アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件   作:紅乃 晴@小説アカ

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アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件

 

 

 

「皇帝は…議長は…我々と約束をしたのだ!戦争は終わった…平和に…」

 

ニモーディアンのルーン・ハーコの言葉を終える前にライトセーバーを振るう。焼けた傷だけを残して命の火が消えたルーンの肉体が倒れ、ムスタファーの管制台に体を打ち付けてから、床へと転がる。

 

青いライトセーバーを握りしめたまま、申し訳程度にしか配置されてないドロイドを切り裂き、情けなく逃げ惑う分離主義の中核者たちを切り裂く。

 

鉄を焼く音。

 

セーバー独特の剣戟の音。

 

くぐもったニモーディアンや、分離主義者たちの断末魔。

 

鼻腔を刺す死の匂い。

 

その全てが、この部屋で行われていた。最後に残ったヌート・ガンレイは、震える手と目つきで、フードを被った暗黒卿に縋り付くように懇願する。

 

「ジェ…ジェダイは…非武装の敵を殺さない筈だろ!?ジェダイの掟は…!!」

 

彼が最後にすがった希望は、直ちにその希望を断ち切った。下から突き上げられるような形でガンレイを貫くライトセーバー。彼はしばらく目を見開いたまま呆然とすると、消えるライトセーバーの光刃と共にぐらりと体を落とした。

 

ガンレイがすがり付いていたマントは、彼が倒れたことで引き剥がされる。

 

そこに立っていたのは、光を失ったライトセーバーを持つ、ログ・ドゥーランだった。

 

「それを捨てるために俺はここに来た」

 

ガンレイの骸の足を掴んで彼は死体だらけになった部屋を進んでゆく。この場にいる者は全員、自分が殺した。何も思わなかったかと言われたら嘘になるが、必要な犠牲だと言い聞かせて刃を振るうことは叶った。

 

ギシギシと心が音を立てて軋むのがわかる。

 

ジェダイを斬った時も。

 

マスター・ウィンドゥを斬った時も。

 

そして、マスター・キットを殺した時も。

 

その痛みは増すばかりで、治ることはない。あの瞬間から、自分は最早「ログ・ドゥーラン」から逸脱している存在なのだろう。今までも、そしてこれからもずっと。

 

「これで、名実ともに稀代の殺戮者だな…俺は」

 

ガンレイの体をバルコニーに持ってきた彼は、ムスタファーの発着地にナブーの宇宙船が着陸するのを見つめる。

 

彼は瞳を青白いモノから黄金へと変化させていた。ここまでの舞台は整えた。ここまで必要だと思えたことは全て結果を残してやり通してきた。

 

フォースの導き…今はそんなモノ、気にすることはない。きっとこれもまた、バランスを保とうとするフォースの導きなのだろう。だが、今はそんなこと、どうでもいい。

 

ログはライトセーバーを煌めかせながら、バルコニーからナブーの宇宙船を見つめる。

 

「あとは…アナキン。お前次第だ」

 

それだけ言うと、彼は起動したライトセーバーを振り下ろすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ログ…」

 

船から一人で降りたパドメは、しばらくしてから発着地の奥にある通路から、ログがやってくる姿を見た。

 

「やぁ、パドメ。ここに来てくれると思っていたよ」

 

彼は何かを片手にぶら下げたまま歩んできて、パドメから見ても数メートル先でパタリと足を止める。顔にはまるで張り付いたような笑顔が浮かんでいた。

 

その違和感が、パドメの不安な気持ちを加速させていく。

 

「ムスタファーで…ジェダイ・テンプルでも…貴方は…」

 

どちゃり、パドメの前に何かが放物線を描いて投げ込まれた。足元にまで飛んできた液体に視線がおちて、パドメは口を手で覆った。

 

「戦争は終わったよ、パドメ」

 

そこにあったのは、自身を何度も貶めようとしてきた分離主義者の一人、ヌート・ガンレイの生首だった。傷は焼け爛れていたが、その隙間を縫うようにニモーディアン特有の独特な血液が流れ出ており、それがパドメの足元にまで飛んできたのだ。

 

「ああ…そんな…ログ…」

 

「戦争は終わった。新しい時代が来る…パドメ、君たちは幸せになれるんだ」

 

彼はまるで自分を見ていないような目線をしたまま、張り付いた笑みを絶やさずにそう言う。

 

「その代償は何なの?あなたは善良な人よ!そんなことはしないで…!!」

 

「私は…俺は、強い力を手に入れた。それを君たちのために使うんだ。君たちを守るためにね」

 

そうだろう?アナキン。そう言ったログにつられて、パドメは後ろへ振り返る。そこにはナブーの後部ハッチに姿を現したアナキンとオビ=ワンが静かに佇んでいた。

 

「ログ…」

 

「アナキン、オビ=ワン。ジェダイの欺瞞はお見通しだ。暴力装置でしかないお前たちには何もできない。もうすぐ新しい時代が来る。平和と正義、秩序と安全をもたらしたんだ」

 

 

 

 

ムスタファーの溶岩が赤く、その場にいる者を照らす。

 

 

 

 

 

オーダー66、クローン兵の反乱、そしてシスの復活と銀河帝国の樹立。

 

 

 

 

 

多くの事が起こり、ジェダイ寺院は破壊し尽くされ、ジェダイマスターの多くが戦死した。

 

ナイト――、そしてパダワンである子供たちも。

 

 

 

 

 

子を身籠るパドメ、師であるオビ=ワンと共にムスタファーに降りたアナキンは――変わり果てた親友の姿を見て、言葉をなくした。

 

「本当に…貴方が…あんな酷いことを…」

 

パドメが信じられないといった風に言葉を発する。

 

ジェダイ評議会の建物中で行われた虐殺。

 

子供すらも容赦なく殺した所業の指揮を取っていたのは、紛れもなく目の前にいる自分たちの親友だった。

 

「ログ!!君は僕にとって、親友だった。親友だったんだ…!!なのに、なぜ裏切ったんだ!!」

 

悲しみと裏切られた怒りが合わさり、激情に囚われるアナキンが、声を荒げて親友へ叫んだ。

 

オビ=ワンと共にグリーヴァス将軍の討伐に向かった後に、アナキンたちはオーダー66の罠に嵌った。クローン兵たちの反乱の中、命からがら生き残った二人は、激変したコルサントとジェダイ評議会の姿に愕然とする。

 

アナキン・スカイウォーカーは、信じたくなかった。

 

パダワンの時代から共に研鑽を積み、パドメとの関係を後押してくれただけではなく、命令を無視し、ジェダイの掟を破ってまでも自身の母を共に救ってくれた親友。

 

アナキンにとって最高のジェダイであったはずの彼が、暗黒面に落ちてしまった事実を、その事実を目の前にしてもアナキンは信じたくなかった。

 

だが、親友だった彼はアナキンの思いを踏みにじるように笑みを浮かべた。

 

「ジェダイは本質を見誤ったんだ、アナキン。フォースとの絆は汚され、今やジェダイは暴力装置へと成り下がった。世界の秩序と平和などもたらす存在では無くなったんだ」

 

「違う!すべてはシスが画策した計画で――」

 

「それでも、刃を振るい、この世界に災いと争いを呼んだのは紛れもない我々だ!!我々が殺した!!確かにジェダイがすべて悪い、罪があるとは言わない。だが罪がなくとも、責任はある。俺たちは多くの悲劇を見逃した。多くの悲鳴を聞き捨てた。そのせいで、どれだけの命が終わったか、数えられるのか? 救えた命があったはずだ。守れた心があったはずだ。全ての悲劇を無くすことはできなくとも、ほんのわずかな行いで減らすことができたはずだ。ジェダイ・オーダーの実態を、クローン戦争の悲劇を知れば知るほどに、犠牲者を救えば救うほどに、どうしようもない怒りが、憎悪が増した。堕落への憤怒は途切れず、苦痛への悲哀が濃くなっていった。なんとしてでも変えなければならないと決意した。決して許してはならないと、思った。」

 

オビ=ワンの論ずる言葉を、彼は切って捨てた。

 

クローン戦争で多くの血が流れた。流れすぎたのだ。

 

そして、その一端を担ったのは間違い無くジェダイであり、戦いを深刻化させたのもジェダイだ。終わりのない闘争の中で、ジェダイの在り方は大きく歪められたのかもしれない。

 

黄金色となった目をギラギラと迸らせながら、彼は激情に染まった顔を落ち着かせて、アナキンとオビ=ワンへ再び語りかける。

 

「パルパティーン議長が帝国を築いた今、ジェダイという暴力装置は滅せなければならない」

 

「そのために殺したのか!!師も、仲間も、友も…あまつさえ、子供さえも…!!」

 

オビ=ワンの怒りにも似た声にも、彼は動じる事はなかった。

 

そのために師であるマスターウィンドゥを殺した。

 

友であったキット・フィストーも手にかけた。

 

パルパティーンがほくそ笑む中で、数々のジェダイの首をはねた。

 

さも、それが当然であるかのように。

 

パドメは変わってしまった親友の姿に思わず涙を流して口元を覆った。映像の中にあった子供の胸をライトセーバーで貫いた時の彼の顔が、今目の前にするものと全く一緒だったからだ。

 

アナキンは震える手を握りしめて、届かないとわかりながらも抑えられない慟哭を放つ。

 

「僕は君が救世主だと信じていた!!僕なんかが救世主じゃない!!君がバランスをもたらす存在だったんだ!!君のおかげで僕は救われたんだ!!パドメも!!オビ=ワンも!!なのに!!」

 

そう叫ぶアナキンへ、彼はそっと手を差し伸ばす。それを見てアナキンはハッと顔を上げた。パドメとの結婚の後見人になると言ってくれた、あの時と同じような穏やかな笑みを以って。

 

「アナキン、オビ=ワン。なすべき事はわかっているはずだ。そう思うなら、俺と共に来い。共に今度こそ、ジェダイとして――いや、フォースと共に銀河に秩序と平和をもたらすんだ」

 

そして絶望の言葉をアナキンへ送る。

 

アナキンは頭を強く殴られたような感覚を味わい、しばらく立ち尽くしてから、小さく息を吐いて親友だった存在を見据えた。その瞳には、もう悲しみは無かった。

 

「僕が守りたかったものは、パドメが愛した共和国と民主主義だ」

 

「アナキン…」

 

「パドメは船に。僕らは…なすべき事を為す」

 

「行くぞ、アナキン。友として、彼を終わらせるために」

 

そうパドメに伝えて、アナキンとオビ=ワンは自らのライトセーバーを起動させて構える。遠くでムスタファーの溶岩が天高く舞い上がったのが見える。

 

その溶岩の光を背に受けて、逆光の中で黄金の目を煌めかせながら親友だった男は、自らの青と、師の手を切り落として奪った紫のライトセーバーを両手に持って、起動させていた。

 

「終わらせられるか?この俺を…!!」

 

刃をギラつかせて、暗黒面に落ちた彼は、英雄であり、親友であったアナキンたちに向かって走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シナリオを練り直すのを許せるか?

  • 細かい描写も見たい
  • ログの心の移り変わりを見たい
  • とりあえずエンディングまで突っ走れ
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