アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件 作:紅乃 晴@小説アカ
僕はラスボスや敵キャラをヒロインにしてしまう病気でも患っているのだろうか…かっこよく描きたいだけなのに…
ぐぬぬ
「ハン…。ハットから聞いたぞ?」
約束通り、ファルコンの専属契約をしたアナキンは長年使い込んだ工具を仕舞いながら、ジャバと気まずそうに話していたハンに声をかけた。アナキンの言葉に、いつもは飄々と言葉を交わすハンも、気まずそうに口をつぐむ。
このタトゥイーンは、権力を持つものと、信頼を得られるものが絶対だ。それ以外の事に意味はあまりない。アナキンも、引退するワトーから持つものを引き継いだときに、それを思い知っていた。
この星は、何もかもがあらゆる意味で原始的なのだ。下手をすればクレジットでさえ意味を為さないこともある。そんな中で積み重ねる権力者との信頼関係は、金や命では代替できない貴重なステータスでもある。
「運び屋が積荷を捨ててしまったら、なにが残るんだ?」
「命あっての物種って言うだろ?おやっさん」
そう言い訳をするハンに、アナキンは再び溜息をついた。ジャバから聞いた話では、ハンが捨てたのはアウターリムでも珍しい種類のスパイスだったようだ。
「用意した二重底はどうしたんだ?」
「あれに入れる時間がなかったんだよ。心配するなって、ちゃんと耳を揃えた上に色をつけて返すさ」
今のハンには、このチャーターの仕事で手に入る金のことしか頭にないらしい。この星で生きていくには前向きかもしれないが、若さゆえの危うさもハンは持っていた。アナキンは船の点検をするハンの肩に手を置いて、注意深く目を走らせる。
「気を付けろ、ハット族は裏切り者を許さないぞ?忠告はしたからな?」
仲の良かった密輸業者が、次の日には南の砂漠で干からびていたなんて聞きたくはない。以前もそんなことがあったからこそ、アナキンは真剣な眼差しでハンに言葉を投げた。
「わかってるさ。任せておけって、おやっさん」
その言葉がこの若者に届いたのか…。少しばかり不安になりながらも、アナキンも長年付き合いがあるハンの言葉を信じるしかない。
そうこうしている内に、C-3POとR2を連れたオビ=ワンと、ルークがドックへとやってくる。
「これは…また…」
「ガラクタの塊?」
「スクラップの方が正しいかも」
息子が言わんとすることを言い当てようとしたら、それよりも酷い言葉が返ってきた。ただのスクラップではない。「銀河最速」のスクラップだ。
「おいおい、こう見えてもコイツは光速よりポイント5速いんだぜ。見た目はアレだが、中身で勝負ってやつだぜ、坊主。ラーズのおやっさんや、俺が特別な改造をいくつも加えてある。まあ、急いでるようなんで乗ってくれ。さっそく出発しよう」
そう言ったハンが、オビ=ワンやルークを手招いて、ファルコンの下部にあるタラップへと案内する。二体のドロイドと、師が乗り込んでゆく様子を見つめていると、ルークがタラップの途中で立ち止まった。
「父さん…」
悲しげな…いや、どこか期待を込めた眼差しで見つめてくるルークに、アナキンは困ったような笑みを浮かべて、首を横に振った。
「一緒には行けない。わかるだろう、ルーク」
ここには、ここの生活がある。世話になっている従兄弟であるラーズ夫妻にも、何も言付けていない。それに、来週には新しい顧客と、ハットが所有する大型船の定期点検の仕事もある。
そう言うアナキンに、ルークはフォースを研ぎ澄まして言葉を放つ。
「父さん。僕がここに来られたのは…」
「フォースの導き、と言うんだろう?だが、父さんは違う。その導きを無視し続けてきた」
何度も、語りかけてくることはあったが、その全てからアナキンは耳を閉ざしたのだ。フォースとの絆を絶っている自分は、もう過去のような戦いはできないし、それに参加する勇気や力も湧いてくる気配はない。
「母さんは言っていたよ。父さんは必ず力になってくれるって」
パドメのことを出されるが、残念だがそれだけは変えられないことだった。
「けれど、父さんはジェダイには戻れない」
「アナキン」
そう断るアナキンに声をかけたのは、タラップへ戻ってきたオビ=ワンだった。歳を取った自分の師は、あの日からさらに深みを増した言葉でアナキンへ語りかける。
「フォースを恐れてはいけない。昔のお前なら、恐れなかったはずだ」
「今は違う。クローン戦争から何もかもが変わったんですよ、オビ=ワン」
「それは君の見るひとつの側面にすぎんよ。もっと心をよく澄ませることだ、アナキン。お前には出来る」
そう言うオビ=ワンの言葉を、アナキンは深く心へと沈ませてゆく。たしかに、自分が見ているのは側面のひとつであろう。しかし…全体をよく見ようとして、自分たちは過去に取り返しのつかない過ちを犯したのだ。
その罪悪感が、未だにアナキンの背中にべったりと張り付いて離れない。
あのとき———ライトセーバーで親友を貫いたあの瞬間から、アナキンは…。
「オビ=ワン…僕は…」
「居たぞ! その船止まれ!!」
アナキンの言葉を待たずに、背後から大声が響いた。アナキンが振り返ると、白い装甲服を身に纏った兵士たち…ストームトルーパーたちが、ミレニアム・ファルコンへ銃口を向けていたのだ。
「チューイ!出発するぞ!」
「父さん!!」
咄嗟の出来事にアナキンは差し伸ばされたルークの手を取る。ハンも乗り込んでミレニアム・ファルコンはブラスターの火花を散らしならドックから浮き上がってゆく。
「やれやれ、私こう見えても宇宙旅行嫌いなのですよ」
座席に座って悠長にそうお喋るキンピカドロイドに頭を抱えたくなる衝動をなんとか抑えながら、アナキンはコクピットへ駆け込んでゆくハンに続いて、ファルコンへ入ってゆく。
「帝国軍がここまで追ってきたのか!」
「ああ、どうやらそうらしい!やっこさん、船も丁寧に持ってきてるらしい。おやっさんが連れてきた客たちは、思った以上に切羽詰まってたらしいな!」
タトゥイーンの大気圏を抜けると、すぐに満天の星と二隻の真っ白なスターデストロイヤーがこちらを見据えているように見えた。二隻が見えたのも束の間、帝国軍が保有する緑色の閃光がファルコンへと襲いかかってくる。
「しっかりつかまってろ!光速にジャンプする計算が終わるまで偏向シールドを張っておけ!」
「取り付けた演算機はどうした?」
「あんな複雑な装置、俺じゃ扱えないに決まってるだろ!」
そう悲鳴のような声を上げるハンに、アナキンが呆れると副長席に座るチューバッカが獣らしい雄叫びを上げた。だが、それは野性味というより、焦りやパニックに似た声色だ。
「落ち着け、チューイ!敵の戦艦は2隻だ。回り込んで俺たちを挟もうって魂胆だぜ」
操縦桿を巧みに操作しながら、スターデストロイヤーの砲火を避けるハンの後ろから、ルークが訝しげな顔つきでファルコンのコンソールを見つめた。
「振り切れないのか?高速船だろ?」
「黙ってろ、坊主。それとも宇宙空間に放り出されたいか?ハイパースペースにジャンプしちまえば安全だ。他にもいくつか奥の手がある。引き離してやるよ」
ドンっと大きな揺れが船体に伝わると、スリルを楽しむようにハンは2隻の大型戦艦に笑みを魅せる。ぐるりと旋回するファルコンの後ろでは、外れたターボレーザーの閃光が色を放って爆ぜる。
「楽しくなってきたぞ」
はて、どこかで聞いた言葉だとオビ=ワンが思いながら、操縦にテンションを高めてゆくハンへ問いかけた。
「光速ジャンプに入るまで、あとどれくらいだ?」
「演算コンピュータの計算が終わるまで…」
「もう済んでる」
そう声が聞こえてハンが振り返ると、外付けした光路演算装置を持ったアナキンがひらひらとそれをかざした。再びコンソールを見ると、行先はアナキンが言うようにセットされていた。
「ああ、よし、じゃあジャンプだ」
相棒のチューバッカと顔を見合わせてから、ハンは何事もなかったかのようにファルコンのジャンプへ至るレバーを引くと、船は光の尾に包まれて、ハイパースペースへと旅立ってゆくのだった。
シナリオを練り直すのを許せるか?
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細かい描写も見たい
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ログの心の移り変わりを見たい
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とりあえずエンディングまで突っ走れ