アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件   作:紅乃 晴@小説アカ

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シスの復活 2

 

 

議長に呼び出される前、評議会からアナキンとオビ=ワンがグリーヴァスと戦闘を開始したことを知らされたログは、ひとまずはアナキンの安否を気遣うパドメに、その連絡を伝えに向かっていた。

 

「パドメ。アナキンたちがグリーヴァス将軍と交戦を始めたようだ」

 

「そう…」

 

C3POがパドメの横にたたずむ中、彼女は表情を固くしたままゆったりとしたソファへ重身を下ろした。

 

アナキンの子を宿した彼女の体は、普段は豪勢な元老院議員の服によってカモフラージュされているが、ログやアナキンの前では膨らみつつあるお腹がわかるような服装で出迎えてくれる。

 

「不安かい?」

 

パドメの横へ腰掛けるログもまた、彼女がわずかに震えていることに気がついた。問いかけにパドメは小さく頷く。

 

「ええ、今の元老院も、ジェダイも…この戦争自体がとても脆い何かの上に立っているように思えてならないの」

 

この戦争で散った多くの命。傷つけられた星々。大切なものを失った人たち。フォースを学ばなくともわかる程、その悲鳴が聞こえるこの戦いは、悲惨なものだった。だが、その終わりが見えてくればくるほど、その先に更なる闇が渦巻いているようにしか、パドメには思えてならなかった。

 

この戦いそのものが、その蠢く闇に向かう過程の一つではないかと思えるほど、今の共和国やジェダイは不透明で、不明瞭なものになっていた。

 

「心配しすぎさ。グリーヴァスを捕らえられれば戦争は終わるはずだ」

 

「ええ…でも…不安なのよ」

 

「パドメ…」

 

震える彼女の肩に、安心させようとログが手を差し伸ばした。

 

「こんなときに、アナキンが居てくれたら」

 

その言葉で、ログの手はピタリと止まる。俯く彼女に察せられないように肩に向かっていた手を下ろして、彼女の手の上に優しく重ね合わせた。

 

今、彼女が求めているのは他の誰でもなくアナキンだ。ログやオビ=ワン…他のジェダイでは替えられない、ただひとりの想い人。そんな彼女の不安を少しでも和らげるために、ログはパドメに微笑む。

 

「――彼はきっと帰ってくる。君と、君のお腹の中にいる子供の父親だからね」

 

アナキンは彼女を心から愛している。

 

生まれてくる命と向き合って、彼は強くなった。故にマスターにも認められ、今は師とともに敵の将軍と伝説的な戦いを繰り広げている。

 

だからこそ。

 

ログはアナキンの替わりにはなれない。

 

「私の不安が現実になった時は、アナキンを助けてね。ログ」

 

「任せておいてくれ、君たちは俺が必ず守る」

 

パドメに誓う。

 

そしてアナキンにも、オビ=ワンにも。

 

何があっても、彼らを守る。アナキンの替わりにはなれない自分であっても、それでも為せることを為すために。

 

たとえ、彼女の瞳に自分が映っていなくても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり来たか。ドゥーラン」

 

議長のいる塔に作られた簡易型のターミナル。そこにスピーダーで乗り付けてきたログを待ち構えていたのは、マスターキット・フィストーだった。

 

「わかって…ここで待ち構えていたのか、マスターキット」

 

スピーダーから降りたログが、冷ややかな声で問いかける。彼はいつもしていた自信たっぷりな笑みを浮かべずに、硬い目つきのままログを見つめていた。

 

「ナダールでは、君には勝てないとわかっていたからな」

 

簡潔にそう言ったキットに、ログは顔を硬らせる。彼は知っている。自分がここにやってきた以上、連行のために残った元弟子が既にこの世を去っているという事実に。

 

ログはナダールから奪ったライトセーバーを腰に備わるベルトから取り出して、マスターキットに向かって投げ渡した。せめてもの遺品のつもりだったが、キットはそれを受け止めると自分のライトセーバーも取り出して光刃を出現させた。

 

「情が無いんだな」

 

「だが、ジェダイとしての矜持はあるつもりだ」

 

意味のない問答だと思い、ログは彼の隙を窺いながらターミナルで円を描くように歩む。彼の腰ベルトには、ナダールから渡されたログのライトセーバーが下げられていた。

 

「そこを退け、マスターキット」

 

冷たい、鋭い刃のような声がマスターキットに放たれる。ログはジェダイローブのフードを被ったまま、その眼光を向ける。

 

「貴方なら…わかっているはずだ。マスターウィンドゥが議長にすることの後に待ち構えている未来を」

 

血で血を洗う内乱が始まる。

 

もし、マスターウィンドゥが議長を殺した場合、元老院から見れば明らかなジェダイによるクーデターに他ならない。民意で議長として選ばれたパルパティーンと違って、ジェダイは共和国を支える仕組みから成り立つ組織でしかない。

 

役割から外れた組織の暴走は、いつの時代、どの世界でも災いを撒き散らす元凶にしかならないのだ。

 

このままでは、まだシスとジェダイの代理戦争であったクローン戦争が生温く感じるほどの戦いが幕を開けることになる。

 

「それだけは止めなければならない。だから退いてくれ」

 

ログは懇願するようにキットを見つめた。

 

「頼む、マスターキット。貴方を殺したくはない」

 

心からの願いだった。できることなら、彼は殺したくはない。思考停止に陥ったジェダイの中でも、良識的であった彼は生きなければならないはずだ。

 

それになにより、彼はログにとって友だった。

 

「ドゥーラン。私は君に伝えた。君の心を信じろ、君自身の在り方を信じろとね」

 

二本のライトセーバーを携えるマスターキットは、立ち尽くすログに向かって言葉を紡ぐ。あの日、彼を迷いから解き放った言葉を繰り返すようにマスターキットは言った。

 

「君は君の信じる道を行くことだ。フォースは君を導いてくれるはずだ、と。…そして私には私の信じる道がある。私はその道を行く」

 

二刀流戦闘法「ジャーカイ」の構えをしたマスターキットを見つめながら、ログは手にしたライトセーバーから黄色い閃光を立ち上がらせる。

 

「それが破滅に繋がる道だとしてもか」

 

苦しげに言葉を使うログに、マスターキットはいつもの自信ありげな笑みを浮かべて、こう言った。

 

「それがジェダイの起こした責任だと私は思う。故にその責を負うだけだ」

 

二人はターミナルを駆け抜け、三つの閃光がそれぞれぶつかり合う。

 

しばらくの間、剣戟を重ねる音が響き合い、夜が落ちるコルサントの中で光が瞬き、やがて音は消えた。

 

無数の光が行き交う中、ログは自分のライトセーバーを拾い上げた。

 

しばらくの間、ログはコルサントの夜景を見つめながら愛用してきた自分のライトセーバーを握りしめる。脱げたフードを深く被ってターミナルから踵を返して、議長がいるはずの塔へと足を進めた。

 

その後ろで横たわる影を残したまま、ログはもう振り返ることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

シナリオを練り直すのを許せるか?

  • 細かい描写も見たい
  • ログの心の移り変わりを見たい
  • とりあえずエンディングまで突っ走れ

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