌駕する存在へと進化していたのだ。
オビ=ワンをフォースプッシュで吹き飛ばしたのも束の間、暗黒面の力に頼らずにアナキンはドゥークーを追い詰め、赤い光を放つライトセーバーの柄を切り落とした。
「降参しろ、伯爵」
武器を失った伯爵へ、青いライトセーバーを突きつけながら、アナキンは視線を鋭くさせて言葉を迫る。
「よくやった、アナキン。よくやった…その男を殺せ」
アナキンは、パルパティーンへ視線を向けた。
何を言ってる?勝負は決したはずだ。
そんな視線を向けるアナキンへ、パルパティーンは彼から信頼を受ける〝議長〟の仮面を曇らせながら言葉を続ける。
「その男を生かしたままでは、この争いに終止符を打つ事はできんぞ」
伯爵が驚愕したような顔を浮かべ、力なくアナキンを見つめる。たしかに、伯爵のせいで酷い目に晒された仲間もいた。自分も、オビ=ワンも、多くの人が傷つけられた。
しかし、本当に殺していいのか?アナキンはジェダイとして思考を彷徨わせる。武器を失い、抵抗できない相手を殺すことはジェダイでは禁じられてる。それはシスの道だ。
ログも可能な限りそうしてきた。助けられる命があるなら、それが何であれ手を差し伸ばすのが彼の在り方だった。フォースで深く繋がり、相手とわかり合うことができると、ログはずっと信じている。
「…できません。議長」
ここでドゥークーを殺すことは、共に戦ってきた親友を裏切ることになる。
「では、ジェダイに処遇を任せるのか?君の親友や、君を信じていない評議会に」
その心をパルパティーンは黒い言葉で塗りつぶしていく。いまだにジェダイのマスターたちは自分やログを信用していない。どれだけ功績を挙げようが、どれだけ多くの人を助けようが、認められることはなかった。
そこに不満を抱いているのも事実だし、アナキンが評議会を信用していないことも事実だった。
アナキンのフォースが揺らめく。
どうする。
殺すべきか。
それとも生かすべきか。
信用していない評議会に渡して?
ドゥークーがこれ以上、悲しい戦いの火種を生み出さないと、どこに保証ができる?
それならば…ここで自分が引導を渡すことが―――。
「やれ、アナキン」
パルパティーンの影が揺らめいて、アナキンの背中から腕を包み込んでゆく。彼はゆっくりとライトセーバーを振りかざし…無防備なドゥークーを…。
その時、アナキンの前に何かが滑り込んできた。黄色い閃光が眼前に現れ、アナキンは咄嗟にライトセーバーを防御の姿勢に構える。
バチリッと突如として現れた黄色い閃光と、アナキンのライトセーバーが火を散らした。
「無様な物だな、スカイウォーカー」
黄色いライトセーバーを振るうのは、煙のようにこの場に現れたジェダイテンプルガードの姿をした「ノーバディ」だった。
「ノーバディ…!なぜお前がここに居る!」
「少しコイツに貸しがあってな。ここで死なれるわけにはいかないのさ」
一つ起動していたブレードから、さらにもう一つのブレードを起動し、武器をダブル=ライトセーバーへ変化させたノーバディは、アナキンを退け、さらにフォースプッシュでアナキンを引き剥がす。
振り返ると、パルパティーンが地獄の底のような瞳でノーバディを見つめていた。その射殺すような視線を肩をすくめて受け流すと、ノーバディの背後から二人のテンプルガードが宙返りを打って現れる。
恰幅の良いテンプルガードと、線が細いテンプルガードが、呆然とするドゥークーに肩を貸して部屋から出る方へと走り出す。
「待て!!」
「貴様の相手は俺だぞ、スカイウォーカー!」
青と黄色のライトセーバーを閃かせながら、一進一退の攻防を繰り広げるアナキンとノーバディ。ドゥークーが部屋から出るのを確認してから、ノーバディはフォースの力と共に高く飛び上がり、高台へと上る。
「この戦争の終わりは近いぞ、スカイウォーカー。貴様に迫る魔の手には注意を払うことだ」
忠告するように発したノーバディは、腰にぶら下げていた球体状のものを掴み、アナキンの足元へと投げる。
それは眩い閃光と、聴覚を揺らす高周波を発し、アナキンや議長の目をくらませた。
閃光が晴れた頃には、ノーバディの姿やドゥークーの気配はなく、静寂だけがその場に漂っているのだった。