アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件 作:紅乃 晴@小説アカ
パルパティーンは銀河帝国樹立を宣言した後、誰もいなくなった元老院のホールで一人、フォースの瞑想に更けていた。
すべては、自分の思い描いた通りに進んでいる。オーダー66、ジェダイの滅びも間近とも言える。まさに絵に描いたような理想的な状況が、自身の手の上にあるとも思えた。
だが、彼のフォースには揺らめきがあった。暗黒卿、ダース・シディアスはシスの教えに殉じている。ライトサイドを信仰するジェダイとは対極の位置にありながら、その本質はフォースを司ることに変わりはない。
故に、シディアスは自身の中に虚無があることを見つめていた。理想に近づけば近づくほど、業火のように燃え盛っていたシスの息吹が小さくなってゆく。
フォースの深みを見つめるたびに、それはより顕著にシディアスの元へと姿を現しているようにも思えた。
「新しい弟子を手に入れたそうじゃの、皇帝。それとも、ダース・シディアスと呼ぶべきかな?」
ふと、フォースの瞑想が終わりを迎える。目を向ければ、護衛のエンパイアガードたちが、壁に叩きつけられて意識を失っている姿があり、さらに視線を下げると、年老いた「グランドマスター」が、シディアスを見つめていた。
「マスター・ヨーダ。生きておったか」
あまり驚いた声ではない。むしろ当然とも言えるような口調で、シディアスは自身を「暗殺」しにきたジェダイを出迎える。だが、グランドマスターでも真相を見つめることはできなかったようだ。
「傲慢のあまり盲目となったか、マスター・ヨーダ。彼はまだ、余の弟子ではない」
「欺瞞と嘘はシスの常套句じゃからのぅ。だが、その弟子がジェダイ・テンプルを襲ったのは覆らんぞ?」
その言葉を聞いて、シディアスは改めて目を伏せた。
「そうか…彼は殉じたのか」
ジェダイとして間違ったジェダイの時代を終わらせるために…。その道こそ、シスの道に入ってしまったほうがどれほど良かったものか。彼は自身に降りることのない罪と重石を背負う道を選んだのだ。
「ならば、余も彼の覚悟に応え、行く末の先に殉じなければならん。マスター・ヨーダ」
シディアスは伏せていた目を黄金に煌めかせながら、手からフォースの力を雷へ変換させた「フォース・ライトニング」を撃ち放った。怒りを感じない攻撃に、マスター・ヨーダは不意を突かれて雷と共に壁へと叩きつけられる。
「このときを長い間待っておったぞ、小さき緑色の友よ。ついにジェダイは滅びるのだ」
「そうはさせんぞ。おまえの支配もここまでじゃ。これでも長かったがの」
したたかに打った体を起き上がらせながら、マスター・ヨーダも反撃と言わんばかりにフォースの波をシディアスに向けて放った。その余波を受け止めた上で、シディアスは高く飛び上がるとマスター・ヨーダの前へと降り立つ。
「支配?まるでお前たちジェダイが今まで共和国を支配していたような言いようだな?マスター・ヨーダ」
その言葉に、マスター・ヨーダの顔が歪むのをシディアスは見逃さなかった。
「憎しみでジェダイを滅ぼす?いいや、違うな、間違っている。この世界が、宇宙がそれを望んでおるのだ。それが分からんのか?マスター・ヨーダ」
「お主が仕掛けた戦争じゃ。それを無視することはできんぞ」
その言葉に、シディアスは地獄の底のような笑い声を上げて、のけぞるように天を仰いだ。
「豊かな世界、平和な時、緩やかな破滅。余が手を下さんでも、ジェダイも共和国も終わっていただろうに」
見えていないはずがない。見えていたはずの未来から目を背け続けた結果、共和国とジェダイの終わりがやってきた。シディアスが手を下すまでもなく、その滅びは必ず訪れていた。形や姿を変えて、必ずやってきていたのだ。
「愚か者めが…真実から目を背けた上に、その傲慢な思考が、彼を貶めたことにすら気が付かぬ。そして余も…彼の在り方に気付くことは出来なかった」
シディアスは、自身の元へと来ることをせずに、自ら決着を付けるために歩んでいったログを思い返す。彼の在り方は、すでにジェダイやシス…そういった「誰かが決めた理」…在り方から外れているのだ。
「彼はフォースに殉じておるのだ。深く、誰よりも深くな。最初は、何だったのかはわからぬが…おそらくその根底にあるのは「愛」、すなわち善意の究極であろう。この世界を…あるいは誰かを…あるいは愛するものをより良い未来へ導くため。彼は、もはや余にも止めることは叶わぬ」
赤い光がシディアスの手から立ち昇る。マスター・ヨーダも呼応するように腰にぶら下げていたライトセーバーを手元へと手繰り寄せ、緑の光を閃かせた。
「そしてまた、余を止めることもできんぞ、ジェダイ。彼がダース・ヴェイダーとなった暁には、我らよりも強くなろう!」
「新しい弟子を信頼しすぎると取って代わられるぞ。おぬしがフォースのダークサイドを信頼しているようにな」
ジェダイらしい言葉だとシディアスは吐き捨て、そして笑みを浮かべる。
「彼が余を終わらせてくれると言うなら、喜んで受け入れよう…だが、マスター・ヨーダ。その役目を果たすのはそなたではないっ!!」
光と闇の均衡をかけた戦いが始まる。そして、その闇はまさに、光を消し去ろうとしていた。
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「どうした…二人がかりでその程度か…!!」
ムスタファーの施設の中で、アナキンとオビ=ワンの攻撃を二刀のライトセーバーで受け切りながら、ログは怒声のような声を荒げて、二人を睨みつける。
アナキンの攻めの型には防御を、オビ=ワンの防御の型には攻めを。ログの両手はまるで二人のジェダイのような動きを可能にしており、アナキンとオビ=ワンの巧みな連携を叩き落とした上で、彼らが苦手とする動きで二人を圧倒した。
「アナキン!!」
ログが放った閃光のような一閃に防御を余儀なくされたアナキンを助けるために、オビ=ワンがログへと距離を詰める。
来ると思っていたよ…!!それを逆手に取ったログは、オビ=ワンが攻勢に入る隙を縫うように距離を詰めると、ライトセーバーを持っている手をつかみ上げて無防備な腹部へフォースの力を借りた肘打ちを数発叩き込む。
「がはっ…!?」
マスター・ウィンドゥが体術を得意としているように、ログも近接格闘戦を習得している。ドロイドの硬い外装すら打ち砕く打撃は、オビ=ワンの腹部に痛烈な痛みを走らせた。吹き飛ばされた彼はなす術なく床へと叩きつけられる。
「ライトセーバーに頼りすぎるからこうなる!!」
「オビ=ワン!!」
うずくまるオビ=ワンに向かって、ライトセーバーを軽く振るう仕草を交えて近づいてゆくログへ、アナキンは決死の近接戦を挑む。わかっているように振り返ったログは、二刀から閃く剣戟を放ち、アナキンの攻勢を打ち払って逆に押し返した。
「ログ!!やめろ!!」
つば競り合うライトセーバーの向こう側で、アナキンが悲壮な顔をしたままログへと叫んだ。だが、彼の顔つきは変わることはない。力の均衡が徐々に崩れていく。
「アナキン…もう俺を言葉では止められないぞ!!」
光が走る。
競い合っていたアナキンを押し返したログは、ライトセーバーを構えてアナキンと相対し、黄金色の瞳で彼を見据えた。
「殺す気でこい…!!でないと…俺がお前を殺すぞ!!アナキン!!」
アナキンはグッとライトセーバーを握りしめ、口を固く噤む。加減して倒せる相手ではないことはわかっている。気を抜けば敗北するのは自分自身だ。アナキンはライトセーバーをゆっくりと構えて、険しい顔つきでログと向き合う。
「ロォオオグ!!!」
「さぁこい、アナキン!!」
フォースと一体になって駆け出すアナキンを、ログは二刀のライトセーバーで迎え撃つ。
そうだ。
それでいい。
アナキンの放つ剣戟を打ち払いながら、ログはムスタファーのさらに奥へと歩みを進めていく。
そうだ。そのままでいい。
その先に――俺が望む、未来があるのだから。
シナリオを練り直すのを許せるか?
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細かい描写も見たい
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ログの心の移り変わりを見たい
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とりあえずエンディングまで突っ走れ