アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件 作:紅乃 晴@小説アカ
ムスタファーの赤い溶岩の川が眼下に見える橋の上で、3本の青い光と、紫色の光が揺らめきながらぶつかり合っていた。
分離主義者達の死体が溢れる制御区画から出た三人は、剣戟を重ね合いながら、地獄の様相を映すムスタファーの火山地帯で死闘を繰り広げていた。
「アナキン!二人でやるぞ!」
「はい、オビ=ワン!」
腹部の痛みを何とか抑えながら、オビ=ワンはアナキンと共にログへ挑む。こうも長期戦になれば、疲弊するのは二人を相手取るログの方だった。ずしりと軋む体を奮い立たせながら、彼は向かってくるオビ=ワンとアナキンの連携を防ぐ。
「そうだ…それでいい…それで!!」
その瞬間、ログの瞳にヴィジョンが映る。アナキンの隣で共に戦う自分の姿がある。なぜ、自分は彼の隣に居続けることができなかったのか…そんな自問が思考に湧き出して、ログは目を見開いた。
本当なら、彼と共に未来を見たかった。本当なら、彼らと共にジェダイとして生きたかった。本当なら、愛した彼らをそのまま愛していたかった。
本当ならという思いが溢れ出す。そう思える相手を見つめる中で沸き立つ感覚が、ログの意識にノイズを発生させていた。
そしてそれは、致命的な一瞬となった。
「…――ッが!!」
オビ=ワンの振るったライトセーバーが、ログの片腕を切り裂いた。ウィンドゥのライトセーバーを持っていた腕は、放物線を描いて溶岩の川の中へと落ちてゆく。痛みで意識がはっきりする。ノイズは消え去っていた。痛みが…より体を、意思を、鮮明に形作ってゆく。
切り裂かれたと同時に、ログは切り抜いて隙が生まれたオビ=ワンの肩へ、残った腕に持っているライトセーバーの切っ先を突きつける。
くぐもったオビ=ワンの声が響き、彼の肩はひどく焼け焦げた。だらりと下がったライトセーバーを確認して、ログはそのまま痛みに硬直したオビ=ワンを通路の端まで蹴り飛ばした。
「オビ=ワン!!」
「なんてやつだ…片腕を失っているのに…!!」
吹き飛ばされたオビ=ワンの肩は、酷く抉られていてとてもじゃないがライトセーバーを振るえる状態ではない。咄嗟にオビ=ワンを庇ったアナキンは、溶岩の逆光の中、片腕を失ったまま立っているログが、こちらを睨み付けていることに気がついた。
「来いよ…アナキン…」
なんという…ことだ…。彼は片腕を失っているというのに、まるで表情を変えないでライトセーバーを構えたのだ。その姿に、アナキンが知っているはずのログ・ドゥーランの姿は存在していない。
「ログ!!もうやめるんだ!!勝負はついたぞ!!君は道を誤ったんだ!!」
切りかかってくるログの剣戟を逸らして、アナキンは叫んだ。心の痛みがはちきれんばかりにアナキンを重く締め付けていく。ライトセーバーを握る手が震える。それが戦いの最中だったとしても、アナキンにはハッキリと自覚できた。
「ジェダイは滅びなけばならない…!また繰り返したいのか!まだ足りないというのか!すでにあの頃の平和なんてどこにもないという事を知りながら、足掻くか!!」
そんなアナキンに、ログは眼光を鋭くして吐き捨てた。ナブーで過ごした時も。アナキンと初めて出会ったあの時も。まだスターウォーズという物語を愛していられたあの瞬間すら…もう取り戻すことのできない遠い過去にある。
そこからあるのは、血塗られた泥沼のクローンとドロイドの戦争。そして腐り切った旧体制にしがみつく死に行く者たちだけだ。
「何度繰り返せば満足する!!ここで終わらせなければ…クローン戦争よりも酷いことになる…!!」
その言葉に、アナキンは理解が追いつかなかった。ログは暗黒面に落ちたはずなのに、彼はなぜ世界を憂いて戦っているのか。シスは自身の欲と力のためにフォースを使うというのに…まるで、彼の言い草は「ジェダイであったころ」のログそのもののように思えた。
「ログ…!!僕は君とは戦いたくないんだ!!」
気がつくと、アナキンはライトセーバーを下げていた。オビ=ワンが叫んでいる。けれど、アナキンはライトセーバーを構える気が起きなかった。そんなアナキンに、ログはほんの僅かに目を開いてから、ゆっくりとアナキンへ歩み寄る。
「防御を外すとは…愚かな行為だ!!」
だが、返ってきたのは拒絶だった。振るわれたログの一閃を咄嗟に受け止めながら、アナキンは光の向こう側にいるログへ紡ぐ言葉を止めなかった。
「心が背いている。ログ…君の中に善の心を感じる。葛藤があるんだ!」
「葛藤など…ないっ!!」
「ならば、なぜ僕に優しくしてくれたんだ!なぜ僕とパドメの愛を後押ししてくれたんだ!こうなるなら、僕を殺せたはずなのに!!」
なぜ母を共に救ってくれた。なぜライトセーバーのテクニックを不器用なりに教えてくれた。なぜ自分を大切だと言ってくれた!!
今のログはアナキンが知るログではない。しかし、アナキンが知るログならば、こんな迷いのある決断をするはずがない。
「自分を取り戻すんだ!ログ!暗黒面や…憎しみに囚われてはいけないと教えてくれたのは君だ!!なら、君にだって出来るはずだ!!」
ライトセーバーを打ち払って、ログがアナキンから距離を置く。彼はしばらくムスタファーの溶岩に照らされながら、熱風の中でボロボロになったジェダイの服を揺らしている。
「アナキン…お前は勘違いしている」
ログはゆっくりとそう言った。
「俺は自分を失ってはいない。俺は俺の意思で、ここに居る」
その言葉に、アナキンは絶望を覚えた。黄金色に光る目が、アナキンの心を引き裂く。ログは一切の震えがない手でライトセーバーを掲げて、アナキンを睨んだ。
「見くびるなよ、アナキン。戦わないというなら、お前に待っているのは死だけだ!!」
シナリオを練り直すのを許せるか?
-
細かい描写も見たい
-
ログの心の移り変わりを見たい
-
とりあえずエンディングまで突っ走れ