アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件 作:紅乃 晴@小説アカ
深く、深く。
思考と感覚の海へと潜る。
粘膜のような海原を潜り、深く、深く、底へと降りてゆく。
フォースを研ぎ澄ませ。
感覚を鋭敏に。
呼吸する息遣いすら感じずに、何もかもの感覚を捨て去り、深淵なる領域へと降りる。
そこに、彼は座していた。
白くかげる世界の中。全てを捨て去ってようやくたどり着ける境地に、いつも彼は座している。腕を規則的に組み、座禅を組み、瞑目するように目を伏せて、彼はその場に座しているのだ。
叶うのは、その姿を見ることだけ。
感じることができるのは、彼がそこにいるという事実だけ。
言葉を交わすこともできず、目を合わせることもできない。
彼はいつもそこにいる。
そこにい続けて、座して
〝フォースと共にある〟
シディアスと名乗って19年の月日が流れようとしていた。
ギャランティック・シティにある豪邸と化した自身の部屋の一室。パルパティーンは、こだわった調度品や、設備が何もない、シスの陣が描かれた部屋の中で目を開いた。
普段は一滴たりともかかない汗が、額を伝って落ちる。それほどまでに、パルパティーンは深くフォースの領域へと降りていたのだ。
この19年。探究を重ね続けて至った極地の一つが、この瞑想だった。通常のフォースの瞑想とは比べ物にならない集中力と体力を要するものであるが、得られるフォースへの感覚は凄まじく、今のパルパティーンは、19年前とは比べものにならないほどフォースへの理解を深める存在へと変化していた。
だが、まだ足りない。届かないのだ。
パルパティーンは年老いた体をあげると、部屋からゆらゆらと出て行く。深く潜った影響で悲鳴を上げる体を、玉座へと下ろし深く息をついた。
探究と研究は、確実に実を結んでいるはずなのに、パルパティーンは自身が前に進んでいる実感を得ることは無かった。この19年の月日の中、一度として得ることはない。
パルパティーンの行く先には、必ず彼がいるのだ。深く潜った先で見た光景の中、自分はそこに至るだけで精一杯だというのに、彼はそこに居続け、フォースと共にあるのだ。
届く気配すらない場所で、彼は自分を見つめている。至るだけで命を削ってしまいそうな場所で、彼は待ち続けているのだ。
パルパティーンは、疲労が抜けてきた体で、あがってきた報告書に目を通してゆく。
ヴェイダー卿が、レイア・オーガナの尋問を始めたようだ。彼女は反乱軍が入手したデス・スターの設計図の在り処を知っている。故にヴェイダーやターキンは、執拗に彼女への尋問を続けているようだ。
だが、パルパティーンにとってそれは些細なことだ。いや、彼が帝国を設立した時から…「ログ・ドゥーラン」が「ダース・ヴェイダー」に変貌してから、パルパティーンはたどり着けない道に立っているような感覚に襲われていた。
ダース・ヴェイダー。
帝国樹立の日に、生まれ落ちた…ログ・ドゥーランの残光。
あの存在の中に、パルパティーンが知るログ・ドゥーランは存在していなかった。所々に彼らしい懐かしさはあるが、それはこの世界に残ったカケラと残光に過ぎない。
アレは、ログ・ドゥーランの残光。
黒い甲冑を纏うことで人の形を保っている何かだ。
あの日から、パルパティーンが焦がれた何かは永遠に失われたままだ。手の届かない場所に行ってしまった何かを求めて、パルパティーンはフォースの探究を続けている。
彼は玉座から立ち上がると、19年前から変わらないギャランティック・シティの煌く夜景を見つめるのだった。
シナリオを練り直すのを許せるか?
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細かい描写も見たい
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ログの心の移り変わりを見たい
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とりあえずエンディングまで突っ走れ