アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件 作:紅乃 晴@小説アカ
尻が見える。
目が覚めたオビ=ワンの視界に入ってきたのは、弟子の尻だった。状況から見て担がれているのはわかるが、ここがどこなのか見当が付かない。
すると、真上でセーバーの斬撃音が響き、ドロイドの残骸がオビ=ワンの視界を上から下へと通過して行く。つられて下を見たら、遥か下まで見下ろせる昇降機の奈落が広がっていた。
「落ち着いて。ちょっとした問題に直面しているところです」
上からアナキンの声が聞こえる。肩越しに見る限り、アナキンといつの間にか合流しているログが壁にしがみ付いており、自分の眼下ではパルパティーン議長が必死な形相でアナキンの足にしがみ付いていた。
「やぁ、議長。私は何か見逃したか?」
「軽口を叩く余裕があるなら大丈夫そうだな、アナキン。放していいぞ」
オビ=ワンのユーモアに富んだセリフを聞いて答えたのは、上で三人分の体重を支えるログの苦悶に満ちた声だった。
グリーヴァス将軍との追いかけっこの果てに、損傷を受けたインビジブルハンドの船体が傾き始めていたのだ。
議長と気絶したオビ=ワンを背負うアナキンはこれ幸いと真横になった昇降機の中を走っていたが、ドロイドがバラスト装置で船体を元に戻した為、アナキンと議長は昇降機内で宙吊りに。
そして、グリーヴァスを追っていたログが姿勢を取り戻した船体の中を落下して、アナキンたちが掴まる昇降機の扉を打ち破ってきた為、落ちそうになった三人を捕まえていると言った状態だった。
「しっかり掴まって」
「何だあれは?」
アナキンがオビ=ワンにそういうと、彼は指をさしながら自分たちの頭上を見ている。アナキンが顔を上げると、そこには重力に沿って降下してくる昇降機がこちらに向かってきていたのだ。
「ああ、これは不味い」
懐にしまっていた通信端末を使ってアナキンは格納庫にいるはずの相棒へと声を投げた。
「R2!エレベーターを停止させろ!!」
だが返ってくるのは雑音だけ。きっとR2も船体が戻った衝撃で不味いことになっているのだろう。そうこうしている内に昇降機はどんどんアナキンたちへと迫ってきていた。
「間に合わない。飛ぶぞ!!」
えっ、とアナキンが言う前に、三人を支えていたログが縁から手を離した。迫る昇降機から逃げるように飛び降りるアナキンたちは、R2が開いた扉へ腰に備えたワイヤーを使って飛び込むことに成功する。
最後にログが飛び込んだ瞬間、頭の天辺スレスレを落下してきた昇降機が通り過ぎていった。背中にヒヤリとしたものが走りながらも、アナキンたちはすぐに立ち上がる。
議長はやや疲れた様子で肩で息をして、そっと呟いた。
「君たちの冒険はいつもこうなのかね?」
アナキンたちは互いに顔を見合わせて小さく笑って答える。
「今日はまだマシです」
「船が爆発してないからな」
そう言った瞬間、インビジブルハンドは大きな爆発に見舞われることになった。
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これは不味いことになったな。
アナキンたちと共に非常用艦橋へやってきた俺は、コンソールパネルに指を走らせて絶望的な状況に頭を抱えそうになった。
脱出ポッドは全て排出されており、エネルギーもダウンしている。舵を取る機能すらまともに動かず、ダメコンすら怪しいときた。
ギシギシと船体が軋む音がする。
振り返ると、インビジブルハンドの船体の後ろから半分が引きちぎれて、コルサントの大気圏の中で火ダルマになっているのが見えた。
「軽くなった分、操作が楽になった」
肩をすくめながら言うアナキンに呆れながらも、俺も彼の操縦に合わせるように、慣れないドロイド用のコンソールパネルを操作して行く。
バキバキと辺りから音が響き始め、R2が悲鳴のような電子音を奏で始めた。
「フラップ全開、冷却装置も全開にするぞ!」
「タイミングは任せて」
アナキンの感覚へフォースを研ぎ澄まして行く。一寸の狂いも許されない中で、コルサントの大気圏をスクラップになったインビジブルハンドが飛んで行く。
「いや、これは飛んでると言うより落ちてるな」
「羽が付いてればどこだって飛んでるさ」
違いないと、アナキンの軽口に笑いながら大気圏を抜けたインビジブルハンドは、コルサントの港へと差し迫ってゆく。
火を吹きながら飛ぶスクラップは、周囲の消火船から水を浴びせられながら滑走路へ胴体着陸し、スクラップをさらに自壊させながら何とか船体を地へと降り立たせることに成功した。
「今回は軟着陸だったな」
「機体がバラバラになってない」
オビ=ワンの言葉に頷き、アナキンの肩に手を置く。彼も満足したのか、俺の置いた手を叩いて操縦席から立ち上がるのだった。