アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件 作:紅乃 晴@小説アカ
スターウォーズ。
まだそれを娯楽として見ていた時。
通いなれた近所のコンビニに繋がる道。
見慣れたカーブミラー。
ジェダイの服とは違う、現代日本のカジュアルな服装。
そして、目の前には青いライトセーバーを二本、手に携えた黒尽くめの男が立っている。フードによって出来た影に閉ざされた顔からは、黄金色に光る眼光がこちらを睨み付けている。
腰に手を添える。そこにあるはずのない筒状の武器を手に取ると、こちらも青い光が天へと立ち上った。
独特な鉄を焼くような音と、高密度のレーザーブレードが奏でる周波音を響かせながら、俺は目の前に立つ黒い暗黒卿と相対した。
彼は何も語らずに、そこに立っている。
あの時と何も変わらない。けれど、俺は変わった。決定的なまでに変わっている。二本のライトセーバーを下げる暗黒卿は、ゆっくりと歩み出す。ジリジリと、その歩調を進めて、俺の下へと歩んでくる。
あの日から、俺は変わったはずだ。
フォースに触れ、ライトセーバーを振り回し、ジェダイとしての感覚に感動を覚えてから。
あの瞬間から、俺は変わったはずだ。
ジェダイナイトとして、ナブーで暗黒卿だったモールと戦い、彼と通じ合ったあの時から。
あの時から、俺は変わったはずだ。
アナキンと共に彼の行先を良いものへと変えるために。パドメとの愛を後押しして。クローン戦争で戦い。戦い、戦い、殺して、殺されるのを見つめて、命を奪って、奪われて、何もできないまま見ることしかできなくて、クローンは消耗品だと言わんばかりの戦いの中を駆け抜けて、駆け抜けて…。
気がつくと、暗黒卿は目の前にやってきていた。あの時見たような殺意や怒り、憎しみといった衝動はない穏やかなフォースを纏って、俺にライトセーバーを向ける。
黄金色の目をする彼はニヤリと笑ったように見えた。
――有史以来。
人類は、さまざまなエネルギーに触れ、文明は…ジェダイは…シスは…その導きによって果てのない時間の中を漂い、歩み、足跡を刻み進化を遂げてきた。
ならば…フォースが導く文明の行先は何だ?
〝アナキンは弟同然です。私にはできません〟
〝ダークサイドに歪められたのじゃ、若きスカイウォーカーはな〟
〝私には…できません〟
〝おぬしの鍛えた少年はもういない。ダース・ヴェイダーに蝕まれたのじゃ〟
お前のフォースの行く先には何が見える?
〝パドメ、アナキンはダークサイドに転向した〟
〝嘘よ…どうしてそんなことを言うの?オビ=ワン!〟
〝保安ホログラムを見たんだ…彼が映っていた…子供たちを殺していたんだ〟
〝アナキンじゃないわ!彼がそんなことするはずない!!〟
〝すべて議長が裏で仕組んだことだったんだ。この戦争も。パルパティーンが我々の探していたシス卿だったんだよ。ドゥークー伯爵が死んだ後、アナキンが彼の新しい弟子になったんだ〟
〝嘘よ…そんなの…嘘よ。信じない…信じられないわ!!〟
この暗闇に包まれたフォースに肖る、ジェダイとシス。共和国の行く先には、何が見える?
〝アナキン、私がほしいのはあなたの愛だけよ〟
〝愛では君を救えないんだよ、パドメ。僕の新しい力だけが救えるんだ〟
暗黒面は全てに通ずる。
光にも、闇にも。
『やめろ』
〝「 」を失ったように君を失いたくないんだ。僕はどんなジェダイが夢見ていたよりも強い力を手に入れた。それを君のために使うんだ。君を守るためにね〟
〝分からないのかい?もう逃げる必要なんてないんだよ〟
〝僕は共和国に平和をもたらしたんだ。「 」より強くなった。「 」を倒すことだって…君と僕とで一緒に銀河系を支配しよう…僕らの好きなようにすることができるんだ!!〟
〝あなたのしたことのせいよ!!あなたがしようとしていることも!!もうやめて!!すぐにやめて!!戻ってきて、アニー…愛しているのよ!!〟
お前は目を逸らし続けているだけだ。
この闇の先に見える光景からただ、逃げているだけだ。お前はただの傍観者だと言うことも知らずに。
『やめろ!!』
〝嘘をつけ!!〟
〝連れて来たんだな!僕を殺させるために「 」を連れて来たんだ!!〟
〝違…ぅ…アナ…キン…〟
〝「 」。ジェダイの欺瞞はお見通しだ。僕はもうダークサイドを恐れない。僕の新しい帝国に平和と自由、正義、安全をもたらしたんだ〟
〝おまえは選ばれし者だった!シスを滅ぼすはずが、それに加わるとは!フォースに均衡をもたらすはずが、闇の中に屈するとは!〟
来るべき未来を変えようとして足掻いた結果、お前はこの光景を変えることができたか?この光景を亡き者にすることができたか?
『やめろ!!やめろ!!やめろやめろやめろ!!』
〝貴様が憎い!!「 」!!殺してやる!!〟
〝アナキン。お前を愛していた!!〟
〝殺してやる!!!!〟
お前には何もできない。
未来を知りながらも何も為せない…愚かで、矮小な存在よ…。
何も変えられない。何も、何一つとして、お前は流れるフォースの行く末を変えることはできない。
〝パドメはどこです?安全にしていますか?彼女は無事なのですか?〟
〝…おそらく、そなたが怒りによって彼女を殺したのだ〟
〝私が?そんなはずはない!!…彼女は生きていた。感じたんだ!!〟
〝嘘だ!!嘘だ嘘だ嘘だ!!ああああああぁああ!!〟
これが、フォースの見せる文明の行く先だ。
『やめろおおおおおぉおおぉおお!!!!!』
気がつくと、俺は目の前にいた黒い影をライトセーバーで刺し殺していた。
足元に横たわる黒い影。
雨が降る。
剥き出しのライトセーバーに雨が当たって、水が蒸発していく音が辺りに響く。
ずぶ濡れになった中で、俺はカーブミラーを見た。
そこに映っていたのは。
あの日と同じ、黄金色の目をした
俺自身だった。