アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件   作:紅乃 晴@小説アカ

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フォースの導くままに

 

 

 

「マスタークワイ=ガン!クローンが反乱を!」

 

ジェダイナイトであり、マスター・イーノ・コルドヴァのパダワンであるシア・ジュンダは、自身のパダワンであるトリラ・スドゥリと共に、聖堂のジェダイ・イニシエイトたちがいる部屋で、マスタークワイ=ガンと運良く合流することができた。

 

「ああ、わかっている」

 

怯えているイニシエイトたちをなだめるクワイ=ガンだが、事態は悪い方へと進むばかりだ。遠くからは誰かの苦しむような声が響き、ブラスターの音とライトセーバーの音が聞こえてくる。

 

「マスター!テンプルが制圧されるのも時間の問題です!」

 

「子供達だけでも、どうにか逃さなければ…」

 

パダワンのトリラの言葉に、ジェダイナイトであるシアも作戦を巡らせるが、決定的な打開策は見つからない。すでに出入口はクローン兵に包囲されている上、彼らは下のフロアから徐々に上へと上がってきているのだ。

 

「外にスピーダーはあるが、すでにクローン兵に包囲されている」

 

そう言ってクワイ=ガンは、イニシエイトたちがいる部屋から伸びる通路へ顔を覗かせ、状況を見る。すでにスピーダーがあるバルコニーには、トランスポーターから降下してきたトルーパーの小隊が包囲網を展開しているのが見える。

 

「手際が良すぎます。まるで最初からそうするようプログラムされているかのように…」

 

「マスター・コルドヴァの予見が当たりました…」

 

トリラの言葉に続いて、シアも自身のマスターが予見した破滅的な未来の言葉を思い返す。マスターコルドヴァはこうなる未来を予見してから、シアを残してジェダイ存続のために旅に出てから消息を絶っているのだ。怯えるトリラの肩に手を置きながら、シアも迫り来る恐怖と向き合う。

 

そんな二人に、マスタークワイ=ガンは穏やかな声でこう言った。

 

「破滅は当たった。だが、我々はまだ滅んでいない」

 

「なんだ!?」

 

その直後、バルコニーにいたトルーパーたちが騒ぎ始める。こちらの位置がバレたかと、三人が身を屈めていると、外のバルコニーに光弾が降り注ぎ、屯していたトルーパーたちを次々となぎ払っていった。

 

「死にたくなければさっさと船に乗りな、ジェダイ!」

 

一掃したバルコニーに降り立ったのは、オンボロの小型貨物輸送船であり、後部ハッチからそう言葉を発しながら降りてきた姿に、シアは驚いたように目を剥いた。

 

「テンプルガード…!?」

 

クワイ=ガンは後ろへと注意を払う。すでに異変に気がついたトルーパーたちがこちらに向かってくる気配があった。イニシエイトたちもいる以上、クワイ=ガンに迷ってる時間は残されていない。

 

「いくぞ、シア!」

 

そう言ってイニシエイトたちと共にオンボロの貨物輸送船に走り出す。シアとトリラも続くと、通路の角からトルーパーの一団がその姿を現した。

 

「逃すな!撃て!」

 

ブラスターが放たれてゆく。イニシエイトの後方を走っていたシアとトリラがライトセーバーを起動させて、放たれるブラスターの嵐を撥ね除けるが、その数にも限界はあった。

 

まだ未熟なイニシエイトの背中がブラスターに撃ち抜かれ、幼子の体が床に横たわった。

 

「ダメ!!」

 

トリラの悲鳴のような声が響く。シアも全力で応じ、クワイ=ガンも後方へと宙返りを打って防衛に参加するが、数が多すぎる。

 

「ふん、ジェダイを救うことになるとはね!」

 

苦戦する二人のもとに、バルコニーに降り立っていた線の細いテンプルガードが加勢した。黄色のダブルライトセーバーで目まぐるしく飛んでくるブラスターを弾き返してゆき、フォースを使って彼らの死体を他のトルーパーにぶつけるなど、その手腕は他のジェダイよりも長けていた。

 

さらに体格の良いテンプルガードも加わり、ブラスターの防衛に尽力する。

 

「すまない、助かる」

 

「構わんさ。すべてはフォースの夜明けのためだ」

 

クワイ=ガンの言葉に体格の良いテンプルガードは応じて、剣尖に意識を集中していく。イニシエイトたちを輸送船に導きながら、ブラスターを防いでいたテンプルガードたちも後部ハッチへと足を踏み入れた。

 

「出しな!」

 

線の細いテンプルガードの怒声のような声に応じて、輸送船はふわりと浮かび上がる。

 

「まだテンプルにはジェダイや…子供たちが!!」

 

「もう限界だよ!それとも、自分たちもそうなりたいのかい?」

 

後部ハッチからテンプルを見つめながら言うシアとトリラに、テンプルガードは怒鳴りつけるように現実を突きつける。眼下には燃え盛る塔が見えた。他の塔にいるイニシエイトやジェダイたちは間に合わない。

 

クワイ=ガンとわずかなイニシエイトたちを乗せた船はクローンたちの追撃を振り切り、コルサントから脱出していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事態は悪い方へと進んでいた。

 

コルサントの居住地からでも、ジェダイ・テンプルが燃えているのはハッキリと見えた。パドメは自身が感じていた不安が現実のものになったような絶望感を味わっていた。

 

ふと、一台のスピーダーが自身のバルコニーに降り立つと、そこからはジェダイローブをはためかせたログが降りてきているのが見えた。

 

「ログ!大丈夫なの?」

 

バルコニーから入ってきたログに歩み寄りながらパドメは問いかける。彼の体の端々には焼け焦げた後や、傷がついているのが見え、先程までログが戦いの中に身を置いていたことは一目瞭然だった。

 

「ジェダイ聖堂が攻撃されたと聞いたの。ここからも煙が見えるわ」

 

「――大丈夫さ。〝なにも〟心配はないよ」

 

ログの体へ伸ばそうとした手を、彼はやんわりと避けながら穏やかな声でそう言った。その言葉の影に、パドメは違和感を覚えた。

 

「なにが起こっているの…?」

 

彼女の疑問にログはしばらく沈黙すると、徐にローブから一つの航路図を取り出し、彼女へと渡した。

 

「パドメ。今、この世界は局面を迎えている。できるなら、黙ってこの場所へ向かってほしい」

 

「この宙域は?」

 

「そこでアナキンが待っている。言えることはそれだけだ」

 

淡々とそう言うログに、パドメは感じ取っていた違和感が確信的なものに変わった。けれど、その正体に迫ることができない。

 

「…ログ?」

 

恐れるようにパドメはログに言葉を重ねると、彼はいつものように〝笑み〟を浮かべ、パドメの肩にそっと手を置いた。

 

「信念を持つんだ、パドメ。すぐに何事もよくなる」

 

手袋越しのその手は、信じられないほどの冷たさを持っていた。身が捩れるほどの冷たさが、パドメの中へと入ってくる。

 

「〝私〟は、重要な任務を預かった。分離主義勢力がムスタファー星系に集結している。そこに向かう。――未来は変わる。約束するよ」

 

そう言い残して、彼は踵を返した。

 

「ログ!」

 

「C3PO、彼女やアナキンたちを任せるぞ」

 

「待って!ログ!」

 

見送る二体のドロイドに言葉をかけて、足早にバルコニーに向かうログをパドメは手を伸ばして呼び止めようとしたが、その手がログに届くことはなかった。

 

彼はバルコニーの入り口で振り向くと、まっすぐとした目でパドメを見つめた。

 

「パドメ、アナキンと幸せになるんだ」

 

そう言ったログに、パドメは何も言えなくなった。

 

彼はいつもそうだった。

 

彼と初めて会った時も、アナキンとの仲を後押ししてくれた時も、結婚式の仲人を受けてくれた時も、クローン戦争の中でも…。

 

彼は、どこか遠くの場所から自分たちを見つめているような目をしていた。まるで自分たちとは違う世界に生きているような儚さと脆さを持った目をして、彼は見守り続けているように感じた。すぐそこに居るというのに、アナキンもオビ=ワンも居ると言うのに。

 

アナキンへも、そして自分へも、彼からの愛は感じたけれど、彼自身が自分を見つめているところを誰も見たことがなかった。

 

バルコニーから飛び立つスピーダーに乗り込んでいる彼の目は、まさにそんな目だった。まるでどこか、遠い世界へ旅立ってゆくような…そんな不安を感じる目をしていた。

 

「パドメ様」

 

「…船の準備を」

 

議員である以上、不測の事態に備えてコルサントに残るべきなのかもしれないが、パドメはそれよりもログの今まで感じたことがない異常性を恐れた。

 

アナキンと共にいれば安心するのも事実であるが、今の彼にはアナキンやオビ=ワンがなによりも必要なのだと思えた。

 

遠くへ行ってしまいそうな彼を引き止められるのは、その二人しか居ない。だからこそ、パドメはログから渡された場所へ向かうことを決断した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスタークワイ=ガン!」

 

「無事であったか。オビ=ワン、アナキン」

 

ベイル・オーガナが指定した宙域に漂うヴェネター級スターデストロイヤーにたどり着いたマスタークワイ=ガンたちを出迎えたのは、先に到着していたオビ=ワンとアナキンだった。

 

「ウータパウでなんとか…何が起こったのですか?」

 

司令室へと向かうと、オーガナ議員とマスターヨーダが情報収集を急いでいたが、そのどれもが信じられないものだった。

 

「何千もの兵たちがジェダイ聖堂を攻撃していた。だからマスターヨーダを探しに向かったのだ」

 

「聖堂から何か連絡はありましたか?」

 

「受け取ったぞ、暗号化された避難メッセージをな」

 

そう答えるマスターヨーダに従って、オビ=ワンとアナキンも受信されたメッセージに視線を走らせる。

 

「すべてのジェダイに聖堂への帰還を命じている。戦争は終わったとな」

 

悲しそうに息をつくヨーダに、オビ=ワンは息を巻いて言葉を発する。

 

「では我々も戻らなければ!仲間とはぐれたジェダイが戻れば、罠にはまって殺されてしまう」

 

「はい、マスター。多くの命がかかっています」

 

オビ=ワンの言葉に同意するアナキンの背後から、くぐもった声が響く。ジェダイたちを見つめるのは、幾人ものマスクをかぶったジェダイテンプルガードたち――「ノーバディ」だった。

 

「だが、それは勇敢ではなく、無謀だ」

 

腕を組んだままそう言うノーバディに、ヨーダは杖を突きながら彼らの前へと歩み出て、見下ろしているノーバディを見上げる。

 

「いい加減、そのマスクを外してもらえるかの?ノーバディよ」

 

フォースによるマインドトリックもない、ヨーダからの言葉に、ノーバディはしばらく瞑目するように言葉を絶ってから、ゆっくりとそのマスクを外した。

 

「やはり、モール…そなたであったか」

 

マスクの下から現れたのは、ナブーでログとの激闘を果たし、自ら片腕を切り落として排気口へと落ちていったはずのモールだった。

 

クローン戦争の最中にも、オビ=ワンやアナキンの前に現れては、幾度とライトセーバーの剣戟を交わしたこともあり、当のアナキンたちは驚いた様子でテンプルガード姿のモールを見つめていた。

 

「それだけじゃないぞ」

 

そう言ってモールの背後にいる者たちに視線を向けると、他のテンプルガードたちも自らのマスクを脱いでゆく。クワイ=ガンたちを助けた「ノーバディ」は、モールと同じくアナキンたちと何度も戦いを繰り広げたアサージ・ヴェントレスや、サヴァージ・オプレス。

 

そしてその輸送船を操縦していたテンプルガードたちがマスクを脱いだ瞬間、アナキンはさらに驚愕の表情を浮かべる。

 

「アソーカ!バリスも…」

 

アナキンのパダワンであり、ジェダイ・パダワンであったバリス・オフィーの引き起こしたテンプル爆破事件の際、ジェダイ評議会に失望してジェダイを去ったアソーカ・タノも、「ノーバディ」としてそのマスクを被っていたのだ。バリスは護送中に消息を絶っていたのは知っていたが、まさかアソーカと行動を共にしているとは思いもよらなかった。

 

「未来を見通すことは叶わなかったようですな、マスター・ヨーダ」

 

そんな彼らの後ろから現れたのは、クローンの指揮官を示す制服を身に纏ったかつての敵…ドゥークー伯爵だった。

 

アナキンとオビ=ワンが咄嗟にライトセーバーを手にかけるが、ドゥークーはそれを一瞥するだけで、視線をすぐにヨーダへと戻す。

 

「ドゥークー…」

 

「ここにいる全員が、分離主義にも、共和国政府にも。ジェダイとシスにも疑問を覚え、そこから脱した者たちだ」

 

そして私自身も、とドゥークーは言葉を続ける。シディアスと共謀してこの戦争を引き起こした身ではあるが、彼が自分を利用しているだけだったことに気がついたドゥークーは、モールたちと共謀し、暗黒卿を出し抜き、姿を隠すことを画策した。

 

結果的にコルサントの戦いでギリギリのタイミングではあったが、それは達成され、今はこの船に身を寄せる身となっている。

 

モールはアナキンたちの前に歩み出る。

 

「誰もが〝何者でもあり〟、誰もが〝何者でもない〟。だから、俺たちはノーバディと名乗っていた」

 

「指揮は、ログ・ドゥーランが執っていたのかの?」

 

感慨深いような声でそう問いかけてきたヨーダに、ドゥークーは小さく笑い声をあげてから、まるで小馬鹿にするような口調で首を横に振る。

 

「言ったはずですぞ?マスターヨーダ。我々は〝何者でもない〟と。我々が向かう先の存在意義は「フォースの夜明け」です」

 

「フォースの夜明け?」

 

「俺たちが信じているのはジェダイでも、シスでもない。フォースの導く感覚のすべてだ」

 

感じられなかったか?それとも信じられなかったか?こういう未来が待ち受けているということを。

 

どこかで変えられると思っていたのか?

 

それとも、そんな破滅的な未来は来るはずがないと?

 

そう問いかけるモールに、オビ=ワンやヨーダは何も言い返せなかった。フォースが暗黒面に覆われ、未来が見えなくなった。そのことに、こういった事態を考えなかった訳ではないが、その予測を軽んじ、戦い続けていた結果が、今だ。

 

「未来よりも現実を見つめられなかった段階で、お前たちの意義はジェダイから外れている。フォースは世界を望んだ。故に今の結果が我々の前に純然と横たわっている」

 

故に今、その流れに抗うような真似をしても無駄だと言うこともノーバディであり、ただのモールでもある彼は深く理解している。抗う故に失われる命もある。ならば、そうなる前に逃げるべきだ。

 

モールは〝そうやって教えられてきた〟。

 

結果を優先するあまり、自身の命を失っては元も子もない。この作戦も、〝彼〟が自分に与えた最後の試練でもあった。自分たちは既に彼の手を離れている。ここから先は、教えられたことを純然に果たしていくだけだ。

 

「それでも、僕は行くよ」

 

ここに残るべきと言うことを示唆するモールに、アナキンは毅然とした声でそう言った。

 

「アナキン」

 

「助けられる命がそこにあるなら、僕はそこに向かう。それに、ここにログがいたら彼もそうする。絶対に」

 

自分の親友なら、助けられる命は絶対に見捨てない。テンプルが襲撃されているなら、彼は絶対に戦っている。多くを守るために戦っているはずだ。

 

ならば、助けにいかなければならない。それが彼の親友である自分の役目だ。

 

そうまっすぐとした思いを伝えるアナキンに、オビ=ワンも頷いた。

 

「ああ、そうだな」

 

今すぐにでもコルサントに。そう言って発艦ベイへと歩み出そうとしたアナキンを、レックスが呼び止めた。

 

「スカイウォーカー将軍」

 

彼はそれ以上言わずに、手に持っている端末から通信情報をアナキンへと見せた。そこに映っていたのは、ナブー議員専用の宇宙船だった。

 

「パドメが!?」

 

レックスと共に発艦ベイへと走り出したアナキンを見送るオビ=ワンへ、クワイ=ガンとヨーダが語りかける。

 

「オビ=ワン、私とマスターヨーダも共にテンプルの信号を止めよう。君たちは、道を切り開いてくれ」

 

「わかりました」

 

それぞれが動き出そうとしている。しかし、それが行先を過酷なものにしていくことを知らない。

 

モールは悲しげに目を伏せ、マスクを被る。

 

〝彼〟はすでに〝彼〟ではなくなっているだろう。それを知っていたが故に、自分たちに最後の試練を与えた。

 

自分たちにできるのはここまでだ。

 

あとは、フォースの導くままに。

 

ただ、それだけだった。

 

 

 

 

シナリオを練り直すのを許せるか?

  • 細かい描写も見たい
  • ログの心の移り変わりを見たい
  • とりあえずエンディングまで突っ走れ
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