アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件 作:紅乃 晴@小説アカ
始まりの地平線へ
「デス・スターの設計図はメイン・コンピュータにはありません」
プロファンディティから逃亡したタナヴィーⅣを捕縛した帝国軍。その指揮をとるダース・ヴェイダーは、タナヴィーⅣのキャプテンの首を締め上げながら報告してきた部下の言葉を聞いていた。
「設計図はどこにある」
グッと締め上げる力を増しながら、ヴェイダーはタナヴィーⅣのキャプテンに抑揚のない言葉で問いかけた。
「せ、設計図など知らない…この船は外交船だ…我々は外交任務中だ」
「外交船だというのなら特使はどこにいる」
息も絶え絶えと言った風にキャプテンは答えていたが、ヴェイダーの次の質問に答えることは叶わなかった。ガクリと力の抜け落ちたキャプテンだったものを通路へ放り投げると、ヴェイダーは黒い外套を翻して後方にいるストームトルーパー達へ指示を出した。
「司令官、設計図が見つかるまでこの船を徹底的に調べ上げろ。そして乗員たちを私のもとへ連れて来い。生かしたままでだ」
そう言われるなり散開して行くストームトルーパー。ヴェイダーも他の通路へと歩み出して行く。義肢から伝わる感覚を研ぎ澄ましていると、通路の隅で何かが横切ったのが見えた。
銀色と金色の何かが横切ったように見えたが、ヴェイダーはあえて目を瞑った。記憶の片隅にある何かが見逃せと言っているかのように。
程なくして、気を失った姫君がトルーパー達によって運ばれてくる。ヴェイダーは運ばれてきた姫君が目を覚ますのを腕を組んでジッと待っているのだった。
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「ダース・ヴェイダー。乱暴が過ぎるわね。帝国元老院も今度ばかりは黙っていないでしょう。外交船を攻撃するなんて」
通気口へ逃れたルークは、目を覚ましたレイアとヴェイダーの会話をひっそりと息を潜めて聞いていた。
「見え透いた芝居はやめたらどうだ?レイア・オーガナ。今回は貴女が得意とする慈悲深い任務ではないのだろう?」
レイアは、スカイウォーカーの名を持ちながら、あえてオルデランのオーガナ議員の娘となった。これは母の知恵でも有り、オルデランのオーガナ議員の意向でもある。母のパドメから政治関連の教育を受けたレイアが、アナキンの娘であることを悟らせないために講じた策であったが、ダース・ヴェイダーも議員達も、レイアがパドメとアナキンの娘であることを知っていない様子だった。
母譲りの度胸の良さと毅然とした態度で向き合うレイアに、ヴェイダーは指を差しながら深淵から響くような声で彼女の恐怖心を駆り立てようとする。
「反乱軍とこの船が深い関わりにあるのはわかっている。彼らの送った設計図がどうなったのか…私はそれを知りたいだけだ」
凍て付くような冷たい言葉。だが、レイアは動じなかった。まるで何も知らないような口ぶりで、ヴェイダーの言葉に首を傾げる。
「何を言っているのか…。私は帝国元老院の一員としてオルデランへの外交任務に就いているのです」
その様子を見たヴェイダーは、すぐに方針を切り替えた。レイアの後ろにいるトルーパーたちへ指示を出す。
「続きは、我々帝国のステーションで聞くとしましょう。連れてゆけ」
幾人のトルーパーたちに連れて行かれるレイア。タナヴィーⅣがスターデストロイヤーに捕縛されている以上、彼女を救出して脱出するのは至難の技だ。
ルークは妹が言った作戦を実行するべく通気口を進む。彼女は自身を囮にして、ルークとデス・スターの設計図を逃す作戦を打ち立てたのだ。
レイアの身を危険に晒すことになる作戦だが、多くの犠牲を払って入手した設計図を失うわけにはいかない。彼女はルークの反対を押し切ってヴェイダーにわざと捕らえられたのだ。
タナヴィーⅣから帝国軍の輸送船へ忍び込んだルーク。
作戦としては簡単だ。師であるクワイ=ガンや、オビ=ワンがやったことと同じく、囮として「タトゥイーン」へ放ったポッドを追うために降りる輸送船に忍び込み、タトゥイーンへ降りる。
ルークはポケットに忍ばせたデス・スターの設計図を握りしめるのだった。
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ヴェイダーはフォースを張り巡らせながら思考を巡らせていた。
この船には確かに乗っていたはずだ。
すでに滅んだはずの「ジェダイ」が。数分前まで懸架されていたXウイングが消えているのを見ると…。
「彼女を拘束するのは危険です、ヴェイダー卿。このことが漏れれば元老院が反乱軍支持に傾きかねません」
隣にいる部下がそう具申してくると、ヴェイダーは黒い甲冑越しに言葉をかけてきた部下を見据える。
「反乱軍と彼女の関係は決定的だ。反乱軍の基地を見つけるための唯一の手がかりであり、交渉材料ともなるだろう。この船の遭難信号を送信し、元老院に搭乗者は全員死亡したと報告するのだ」
「ヴェイダー卿、デス・スターの設計図はこの船にはありません」
他の部下が、そう報告してきた。
「送信も一切行われていませんでした。戦闘中に脱出ポッドが射出されましたが、それにも生命体は乗っていませんでした」
となれば、可能性は二つとなるか。タナヴィーⅣの腹にいたはずのXウイングか、それとも放出された脱出ポッドか。どちらにしろ、手を打つ必要はある。
「分遣隊を送り込んで脱出したポッドを回収させろ。何としても見つけ出すのだ、司令官。今度ばかりは誰にも邪魔はさせん」
そう指示を出したヴェイダーは踵を返してタナヴィーⅣを後にするのだった。
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アウター・リム・テリトリー。
そこに存在する惑星、タトゥイーン。
銀河の中心から離れた辺境にあるアケニス宙域で、タトゥI 、タトゥIIと名付けられた連星の太陽の周りを304日かけて公転しているその惑星は、発見された当初は恒星だと思われていた。
太陽から遠く離れているにも関わらず、海ははるか昔に干上がり、ほぼ全域が砂漠に覆われている。
「アナキン」
砂漠しかない惑星で、水分農場を営むラーズ家。今は亡き夫婦が営んでいたそこは、息子であるオーウェン・ラーズが引き継いでいた。
オーウェンが呼びかけると、縦穴式の住居の一室から、一人の人物が出てきた。
「なんだい、オーウェン」
アナキン・スカイウォーカーは、呼び掛けられたオーウェンに問いかけると、彼は指で住居の向こう側を指した。
「利水分離器のコンバーターの調子が悪いんだ。見てもらえるか?」
「そろそろ寿命だと思ってたよ。すぐに行く」
地下から水を抽出するための機械が寿命を迎えていることは、アナキンもよく知っていた。ここ最近は騙し騙しで修理はしていたが、そろそろ本格的に交換する必要があるだろう。
工具箱と修理道具を担いで住居の上へと上がると、アナキンは足を止めた。
「ルーク…」
そこにいたのは、自分の息子だった。彼はスピーダーから降りると、先に出ていたオーウェンと挨拶を交わしていた。
「オーウェン叔父さん、久しぶり」
「大きくなったな。お父さんの若い頃にそっくりだ」
握手とハグを交わすと、ルークは砂を踏みしめながら呆然と立っているアナキンの下へとやってくる。
「ルーク、久しぶりだな」
「母さんの誕生日以来だよ、父さん」
「こんな砂しかない星に…どうしたんだ?」
ルークがこの僻地に来ることは無かった。スカイウォーカー家の重要な日には、アナキンがナブーへと帰るようにしており、基本的にアナキンがオーウェンたちと暮らす中で、ルークやレイアがここに来ることは無かった。
「助けて欲しいんだ」
そんなルークが真面目な目で言葉をかけてくる。アナキンは誤魔化すような笑みを浮かべて身振り手振りで言葉を探した。
「なんだ、船が壊れたのか?ここにある部品でいけるならすぐにでも直せるが、部品が特殊なら町にでないと…」
そう言った矢先、スピーダーから見慣れたドロイドが二体やってきた。
「アナキン様…」
C-3POと、R2-D2。その二体を見て、アナキンは数日前から感じていた嫌な予感が的中したのだと確信した。スピーダーもよく見れば帝国軍のものであり、おそらくルークが何かしたのだろう。
「ルーク。わかっているはずだ。父さんはもうジェダイじゃない」
「けれど、帝国が!シスの暗黒卿が反乱軍を滅ぼそうと迫っているんだ!敵には強力な兵器がある。星ひとつを破壊してしまうものが!」
「それで、どうするんだ?お前はジェダイとして戦争に参加するのか?クローン戦争のように」
そう言ってアナキンは工具箱を持ち直してオーウェンから依頼された機械の修理へと足を向けた。
「父さん!!」
「仮に帝国に勝てたとしても、その次に待っているのは共和国同士の内乱だ…ルーク、悪い事は言わない。今のうちに手を引け」
「見捨てろというんですか?!」
淡々と修理をする父にルークは悲鳴のような声を上げるが、アナキンは冷静な口調でルークをなだめるように言葉を紡ぐ。
「その身を大事にしろと言っているんだ、ルーク。ジェダイだの、シスだの、フォースに絡んで生きているとその力に飲まれる事になる」
そのせいで、自分はかけがえの無い友の痛みにも気付けずに最悪の形で別れてしまったのだから。そう言うアナキンをルークは真っ直ぐと見つめる。
「…父さんも、かつてはそうだった」
「昔のことだ。今はしがない修理工に過ぎない」
父さん!そう言ってアナキンを引き止めるルークは、最後の手段だと心に決めて真剣な声でこう言った。
「レイアが、助けを求めてるんだ」
その言葉にアナキンの手が止まる。
見計ったようにR2が身を捩らせながらアナキンとルークの前に出てくると、タナヴィーⅣの船内で、レイアがドロイドたちを脱出させる間際に撮った映像の一部が投影された。
《助けてください、アナキン・スカイウォーカー、オビ=ワン・ケノービ。あなた達だけが頼りです》
明らかに何かを切り取っているシーンだけを投影している。ひたすらその言葉を繰り返すレイアの映像を見せられて、アナキンは観念したように息を吐いてR2をジト目でみつめた。
「卑怯だぞ?R2」
アナキンはパドメとレイアに弱いことを、ルークはよく分かっていた。
ルークたちがジェダイの修行を受ける時も、アナキンは凄まじい有り様で反対していたのだが、一度決めたことには頑として動かないパドメと、レイアの強請りに参って泣く泣く認めた話は、オビ=ワンから耳にタコができるほど聞かされていたものだ。
アナキンは手早くオーウェンの依頼を終えると、道具を片付けてルークに伝えた。
「オビ=ワンと、モス・アイズリー宇宙港までは案内する。知り合いに良い腕を持つパイロットがいる。船は宇宙一速いポンコツ船だがな。だが、そこまでだぞ?」
そう言ってスピーダーの鍵を取りに行くアナキンの背を見つめながら、ルークはスカリフの戦いで出会ったジンの言葉を思い出した。
突破口を掴んで、さらに先にあるチャンスを掴む。それを繰り返していけば見えるはずだ。
きっと見えてくるはず。勝利へ続く光が…。
ルークはその言葉を胸に、黄昏に沈む二つの太陽が浮かぶ地平線を見つめるのだった。
シナリオを練り直すのを許せるか?
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細かい描写も見たい
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ログの心の移り変わりを見たい
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とりあえずエンディングまで突っ走れ