アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件   作:紅乃 晴@小説アカ

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戦いの後

 

 

シャトルへ戻ってきたアナキンの様子を見て、パドメの表情は青ざめた。半ば、オビ=ワンに肩を貸してもらう形で帰還したアナキンは、覚束ない足取りで側にあるソファーへ、崩れ落ちるように腰を落とした。

 

「アナキン…」

 

疲弊しきったアナキンの側に、パドメが寄り添う。火山の灰で煤汚れた彼の顔を指でなぞりながら、疲れを隠せないアナキンの虚な瞳を優しく見つめる。

 

「パドメ」

 

「ログは…?どうなったの?」

 

その言葉を聞いて、アナキンは見てわかるほどに震えていることにパドメは気がついた。震える手を持ち上げて、アナキンは両手で顔を覆い隠す。

 

「彼は…死んだよ。僕が…彼を殺してしまった」

 

まるで子供が癇癪を起こしているような…幼さすらあるくぐもった声と、肩を震わせるアナキンに、パドメには掛けられる言葉が見つからなかった。

 

「アナキン…」

 

穏やかなフォースを持って、オビ=ワンが焦燥するアナキンの肩を優しく撫でる。少し落ち着いたのか、アナキンの震えは少しだけ収まっているように見えた。

 

「休んだ方がいいわ。C3PO。頼むわね」

 

プロトコルドロイドであるC3POと共に、シャトルに備わる寝室へと連れて行かれるアナキンを見つめて、パドメは深く息をついた。

 

そんな彼女の隣に、オビ=ワンは緩やかに腰を落とす。彼もまた、疲れ切った顔をしていた。

 

「私が付いていながら、何もしてやれなかった。彼にログを倒させるべきではなかった」

 

「ログは…本当に暗黒面に?」

 

パドメの問いかけに、オビ=ワンはすぐに答えることはできなかった。しばらく言葉を探すように思考を巡らせてから、険しい顔つきでパドメの方へと視線を向ける。

 

「正直なところ…私にもわからない。彼がなぜ、ああなってしまったのか」

 

少なくとも、最期にアナキンと会話していたときに彼から邪悪な感覚を感じることはなかった。そうオビ=ワンが答えると、自動操縦で飛び上がったシャトルに通信が届く。

 

発信源はマスター・ヨーダからだった。

 

「ランデブーポイントの連絡だ。ひとまずはそこに向かおう」

 

そう言い残して、オビ=ワンはパイロットルームへと向かう。パドメは顔を落として項垂れるようにソファーへ身を委ねる。お腹の中にいる鼓動が大きく聞こえたような気がした。

 

パドメは命を育む自身の体を優しく撫でながら、窓の外に見える流れ行く星々を見つめて呟く。

 

「ログ…貴方は…何を思って私に会いにきたの…?」

 

バルコニーから向けられた彼の顔を、パドメは忘れることができなかった。彼は…何のためにここで戦うことを決めたのか。

 

その真意を知ることは難しい。彼は居なくなってしまったのだから。静かな宇宙の中を飛んでゆく銀色の船は、地獄のような惑星に別れを告げて、ハイパースペースへと飛び込んでゆくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムスタファーに降り立ったパルパティーンは、その惨状を目の当たりにしていた。

 

フォースの導きに従ってムスタファーへやってきた彼が見つけたのは、溶岩の河岸に打ち上げられていた存在だった。

 

「なんということだ…まだ生きているのか」

 

目で見て、すぐに判断することは叶わないほどに、そこに横たわるログ・ドゥーランは、変わり果てた姿をしていた。

 

体のほぼ全てが重篤な火傷に侵され、オビ=ワンに切り落とされた腕はもちろん、すべての四肢が焼け落ちており、それが人間であるということすら判別できないほどに、業火に焼かれた姿をしている。

 

しかし、信じられないことに彼は生きている。否―――、生かされているというべきなのだろうか。

 

「医療ポッドを早く!」

 

側近や、同行していたクローン兵たちが大急ぎでシャトルから医療用ポッドを持ってこようと駆け出した。そんな喧騒の中、パルパティーンは横たわっているログの下へと歩み寄る。

 

焼けただれて、中が露出するほど傷ついた彼の体にフォースを送り込み、その傷にそっと手を添える。

 

「ドゥーラン。余がわかるか?」

 

滴が落ちるような声で、パルパティーンはログへと語りかける。だが、彼は何も答えない。何も感じさせてくれない。

 

ただ死ぬことすら許されない不死者のように生かされて、ただ存在するだけの存在と成り下がっていることが、パルパティーンにはわかった。わかってしまった。

 

なんて酷い。そして、なんて美しい。

 

フォースの導きに殉じる結果がこれだというなら、彼のやってきたことは全てが徒労に過ぎないのだろう。

 

彼が望む終焉を、フォースは認めなかった。

 

その結果が、どうなるのか。

 

シスの英知を持つダース・シディアスでもそれを読み取ることはできなかった。

 

パルパティーンは医療ポッドが来るまでログの傷に手を当てて、フォースを送り続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《貴様の言葉は聞かんぞ、ドゥーラン!》

 

《俺を逮捕しようが、処罰しようが、処刑しようが好きにすればいい!だが、彼とは然るべき場で言葉を交わすべきだ!!》

 

ランデブーポイントで、モール率いるノーバディや、マスター・ヨーダやクワイ=ガンと合流したオビ=ワンは、疲れ切って寝ているアナキンをそっとしておき、彼らが待つヴェネター級スターデストロイヤーの中で、一つの映像を見つめていた。

 

《元老院も法廷もこの男の意のままだ。生かしておくにはあまりにも危険すぎる!》

 

《そうやって視野を狭くして殺すというのですか!では、彼の意のままになる元老院や法廷はどうするのですか!元老院は納得しません!ジェダイと共和国での内乱になります!!取り消すべきだ!!》

 

その映像は、パルパティーンを逮捕…いや、暗殺しようとし、彼を追い詰めたマスター・ウィンドゥの前に現れたログ・ドゥーランとのライトセーバーを用いた言葉の応酬だった。

 

《シスは邪悪の権化だ!ここで滅さなければならない!》

 

《多くの血が流れることになるんだぞ!ウィンドゥ!》

 

言葉と共に、ライトセーバーの応酬も激しさを増してゆく。閃光の向こうでマスター・ウィンドゥに斬りかかるログの顔は、今にも泣き出しそうな悲しみに満ちた顔をしていた。

 

《シスを倒せばその未来は回避される!》

 

《この愚か者が!!》

 

鋭い一閃がログから放たれる。そこから戦いの様子が一変した。青白く光るログの眼光が冴え、師であるはずのマスター・ウィンドゥを圧倒し始める。そして、彼の腕を切り飛ばしたログは、そのままマスター・ウィンドゥと自身のライトセーバーで――。

 

そこで映像は途切れる。破壊されるジェダイ・アーカイブでマスター・クワイ=ガンがこれを見つけたのは偶然だった。

 

そもそも、このデータ自体が、ログ自身が厳重に管理していた情報データであり、予定ではクローン軍の進行によって破壊し尽くされるジェダイ・テンプルと運命を共にするはずだったデータだ。

 

シスの遺跡を発見したクワイ=ガンには、同時にジェダイ・アーカイブのデータを抜き出し、保護する命令も下されていた。その過程、データを管理するものがいなくなったアーカイブで、マスター・クワイ=ガンはこれを見つけたのだ。

 

「ドゥーランが言っていたように、あのままシスを倒したとしても、ジェダイと共和国内での内乱は避けられないものとなっていたでしょう」

 

映像を見つめていたのは、ジェダイたちだけではない。フォースの夜明けを目的とする「ノーバディ」たちも共にその光景を見つめている。その中にいるドゥークーが深い息をつくように呟く。

 

「クローン兵の実権が共和国にある以上、分離主義者の次はジェダイだった。ジェダイは、あの戦争で力を示しすぎたのだよ」

 

どちらかの勢力に肩入れをした時点で、もうジェダイは平和の調停者でも、それを維持・守護するためのシステムでもなくなってしまった。ドゥーランは、彼は…それをずっと危惧していた。

 

「しかし、方法はあったはずです。内部から改革し、その未来を回避する方法も」

 

「その前に、ジェダイはクローン戦争に関わりすぎたのだ。我々が彼の忠告を聞き入れていたとしても、すでに遅すぎた」

 

オビ=ワンの言葉を、彼のマスターであったクワイ=ガンが否定する。ジェダイが下した判断を覆すにしろ、何もかもが既に手遅れだった。議長が…パルパティーンが、元老院の議長になった段階で、この結末は決定づけられていたのかもしれない。

 

「ジェダイがクローン戦争から手を引けば、世界は分離主義勢力に落ちていただろう。そして、それを防ぐために戦い続けてきた結果が、このザマだ」

 

「モール!!」

 

腕を組んだまま侮蔑するようにジェダイたちを睨み付け、そう言葉を吐いたモールに、ドゥークーが諫めるように言葉を発する。だが、モールの言葉もまた事実だ。アソーカとバリスも彼と同じような意見だった。

 

「言ったはずです、マスター・ヨーダ。ジェダイは本来の役割から逸脱した存在になったと」

 

「故に、ドゥーランは我々のような存在を組織したのだ。ジェダイでもシスでもない、新たな第3の調律者たちとしてな」

 

ノーバディたちの言葉を黙って聞いていたヨーダは、小さく手に持っている杖で床を叩いてから、深く閉じていた瞳を開き、言葉をこぼす。

 

「…隠遁するしかあるまい。我々はすでに時代から拒絶されたのじゃ」

 

「マスター・ヨーダ」

 

その決定に異を唱える者は、誰もいなかった。ヨーダはしばらくジェダイや、ノーバディたちを見つめて、そっと瞳を伏せる。

 

「この事実は、マスター・スカイウォーカーには?」

 

その問いに、オビ=ワンは言葉を無くした。あまりにも、酷すぎる。ログを追い詰めたのは、他ならぬ自分たちだ。道を誤っていたのは…自分たちも同じだった。

 

「彼に伝えるには酷すぎます…」

 

「オビ=ワン」

 

オビ=ワンはその声を聞いて咄嗟に振り返る。その先にいたのは、パドメに付き添われながら立っているアナキンがいた。モニターには、ウィンドゥの首をはねたログの姿が映し出されている。

 

「アナキン…」

 

アナキンは幽鬼のような足取りでモニターの前に歩む。苦渋の決断を下したログに、感じることはたくさんあった。

 

もっと話をして欲しかった。

 

もっと言葉を交わしたかった。

 

もっと彼が抱えているものを分けて欲しかった。

 

けれど、現実にこうなってしまったのだ。拭うことのできない現実が、アナキンの前に横たわっている。

 

「ログは…ずっと、そうやってきたのですね…全く…まったくもって愚かだ…」

 

「マスター・スカイウォーカー」

 

ヨーダの声に、アナキンは抑えていた激情を溢れさせた。彼の怒りは、一種の限界を超えていたのだ。

 

「ログをあそこまで追い詰めたのは、シスなんかじゃない!僕たちジェダイだ!!ジェダイが剣を振るったんだ!!クローン戦争で!!彼は…それに気付いていたんだ」

 

顔を覆う。仮にログがジェダイを説得していたとしても、モールが言うように分離主義の台頭によって共和国も平和も滅んでいただろう。その逆であったとしても、共和国はシスの手中へ収められている。ジェダイとして為せることは残されていない。

 

それをわかりながら、彼は剣を振るい続けたのだ。

 

「何がジェダイだ…何がフォースだ…彼の心の中にある苦しみに気付かないまま、彼は背負ったんだ。世界の行く先を…自分の死で、ジェダイが今まで犯してきた過ちを清算するために」

 

そして、その終止符を打つように自分がログを殺した。その結果だけが残ってしまった。アナキンは自身の浅ましさを悔いる。彼が与えてくれたものに、なんの疑いも持たなかった自分の幼さを呪った。

 

「アナキン!言葉が過ぎるぞ!ジェダイとして…」

 

「僕はもうジェダイなんかじゃない!!もうたくさんだ!!」

 

そう言ってアナキンはオビ=ワンを睨み付けた。

 

「アナキン…」

 

「フォースとの絆を閉ざすか?マスター・スカイウォーカー」

 

ヨーダからの言葉に、アナキンは湧き上がっていた怒りを沈めると、腰から自身のライトセーバーと、ムスタファーで回収したログのライトセーバーをホログラムのそばへと置いた。

 

「僕はもう、ジェダイに希望を抱いたりなんかしない。暗黒面にも、誰にも」

 

アナキンはライトセーバーから離れると、オビ=ワンやヨーダ、クワイ=ガンに背を向ける。

 

「僕は、ジェダイを抜ける」

 

 

 

 





とりあえずここまで走ってきたんですが、エンディング(ジェダイの帰還)までの流れは決まってるんですが、正直なところ書きたい描写やストーリーの部分を端折りながら駆け抜けてきたところもあるので、一度アンケートを

シナリオを練り直すのを許せるか?

  • 細かい描写も見たい
  • ログの心の移り変わりを見たい
  • とりあえずエンディングまで突っ走れ

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