アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件 作:紅乃 晴@小説アカ
スカリフの戦い 1
スカリフ。
0 BBY。
ジン・アーソの元に集まった戦士たちにより結成された「ローグ・ワン」は、窮地に立たされていた。
海岸線沿いに展開していたローグ・ワンを、現れたウォーカーが追い散らしたのだ。
その過程で数名の反乱軍兵士を失いながらも、ベイズとチアルートは十数名の生き残りとともに海岸に出て、浜辺へと走る。
ウォーカーが放つ重レーザー砲に吹き飛ばされる仲間を見つめながら、水際の塹壕へとその身を滑り込ませた。
「くそっ!!あんなデカブツ…どうしろと言うんだ」
そう吐き捨てるベイズに、そばにいた仲間がロケットランチャーを差し出す。ベイズはニヤリと笑うと、受け取ったロケットランチャーで、ゆっくりと歩み寄ってくるウォーカーの頭部を砲撃した。
黒煙を上げてたじろぐウォーカーだったが、それは一瞬だけウォーカーの姿勢を崩すだけであり、大きなダメージを与えるには至らなかった。顔をしかめるベイズに、ウォーカーは重レーザー砲の砲口を向ける。
漆黒の砲口へレーザーが収束していく瞬間、空から撃たれたレーザーが的確にウォーカーの重レーザー砲を撃ち抜いた。
赤く染まった鉄屑はウォーカーの頭部の下から剥がれ落ちると、次にはコクピットであるウォーカーの頭部を吹き飛ばし、兵員輸送を目的とした胴体部も続けて破壊した。
「スカイウォーカー将軍!!」
青いXウイングの小隊から離れたのは、先頭を飛んでいた赤いXウイングだった。同じくUウイングも引き連れてベイズたちの前に降り立ったXウイング。そのコクピットから降りてきたのは、ジンと同じくらいの年齢であろう金髪の若者だった。
「僕はルーク・スカイウォーカー。貴方たちの手助けをするために来ました」
ヘルメットやパイロットスーツすら身につけていないスカイウォーカーと名乗った若者は、古い衣装を身につけてベイズやチアルートの前に現れる。
すると、撃破されたウォーカーの足元から次々とトルーパーたちが現れてこちらに攻撃を放ってきた。塹壕に身を隠すベイズたちと違い、ルークは砂浜をかけて攻撃を放ってくるトルーパーたちの下へと走り出した。
「チアルート!!あいつは死ぬ気なのか!?」
突然の自殺行為に声を大にして驚いたベイズと違って、チアルートは盲目の目を見開いて走り出したルークを見つめた。
「いや。彼は、フォースと共にある」
チアルートの言葉に、ベイズが首を傾げていると、走り出したルークが青いライトセーバーを抜き放ち、群がっていたトルーパーたちの攻撃をはじき返して突貫する。
「ジェダイだ!!」
ライトセーバーに切り捨てられ、悲鳴のような声をトルーパーたちが上げてゆく。飛来する閃光のことごとくを打ち返すルークの圧倒的な力の前に、その場にいたトルーパーたちはなす術なく打ち倒され、レーザー銃の喧騒に巻き込まれていた海岸線は、いっときの静寂に包まれた。
「話は将軍から聞いています。とにかく、内部に侵入した人たちのためにも、僕らはここで時間を稼ぎましょう」
そう言ってライトセーバーを収めたルークは、制圧した区画を見渡すと次に爆発が起こっている場所を見つめて先導して走り出す。
ベイズとチアルートは互いに顔を見合わせると、急に現れた頼もしすぎる援軍の後に続くよう走り出すのだった。
▼
ルークがスカリフの戦いを知ったのは、ひとえに偶然であった。
妹であるレイアは、ジェダイの訓練から身を引き、母がそうであったようにナブーの元老院議員として政治活動に身を投じていたが、ルークはマスターであるクワイ=ガンや、オビ=ワンのもとでジェダイの訓練に励んでいた。
ナブーの奥地で修行の日々に打ち込んでいる中、皇帝が樹立した帝国の脅威に対抗するべく設立された反乱軍と、ジェダイ狩りをする帝国軍に対抗する「ノーバディ」が、帝国がとある極秘兵器を作り出そうとしている情報を入手する。
それは、惑星一つなら簡単に破壊してしまうと言う脅威的な兵器だった。それが完成し、帝国が使用すると言うなら、帝国の方針に従わない惑星や勢力が危機に瀕することになる。
皇帝であるパルパティーン一強の政治体制を持つ帝国は、他の惑星の文化や文明を抑圧し、統治する姿勢を構えており、そこから銀河を巻き込んだ小競り合いが頻発しているのだ。
「マスター・クワイ=ガン!なぜ、彼らを助けてはならないのですか!!」
ナブーの奥地に作られた小さなジェダイ寺院の中で、ルークはマスターであるクワイ=ガンに言葉を放った。
ここに訪れていたノーバディのメンバーであるトリラとクワイ=ガンの言葉を耳にしたルークが、その脅威となる兵器の破壊に協力すると言いだすのは必然だった。
だが、クワイ=ガンはルークの行動に許しを出さなかった。
「若きスカイウォーカーよ。お前はまだ修行を終えていない。それに、我々ジェダイの本質は秩序と調和だ。どちらかに肩入れをすれば、ジェダイの本質を見失うことになる」
「ならば、マスターはなぜこの力を僕に教えたのですか!?銀河は今、帝国の圧政に苦しんでいるではありませんか!!それを救うために、マスターは僕にジェダイの訓練を施したのではないのですか!?」
マスターの言葉を、ルークはそう切り返す。
ジェダイとは、たしかに秩序と調和をもたらす存在だ。そうルークは教わってきた。しかし、今が乱れ、秩序がなくなり、調和もない世界だと言うなら、それを正しい方へ導くのもジェダイの役割なのではないか?
そう訴えるルークに、年老いたクワイ=ガンは首を横に振った。
「私たちは、それで過ちを犯した。どちらかに肩入れをすると言うことは、その方が正しいと我々が考え、認めてしまうことになる。それが正しいことだと」
だが、世界は黒か、白かと二分できるほど明瞭なものではない。そのあり方を遵守しすぎた故に、ジェダイは滅び去り、帝国という存在が生まれたのだ。
「しかし、マスター!!」
「ルーク。君は自身の修行に打ち込めばいい。争いを起こす陣営が人だというなら、その結果を生み出すのも人だ」
「それで、世界が闇に包まれてもいいのですか!!」
ルークの叫びに、クワイ=ガンは言葉を返すことができなかった。そうならないようにしてきたつもりだった。オビ=ワンを導いた時も、今よりも未来を優先するジェダイの在り方よりも、今を見据えてそれを大切にすることがより良い未来に繋がることになると信じていた。
だが、現実は違った。
自分がオビ=ワンを導いていた時から、ジェダイや共和国の崩壊は始まっていたのだ。長く続いた体制は崩れ去り、クローン戦争が始まり、世界は大きく乱れた。
そんな中で樹立した銀河帝国。
形はどうであれ、世界は一つのあり方に向かって進んでいっている。その中で起こる反対勢力との小競り合いに、ジェダイが介入する事は正しいのか、クワイ=ガンには、その未来を見通すことができなくなっていた。
ダゴバにいるヨーダや、生き残りジェダイ・オーダーに不信感を抱いたジェダイたちを抱えるノーバディたちが、帝国との戦いに踏み切らないのも、そのことが起因しているのだろう。
未来を見通せない。そんな不安定なものに介入するべきではない…と。
「マスター・クワイ=ガン。それは間違っている」
思考の中にいたクワイ=ガンを切り捨てたのは、ルークだった。間違っていると、若きジェダイは師の教えを受けて立ったのだ。
「未来が見えないことに怯えるだけじゃ、何も変えられない。未来も、そして過去に犯した過ちも!!」
「ルーク」
「母は言ったんだ。僕やレイアがこの時代の希望だと。なら、僕はその希望の役目を果たす」
ルークはそう言って、ライトセーバーを握りしめるとナブーの寺院から飛び出してゆく。クワイ=ガンは、走り出したルークを何度か呼び止めたが、彼は振り向くことなく走り続けた。
ふと、そこでクワイ=ガンは気がついた。
いつかの、自分が間違っていると思っていた元老院の思考停止な考え方。今を見つめず、未来を見つめるだけの存在に、自分がなっていたということを。
クワイ=ガンは、歩み出した若きスカイウォーカーを見つめた。
彼の歩みは、確実にこの世界の流れを変え、決定付けるものになるだろう。しかし、その先に待つ試練を彼は知らない。
そして、その試練を共に受けなければならない「父」のことも。
「アナキン…時はもう近いぞ」
クワイ=ガンはくたびれた髭をナブーの風にそよがせながら、静かな自然の中で、そっと呟くのだった。
シナリオを練り直すのを許せるか?
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細かい描写も見たい
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ログの心の移り変わりを見たい
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とりあえずエンディングまで突っ走れ